あなたは事の経緯を話し協力してもらえるように頼むのだった。
「本当に学園以来なのです」
舞台から降りてきたるしあちゃんは、とことここちらに近づいて来てニコニコ笑顔で言ってくれた。
「え?なに?知り合いだったの?」
マリン船長はなおも不思議そうだ。
「です。
ちょっと学園イベントに行ってた時に」
「へぇ~」
じゃぁ、キミは学園出身者なんだ」
マリン船長が珍しそうに俺を見た。
「学園は入るの難しいから、1度入るとなかなか出ようとしないプレイヤーばかりって聞いたから」
「あ、いえ、出身というか先日入学してだいたい1週間で卒業しました」
「ええ?」
俺の言葉にマリン船長はびっくりする。
ま、確かに卒業第一号って言われたしな。
「ちょっと詳しく聞かせてよ。
どうなってるのキミは?」
「そうですね、るしあも聞きたいです」
そう言ってるしあちゃんは近くのテーブルへ案内してくれた。
しばらくすると飲み物を運んでくるガイコツ。
ま、るしあちゃんがここの管理人ならガイコツが掃除したり、飲み物持ってきても不思議じゃないな。
ネクロマンサーって言ってたし。
そして、俺は飲み物をいただきながらこれまでの経緯を簡単に2人に話した。
「なるほどね、ミオ先輩に助言もらってたのかぁ」
「それなら納得です。
ミオ先輩の助言はほぼ外れのない占いみたいなものですから」
2人はうんうんと頷く。
「あ、それでるしあ」
「はい?」
マリン船長の声かけに首を傾げるるしあちゃん。
「そのホロメンとの出会いの旅でさ」
いや、いつからそんな旅番組みたいな名称に。
「船がいることになってね」
マリン船長が俺の方を向く。
あ、続きを言えばいいのかな?
「そうなんです。
それでフレアさんにお願いしたら、ぺこらちゃんの力も借りたいと言う事なんですが」
「ぺこら今、引きこもり期間中なのよ」
「あ、またですか?
充電きれちゃったのかなぁ?」
「充電言うなって」
るしあちゃんの言葉に笑うマリン船長。
「充電?」
「そうなのです。
忙しいのが続くと、しばらく自分の好きな事をしたいみたいで籠るんですよ。
ぺこら、やる時はとことんやらないと気がすまないみたいで」
ああ、何となく分かる気がする。
「じゃ、あれをやるんですか?」
るしあちゃんはマリン船長に聞く。
「そう、あれやっちゃおうかと」
「ん~」
マリン船長の言葉にるしあちゃんが何やら考え込む。
「ん?どうした?何か用事ある?」
「用事と言うかそれをするなら、しばらくここを抜けないといけないですから。
学園の時もだいぶここを無人にしてて、いくつかのモンスター逃がしちゃいましたから」
ん?
モンスターを逃がす?
「あちゃぁ。
ま、いいんじゃない?
その方がプレイヤーも楽しめるでしょ」
「えっとモンスターを逃がすってどういう事ですか?」
俺はるしあちゃんの言葉が気になったので、るしあちゃんとマリン船長に聞いた。
「ここに沢山のお墓があるのはプレイヤーのお墓じゃなくてモンスターのお墓なのです」
「ま、厳密に言うとモンスター情報が保管されてる場所みたいなものね」
「普通のモンスターは倒されても時間が立てば再ポップするのですが、星付きのモンスターは1度倒されるとモンスター情報がここのお墓に戻って来るのです」
モンスター情報が戻ってくる?
「ま、説明すると」
マリン船長は簡単にだがこの世界のモンスターについて話してくれた。
この大霊園には星付きのモンスターの情報が眠っており、管理人であるるしあちゃんが定期的に決まった数のモンスター情報を世界に送っているそうだ。
その送られたモンスター情報は世界にいる同じ属性のモンスターにインプットされ、通常モンスターから星付きに変化するらしい。
そして、その星付きが倒された場合、またその情報がこの墓地に戻ってくるそうだ。
ちなみに管理人であるるしあちゃんが、ここを制御しないとモンスター情報は勝手に世界に散らばり、星付きモンスターが増え、ゲームバランスがおかしくなるらしい。
さっき逃げたと言ったのも、予定以上のモンスター情報が世界に出てしまい、普段より多くの星付きが【ホロライブワールド】に生まれたと言うわけだ。
「それってヤバイんですか?」
俺的には星付きは強いが良いアイテムを落とすしいいと思うけど。
「あのねぇ、始まりの町の近くに星付きがうろうろしてたらどうなるか分かる?」
あ。
「るしあがここで管理するから、そういった始めから詰んでますっていう状況が起きないのよ」
なるほど。
「じゃ、るしあちゃんは今回一緒に来れないんですか?」
「そうなるとぺこらが捕まらないのよね」
悩むマリン船長。
「分かった。
ちょっと2人ともお使い頼まれてくれないかなぁ?」
そう言って何やら手紙を書き始めるるしあちゃん。
「はい、これ」
書いた手紙を渡される。
「これをある場所に持っていってほしいのです」
「ある場所?」
「うん、ここから北に行ったところにある山の中腹辺りに洞穴があるから、そこに行ってこれを渡してきてほしいのです」
「え?誰にですか?」
「それは行ったら分かるのですよ」
るしあちゃんはそう言って笑う。
「なるほどね、オッケー
じゃ、早速行くよ」
マリン船長も何かを察したみたいで元気よく手を上げた。
「それじゃ、お願いするのです」
俺とマリン船長は手を振るるしあちゃんに見送られながら、言われた場所へと向かった。
道中は街道沿いを歩いたお陰で、モンスターに遭遇せず山の麓までこれた。
人の行き来も案外多く、モンスターも寄り付かないのだろう。
しかし、なんでこんなに人通りが多いんだ?
