あなたは大空スバルと幽霊バスの終着点を調べる為に乗り込んだ。
果たして終着点に何があるのか。
「だ、大丈夫なんだよね?」
俺の隣でチラチラ回りを見渡すスバルちゃん。
「だ、大丈夫です。
最終に着くまでは襲われないって言ってたので」
俺も鬼切丸をいつでも取り出せるように準備しながら答えた。
「それって着いたら襲われるって事なんじゃない」
声が大きくなってます。
「という噂なんで本当かどうか分からないです」
「本当だったら暴れるよ」
目が座ってるよスバルちゃん。
ふとスバルちゃんの横の窓から外を見る。
外はもう暗くどこを走っているのか分からなかった。
なぜ、窓際に座っているかというと、俺達が乗り込んだ時にこの窓際だけが空いていたからだ。
ちなみに他の席は全て埋まっていた。
え?
乗客の顔は見たかって?
見れるわけないだろ怖いんだから。
いざバスに乗るとやっぱり怖い。
バスの前にある電光掲示板を見る。
掲示板は次は終着駅と表示されたまま、ずっとノイズがはしって変わらない。
なので本当にここがどこか分からなかった。
マップを開いても掲示板と同じようにノイズがはしり表示が変だった。
「いつ着くんだろう」
何も起こらないバス内で少し落ち着いたのか、スバルちゃんは窓の外を見る。
確かにだいぶバスに乗ってる気がするんだけどな。
「あ、そうだ。
スバルちゃん、これを」
俺はそっと購買部で買ったお札をスバルちゃんに渡す。
「お?
ありがと」
スバルちゃんは俺の渡したお札をポケットに入れる。
さて、これからどうなるか。
俺はいつ着くか分からないバスに乗ってじっと前を見ていた。
「ん?」
バスが停まった?
俺は鬼切丸をいつでも出せるように準備する。
横に座るスバルちゃんも体を固くして息を潜める。
しかし、中に乗っている乗客はこちらに何もせず、ゆっくりと立ち上がり前の出口から出ていっている。
「俺達も行こう」
小声でスバルちゃんに言って俺は乗客の最後尾につく。
スバルちゃんも俺の後に続いた。
降りる時も何も言われず、俺達はバスを降りた。
スバルちゃんが降りるとバスはドアを閉め、またどこかに行ってしまった。
「あれ何?」
「分からない」
スバルちゃんが指差す方向には大きな建物がある。
そこに向かって乗客は歩いていく。
俺はスバルちゃんに合図をして、列から離れ、近くの大きな岩に移動し隠れた。
「あ」
大きな声が出て慌てて口を押さえるスバルちゃん。
大丈夫誰にも気づかれてない。
「どうしたの?」
俺の小さな声に、スバルちゃんは列のある場所を指差した。
俺はその指差した方を見る。
前後の乗客は顔が何故か暗くなって分からないが、その人だけははっきりと分かる。
「あの人、プレイヤーだ」
俺には分からないが、スバルちゃんにはその人がプレイヤーだと分かるのだろう。
「他にも何人かいる」
しかし、プレイヤーと呼ばれた人は列から逃げる事なく、下をうつむいたまま列に並んで歩いていた。
「助けなきゃ」
スバルちゃんが岩の間から出ようとする。
俺は咄嗟にスバルちゃんの腕を掴んだ。
「ダメだよ。
ここで出ていって騒ぎを起こしたら、プレイヤー以外の幽霊全部を相手にしなくちゃいけなくなる」
「でも、プレイヤーをほっておいたらどうなるか分からない」
「そうだけど」
俺は悔しそうな顔をするスバルちゃんを何とかおもいとどませる。
俺にはこのまま行けば、あのプレイヤー達がどうなるかは分かっている。
何かこの先で行われて死ぬんだ。
そして、リスポーンする。
アイテムは1つ失うがゲームが終わるわけではない。
ここでの事は覚えてないということだから、どんなやられ方だったとしても大丈夫のはず。
そう、これはゲームなんだから。
「行こう、ここの元凶をどうにかすればあのプレイヤー達も元に戻るよ」
俺の言葉にスバルちゃんは力強く頷いた。
それから、俺達は列の先にある建物の周囲を隠れながら回った。
入り口は全部で4つ。
それぞれにバスから降りた幽霊やプレイヤー達が並んでいた。
後、気になったのが裏口だ。
たまにだが何かを積んだトラックが出てくる。
「あそこから行けないかな」
俺がスバルちゃんに提案すると、スバルちゃんも頷いた。
スバルちゃんもそこからの侵入を考えていたらしい。
しかし、あの裏口には隠れる場所がない。
どうしたら侵入出来るかだけど。
「これ、使いなよ」
スバルちゃんから1つのバッチを貰う。
「これは?」
「スバルが持ってる秘密兵器の1つ。
光学迷彩バッチだよ」
「そんな便利な物が?」
「といっても音までは消せないし、周りに動く物が沢山あると上手く使えない。
だから、過信はしない事」
「分かった」
ちょうど裏口が開きトラックが出てくる。
「バッチを付けて中心のボタンを押すと使えるから。
行くよ」
スバルちゃんの姿が見えなくなる。
バッチを使ったんだ。
俺もバッチのボタンを押す。
手を見ると消えていた。
いや、手だけじゃない体全体だ。
どうなってんだこれ?
