果たして彼女はそこで何を感じたのか?
頑張ってね、冒険者くん、第三世代組。
森に1人残ったロボ子はそう思いながら6人を見送った。
「さて、そろそろ姿見せてくれてもいいんじゃないかな?
それとも待ってるボクを置いて、あの6人を追いかける?」
ロボ子はその場で誰かに声をかけた。
「まさか、大先輩が待ってくれているのに置いていくなんてしませんわ」
ロボ子から少し離れた木の影から1人の女性が姿を表す。
その服装は露出度の高い黒いドレスだった。
誰もがその美貌に誘惑されそうなプロポーションを持ち、誰もが騙されそうになる小悪魔な笑顔を浮かべていた。
「はじめまして、ロボ子先輩。
美色アスモといいます」
アスモは丁寧に頭を下げてロボ子に挨拶する。
「こちらこそ、よろしくね。
アスモちゃん」
ロボ子も笑顔で挨拶を返した。
「しかし、よく私の存在に気がつきましたね」
「そりゃ、ボクは高性能だからね」
と笑顔で言うロボ子。
「確かにそのようですね。
しかし、あと1人私に気がついていた人もいるみたいでしたけど?」
アスモも笑顔を絶やさず話しかける。
「ああ、フレアね。
彼女は自分のスキルで気がついたみたい」
「スキルですか、それは後で戦うのに厄介ですね」
「ん?
大丈夫。
彼女達と戦う事はもうないから」
2人とも笑顔で向き合ったままだ。
「確かにまずは先輩を倒さないといけないですからね」
「そうね、あなたを止めるのが今のボクの役割だからね」
笑顔だがお互い引かない2人は、もう臨戦態勢に入っていた。
「ああ、あと1つだけお聞きしたいのですけど」
「なに?」
「あなた達と戦った私の仲間の2人が戻ってこないんですが知りませんか?」
「知らない。
ボクの知りうる情報の中には該当がない」
とロボ子は即答する。
「そうですか、分かりました。
あなた達を倒した後、ゆっくりと探す事にします」
そう言ってアスモは胸元から1枚のカードを取り出した。
そのカードで片目を隠すアスモ。
ロボ子はそれをじっと見守っている。
「優しいのですね。
待ってくれるなんて」
「本気で負けないと納得できないでしょ」
「確かに」
ロボ子の言葉に笑ってアスモはカードの力を解放する。
ガードがどす黒い気に変わりアスモを包み込む。
そして、姿の変わったアスモがそこに立っていた。
豊満な体に張り付くような服。
胸元や足は露出され、見るものを魅力する為だけのような衣装だった。
両肩には牛と羊の頭部の骨のようなショルダーガードが着いていた。
背中の小さな悪魔の羽も大きくなっている。
「さぁ、お待たせしました。
始めましょうか?」
アスモはそう言ってロボ子に手の平を向ける。
それを見てロボ子は真剣な顔で両足を少し開いた。
先程から多数の爆発が起き、木々がなぎ倒され、森は姿を変えていく。
アスモは多数の魔方陣から爆発魔法をロボ子に放ち続けていた。
ロボ子はその魔法を時には回避、時には素手で弾き飛ばし直撃は避けている。
いつしかアスモからは笑みが消え、片手で放っていた魔法も両手になって放っている。
かなりの数を同時に放っているのにも関わらず未だに決定打を与えられていない事実にアスモはロボ子に恐れを抱いていた。
普通ならこの数ならいくつは当たっていいはずだ。
それに魔法、爆発魔法を素手で弾き飛ばすなんて普通じゃない。
爆発魔法は何かに当たれば爆発する。
それを爆発させずに弾き飛ばすなんて。
ふと、爆音の中、爆風によって何かが聞こえてくる。
これは歌?
