2人の女性が仲良く大通りから外れた道を歩いている。
2人がとても仲がいいのは周りから見てもよく分かった。
1人は狐の耳を持つ女性、白上フブキ。
もう一人はショートカットの明るく元気な女性、夏色まつり。
2人ともこの和の世界に合わせて和服を着て歩いている。
彼女達はこの裏世界【鬼岩城】で、ある冒険者と共にスターズフォーを倒す為に来ていた。
ただ、早く来ていた為、待ってる間に散策しようと2人でうろうろしていた。
「そろそろ行かないと怒られるよ?」
「ええ、まだ見て回ろうよ」
「でも、なんか町の人いなくなってるけど」
フブキは周りを見ながら言った。
フブキの言う通り、さっきまで賑わっていたこの通りも今は静かになっている。
「ほんとだ」
まつりも周りを見ながら言った。
ちょうど2人が小物屋で髪飾りに熱中していた時に、大通りではスターズフォーが現れて町の人は避難したようだ。
店は開いているが、店員は皆家の中にひきこもっている。
「もしかして、スターズフォーが出たのかも?」
「確かにそうかもね」
「早くみんなと合流しよう」
フブキはそう言って大通りに行こうとする。
「ちょっと待った」
そんなフブキを止めるまつり。
「どうしたの?」
不思議そうにフブキはまつりを見た。
「そこに隠れてるのは分かってるわよ」
そう言ってまつりは振り返り路地に続く道を指差す。
「え?」
フブキもそこを見る。
「まさか、三面オーガに合流しようとしたら先輩達に会うなんて」
そう言ってまつり達が指差している場所とは正反対の場所の路地から小姫マモリが姿を現す。
「あ」
その声で慌てて振り返りマモリを指差すまつり。
「やっぱりね」と格好をつける。
「まつりちゃんもう遅い気もする」
「う」
フブキの言葉に「あはは」と頭をかくまつり。
「余裕ですね、スターズフォーが出現してると言うのに」
マモリはにやりと笑う。
「そっちは大丈夫なんじゃない?
だってホロメン5人もいる事だし、それにうちの名誉部員もいるからね」
まつりはそう言って笑い返した。
「それよりあなたの方がピンチなんじゃないです?
大先輩2人相手ですよ?」
フブキはそう冗談ぽく言いながら腰の刀に手を置いた。
「そうですね。
でも、ご安心ください。
大召喚を使えない今の先輩達なら私一人で十分です」
ドミノマスクの奥でマモリの目が光る。
「へぇ、言ったねぇ」
まつりが右肩に手を当て服を掴み上へと引っ張る。
すると一瞬で迷彩服に変わった。
「その実力みてあげましょう」
フブキは地面を右足で踏み鳴らす。
カンっという音共にフブキの服装もいつもの服に変わっていた。
「前回、力の出し惜しみをしたお陰で負けてしまいましたから。
今回は初めから解放します」
そう言ってマモリは1枚のカードを胸の間から取り出す。
「喧嘩うってんのか~」
突如怒り出すまつり。
「まぁまぁ」とそれをフブキはなだめた。
「え?あ?え?」
突然怒られて動揺するマモリ。
しかし、すぐに気を取り直してカードを顔の前に持ってくる。
カードに記されているのは一匹の悪魔の絵。
「私達の元になった悪魔です。
1つ目の封印はドミノマスクで、もう一つの封印はこのデビルカードで解放します。
さぁ、先輩方少しは楽しませてくださいね」
そう言ったマモリの持つカードからどす黒い気が溢れ出す。
「あちゃ、待たなかったら良かったかな?」
「この気、暴走状態のころねやるしあちゃんに似てる」
「確かにここにいるだけで震えが止まらない」
カードはどす黒い気を放ちながら消えていく。
そして、目の前には真っ黒なタキシード姿のマモリが立っていた。
少し大人びた感じがする。
背丈が伸びているからか?
「はぁ、いいですね。
やっぱり元の体は。
いつもの押さえ込まれた小さい体とは違う。
解放感があります」
そう言って手を左右に広げるマモリ。
「それにこれもこの体ならバランス良いですからね」
そう言って挑発的な顔をしてマモリは自分の胸を下から持ち上げるようにする。
「あのやろう!
撃ち殺してやる」
「いや、物騒物騒」
いつの間にかライフルを持つまつりをフブキはなだめる。
「しかし、2段階変身とはラスボスみたいだね」
まつりを抱きしめ押さえながらフブキはマモリに言った。
「さっさと始めませんか?