「早く」
少し遠くから小さな声でスバルちゃんが呼んでる。
俺は物音をたてないように裏口へと向かった。
トラックには自動で荷物を積み込んでいるようでモンスターはいなかった。
裏口から入って右側に通路らしきところがある。
「こっち」
その通路の入り口からスバルちゃんの声が。
俺もそちらに進んだ。
「もう大丈夫かな?」
スバルちゃんのその声に周辺を確認した後、俺は光学迷彩を切る。
「よく分かったね切り方」
姿を表すスバルちゃんが笑っていた。
「ま、だいたいボタンを押して発動するやつはもう一回押したら切れるかなと」
俺も笑う。
「さて、この先は何があるか分からない」
真剣な顔に戻り、スバルちゃんは通路の先を見る。
「そうだね」
俺も気を取り直して通路を見た。
鬼切丸を装備し、俺達は通路を進んでいった。
「なんだここ」
俺は通路の先を出た風景を見て驚いた。
「闘技場?」
スバルちゃんの呟く言葉に俺も納得した。
俺達が通路から出た場所は闘技場で言えば観客席に当たるところだ。
円形のその場所は中心部に砂地のフィールドがある。
戦う場所だ。
そこには多数の武器があちらこちらに散らばっていた。
しかし、血の跡とかはない。
「ここで何を」
俺が疑問を口にした時、ドォーン、ドォーンっとドラの音が大きくなった。
俺達は思わず身を低くして席の後ろに隠れる。
するとフィールドの奥側から1体のゴブリンが現れる。
近くの武器を拾いギャーと雄叫びをあげていた。
そして、反対側から現れたのはプレイヤー?
俺は思わずスバルちゃんの腕を押さえた。
スバルちゃんは悔しそうに下唇を噛んでいる。
俺の言いたい事は伝わったようだ。
プレイヤーはまだ下を見て意識がないようだ。
そして、その横にはバスに乗っていた幽霊が数体いた。
何が始まるんだ?
俺は椅子の影から見守る。
すると、突然幽霊がプレイヤーの中に吸い込まれた。
1体吸い込まれる度にプレイヤーがビクンと震える。
そして、どこかで聞いた事のある音が鳴る。
これはレベルアップの時になる音?
そして、ドラがもう一度鳴った。
その瞬間、プレイヤーの意識が戻ったのか、驚いた様子で回りを見渡す。
ダメだそんな事してたら。
ゴブリンはそんなプレイヤーの頭に向かって持っていた両手斧を振り下ろした。
ギャギャー
ゴブリンは目の前で天に昇っていく光の粒子を見ながら勝利の雄叫びをあげていた。
「なんてこと」
「なんなんだよこれは」
「単なるレベル上げさ」
「な!」
突然後ろから声をかけられ振り向いた。
そこには少し離れた観客席に座る1人の女性。
「おまえ、ベルフェ」
俺に名前を呼ばれ、女性はにたっと笑う。
その姿はもう変身している。
「誰?」
スバルちゃんも身構えながらベルフェを見る。
「俺の行く先に度々出てくる奴らの1人です。
この世界を壊そうとしてる」
「おいおい、止めてくれよ。
俺達はこの世界で楽しく遊んでるだけだろ」
俺の言葉に笑いながらベルフェが言った。
「何が遊びだ。
プレイヤーをこんなところに引っ張り込んで何している」
俺の言葉に笑うベルフェ。
「おいおい、聞いてなかったのか?
