次は因縁の7つ目のクエスト。
果たして今度はクリアできるのか。
俺は今ある建物の前にいる。
まつり部長から最後のクエストである校長室の開かずの金庫を受けた。
「それを最後にしたのは偶然?それとも必然なのかな?
でも、キミの選択は間違いじゃないよ。
今のキミならそのクエクリアできると思う、頑張って」
クエストを受けた時、そう言ってまつり部長は応援してくれた。
ちなみに前回はこれを始めに進められてえらい事になったのですけど…
その後、俺はエリトアに会いこのクエストの情報を聞いた。
それから、ころねちゃんのパン屋に情報を聞きに行き、ここにいる訳だ。
問題の美術館は前回と同じく人だかりが出来ていた。
俺はその人だかりをかき分け最前列に出る。
ここにいれば戌神警部が見つけてくれるはず。
俺が今か今かと警官の動きを見ていると。
「きちんとテープを張って一般人は入れないようにするんだ」
と、どこかで聞いた声がした。
ふと、そちらを向くと「スバルちゃん?」
「え?」
名前を呼ばれた女子警官はこちらを向き目が合う。
「えっと…」
少しびっくりした顔のスバルちゃん。
「うおほん、スバルちゃんとは誰の事かな?
私は大空警察所属の大空警部ですが?」
あ、そういう役割なんだ。
「ちょっとスバル、私はどこに行けばいいの?」
甘いボイスでやってくのはちょこ先生?
「あら、また会ったね」
「いや、また会ったねじゃないから、ちょこ先。
今は役になりきってよ」
大空警部が焦って声をかける。
「あ、そっか、ごめんごめん。
うおほん、はじめまして私は癒月警部です」
そう言って敬礼をするちょこ先生。
しかし、その格好は。
「警察にしてはその、ミニスカートに胸元開いてる警察の服は刺激が強すぎるかと」
素直に感想を言ってみる。
「ええ?そうかな?
この衣装が私に用意されてたんだけど」
「いや、もうどっからどう見てもミニ」
「いたいた」
俺の言葉を遮り声をかけられる。
「あ、戌神警部」
そう、そこには俺の方に歩いてくる戌神警部の姿が。
「ご苦労様です、戌神警部」
大空警部が挨拶をする。
「こちらの一般人はお知り合いですか?」
「ええ、私の助手なんですよ」
「そうでしたか、分かりました。
キミは中に入っていいよ」
大空警部に言われて中に入る。
「ありがとうございます」
「いやいや、キミの力が必要だからね」
ニコッと笑う戌神警部。
「ちょっとちょこ先、やっぱやばいよその服は」
「でも、他の服ないし、次の時は普通のにするわ」
「もう、頼むよぅ」
「ちょこはこれでも良かったんだけどなぁ」
「ほんと頼むよ」
後ろで大空警部と癒月警部が、こそこそと話している声が聞こえる。
しかし、やたらに警部が多いなぁ。
「頑張ってね~」
「ん?」
どこかで聞いた声がギャラリーから聞こえたような?
そちらを見るとまつり部長が手を振っていた。
「ええ?」
俺は急いでまつり部長のところに。
「何やってるんですか?」
「このクエではまつりはギャラリーだから」
「ええ」
「なんで頑張ってこいよ」
ポンと肩を叩かれる。
「キミ行くよ」
「あ、はい」
戌神警部に呼ばれ俺はそちらに向かう。
まつり部長はニコニコしながらそんな俺に手を振っていた。
俺と戌神警部、それに大空警部と癒月警部は案内の警官の後ろをついて美術館に入った。
「このクエってどうやればクリアなんですか?」
俺は小声で隣を歩く戌神警部に聞いてみる。
「ん?
