対戦した桃鈴ねねは今までの絶好調状態から突如不調に変わり負けてしまう。
果たして決勝戦で当たるアキ・ローゼンタールは小姫マモリに勝てるのだろうか?
俺達は医務室に着いた。
中ではベッドに寝かされたねねちゃんが苦しそうにしていた。
ドクターと看護師が会釈をして部屋を出ていく。
医務室には俺達だけだ。
アキちゃんがゆっくりとねねちゃんのマスクを外す。
苦しそうだ、本当に大丈夫なのか?
「初めの一撃で毒を食らったみたいね」
アキちゃんがねねちゃんを見ながら言った。
「え?でも、さっきのドクターは何も言ってませんでしたよ」
「分からないほど特殊な毒なのよ。
今の私達でも治せない」
「だったら、どうすれば」
「1つ方法はあるわ。
キミのギガポーションを使えば治るはず」
確かにあれはどんな状態からも完全回復するって言ってた。
「だったらすぐにでも」
「だめぺこ、あれは今担保に入ってるぺこ。
使えない」
「くそう」
俺はねねちゃんを見た、顔が青ざめている。
「みこちゃんお願いがあるの」
アキちゃんがみこちゃんを見ながら言う。
「分かってる、任せるにぇ」
頷くみこちゃん。
「ぺこらちゃんは冒険者さんをお願い」
「わかったぺこ、アキロゼ先輩」
力強く頷くぺこらちゃん。
「俺は…」
アキちゃんを見ながら俺は言った。
アキちゃんはその言葉に笑顔で「私の勝利を信じてて」と言った。
「もちろんだよ」
「それじゃ、行きましょう。
ねねちを助ける為に。
そして、私達の勝利の為に」
『お~』
俺は今ぺこらちゃんと2人で観客席に座っていた。
みこちゃんは医務室で歌っている。
オリジナル世代が持つ特殊スキルは歌らしく、歌に力を持たせる事ができるらしい。
それで、ねねちゃんの体力を徐々に回復しているそうだ。
ただ、回復と同時に毒で体力を削られている為、時間稼ぎにしかならないみたいだ。
「アキちゃん大丈夫ですかね」
隣に座るぺこらちゃんに聞く。
「信じて欲しいって言われたぺこでしょ」
優しくぺこらちゃんは答えてくれた。
「はい。
それとみこちゃん達は大丈夫ですか?
もしかしたら、あの小太りの仲間が襲ってくるかも」
「それは大丈夫ぺこ。
歌っている間はみこ先輩の周りには結界のようなものが発生するから、みこ先輩が許可したもの以外入れないぺこ」
そっか、なら大丈夫だな。
「それにキミを1人にする方が危ないぺこでしょ」
「え?」
「アキ先輩があのマモリに勝ち始めたら、次はキミの持つ棄権するスイッチを狙って小太りの仲間が襲ってくるぺこ」
「あ、確かにありうる」
「今まではあのマモリという切り札があったから手を出さなかったけど、その切り札がやられ始めたら」
「そうですよね」
「今、キミは武器もない無防備だし」
そっか、それを考えてアキちゃんはぺこらちゃんに俺の側にいるように言ってくれたのか。
「ありがとうございます」
「当たり前ぺこ、仲間なんだから」
そう言って笑うぺこらちゃん。
そう言ってもらえると嬉しい。
頑張ってねねちゃん、みこちゃん。
必ずアキちゃんが優勝してくれるから。
『では、決勝戦を始めます。
ここまでほとんど圧勝で勝ってきた期待の新人。
スモールプリンセスマモリ!』
わぁぁぁ~
今までにない大歓声で闘技場に現れるマモリ。
その後ろ側の席で小太りはにやにやしていた。
あのプレイヤー覚えてろよ!
『続きまして、こちらも新人ながら、ここまで無傷一撃で勝負を決めてきた謎の美女マスクドアキ!』
わぁぁぁ~
こちらも負けないくらい大きな声援だ。
そして、アキちゃんも入場してきた。
手にはメリケンサックをつけていない?
