ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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10.ハンサムな男子生徒

人生の中でこんなに楽しい日々はなかったとエルファバは実感していた。

 

あのトロールの一件で、3人はいい友人となりエルファバは板挟みに悩む必要もなくなったのだ。

それに、みんなエルファバの"力"は杖からきたものだと信じて疑っていなかった。ハーマイオニーはエルファバが3年生で習う瞬間冷凍呪文をやったと思っており、コツを何度も聞いてきた。

 

「でもねエルファバ、私知ってるのよ。あなたが勉強できるのに必死で隠そうとしてるの。」

 

もう大分体力がついてきたエルファバは普通の生徒と同じようなスピードで教室移動が可能になっていた。ハーマイオニーは一緒に魔法薬学への移動中にキッパリと言う。最初はゼエゼエ言いながら歩いていた教室移動もそこまで疲れなくなってきたのはありがたい。

 

「私が点数取るからいいと思ってるのかもしれないけど、そんなの認めないわ。ちゃんと発言しないと授業態度が悪いって見られるわよ?これからはちゃんと発言しなさい!」

 

(私に選択肢はないの?)

 

鼻息荒く廊下を歩く友人にそれを聞く勇気はなかった。

 

その一方で、ハーマイオニーの"エルファバ改造作戦"は上々だ。この間も、図書室でパッフルパフ生に話しかけられるエルファバを見て、仕事のやりがいを感じたハーマイオニーだった。

 

が、これには理由があった。

 

「やあ。」

「!?」

 

自分より高いところへ本を戻そうとして背伸びしていたエルファバは条件反射で中国映画に出てきそうなファイティングポーズをする。

 

「ははっ、そんなに怖がらないでよ。僕は初授業に遅れそうになった君を救った恩人だよ?」

 

本貸して、と言って男はエルファバの持ってる本を棚に戻してくれた。

エルファバはといえば、脳内の"自分の知っている男性リスト"を必死でめくってるところだ。

 

ハリー、ロン、赤毛双子、リー、マルフォイ、その仲間たち...

 

ピーピーピー。思い出しました。

 

運搬者。身元不詳。

 

「あーハーイ。えっと...」

「セドリック。セドリック・ディゴリーだ。君はエルファバ・スミスだろ?僕の友達がファンでね。」

 

(ファン?)

セドリックはかまわず続ける。

 

「君のこと、心配してたんだ。ちゃんと行けてるかなって。オシャレしてるし、大丈夫そうだね。」

 

本日のエルファバの髪型は頭のてっぺんでお団子された王冠風ヘアだ。それを面白そうにセドリックはツンツンと触る。

 

「友達がこのままにしとけって言うの。」

「嫌なのかい?」

「みんな私を見るんだもの。」

 

セドリックが口を開きかけたとき、マダム・ビンスの大きな咳払いが聞こえた。

 

「そろそろ静かにしないと怒られちゃうね。」

 

セドリックはエルファバは届きそうもない場所からヒョイっと本を取り、笑いかける。

 

「じゃあね。」

 

エルファバは無表情で小さく手を振る。

 

(その調子よエルファバ!)

 

この事情を知らないハーマイオニーは、セドリックが初対面のエルファバに話しかけ、しっかりそれに答えているように見えた。エルファバの春への第一歩だと喜んだ。

 

残念ながらはどちらにもハーマイオニーが思うような感情はない。

 

そうこうしてるうちに11月になり、ホグワーツ周辺が凍り、同時に友人のハリーは日に日にソワソワしだしている。

 

理由は単純明快、彼のクィディッチのデビュー戦が近づいているからだ。

ハリーが新しいシーカーであることは"極秘"であったはずなのだが、なぜかみんな知っていた。(エルファバはあの赤毛双子が漏らしたのだろうと思っている。)それもあってハリーはプレッシャーを感じているようだった。

 

デビュー戦前日、凍りつくような寒さに包まれた中庭に4人で出た。

 

「エルファバ、寒くないの?」

 

マフラーも手袋もつけず、普通の制服姿で平然としているエルファバにロンは唇を震わせて言う。

 

「うん、平気。」

 

(私そのものが氷みたいなもんだし。)

 

エルファバは自分の中で言葉を完結させた。

 

ハーマイオニーはブルーの火を空き瓶の中に灯し、みんなで体を寄せ合って温まった。

 

が。

 

「まずい、スネイプだ!」

 

ロンが小さく早口で言った瞬間、みんな考えることは同じだった。

多分火を使ってはいけないんだ。

 

ぴったりとみんなでくっつくとこにより、火を隠すことはできたみたいだ。だがここで諦めないのがスネイプ教授だ。

 

「ポッター、図書館の本を校外に持ち出してはならん。よこしなさい。」

 

きっちりグリフィンドールから減点して、教授は去っていく。

 

(脚引きずってる...?)