このクエは無事に金の招き猫を守りきればオッケーだよ」
クリア条件は前回と変わらずか。
「着きました警部」
少し広いホールに着く。
部屋の真ん中にはガラスケースに入った、金の招き猫があった。
ここも同じだな。
「しかし、変だな。
怪盗キャットは義賊のはずだけど。
それに久しぶりに現れたと思ったら、変な噂のない美術館からこの招き猫を狙うとは」
警部モードのころねちゃん。
「警部、怪盗キャットとは何者なんですか?」
「うむ、怪盗キャットは貧しい人の為に悪い噂の立つ人から物を盗みお金に替えて配っていたんだ。
しかし、いくら義賊と呼ばれていても盗みは罪。
なので私は長年追いかけていたんだよ。
ただ、ここ数年は活動してなかったんだが」
演技は相変わらずうまいなぁ。
所々訛っておるのはお約束だけど。
「それでは戌神警部、我々はホールの周りの準備に取りかかります」
「分かりました、よろしくお願いします」
大空警部と癒月警部が敬礼をしてホールから出ていく。
「警部、本庁から警視が来られました」
「なんだと。
分かったお通しして」
警視と言ったら今回もやはり?
「やぁ、どうかね、状況は」
来た。
「はい、白上警視。
急ピッチで準備しております」
戌神警部がそう言った相手を見る。
やっぱりフブキちゃんだ。
「あのう白上警視」
「ん?誰だね君は始めてみる顔だな」
「いや、前回ここで会いましたよね?」
俺が前回失敗した時、時間が止まりフブキちゃんが変な事を言ってきた。
だから、もしかしたらフブキちゃんもループしてるかもしれない。
「え?」
不思議そうな顔をする白上警視。
あれ?
違うのか?
「今回ここに来るのは始めてだか?」
やはり本当に知らないみたいだ。
なら、あれはなんだったんだ?
「そうですか、すいません。
俺の勘違いだったみたいです」
「そ、そうか、ならいいんだ」
知らないみたいだし、ここは無理に深掘りしない方がいいだろうな。
「では、準備は出来たという事だね、戌神くん」
「はい、警視」
何やら二人話し込んでるなぁ。
俺はホールの周りを見回ってみる。
すごい数の警官がホールを囲んでいた。
そろそろか?
俺は後ろに一歩下がった。
前回と違い走ってきた警官にぶつからなかった。
「すいません、急いでいたので」
背の低い女性警察官は謝りながら慌てて廊下を走っていった。
今回もいたな。
何故か彼女が気になる。
俺はさっきの女性警官を追おうとしたその時、ある言葉が聞こえてきた。
「大空警部、癒月警部が犯人用の罠にかかってあわれもない姿になっております」
なんだってぇ。
思わずそちらに振り向く。
「なにやってんの、ちょこ警部」
大空警部が頭をかかえてる。
「しまった」
俺は女性警官が走っていった方を見たが、もう見失っていた。
くそ、甘い誘惑に気を取られた。
こうなったら。
「あのう、大空警部」
「ん?」
頭をかかえている大空警部の側に行く。
「もしよかったら、癒月警部救出手伝いましょうか?」
「いえ、結構です」
普通に断られた。
「何してるんだい?」
「え?
あ、すいません」
背後に戌神警部。
「する事が見つからなかったので、ちょっとホールの周りを見てました」
「あのねぇ、蟻のこ1匹入る余地がないくらい警察官を見張らせてるんだ。
そんな見なくても大丈夫」
いや、それってフラグってやつですよね?
