ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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11.クイディッチ

次の日は待ちに待ったクィディッチだった。大広間のソワソワと初試合のグリフィンドールとスリザリン、どっちが勝つかを、更に言えば最年少シーカーのハリー・ポッターが一体どんな活躍をするのかという話題で話が持ちきりだった。

 

同級生の晴れ舞台に何かをしなくては!

 

そう思い立った1年生たちはハリーが出てった談話室でいそいそと旗を作っている。

 

「ディーン、絵描くの上手いのね!」

 

最近ずいぶんと輪に溶け込んできたハーマイオニーは言う。ディーンは金色の絵の具が飛び散った顔でニッコリ笑いかけた。

 

「ありがとう!仕上げよろしくね。」

「任せて!」

 

最後にちょっと複雑な魔法をかけて絵を光らせるのは優等生ハーマイオニーの役目だ。もっとも、その呪文を使うことを提案したのは男子の集団が怖くて椅子の陰に隠れている小さな親友だが。

 

(エルファバ小動物みたいね。)

(白いリス?)

(小動物だ...)

 

口には出さないものの、その様子を見て考えることは一緒だった。

 

(ハリーがサハラ砂漠に行っちゃわないといいな...。)

 

クィディッチの今昔に出てきた審判たちが突如として消えたのち、サハラ砂漠で発見された話はハリーを思うエルファバの軽いトラウマとなっていた。

 

「エルファバもこっちきて手伝って。スキャバーズがかじった大きな穴塞がなきゃ。君なら出来るだろ?」

 

ハーマイオニー...私が修復呪文できることロンに言ったわね。

 

素知らぬ顔をして絵に呪文をかける友人をエルファバは見てから(本人は睨んだつもりだが、あまり効果はない。普段から人を睨んだような顔をしているので周辺の人々は耐性がついているからだ。)杖を取り出す。

 

「前から思ってたけど、君の杖って面白いね。」

「そう?」

 

エルファバの隠れファンであるシェーマスは興味深そうにクリーム色の杖を見つめる。

 

「それってオリバンダーのところで買ったの?」

「違うわ。」

 

そう言ったきり、エルファバはシェーマスを見ずに穴の修復に取り掛かった。

 

確かに他の人の杖は茶色や黒だったりするので、エルファバの杖は少し珍しいものかもしれない。それに自分で買ったものではなく、父親からもらったものだ。これは、母親のものなのではないかという推測まで立ててるくらいだ。

話を広げるのにはなかなかいい作戦だったが、相手が悪かった。基本無愛想なのに加え男の子を大の苦手としているエルファバ・スミスだ。

 

ロンはうなだれたシェーマスの肩を叩き、改造作戦実行中のハーマイオニーは頭を抱える。

 

頑張れシェーマス、そして気づけエルファバ。

 

周辺の人々は誰もがそう思った。

 

なんだかんだいろいろあったものの、みんな最上段を陣取ってご機嫌だった。ハリーが教授からもらった最新の箒で宙を舞っている。

 

「すっげーハリー!!」

「かっけー!!」

「ハリー頑張って!!」

 

みんな出せる限りの声を張って声援を送る。ハリーに聞こえてるかは分からなかったが、旗を見てハリーは大きく手を降ってきた。その際に少しバランスを崩す。

 

「あっ!」

「エルファバ、大丈夫だって。ハリーは最年少シーカーだぜ?そんなんで落ちないって。ほら!」

 

さっきから箒に乗った人が落ちないか不安で不安で仕方がないエルファバにロンは笑う。ハリーは素早く箒を掴み、体勢を整えていた。

 

「そうね、そうよね...」

 

(落ち着いて...落ち着いて...)

 

高まる不安を抑えながら、"エルファバいじり"が大好きなジョーダンの実況に聞き入る。

 

何かと気にかけていつもご飯を皿に大盛りに乗せてくれるアンジェリーナやよく髪型を褒めてくれるアリシア。クアッフルを持ちながら蝶のように飛び、果敢にぶつかっていく姿はまるで女剣士のようだ。

 

「あわっ!あわわわ...うわっ!」

 

(すっごい怖いわ。こんなこと私にはできるかしら?みんなすっごい勇敢だわ、拒否権とかないのかな。嫌なことでも自分のベストをつくすってすごい大変よね。)

 

キャプテンのオリバー・ウッドの印象があまりにも強すぎるので、他のメンバーは無理矢理チームに入れさせられたとエルファバは思ってる。

 

「グリフィンドール10点!!」

 