山の麓に来ても特にこれといって何かあるわけでもない。
「さ、じゃんじゃん行くわよ~」
テンション高いなぁ。
山登りもきつくなく、中腹まで石階段があるぐらいだ。
あっという間に洞穴に。
なんで人が順番待ちしてるんだ?
洞穴の前に人が並んでいる。
1人ずつ入るようだ。
それにしても入ったらすぐ出てくるな。
本当にここはなんなんだ?
順番が回ってきた。
「じゃ、入ろうか」
「え?1人ずつなんじゃ?」
「あ、いいのいいの、1人ずつって訳じゃないから」
俺はマリン船長に背中を押される形で中に入る。
ま、確かに他の人から見たら俺は今1人か?
中は洞穴らしく岩肌が丸出しだったが少し明るかった。
よく見るとあのマリン船長と歩いた夜の道にいた光る虫が飛んでいた。
先に進むと行き止まりで平たい台座に1本の短剣が刺さっていた。
「これってクリスナイフ?」
「そう、そのナイフの前に手紙を置いて」
マリン船長に言われ俺はるしあちゃんから預かった手紙を置く。
「じゃ、帰ろっか」
「え?
手紙を誰かに渡すんじゃないんですか?」
「ん?
そうだよ、だからもう渡したでしょ」
「え?
だって台座に手紙を置いただけで」
俺はもう一度手紙を置いた台座を見た。
そこに手紙はなかった。
「あれ?」
「ささ、急いで戻ろう」
「え?あれ?手紙は?」
俺はまたマリン船長に背中を押されながら洞穴を出た。
るしあちゃんの元に帰る途中、マリン船長があの場所の事を教えてくれた。
あの洞穴はこの【ホロライブワールド】とは別の電子世界に繋がっている場所だという。
そこには、別の世界のホロメンがいて、この世界で遊んでいるプレイヤーがそちらのホロメンに手紙やアイテム等を送るための場所になっているらしい。
「ま、詳しくは知らなくても良いけどね」
とマリン船長は笑っていた。
昼過ぎに俺達はるしあちゃんのいる大霊園に着いた。
るしあちゃんに手紙の事を話すと、感謝され一緒に行ってくれる事になった。
結局あの手紙はなんだったのだろう?
るしあちゃんの支度も終わり、マリン船長と俺とるしあちゃんは大霊園を後にする。
その出発の時、るしあちゃんが踊っていた舞台の上で誰かがこちらに向かって手を振っていた。
るしあちゃんはその姿に手を振りつつ。
「間に合って良かった。
後はお願いするのです、オリー」
と呟いていた。
俺達はるしあちゃんを仲間に加え、第3の町へと向かった。
第3の町に着いた頃にはもう夕方だった。
「あ、どこで待ち合わせするか決めてなかった」
俺の声にマリン船長はこっちと手招きする。
「ん?」
俺とるしあちゃんはマリン船長の後を追った。
「たぶん、この辺りにいるんじゃない?」
海に面する洒落たお店が並ぶ道に俺達は来ていた。
「はぁ、2人にするとすぐこれなのです」
るしあちゃんもため息混じりで言っている。
「あ、いたいた」
マリン船長が指差した先には、テラスでフレアさんとノエルさんがワイングラスで乾杯しているところだった。
「あ、もう戻ってきたんだ」
見つかって罰わるそうな顔をするフレアさん。
「あ~も~」
ノエルさんも残念そうな顔をしていた。
「なに船長達にお使い頼んで自分達は楽しんでいるんですか。
こんな洒落た店に来て。
飲むなら混ぜろぅ~」
マリン船長が勢いよくノエフレに突撃する。
「ちょちょっとマリン、危ない」
ごちゃごちゃになってきた3人を見ながらるしあちゃんは小さくため息。
「本当にいつも同じような事してるんですから」
「な~に1人良い子ぶってんだぁ、るしあぁ」
マリン船長が絡みに来た。
「ああ、もうやめるのです」
るしあちゃんもマリン船長に引っ張られノエフレの方へ。
そして、今夜の飲み会が開催されるのであった。
次のお話はぺこらちゃん捕獲作戦。
果たしてはあなた達はぺこらちゃんを仲間に出きるのだろうか、こうご期待。