そう、アスモはさっきまで気づかなかったが、今歌が聞こえてきているのだ。
「オリジナル世代のスキル!」
アスモは魔法を止め、ロボ子の周りに地雷の魔法を置く。
ロボ子もそれを察知しその場で止まった。
「やはり歌ってたんですね」
爆音が止み、その歌声は今ははっきりとロボ子から聞こえる。
「もうちょっと歌いたかったんだけど」
歌を止め、ロボ子は笑顔でそういった。
「オリジナル世代のスキル【歌】
歌に力を持たせて対象に力をおよぼすスキル。
その力で回避してたんですね」
「ん~ちょっと違うけどね。
回避はボクの素の力だよ。
【歌】で魔法に触れても影響を出させないようにしてただけ」
なるほど、それで爆発魔法を素手で弾いてたんですね。
アスモは納得する。
しかし、同時にアスモの魔法がロボ子には通じない事も分かる。
魔法を自分に影響させない【歌】があるかぎり魔法は聞かない。
なら、アスモはある魔法をロボ子に放つ。
ロボ子はその速さに一瞬動きが遅れた。
魔法がロボ子の顔に命中した。
「?」
ロボ子は何かを喋ろうとしたが声は聞こえない。
「魔法を使って先輩の顔の周りを真空状態にしました。
ロボットの先輩はそれで死ぬ事はないでしょうが、もう歌えないでしょう」
アスモはそう言って両手を構える。
アスモの周りに多数の魔方陣が現れた。
火の魔法、氷の魔法、雷の魔法、土の魔法、風の魔法。
アスモが使える全種類の属性魔法を放つつもりだ。
ロボ子はその場から動かない。
いや、動けない。
地雷型の魔法が足元に置かれているからだ。
「これで、私の勝ちです」
アスモは全ての属性魔法をロボ子に放った。
魔法はロボ子に当たりその属性から反発したり、融合したりし爆発や消滅を繰り返す。
周りにあった地雷魔法もそれに巻き込まれ誘爆した。
全ての魔法が終わり、その場には誰も立っていなかった。
そう普通なら。
そこにはさっきと何も変わらない姿でロボ子が立ってアスモを見ていた。
「な、なぜ…」
その姿にアスモは恐怖する。
全てをぶつけた。
【歌】も封じた。
それなのになぜ無傷で立っていられる?
ふとアスモはロボ子の口元を見た。
ロボ子は何かを喋っているようだった。
いや、喋るスピードの口の動きじゃないあれは歌っている?
徐々に聞こえないはずの歌が聞こえてくる。
それは優しく誰かを思い包み込むような歌。
そして、ロボ子の顔の周りの真空魔法が消えた。
「ふぅ、やっと声が通る」
ロボ子は疲れたように言った。
「なぜ?
【歌】は封じたはず」
「ボク達オリジナル世代のスキルは歌が誰かに聞こえなくてもいいんだよ。
聞こえなくても伝わらなくても誰かの為に歌う、その心がボク達のスキル発動の条件だから。
ま、ボクはロボットだけど心はここにあるからね」
そう言って胸に手を当てるロボ子。
「なぜ最強のスキルか分かりましたよ」
そう言ってアスモは両手を上げる。
「降参かな?」
ロボ子はそれを見て聞いた。
「はい、私の魔法が一切通じないなら私の負けです。
私は他のメンバーのような接近戦は得意ではないので」
アスモは素直にそう伝えた。
ロボ子はそんなアスモをじっと見る。
「嘘は言ってないみたいだね。
わかった、これで終わりにするよ。
ボクも降参した相手に攻撃するような事はしたくないからね」
「なら、吾輩が貰おうかな」
突如アスモの背後にワープホールが開き、巨大な手がアスモを掴む。
「え?」
「な、なに?」
アスモはそのままワープホールへとひきづりこまれた。
ロボ子も一瞬の出来事で動けなかった。
ロボ子はしばらく辺りを警戒する。
しかし、何も起こらない。
アスモとの戦闘の後、すぐに冒険者さん達の方に向かおうと思っていたロボ子だったが、そうもいかないようだ。
ロボ子は今戦っているだろう広場の方を見る。
彼等なら大丈夫。
そう、願いながらロボ子はうっすらと残るワープホールの痕跡を追う事にした。
自分達の知らない裏で何かが確実に起きようとしている。
ロボ子はそれを確かめる為に1人追跡を始めるのだった。
ロボ子さんのお話でした。
オリジナル世代の圧倒的な力。
この世界のチート級のまだ上をいくチートの方でした。
さて、ロボ子さんの戦闘に割り込んできた手は一体誰だったのか。
そして、第X世代達以外に裏で何かを企む集団とは?
次回はキングヒュドラ戦です。
お楽しみに