誰かが言った、星降る昼に神殿から綺麗な歌声が微かに聞こえたと。
しかし、真昼の神殿にどうして星が降ったのかプレイヤー達は誰も知らない。
そうただ1人、あなたを除いては。
【鬼岩城】での決戦の後、俺達は酒場の1室を借りて祝勝会を行った。
ま、みんな飲むからかなりカオスな世界になってるけど。
「お疲れ様」
焼酎のラミィ水割を飲んでいると、ミオちゃんが来た。
「すごいですね」
畳の部屋を借りているので、そこらで転がったり歌ったり踊ったりと部屋は賑やかで仕方ない。
ま、この騒がしさは自分にしか聞こえないんだけど。
「ま、なかなかこうやって1ヶ所にうち達が集まる事ないからねぇ」
仲間の光景ににこにこ笑顔で見ているミオちゃん。
とても嬉しそうだ。
「それより、次の目的に決めた?」
ミオちゃんは少し真剣な口調で聞いてくる。
「いえ、まだです。
それに今回第X世代が出てきてないのが気になってて」
「あ、それなら白上達が戦って逃げてったよぉ」
お酒の瓶を片手にふらふらしながらこっちに来るフブキちゃん。
「え?
戦ったんですか?」
「ふぅん、戦ったぁ~
そいでね!逃げてったぁ~」
なんか口調も変になってるけどフブキちゃん大丈夫か?
「こら~白上フブキぃ~まつりの相手せずになにしとんじゃぁ~」
横から勢いよくタックルをするまつりちゃん。
「うわっと」
フブキちゃんはそれをなんとか倒れず受け止める。
「もう、まつりちゃん危ないって」
「え、すいませんさっきの話ですけど、戦ったんですか?」
「うん、キミ達が戦ってる時にね」
「ん?何がぁ?」
まつりちゃんが不思議そうな顔をする。
「ん?スターズフォーに合流しようとしてた自称後輩」
「ああ、あの子かぁ。
倒した倒した」
「いや、逃げたでしょう」
「ん?
ん、逃げた逃げた」
なんか出来上がってるなぁ、まつりちゃん。
「という事はしばらくは大丈夫かな?」
話を聞いていたミオちゃんが言った。
確かにスターズフォーを倒し自分もダメージを食らっているならしばらくは出てこないだろう。
「そうですね」
ミオちゃんの意見に俺も賛成だった。
「じゃ、次はどうするかですね」
「ああ、そうだ。
どうしてこんな事するか聞いたんだけど」
フブキちゃんはまつりちゃんに抱きつかれながらその場に座る。
「この世界を楽しむ為って言ってたよ。
それに母親も」
「母親?」
「という事はやっぱり彼女達の後ろに黒幕がいるって事になるね」
フブキちゃんの話を聴きながらミオちゃんが言う。
「そして、母親は世界の答えが自分達のところに来るのを楽しみにしてるとも言ってた」
世界の答え。
確かミオちゃんから聞いた事がある。
でも、もっと前にログイン中に誰かが俺に言ってた気がするんだ。
俺はそれをミオちゃんに伝えた。
「なるほどね。
それじゃ、その母親と呼ばれる黒幕はもうキミに目をつけてたのかもしれないね」
「ミオ~」
酔っ払ったあやめちゃんがミオちゃんの膝に抱きついてくる。
「あ~はいはい」
それを優しく受け止め頭を撫でるミオちゃん。
ママだなぁ。
「という事はやっぱりキミが行くまで相手は大きく動かないって事で間違いないと思う。
ただ、キミが来るまでモンスターは育て続けるから遅ければスターズフォー以上の存在になるかもしれない」
「時間はあるけどそこまで猶予はないって事ですね」
「そうなるね」
俺の言葉に頷くミオちゃん。
「ミオちゃん、各世界でプレイヤーのリスポーン回数って分かりますか?」
「ん、ちょっと待ってね」
ミオちゃんは何やら空中で指をタップする。
「そうね、だいたいで良ければ」
「それじゃ、この世界以外で多い順にお願いします」
「分かったわ。
えっと【バーチャル】【ファンタジー】【ふぉーす】の順に多いわね」
「裏世界は後4つですよね?
この3つの世界以外にも世界はあるんですか?」
「ああ、【ファンタジー】に裏世界の入り口が2つあるの」
「そうなんですね」
俺はミオちゃんからもらった情報を元に考える。
そして、答えを出す。
「俺、次は【バーチャル】の裏世界に行こうと思います」
「どうして?」
俺の答えにミオちゃんが理由を聞いてくる。
「それはリスポーンの数です。
単純に冒険中にやられたって事もあるかもしれませんが、もしそれがスターズフォーにやられたのなら、多い方が次の段階に近いかもしれません」
「確かにそうね。
分かったわ。
次は【バーチャル】の裏世界【樹海】に向かうのね」
「【樹海】」
「そう、その名の通り広大な森で出来てる世界よ。
モンスターは突然襲ってくる感じだから注意して。
どちらかというとサバイバルゲームみたいな場所ね。
基本【樹海】ではお店とかはないから現地でアイテムを採取したり合成していくしかない。
ちなみに【樹海】に入ると簡単な合成は出来るように【樹海】専用の合成スキルが付与されるわ」
「へぇ、なんか裏世界ってそれぞれ違ったゲームシステムになってる感じなんですね」
「まぁね、それがこの【ホロライブワールド】の売りでもあるわ」
「よし、次の目的地も決まったし、今日は飲むか」
俺は一気にグラスをあける。
「そうね、今日くらいはゆっくりしましょう」
ミオちゃんも笑う。
「ん?何か良いことあった?」
みこちゃんがにこにこ笑顔でこっちに来た。
「いえ、今から騒ぐぞぉ~って言ってました」
俺の言葉を聞いて笑うミオちゃん。
「お~し、ならみこが相手してあげる」
とみこちゃんが空いたグラスに何かを入れてくる。
「これなんですか?」
「ん?これ?水、水」
いやどう見ても雪夜月って書かれてますけど?