私も用事があるんですよ」
マモリは拳を構えて2人を見る。
「ん~
確かに力は強くなったみたいだけど、それにあぐらかいてたら足元すくわれるよ?」
「え?」
フブキはそう言って煙と消える。
驚くマモリ。
そして、背後に現れたフブキの刀がマモリの脇腹を捉え吹き飛ばす。
「がはっ」
ドカァ!
店に吹き飛ばされ突っ込むマモリ。
「狐は化かすのも得意だから」
店から体に付いた誇りを払いながら出てくるマモリにフブキはそう言った。
「まさか、もう始めてたなんて、油断しました」
「峰打ちだったけど無傷か」
「まぁ、この程度の一撃なら」
そう言ってまた拳を構えるマモリ。
しかし、次はその手にどす黒い気を纏わせていた。
「では、行きましょうか」
マモリはそう言うと一瞬でフブキとの間合いを詰める。
だが、フブキもそれには十分反応している。
間合いを詰めたマモリにフブキは刀を振り下ろした。
斬!
刀はマモリを捉え肩から脇腹へと袈裟斬りにする。
「まさか!」
何かに気付くフブキ。
その直後斬られたはずのマモリがにやりと笑い煙に変わった。
「ここですよ、先輩」
声に咄嗟に振り向くフブキ。
そこには拳を振り上げたマモリがいた。
「おっと」
しかし、マモリはフブキを攻撃せず後ろに下がる。
横を見るとまつりがライフルを構えていた。
先程、攻撃しようとしたマモリをまつりがライフルを撃つ事で下がらせたのだ。
「あの一瞬でよく私が背後に回ったの気がつきましたね」
フブキに対して構えながらマモリはまつりに言った。
「確かに直ぐ側で見てたら分からなかったかもしれないけど、こっちは離れて見てたからね」
「なるほど」
「それよりさっきの技は」
フブキは刀を構えたままマモリに聞く。
「はい、フブキ先輩の得意技、盗らせて貰いました」
「やっぱり」
「私の本質の力は強欲。
私が欲しいと思ったスキルや技を盗り使う事ができます」
マモリは笑顔で答えた。
「では、続きと行きましょう」
マモリはまた間合いを詰める。
今度はまつりに撃たれないように射線上にフブキを挟みながら拳を乱打した。
それをフブキは刀で受ける。
しかし、押されていた。
ダンっと左足を一歩間合い深くに入れるマモリ。
そして、渾身の右ストレートを放つ。
その右腕はあの時アキが放った腕のように巨大化していた。
「く」
たまらず後ろに吹き飛ばされるフブキ。
それをまつりが受け止める。
「はぁー!」
2人が揃ったところにマモリは巨大な黒い気を放つ。
ドカァ!と2人はそれに巻き込まれた。
砂煙が晴れる。
そこに両手を前に出し結界を張って自身とまつりを守るフブキがいた。
「ありがとう、フブキ」
「こっちこそ。
だけどこのままじゃ、戦いが長引くだけだね」
「そうだね」
フブキの言葉に考えるまつり。
そして、まつりは改めてマモリを見る。
「あれを使う」
その言葉にフブキはまつりを見る。
まつりの顔は真剣だった。
「じゃ、隙は白上が作ろっかな」
白上が刀を納める。
マモリはこちらには攻めてこずじっと2人を見ていた。
いや、攻めたくても攻めてこれないが正解か。
まつりのライフルは常に会話していてもマモリを狙っていた。
「それじゃ、本気見せちゃうよ」
フブキは目を瞑りその場に仁王立ちになった。
するとフブキに光の粒が集まる。
その数はどんどん増えフブキを包み込んだ。
「く」
ダン!