「アキロゼ先輩本気ぺこね」
「え?」
「あのメリケンサックは実は威力を押さえる効果のある装備ぺこ。
それを外してるって事は相当怒ってるぺこよ。
アキロゼ先輩」
アキちゃん。
『いよいよ最終戦!
泣いても笑ってもこれで決着だ!
それでは決勝戦始め!』
そして、波乱の決勝戦が幕を上げた。
開始の合図と共に2人は勢いよく激突、打ち合いを始める。
あまりの速さに2人の腕は消えて見えない。
ただ、ダダダダダという音だけが聞こえる。
「早い!でも、相手に触ったら毒が…」
「それは大丈夫ぺこ、アキロゼ先輩はその対策をしてる」
「へぇ、見かけによらず肉体派なんですね」
「そう?これでも鍛えてるんだけど?」
マモリは攻撃しながらアキロゼに話しかけていた。
「でも、いいんですか?
そんな素手で私の攻撃を受けてたらさっきの先輩みたいに動けなくなりますよ」
そう言ってマモリは笑う。
「ご心配なく、これでも対策はしてるから」
そう言って受け手にまわっていたアキロゼは、マモリに一撃を入れた。
「く」
距離を取るマモリ。
「な、なんで効かない」
「対策って?」
俺はぺこらちゃんに聞いた。
「アキロゼ先輩は気を使うのが上手いペコ。
だから、自身の気を使って薄く身体中を覆ってるぺこ。
だから、攻撃を受けているように見えて実際には体に当たってないぺこ」
「あ、一撃入った!」
マモリが大きく距離をとった。
「本当だ、アキちゃんまったく毒が効いてない」
「でも、相手はまだ諦めてないぺこね」
ぺこらちゃんのいう通りまだまだマモリは笑ったままだ。
「ふぅ。それじゃ少し本気で行きますね、先輩」
そう言ったマモリの腕がみるみるうちに筋肉が膨れ上がり大きくなる。
上半身もそれに合わせて大きくなっていく。
下半身はそのままでまるで逆三角形の形だ。
「さぁ、私の一撃受けれますか」
マモリは笑いアキロゼに向かい突進する。
大きくなった手で地面を押しさっきより速くなっていた。
そして、その大きな拳がアキロゼを捉えた。
ドカァ!
凄まじい音が鳴りアキちゃんにマモリの拳が当たる。
その威力で砂ぼこりが舞い上がる。
「アキちゃん!」
俺は思わず声をあげた。
ゆっくりと砂ぼこりが晴れそこにはアキちゃんの姿がって、なんかムキムキなんですが?
「えっと、ぺこらちゃん。
なんかアキちゃんがムキムキになってますが」
そう、そこには筋肉ムキムキになったアキちゃんがいた。
顔はそのままで体全体だけムキムキって。
「ん?
あ、そう見えてるぺこな」
「え?」
「あれは自身の気を纏ってる姿ぺこ。
たぶん気が濃縮され体全体を覆ってるから筋肉ムキムキの姿に見えてるぺこ」
「そうなんですか?」
「な、なんなんですかそれは」
驚きの声をあげるマモリ。
「別に少し力を使っただけですよ?」
マモリはアキロゼに捕まれた手を動かそうとするがピクリとも動かない。
「よっと」
アキロゼはそのままマモリを片手で持ち上げる。
そして、壁に向かって投げつけた。
「く」
何とか空中で体勢を立て直すマモリ。
そこに普段の姿に戻ったアキロゼが間合いを詰めてくる。
そして、振り上げた拳を突き出した。
その時、アキロゼの腕は巨大化し強力な一撃をマモリに与えた。
壁にめり込むマモリ。
そして、間合いをとり構えるアキロゼ。
「く、まさかここまでとは」
壁から出てきたマモリの息は荒い。
「むやみやたらに肥大化させても仕方ないですよ」
そう言ってアキロゼは素早く間合いを詰め、連続攻撃を叩き込んだ
「すごい、優勢だ」
「当たり前ぺこ、アキロゼ先輩を怒らせたら怖いぺこよ」
しかし、見た目はすごいなぁ。
ムキムキなアキちゃんがマモリにすごい乱打を打ち込んでる。
「さて、じゃ、こっちもやらないといけないぺこね」
「え?」
ぺこらちゃんがニンジンを一本取り出した。
「何に使うんですか?」
「今、囲まれてるぺこ」
「な」
「ほら、あまりキョロキョロしないぺこ。
向こうが劣勢になったからスイッチ狙いに変えてきたみたいぺこね」
「でも、それは反則にならないんですか?」
「向こうはNPCを使ってるし言い逃れをしようと思えばいくらでもできるぺこ。
なので」
ぺこらちゃんはおもむろにニンジンを頭上に投げる。
するとニンジンが爆発した。
煙がその場に充満する。
「な、なんだ?」
「ど、どうなっている」
周りの人が慌て始める。
だけど、俺達には煙がこない。
「あとはこれぺこね」
今度は数匹のウサギ型ロボット?
