「完成ぺこ」
数日にわたって続いた造船も終わり、俺達の前には立派な一艘の船が出来ていた。
その巨大な船はこよりちゃんからもらった機械のお陰でほぼ自動で動くようになっている。
「よし、乗り込むよ」
フレアさんの言葉に第三世代組と俺は船に乗り込んだ。
「おお~やっぱり船はいいね!」
船首にある見晴台に立つマリン船長がとても嬉しそうに言った。
「頑張ったかいがあったね」
「なのです」
ノエルさんにるしあちゃんも嬉しそうだ。
もちろん俺もめちゃくちゃ嬉しい。
「で、名前は何にするぺこ?」
ぺこらちゃんの言葉にピタッと動きを止める5人。
「ん~ここは…」
「団長はね…」
「やっぱりるしあは…」
「ぺこらは…」
「やっぱ船長の船ですから…」
「いや、マリンの船じゃないぺこですから」
一気にわいわい騒ぎだす第三世代組。
「え、えっと俺もう一回ルーナちゃんのお屋敷に行ってルーナちゃん達が向かった先を聞いてきます」
俺は修羅場になりそうな造船所を急いで後にした。
「ふう、なんかみんな顔がすごく真剣で怖かった」
ルーナちゃんの屋敷に行く街道を歩きながら俺は少し身震いをした。
「どうかなさいましたか?」
「え?」
いきなり背後から声をかけられる。
俺は振り向き声をかけてきた主を見た。
あの時のシスター
俺は急いでシスターと距離をとり、いつでも鬼切丸を取り出せるように準備する。
「えっと、どうしてそんなに警戒されてるんですか?」
「いや、音もなくいつの間にか背後にいて声をかけられたら警戒しますよ。
それも冒険者ならまだしもシスターがそれをしてくるんですから」
「それは誤解ですね。
私は普通に歩いて来ましたし、あなたは何か考え事をしていたみたいでしたから、気が付かなかったのでしょう」
確かにそう言われたらそうかもしれないが。
俺は武器の準備はそのままにして構えをといた。
「そうでしたか、それはすいません」
「いえいえ、誰しも間違いはあるものです」
「では、俺はこれで」
「あ、待ってください」
「何でしょう?」
先を急ごうとしたが呼び止められた。
「あなたに自己紹介をしていませんでした。
この前、せっかく助けていただいたので」
「…」
俺はシスターの方を見た。
「私の名前は歌魚レヴィと申します」
「歌魚レヴィ」
「はい、またどこかでお会いしましょう」
「俺的には会いたくないですが」
正直に思った事を言う。
「ふふ、そう邪険にしないでください。
私だけ仲間外れも寂しいですよ。
あの人達に嫉妬してしまいそう」
そう言ってシスターはにやりと笑う。
気のせいかその口がかなり大きく見えた。
「それでは、また」
そう言ってシスターは停めていた馬車の方へ向かう。
仕掛けて来なかったか?
俺は馬車が町に向かうのを見送ってから、ルーナちゃんの屋敷に向かった。
「おはようございます」
「お、おはよう」
門番の人に挨拶をする。
で、一応ルーナちゃんが帰って来てるか聞いてみる。
「それがまだ戻られてない。
こんなに長い事、留守にするのは珍しい。
探したくてもルーナ姫は俺達では見つけられないからな。
今はこうやって救援連絡が来るのを待っているところだ」
「救援連絡?」
「そうだ、ルーナ姫が詰まった時にたまに出す連絡でな。
それを受けると俺達ルーナイトはルーナ姫を見る事が出来るので助けに行けるんだ」
なるほど、ホロメンだからイベントキャラクター扱いで普通は見れないのか。
「じゃ、この屋敷に帰って来てるか来てないのかも分からないんじゃ?」
「いや、この屋敷がイベントのような物だからな。
屋敷にいる時は姿を見る事が出来るし、あの屋敷の天辺にルーナ姫がいたら旗が上がるんだよ」
そう言われ俺は旗を上げるポールを見る。
確かに上がってないな。
「それじゃ、ルーナちゃんが向かった先は分かりますか?」
「うむ、向かった先は古龍島と呼ばれる島で、普通に船なら3日ぐらい海上を西に向かった先だ」
「古龍島ですか」
「そうだ。
ただ、今はモンスターが何故か活性化していてな。
船は手に入らんし、出れたとしても3日では行けないだろうな」
「分かりました。
ありがとうございます」
「いや、また何かあったら聞いてくれ」
「分かりました」
俺は門番と別れ、造船所に向かった。
「戻りました」
『遅い!』
「ええ」
帰ってきた瞬間第三世代組のみんなに怒られる。
「な、なんでそんなに怒ってるんですか」
「船の名前」
「やっぱり持ち主であるキミが決めればいいという事になったぺこ」
「あ、それで」
「で、何にするのです」
「船長的には」
「こら、マリン。
ぺこら達の意見はなしでって事になったぺこでしょ」
「うう」
ぺこらちゃんに怒られ、しゅんとするマリン船長。
「そうですね。
じゃ、【ふぁんたじぃ】で」
「【ふぁんたじぃ】?」
団長に聞かれる。
「はい、第三世代組のみなさんはホロライブファンタジーって呼ばれてるんですよね?