レベル上げしてるって言ったろ」
「な、何がレベル上げだ。
意識のないプレイヤーをモンスターが襲ってるだけじゃないか」
「は?
何を言ってんだ?
おまえ、勘違いしてるのか?
俺はモンスターのレベル上げをしてるんだよ」
「な」
俺も薄々分かっていたが。
鬼切丸を持つ手に力が入る。
スバルちゃんはなんとなく分かっていたみたいだ。
ギュッと手を握りしめている。
「だってそうだろ?
プレイヤーだってモンスターと同じだ。
死んでもまたどこかでリスポーンする。
アイテムが失くなるのは倒された時に相手への報酬だ。
ま、実際ドロップしないけどな。
プレイヤーを倒せばモンスターもレベルアップする。
強い相手を倒す為に、接待してやるのは強者の務めだろ」
前に友人が言っていた。
レベル上げの時に接待してあげると、まさにさっきのがそうか。
「あの幽霊はなんだ!」
「質問が多いなぁ。
まぁ、いいさここに2人で乗り込んできたんだ、教えてやるよ。
あの幽霊は倒されたモンスターの幽霊だ。
モンスターも倒されたら表示はされないが幽霊として世界をさ迷い、またリスポーンする。
その幽霊を捕まえてるのがあのバスだ。
そして、この闘技場でプレイヤーに吸収させる。
するとプレイヤーは経験値を貰えるんだよ。
ま、裏技だけどな。
そして、レベルアップしたプレイヤーをモンスターに倒させてモンスターのレベル上げをする」
「モンスター全体のレベルを上げてどうする。
プレイヤーへの嫌がらせか」
俺の言葉にまたベルフェが笑う。
「ははは、違う違う。
喰わせるんだよ、俺の星持ちのペットにさ」
「な」
「モンスターがレベル上げる方法に、モンスターを喰わせてその経験値を得る方法がある。
その為の餌作りをここでしてるんだ」
「おまえ!」
俺は鬼切丸を構える。
スバルちゃんもゆっくり前に出てベルフェを睨んでいた。
「怖い怖い。
ま、本当ならここであんた達とやりあうのもいいんだけど、ここは引いておくわ。
なんせ、3体1じゃアホらしい」
3体1?
「それにだいぶ経験値も集めたしな、ここらで潮時だ。
またな、世界の答えとスバル先輩。
ここから無事に出れたらまた会いましょうね~」
「まて!」
ベルフェは軽く手を振りながら姿を消した。
「くそう」
「出てきた」
俺はスバルちゃんに言われ客席を見た。
いくつかある入り口からゴブリンやキメラ、スライム、様々な種類のモンスターが現れる。
「いける?」
「この怒りぶつけてやります」
俺はスバルちゃんの問いにそう答えた。
「じゃ、スバルも本気出すよ」
そう言ってスバルちゃんは2つのブレスレットをカチンと合わせた。
「アーマーGo」
スバルちゃんの言葉と同時にブレスレットから銀色の液体が溢れだしスバルちゃんの体を包んでいく。
そして、あっという間にロボットの様なアーマーに変化していった。
そして、最後には頭と顔にも。
「すごい」
見た目は完全にロボットアーマーのサイボーグ。
「これが理事長から許可をもらって引っ張り出してきた、スバルの秘密兵器《スバルアーマー》」
あ、確かに頭のところアヒルみたいだ。
「頭がアヒルっぽいとか思わないように」
釘を刺される。
「じゃ、やるよ」
「OK!」
そして、スバルちゃんは敵の大群に突っ込んでいった。
「おりゃ」
俺は鬼切丸の特効が高い鬼系のモンスターを狩っていく。
スバルちゃんは残りの敵を相手にしてくれていた。
その戦力は圧倒的。
肩や太もも部分から小型のミサイルを撃ったり、掌から電気玉を放ち相手を倒していく。