ロボットは俺達を囲むように移動する。
そしてロボットを起点に結界を展開した。
「さて、これでいいぺこ」
「よし、こっちだ」
誰か煙から来た。
「ぎゃ~」
あ、結界にぶつかって感電した。
バフンと音がして真っ黒になったNPCがその場に倒れる。
漫画みたいだな。
煙がはれる。
闘技場では、2人が対峙してにらみ合いをしている。
マモリも元の姿に戻っていた。
「さぁ、どうするの?」
アキロゼが構えたままマモリに聞く。
「このまま戦っても今は勝ち目はなさそうです」
「そう?」
「でも、お礼は言っておきますね。
戦い方教えて貰いましたから、ありがとうございます」
「別に構わないわ。
ただ、次はあんな卑怯な手は使わないようにしてほしいわね」
「分かりました。
では、私はこれで」
「お、おい、早く戦え!」
小太りが観客席から叫ぶ。
マモリはそれを見て一瞥する。
そしてマモリが黒い渦の中に消えた。
『おおっとスモールプリンセスマモリが消えた?
これは棄権と見なし優勝はマスクドアキ!』
「やったぁ!」
「よし、早くカウンターに行ってアイテムを受け取るぺこ」
「はい」
それから俺達は急いでカウンターに行き担保にしたアイテムを回収する。
それから医務室へ。
「間に合ったにぇ」
汗だくのみこちゃん。
「ありがとうございます」
俺はお礼を言った後、ギガポーションをねねちゃんに飲ます。
青かった顔がみるみるうちに赤みを取り戻した。
「ん?あれ?みんなどうしたの?」
ねねちゃんが起き上がりきょとんとした顔をする。
「はぁ、よかった」
俺は変わらないねねちゃんに安堵した。
「よかった、間に合ったみたいね」
アキちゃんが医務室へ来る。
「ありがとうございました。
すごくかっこよかったです」
俺はアキちゃんに言った。
その言葉にアキちゃんは微笑んだ。
「そうそう、賞金のコインももらってきたよ」
すごくでかい袋持ってる。
『おお~』
ぺこらちゃんとみこちゃんの目がランランになる。
「おお、すごい優勝したんだ、さすがアキ先輩」
「相手が未熟だったからね。
ねねちも毒にされてなかったらいけたと思う」
「はぁ、でもまだ未熟なところはあったかなぁ」
とねねちゃん。
もうベッドから立ち上がっていた。
「さ、早く景品に交換するぺこ」
「そうそう」
ぺこらちゃん、みこちゃんが落ち着かない。
大量のコインを見て興奮してるな。
「よし行きましょう」
俺達は医務室を出てモンスターバトルの会場を後にしようとした。
そこにあの小太りがNPCを数人連れて現れる。
「おい、待て!」
「なんだ?」
「さっきのは無効だ。
NPCが勝手に逃亡した」
「ああ、そうかもな。
だけどNPCにも意志はある。
きちんと話し合い出来てないお前が悪いだろ」
「な、なんだと!」
俺の言葉に顔を赤くする小太り。
そこにすっとアキちゃんが前に出る。
「ルーラシアさんですよね?」
「な、なに?」
いきなりアキちゃんに名前を呼ばれて焦る小太り。
「NPCがなんで俺の名前を」
アキちゃんが突然光だした。
そして、光が消えた時、ルーラシアが驚きで地面に膝を着く。
「な、な、な、まさか」
「どうしたんですか、あれ?」
「ああ、偽装を解いたにぇ。