「それでは、みなさん、今回無事に勝利したという事で乾杯をしたいと思います」
みこちゃんが前に出てグラスを持つ。
その声を聞いてホロメン達もそれぞれの飲み物が入ったグラスを持つ。
「それでは、かんぴゃ~い」
噛んだ。
噛んだな。
と心に思いながらみんなグラスを掲げ『かんぱ~い』と叫ぶ。
まだまだ、祝勝会は終わりそうになかった。
俺は【鬼岩城】の宿でログインした。
祝勝会の後、俺はホロメンの人達と別れこの宿でログアウトしたのだ。
ああ、昨日は飲みすぎた。
少しバッドステータスが残ってる。
ま、時間経過と共に消えるバッドステータスだけど。
さて、行こうか。
俺は準備をして宿を出た。
あの祝勝会の時にミオちゃんから【バーチャル】の裏世界【樹海】に行く為の条件は聞いた。
【樹海】には必ず6人以上のパーティーで挑む事。
そのパーティーにNPCを含んでも構わないが、そのNPCはある一定以上の力を持っている必要がある。
入り口は第2の町から東に進むとある神殿。
そこであるモンスターを倒す事が出来たら入り口が開くと言う事だ。
ちなみにそのモンスターはスリースターズだと言う事だった。
またもスリースターズかぁ。
ま、裏世界だもんなそれだけの実力がいるって事か。
さて、パーティーはどうするかだけど、昨日その事でミオちゃんに聞いたら、その問題はもう解決してるって言ってたな。
たぶん、今回同行してくれるホロメンで6人以上になるって事か。
俺は【鬼岩城】の入り口の鬼の門の前に来る。
そして、ゆっくりと表世界【ゲーマーズ】への扉を開く。
まずはGMバイクで【バーチャル】の第2の町に行ってみるか。
そこで今回の裏世界への同行人が1人俺を待ってるって言ってたな。
門を出るとそこは鬼生門広場だった。
突然広場に現れた俺を不思議そうに見る人もいたけど、俺はささっとGMバイクのところに行った。
そして、バイクにまたがる。
これで俺の姿は誰にも見えないはず。
俺はGMバイクを起動する。
まずは【バーチャル】だけど世界の壁に行けばいいのかな?
そう思いふとGMバイクのハンドルの真ん中の画面を見ると、世界間移動と書かれた項目がある。
まさか?
俺はその項目を押した。
すると、各世界の町の場所が表示される。
【バーチャル】の第2の町を選択。
するとゆっくりとバイクが宙に浮かび上がる。
そして、バイクの前にワープホールが。
バイクはそのワープホールに向かって走り出した。
思わず目をつぶってしまった。
バシュンと音がしてゆっくりと目を開ける。
眼下には見た事ある建物があった。
【学園】だ。
まじかぁ、どれだけ優秀なんだGMバイク。
俺はそのままバイクを町の東側へと走らせた。
東側へ向かう為の門が見える。
あそこかな?
俺はゆっくりと下降して門の近くにバイクを停めた。
見た感じ誰もいないけど?
俺はゆっくりと門をくぐる。
すると「あ、ちょっとそこのキミ」と呼び止められた。
声をかけられた方を見ると門に寄りかかる1人の人物が。
フード付きのマントを着け誰だか分からないようにしてるけど。
「お久しぶりです、すいちゃん」
その言葉にフードの人は驚いた後、ため息をつく。
そして、こちらに近づいてきてフードを取った。
中から綺麗な青色の髪の毛。
そして、整った顔にきりっとした目がこちらを見る。
「ちょっとは驚いてよね」
そう言って星街すいせいはにこっと笑った。
「普通は誰だ!とか言うものよ」
少し呆れた顔ですいちゃんが言う。
いやぁ、さすがに3回目となると。
ま、1回はぼたんちゃんだけど。
「もしかして、今回付いきてくれるのってすいちゃん?」
「そ、正解。
どう?心強いでしょ」
確かに前に少しだけ一緒に旅した時はめちゃくちゃ楽だった。
敵を一撃で倒していってたし。
「はい、めちゃくちゃ心強いです」
「素直でよろしい。
あとね、4人ほど同行するホロメンがいるんだけど、先に神殿にいるわ」
「あと、4人もですか?」
今回も大所帯になりそうだな。
「それで、ここからその神殿まで遠いんですか?」
「う~ん、遠いけどキミのあれがあるでしょ?」
すいちゃんは俺が乗って来たGMバイクを指差す。
もしかして?