前に出ようとしたマモリの足元をまつりが撃つ。
光が完全にフブキを包み込んだ後、光は突如霧散した。
そこには白い気の衣を纏ったフブキがいた。
両手両足、体と頭を白い気、狐神の神気に覆われている。
ころねやおかゆ、ミオも同等に狗神、猫神、大神の神気を使える世代だ。
頭の神気は狐の帽子をかぶった感じになっていた。
「それじゃ、行くよ」
フブキの言葉に頷くまつり。
フブキはマモリに向かって間合いを詰める。
間合いに入る寸前にフブキは神気を玉状にしてマモリに投げた。
カウンターを狙っていたマモリはその攻撃を払う。
その一瞬の隙をつき、フブキは懐に飛び込み、マモリのボディに2連打。
たまらず後ろに下がるマモリのボディに追撃の一撃。
しかし、それはマモリに防がれる。
直ぐ様フブキは足払いをかけるが飛んで避けるマモリ。
その瞬間、マモリの後ろから腰を掴むフブキ。
分身体をマモリの背後に出していた。
フブキはそのままマモリにバックドロップを仕掛けるがそれをマモリは手を地面につけ防ぐ。
分身体のフブキは消え、丁度逆立ちのようになっているマモリの背中をフブキは蹴り飛ばした。
吹き飛ぶマモリ。
しかし、マモリは1回転して着地した。
「なかなかやるね」
フブキはマモリに言った。
「それはありがとうございます」
それほどダメージは受けてないような感じで構えるマモリ。
「どうしてスターズフォーなんて育てたの?」
「それは簡単ですよ、楽しむ為です。
私達がこの世界を楽しむ為。
そして、私達の母親が楽しむ為です」
「母親?」
「そうです、母親達は世界の答えが自分のところに来るのを楽しみにしてますから」
「そっか、楽しむ為か」
フブキはなんとなくマモリに同情してしまった。
この世界を楽しむ。
それは自分達も日々そう思ってきたからだ。
ただ、この子はその楽しみ方が他より激しいだけ。
「話し合いはできないか」
ポツリと呟くフブキ。
できるならどこかの時点でその機会があったはず。
でも、もうここまできている。
なら。
「決着をつけてから、ゆっくり話しましょうか!」
フブキはそのままマモリに突っ込む。
マモリはそのフブキに向かってカウンターを仕掛けた。
ダン!
その時だ。
まつりがフブキの背後からライフルを撃った。
弾はフブキを貫通。
そして、マモリを貫いた。
ボン
音と共に弾に貫かれたフブキが消える。
分身体を囮にしてマモリを撃ったのだ。
しかし、ボンっと撃たれたマモリもその場で煙となって消えた。
先程盗った力を使いこちらも分身体に変わっていた。
そして、まつりの背後に突如現れるマモリ。
「よく分かったね」
振り返らずまつりは言った。
「何か狙っていたのは分かっていましたから、これで1人です」
そう言ったマモリの手刀が背後からまつりを貫いた。
「でも、まだこっちが一枚上手かな」
貫かれたまつりの首が180度回りマモリを見る。
その顔はにこっと笑ったフブキだった。
ボンと煙と消えるまつりに扮したフブキ。
「これでチェクメイト」
ダン!
「く」
背後から撃たれたまらずまつりと間合いを取るマモリ。
「な、何を」
「撃ったのかって?」
苦しそうに片膝を地面につけるマモリ。
「それは前回対コメント集用に用意された弾丸をまつりなりに解析して作った弾だよ。
効くでしょ?
コメント集に近い力を使ってたら」
「まさか、そんな物を持ってたなんて」
マモリの体からどす黒い気が抜き出て消える。
姿もあの小さい姿に戻っていった。
「やったね、まつりちゃん」
まつりの隣にフブキが現れる。
「フブキのお陰だよ」
「さ、どうする?」
まつりとフブキは初めの姿に戻ったマモリに聞く。
「この姿では私に勝ち目はないです。
ここは一旦退かせてもらいます。
次は必ず」
そう言ってマモリは町の方へと消えていく。
「はぁ、なんとかなった」
神気を解き、もとの姿に戻るフブキ。
まつりも迷彩服を脱いでいつもの私服になっていた。
「じゃ、遅くなったけど早く合流しようか」
フブキはまつりに言った。
「はぁ、フブキとのデートも終わりかぁ」
残念そうに言うまつり。
それを見てフブキは「もう、また今度時間とるから」っと言ってしまった。
「はい、言質いただきました」と喜ぶまつり。
「あ、もう」
そう言って照れ隠しで膨れるフブキの背中を押し、笑いながらまつり達は大通りの方に向かう。
その先では彼女達の仲間がまさにスターズフォーを倒したところだった。
「まさか、私達の力を封じる方法を持っていたなんて」
力を封じられたマモリは、ワープする事も出来ず町の裏通りを歩いていた。
もう、スターズフォーもやられてしまっているだろう。
仲間に早く合流して相手が力を封じる方法を持っている事を伝えなくては。
そう考えながら歩いていると、マモリの目の前に誰かが立っていた。
「誰?」
「別に怪しいものではござらんよ」
そう言った侍はタヌキのお面を被っていた。
「どう見ても怪しいけど」
なんとかその侍に向かって拳を構えるマモリ。
「ま、今のそなたなら手こずる事もないでござるけど」
そう言って一瞬で間合いを詰めた侍は、マモリの首筋に手刀を当てる。
「く」
マモリはその場で倒れ気を失った。
「これでラプ殿に言われた用事は終わったでござるな。
しかし、まつり先輩に指差された時はどうしようかと思ったでござるが」
そう言って足元のマモリを見る。
「ま、助かったでござるよ」
侍は手持ちの機械を操作してワープホールを作った。
そして、倒れているマモリを連れてどこかにワープした。