今は誰が見てもアキちゃんがきちんと見れる」
あ、それでいきなりホロメンが目の前に現れたから。
「ルーラシアさん、私の事推してくれてありがとう。
でも、私を推してくれる人がこんな卑怯な事してるのは悲しいかな」
「え、いや、その」
しどろもどろに狼狽えだすルーラシア。
そうだよなぁ、推しが目の前にいてこんなところ見られたらなぁ。
「もう、こんな卑怯な事しないでくださいね」
「は、はい」
びしっと背筋を伸ばし返事するルーラシア。
「あ、あのう、あ、握手してもらっていいですか?」
ルーラシアが恐る恐る聞いている。
「いいですよ」
アキちゃんが手を差し出す。
ルーラシアはその手をゆっくりと握った。
泣いてる。
「ありがとうございます。
俺、この事一生の思い出にします」
「はい、でもまたイベントで会えますから、その時まで楽しく頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
頭を深々と下げるルーラシア。
そして、俺達が行くのをNPCと共に手を振りながら見送ってくれた。
めちゃくちゃ態度変わったんだけど。
「すごいですね」
「まぁ、この大カジノにいる大半のプレイヤーはアキロゼ先輩推しが多いぺこですからね。
ここにアキロゼ先輩よく来るから」
「でも、数ある推してくれてる人の中でよく分かりましたね、あの人がそうだって」
「それは当たり前でしょ。
推してくれる人はみんな覚えてますから」
と振り返り笑顔で言うアキちゃん。
さすがホロメン。
それから俺は景品交換所で無事に切符をゲット。
余ったコインはホロメンの人達が欲しいものに交換した。
ほくほく顔の俺達が町の中を歩いていると、突如呼び出し音が鳴り響く。
俺の持つ通信機だ。
「はい」
「あ、よかった、繋がったね。
今大丈夫?」
ロボ子さんだ。
「はい、大丈夫です」
「この前の話、AZKiちゃんの居場所分かったよ。
どこかで合流できる?」
「見つかったんですか。
はい、大丈夫です。
どこに行けば」
そして、ある場所を指名されてロボ子さんとの通信を切る。
「見つかったの?」
ねねちゃんが聞いてきた。
「はい、それで今から待ち合わせ場所に向かいます」
「そっか、それじゃ私はここで。
まだ、ダンスの予定が入ってて」
「ねねもアキ先輩と一緒に出るから」
ねねちゃんもダンス出てるんだ。
「みこも、そろそろ帰らないとやばいかな」
「ぺこらも」
「分かりました、今回はいろいろとありがとうございました」
俺は4人にお礼を言った。
「ううん、楽しかったよ。
おつたーる」
「また、どこかで会おうね。
またねね~」
「いい息抜きになったにぇ。
おつみこー」
「久しぶりに羽目が外せてよかったぺこ。
おつぺこでしたー」
それぞれ挨拶して俺達は解散する。
今回はヒヤヒヤしたけど楽しかった。
やっぱりホロメンとの旅は楽しいものだ。
さて、次はロボ子さんとの待ち合わせ場所に行かないと。
俺は急ぎその場所を目指すのだった。
これでカジノでの出会いは終わりました。
新たなフラグが立ちながら最後?のホロメンAZKiちゃんに会う為にロボ子さんに会いに行きます。
AZKiちゃんのいる場所は全ての始まりの場所。
では、次回もお楽しみに