「タンデムで行こう」と笑顔のすいちゃん。
やっぱり。
「乗りたかったんですか?」
俺が乗った後、後ろに乗るすいちゃん。
「まぁね」
自分のお尻側を持つすいちゃん。
さすがに腕を回してはくれないかぁ。
「残念だけどねぇ」
「いや、心の声に答えないでください。
じゃ、行きますね」
俺はそう言ってバイクを走らせた。
向かう先は裏世界【樹海】の入り口がある神殿だ。
「あそこでいいんですか?」
途中から空中へと上がり空を駆けるバイク。
すいちゃんは後ろでめちゃくちゃ喜んでいた。
「うん、そうあれだよ」
確かに森の中に巨大な石像と舞台のようなものが見える。
ん?
誰かが神殿の前で手を降ってる。
俺はゆっくりとバイクを降ろした。
「来た来た~」
「お疲れ様~」
降りた俺達に元気に駆け寄ってくる4人のホロメン。
「あ、ねぽらぼのみなさん」
そう、第五世代組の揃い踏みだ。
「久しぶりだね」と笑顔でぼたんちゃんが挨拶してくれる。
「あれから無事に生きてたみたいだね」とポルカちゃん。
「ねねはこの前会ったよね」と何故か威張るねねちゃん。
「雪民さん元気だった?」とまだ雪民じゃないんですが笑顔で声をかけてくれるラミィちゃん。
「それじゃ、今回はすいちゃんとねぽらぼのみんなが付いてきてくれるんですね」
俺の言葉に5人は頷いた。
これはめちゃくちゃ心強い。
「まずは裏世界に行く為の門を開けないとね」
そう言って神殿の方へ歩くすいちゃん。
俺達も後に続く。
「でも、行く為にはスリースターズのモンスターを倒さないと」
確かミオちゃんはそう言っていた。
「あいつね」
すいちゃんが指差したのは舞台の奥にいる巨大な石像。
剣と盾を持つ剣士のような石像だ。
確かに額に星が3つある。
「あの大きさならどうにかなるよ」
そう言って舞台に上がるすいちゃん。
俺達も続こうとするとすいちゃんに止められる。
「危ないから今は観客に徹しなさい」
すいちゃんが舞台に上がってしばらくすると巨人がゆっくりと動き出した。
「すいちゃん!」
俺は奥を指差して叫ぶ。
「コールにはまだ早いよ」
すいちゃんは余裕な笑顔で巨人の方に向く。
そして、右手を上げた。
「ここからが私のオンステージだ!」
パチンと指を鳴らしこちらを向くすいちゃん。
そして、彼女は歌い始める。
それは情熱的な歌。
透き通るような声で。
でも、存在感のある歌声が辺りに響く。
そして、空から絶え間なく隕石が巨人に降り注いだ。
「うわぁ~」
ねねちゃんがその光景を見て口をポカンと開ける。
「すごいねぇ」
ラミィちゃんもポツリと呟く。
「なんか後ろがすごすぎて歌に集中できないんですけど」とポルカちゃん。
それは言えてる。
「なんかバックダンサーみたいだね」とぼたんちゃん。
隕石に撃たれて怯む巨人は確かに踊ってるようだった。
歌は続く。
そして、隕石も降り続ける。
巨人の体は隕石に削られ砕かれ徐々にボロボロになっていく。
そして、すいちゃんの歌が終わった。
ゆっくりと巨人もその場に崩れ落ちた。
「スリースターズなんですよね」
俺はポツリと呟いた。
「ま、【ホロライブワールド】最強の歌姫の一角だからね」とポルカちゃん。
「最強って歌姫がって事じゃなかったんですね」
「ま、歌姫でも最強なのは確かなんだけどね」と俺の呟きに答えてくれるラミィちゃん。
「ほら、扉が現れたよ」
すいちゃんが舞台の上で手招きをする。
「は~い」
元気に返事をしてすいちゃんの方に向かうねねちゃん。
「ま、深く考えないようにしよっか」とぼたんちゃんは舞台の方へ歩きながら言った。
ま、確かにその通りだ。
彼女は味方だしな。
俺はそう自分に言い聞かせながら、この人だけは怒らせないようにしようと誓い舞台に上がる。
舞台の奥には、巨人の持っていた盾が舞台に突き刺さるように立っていた。
「さ、行くよ」
すいちゃんの掛け声に俺達は頷く。
そして、巨人の盾は真ん中で2つに割れ扉のように開いた。
さぁ、次の裏世界は【樹海】だ。
どんなスターズフォーが、第X世代が待っているのか。
どちらにせよ、この戦いに負けるわけにはいかない。
俺はもう一度気合いを入れ直しホロメン達と扉をくぐるのだった。
次は【バーチャル】の裏世界【樹海】です。
果たしてあなた達はスターズフォーを倒す事ができるのか?
ではまた次回に