なので」
「へぇ、いいんじゃない?」
「そうぺこね」
「じゃ、この船は今から【ふぁんたじぃ】って事で」
「賛成なのです」
「はぁ、船長はセクシー…」
「もう、それはいいぺこですから」
マリン船長が何か言おうとしたのをぺこらちゃんが止める。
「それで、行き先は分かった?」
みんなで乗り込み準備をしている時にフレアさんに聞かれる。
「はい、古龍島に行ってるみたいです」
「古龍島かぁ」
「知ってるんですか?」
「まぁね、あそこは昔あるドラゴンが根城にしてた場所でね。
今はそのドラゴンも居らず財宝もないから誰も立ち寄らない場所になってたんだけど」
「ドラゴン?」
「そう、竜の…」
「なにやってるぺこか~
行くペコよ~」
「あ、今行く。
さ、行こう」
フレアさんはぺこらちゃんに声をかけられて話を止めてしまった。
竜のなんだろう、気になるなぁ。
「よぉ~し、みんな揃ったね」
船首に立つマリン船長。
「それでは、【ふぁんたじぃ】出航~!!!!」
海を指差し、大声で叫ぶマリン船長。
『お~!』
乗組員の第三世代組と俺は手を上げて声をあげる。
船の周りには作るのを手伝ってくれたNPCや骸骨が大歓声で見送ってくれた。
そして、俺達は古龍島を目指して大海原に船を出した。
「ま、ほぼ何もしなくていいぺこなんだけどね」
俺はぺこらちゃんと船の端から釣糸をたらしていた。
「全自動でしたっけ?」
「そう、キミが待ってきた機械のお陰でね。
目的地を登録したら勝手に向かってくれるよ。
はい」
フレアさんが飲み物を持ってきてくれた。
「ぺこらも」
「サンキューぺこ」
「あと、ちょっと気になったんですが」
「ん?」
「なんでみんな水着に何かを羽織ってる姿に変わっているのでしょうか?」
船が出航した後しばらくして、いつの間にか第三世代組の5人は水着に着替えていた。
「なんか目のやり場に困ると言うか」
「何言ってるぺこ?
海中装備しとかないといざって時に困るぺこよ」
「え?そうなんですか?」
「当たり前ぺこ、海に落ちたら普通の装備だと動きがかなり制限されて勝てる敵にも勝てないぺこよ」
「海中装備持ってないや」
そんな事は知らず普通に出航してしまった。
「そうだろうと思って団長とマリンで選んできましたよ」
声のする方を向く。
しかし、すぐにまた海を見た。
「え?
なんで目をそらすんです?」
「いや、本当に目のやり場に困りますので」
ノエルさんのその姿はかなり強い。
ま、普通に他の4人の攻撃力も計り知れない。
俺はなんとかノエルさんから海中装備を受け取り、船の中に入って着替える。
「えっとこれって」
海中装備に着替え甲板に出る。
「お、似合ってる似合ってる」
「うんうん」
「なんかねぇ」
「他のなかったぺこ?」
「いいと思うですよ」
全身アロハな俺にそれぞれな意見ありがとうございます。
「ん?何か曇ってきたね」
それから釣りをしたり、甲板でバーベキューしたりして、昼寝をしようとした時に突如天気が悪くなってきた。
「ヤバイね」
操縦席がある場所からフレアさんの声が聞こえる。
「どうしました?」
「前方5キロに巨大な物体が海の中にいる」
「まじですか?」
「みんな戦闘準備!」
フレアさんの声にそれぞれ武器を取り出す。
「このまま進むんですか?」
「どちらにせよ、向こうからも向かってきてるからね」
ゴロゴロ
雲から雲へ雷がわたる。
「嫌な天気になってきたね」
マリン船長も操縦席に来た。
「マニュアルにするけどいける?」
「誰に言ってるの、船長だよ」
「来たぺこよ!」
まだ距離はある筈なのに何かが海の中をこちらに向かって来ているのが水しぶきで分かる。
そして、水しぶきが消えた。
「来る!」
フレアさんがそう言った瞬間。
船の周りから巨大な足が複数立ち上がる。
イカ?
イカやタコのような吸盤付きの白い足が複数こちらに向かって振り下ろされた。
「やばい!」
「大丈夫!こういう事もあろうかとってね」
マリン船長がボタンを押すと、船がバリアに囲まれた。
「おお!」
「攻撃開始!」
フレアさんの号令で第三世代組のみんながそれぞれの武器で攻撃を開始した。
俺も鬼切丸で足に切りかかる。
グォォォォ~
大きな叫び声と共にそれは姿を表した。
船のすぐ前に現れたのは巨大なイカ。
「く、帝王イカ!」
マリン船長の叫び声が甲板に響いた。
次回は第X世代最後の1人との海上戦です。
船長の力が本領発揮される予定ですのでお楽しみに