「警部そろそろ予告時間です」
「分かった」
俺は時計を見る。
いつの間にか夕方になっていた。
「配置につけ」
戌神警部の言葉に慌ただしくなる警官達。
キーン
何か高い音が響いた気がした。
やっぱり来たか。
あんなに慌ただしく動いていた警察官が止まっている。
普通に止まっているんじゃない。
走っている警官が空中で止まっている。
時間が止まっているのか。
「キミ」
俺はすぐに後ろを振り向く。
そこには前回と同様、斜め45度で腕組みをして右手を顎に当てているフブキちゃんがいた。
「そんな好感度で大丈夫か?」
やっぱりこの質問か
でも、今回は前回とは違う。
「大丈夫。
準備万端です。
白上警視」
俺は落ち着いてそう答えた。
「なら、いいよ」
優しく白上警視が微笑む。
キーン
また、甲高い音。
警察官の慌ただしさが美術館に戻る。
「では、行こう」
白上警視はこちらに近づいてきて一緒にホールへと向かう。
今回はいなくならなかったんですね。
「そろそろ怪盗キャットが現れる」
ホール内ではちょうど戌神警部が部下にそう言っていた。
パリン
天井のガラスが割れ、誰かがホールの真ん中に降り立った。
「な、あんなところから」
いや、予想つくやん。
「これはもらっていきますよ」
紫のレオタードを着た小柄な女性がガラスケースから、金の招き猫を素早く盗る。
「な、触ると電流が流れるはず」
「それは先ほど切らせて貰いました」
ドミノマスクで目元を隠したその女性がふわりと天井に飛ぶ。
相変わらずなんて脚力だ。
「待て、逃がすか!」
俺は学園の購買部で買っておいたフック付きロープを天井に投げる。
クイクイ
よし、引っ掛かった。
俺は急いでロープを昇る。
「そこまでだ」
美術館の屋根で俺は怪盗と相対する。
「まさか追ってくるなんてね」
「小姫マモリだろ?」
「え?」
俺の言葉に明らかに動揺するマモリ。
「まだ名乗ってませんが、なぜ分かったのです」
「秘密かな」
「ま、確かに私は小姫マモリです。
でも、私の手には金の招き猫。
これであなたも終わりですね」
確かに招き猫を奪われたらクエスト失敗だ。
どうにかして取り戻さないと、今度こそ終わりだ。
どうする?
「今のあなたに私を捕まえるすべはないでしょう。
それでは、失礼します。
少しはやるなとは思いましたが、期待はずれでしたよ、世界の答えさん」
くそう。
これで終わりか。
「ふふ、それを持っていかれると困るんだなぁ」
『え?』
突然声をかけられ、そちらを見る。
しかし、誰もいない。
「どこ見てるのかな?
こっちだよ」
逆側から声?
俺とマモリは同時にそちらを向いた。
そこには月をバックに美術館の三角屋根の天辺に立つ人影が。
「これはぼくの友人の必要な物が入ってるからねぇ。
あげられないなぁ」
人影は先程までマモリの持っていた招き猫を持っていた。
「え?
いつの間に」
マモリもびっくりしている。
「か、怪盗キャット!」
縄を登ってきたのか戌神警部が人影に向かって叫んだ。
「久しぶりだね、戌神警部。
今回は少し事情があるから、この招き猫貰っていくね」
そう言って人影は月夜に飛んで消えていった。
猫の尻尾を揺らしながら。
「く、逃げられた」
「まだです、目の前に怪盗がいます」
俺はマモリを指差し戌神警部に言った。
「確かに、まてぇ~」
「ちょ、ちょっと何も盗ってないじゃないですか」
マモリも慌てて逃げ始める。
前回の仕返しだ。
俺はそう思いながら月夜の逮捕劇に付き合った。
「ふぅ」
結局マモリには逃げられた。
イベントも終わり、俺は寮に帰って一眠りし、今は放課後までの時間潰しに校庭の端にあるベンチに座っていた。
結局俺は招き猫を守れなかった。
クエスト失敗か。
クエスト報告するのがなんか辛いなぁ。
ピタ
「うわぁ~」
突然首筋に冷たい物を当てられた。
「なにこんなところでしょげてるのかな?キミは」
「おかゆちゃん」
ベンチの後ろからニコニコしながら、おかゆちゃんが回り込んでくる。
「はい」
缶ジュースを渡された。
さっきこれを当てられたのか。
そのまま隣に座るおかゆちゃん。
「いや、昨日、最後の卒業クエストやったんですが、失敗してしまって」
「ふぅん」
缶ジュース飲みながら俺はおかゆちゃんに昨日の事を話す。
「それで落ち込んでいる訳か」
「はい」
「じゃ、そんなしょぼくれなキミにおかゆお姉さんが良いものをあげよう」
そう言って立ち上がったおかゆちゃんは何かをこちらに投げてきた。
反射的に受け取る。
そっと手を開いて見てみた。
これは…
「卒業クエストクリアおめでとう」
おかゆちゃんは缶ジュースを掲げて、笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます」
俺も缶ジュースを掲げてお礼を言う。
缶ジュースを持ってない手の中には1つの鍵が握られていた。
それは確かに俺の必要としていた物だった。
卒業クエスト完全クリア
次は学園の最後の大型イベント
お楽しみに