 

エルファバは不自然な歩き方の教授を訝しげに見た。

 

「脚どうしたんだろう?」

 

一通りスネイプ教授の文句を言った後、ハリーは呟いた。

 

「さあな、でもものすごく痛いといいよな。」

 

簡単な傷ならスネイプ教授は薬やら呪文やらで治せるはずよね。彼は先生なのだから。

 

(禁じられた森でも行ったのかしら?)

 

エルファバの疑問の解決の糸口が見えたのはその夜の談話室でのことだった。職員室に本を取りに行ったハリーが疲れた顔で、だが自信に満ちた声で3人に告げた。

 

「ハロウィンの日にトロールを校内に入れたのはスネイプだ。あの三頭犬が守ってるものを狙うためにみんなの注意を引いたんだ。箒をかけてもいい。」

 

それを真っ先に否定したのはハーマイオニーだった。

 

「確かに意地悪だけど、ダンブルドアが守るものを盗む人じゃないわ。」

 

ロンはその意見に対して手厳しい。

 

「教授は聖人なんかじゃないよハーマイオニー。僕はハリーの意見に賛成だ。問題はあの犬が何を守ってるかだよな。」

 

3人は意見を求めるようにエルファバを見た。

 

(え?私?)

 

「エルファバはどう思う?」

 

ロンは急かすように言う。談話室は騒がしいため、一層耳をすませてエルファバの意見を聞こうとする3人にエルファバに選択肢はなかった。

 

「誰かがトロールを注意を引きつけるために入れたっていうのは正しいと思うわ。でも...」

 

エルファバはローブのポケット内にある水色の薬を思い浮かべた。もちろんそれがなんなのか3人は知ってるが、ハリーとロンは毒かもしれないと疑っているのだ。しかしエルファバはそうは思わない。

 

「それがスネイプ教授だという確証はないわ。」

 

ハーマイオニーはその通りだと頷き、ハリーとロンは小さく呻き声を上げる。

 

「ね?言ったでしょ?だからあなたたち...」

 

ハーマイオニーがそう言いかけた時、スイーとフクロウが教科書の上に乗っかってきた。

 

「ありがとう。」

 

エルファバは手紙を解き、フクロウを撫でる。

誰からかは明白だ。エルファバが待ち焦がれてた人からだ。

 

「エルファバのお父さんから?」

「うん。」

 

3人には母親の謎についてはすでに教えていた。もちろん"力"については伏せてあったが、自分の知らない母親がいるかもしれないというドラマのような展開に、3人はとても興味を持っていた。ハーマイオニーはエルファバと一緒に図書館で調べてくれたし、ロンも親に手紙で聞いてくれた。特にハリーに関しては自身も両親を知らないこともあり、エルファバの本当の母親を知りたいという気持ちも痛いほど分かる。

 

期待に胸を膨らませ、手紙を開封したエルファバだったが読んでいくうちにそれは萎んでいった。

 

ーーーーーーーーー

エルフィー

お前が学校生活を楽しんでるようで安心した。

エディがお土産を欲しがってるから、今度"予言者"にのってる通販にでも何か頼んで送ってやってくれ。

最近、ハリー・ポッターがお前と同じ寮だって聞いたよ。お父さんは彼の両親と知り合いだったんで、少し気になってたんだ。魔法界じゃかなり有名人だし、多分顔ぐらいは知ってるだろう。今度話してみてくれ、どんな子か知りたい。

 

くれぐれも"力"を使わないように。

 

父より

ーーーーーーーーーー

エルファバはショックを受けた。質問したのにそれに対して無視されたのだ。

 

(まるで、お母さんみたい…。)

 

「なんて書いてあった?」

「...ハリーがどんな子か教えろって。」

「それだけ?」

 

ロンは素っ頓狂な声を上げた。エルファバは一気に疲れて椅子に全体重を委ねる。

 

「あなたのお父様は、きっとこの内容について話したくないのね。」

 

ハーマイオニーはエルファバの小さな頭を撫でる。それは気持ちよくて、やめないでほしいと思った。

 

「でもさ、そうだとしても無視するって家族でもひどくないか?言いたくないなら言いたくないって言えばいいのに。」

「そもそも手紙受け取ってないのかも...。」

 

ロンとハリーは思い思いの意見を口にした。

 

「私、聞いた後は手紙出してないわ...」

 

三頭犬が隠している物、スネイプが一体何者なのか、エルファバの母親、なぜ父親は隠そうとするのか。

 

11歳の少年少女が考えるにはあまりにも大きな問題で、あまりにも多すぎて。

 

あまりにも深入りしすぎていた。

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