敵からの攻撃にもびくともしない。
しかし、スバルちゃんと少し離れてしまったか。
ギャー
く、モンスターの攻撃を受けているところに背中から別のモンスターが攻撃してきた。
スバルちゃんもモンスター数体に襲われて手一杯。
ヤバい。
「が」
俺は背中から一撃を受ける。
たまらず転げながら離れる。
「大丈夫!」
スバルちゃんは多数の敵を相手しながらこちらを気遣ってくれる。
「大丈夫です。
スバルちゃんはそいつらを」
俺の言葉にスバルちゃんは早く敵を倒そうと動いてくれている。
くそう、かなりHPを持っていかれた。
俺に迫る2体のモンスター
ここで殺られたらスバルちゃんだけにしてしまう。
だけど、回復魔法は間に合わないか。
やばい。
俺は自分に回復魔法をかけながら後ろに下がる。
そして、モンスターは俺に襲いかかってきた。
俺は思わず目を瞑った。
ギャー
しかし、一向に痛みを感じない。
ゆっくりと目を開ける。
そこには天に昇る光の粒子と1本の鎌。
刃の根本には何か魚のマークが付いていて、なんだ?逆刃の鎌?
俺が見ている前で逆刃の鎌は音もなく消える。
「大丈夫?」
スバルちゃんが来てくれた。
「ありがとうございます、助かりました」
回復魔法が間に合い俺は立ち上がった。
「え?
何もしてないけど」
不思議そうに言うスバルちゃん。
ん?だとするとなんだったんだあの鎌は?
「それより、このままじゃ、押しきられる。
一旦撤退しよう」
「分かりました」
「捕まって」
スバルちゃんに言われて、スバルちゃんの手を取る。
そして、スバルちゃんはそのまま空を飛んだ。
すげぇ~飛べるんだ。
スバルちゃんと一緒に飛びながら闘技場の壁の上の部分を見ると、誰かが立っていた。
遠くでよく分からなかったが、黒ずくめの人物だった。
その人物もこちらを見ているようだったが、すぐに姿を消した。
もしかしたら、あれがベルフェの言っていた1人で俺を助けてくれた人なのか?
しかし、もう消えてしまった相手に確認はできない。
「お、来た来た~
こっち~」
闘技場の外で誰かが手を振っている。
「あれって、まつり先輩?」
「ありがとうございます、まつり先輩」
地上に降りて、スバルちゃんがまつり先輩にお礼を言った。
「いいっていいって、すばにゃんもキミもお疲れ様。
状況はすばにゃんの連絡で分かったから、校長に言ってこのエリアのプレイヤーは強制移動してもらったよ」
「じゃ、後は戻るだけですね」
俺の言葉にまつり先輩が頷く。
「さ、乗って」
まつり先輩が指差す方に1台のオープンカーが。
これもやたらメカチックだなぁ。
「ここはまだ実装前の試験的マップだから、運営が今回の事で一旦閉じるって言ってた」
俺達は車に乗り込みながらまつり先輩から説明を受ける。
スバルちゃんも今は私服姿に戻っていた。
「あ、すばにゃんのアーマー姿もうちょっと見たかったなぁ」
「なに言ってるんすか、あれはいざって時だけですよ」
まつり先輩の言葉にスバルちゃんが少し慌てながら答えた。
「じゃ、しっかり捕まってて、飛ばすよ!」
まつり先輩はそう言って車を走らせる。
確かにきちんと捕まってないと吹き飛ぶような速度だ。
「やっほ~!」
俺はまつり先輩の楽しそうな声を聞きながら無事に戻れるのか不安になるのだった。
さて、少しだけ姿を表した謎の人物。
逆刃の鎌で魚のマークが付いた武器を使う、その黒ずくめの人物とは?
また、どこかで出てくるかもしれません。
次回は新天地に向かいます。
お楽しみに