その瞬間、グリフィンドール生は大歓声を上げ、ハーマイオニーはエルファバに抱きついた。その栗色の髪を透かして、大男が立っていることに気づく。

 

「ハグリッド。」

「よおエルファバ!ちょいと詰めてくれや。」

 

3人は詰めてハグリッドのために席を空ける。

 

「スニッチはまだ現れんか?」

「まだだよ。今のところハリーは仕事無しって感じ。」

 

ハリーは激戦からは離れ、はるか上空で目を凝らしていた。ブラッチャーという暴れ玉がハリーめがけて飛んできたのを赤毛双子のどちらか(判別不能)が叩き飛ばす。

 

「あわわわ...」

 

(クィディッチメンバーはグリフィンドールであろうとスリザリンであろうと勇敢な戦士たちに見えてくるわ。赤毛双子がこれからチビって言っても許しちゃうかも...。)

 

いや、やっぱりそれは許さない。

 

会場の空気が一変した。ハリーの出番がきたのだ。スニッチがチェーサーの耳をかすめた瞬間、ハリーは急降下してそれめがけて弾丸のように飛ぶ。

 

「わわわわ!」

 

危うくスリザリンのシーカーとぶつかりそうになる。

 

「さっきからそれしか言ってないね。」

 

楽しいでいるというよりかは、怖がっている様子のエルファバにロンは声をかける。

 

「だって心配なんだも...ああっ!?」

 

パキパキパキパキ!!

 

スリザリンのキャプテン、マーカス・フリントがハリーの邪魔をした。ハリーは箒から突き落とされるところを持ち前の反射神経でなんとかしがみつく。

 

グリフィンドールから怒号が飛び交う。普段から真面目なハーマイオニーですら髪を振り乱し、それがネビルに当たってることも気にせず怒っている。

 

「ハリー落ちるとこだったわ!」

 

エルファバもこれまで発したことのないくらいの大声で怒る。普段ならこのことにみんなかなり衝撃を受けるだろうが、今それを気にかけてる者は誰もいない。

 

「ルールを変えるべきだわい。」

 

隣にいるハグリッドに同意の意思を示すためにエルファバは振り向き、ギョッとした。

ハグリッドの太い腕を氷が覆っていた。それは煙を象ったような形をしており、尖った先端はウネウネしている。幸い、分厚いコートの上なのでハグリッドは気づいていない。

 

なんで...?

 

理由は単純だった。ハリーが箒から落ちかけた際、ハグリッドのコートの裾を掴んでいたのだ。

 

どうしよう?どうしよう?このままじゃ、"力"がばれちゃう...!

 

エルファバは必死に頭を働かせた。答えは明快だったが出すのに少し時間がかかった。なんといってもこれを知った日はそれほど前ではないのだから。

 

ローブに手を突っ込み、白い杖を取り出す。周囲が試合に集中してるのを確認してから小声で、校長に教えてもらった呪文をつぶやいた。

 

「デフィーソロ!」

 

なんてことはない。氷は音を立てずに茶色いコートから存在を消していった。

エルファバは小さくため息をつき、安堵した。しかし問題はこれだけではなかったのだ。

 

「ハリーの箒が変だ!どうしちゃったんだろう?」

「え?」

 

上空で不自然に揺れている箒はハリーのものだった。必死で落とされないようにしがみついている友人だ。

 

「思ったとおりだわ。」

 

ハーマイオニーは確信めいた声でロンに双眼鏡を渡す。どうやら、何かを見るためにひったくったらしい。

 

「スネイプよ。箒に呪文をかけてるわ。」

 

スネイプ教授が箒に呪文を?

 

それは信じがたいことだった。ロンの双眼鏡で見ると、瞬き一つせずにハリーを凝視し、ブツブツ何かをつぶやいているスネイプがいた。

 

「考えがあるわ!!エルファバ!!」

 

ハーマイオニーはぐいっとエルファバの腕を引っ張り、走り出した。

 

「ごめんね!でもあなたの力が必要なのよ!」

 

予想通り走り出してすぐに息切れしだしたエルファバにハーマイオニーは叫ぶ。

生徒や教授たち(多分クィレル教授)に数人にぶつかっても謝りもせず、2人はスネイプがいる席まで突っ走った。

 

「エルファバ!!」

 

教職陣の席の後ろに来て早々、ハーマイオニーはゼエゼエ息を吐くエルファバに言った。

 

「教授陣の床を凍らせて!」

「...?」

「あそこよ!」

 

ハーマイオニーは人が歩いている通路を指差す。人の行き来が激しいようだった。エルファバは水色の薬を飲んでから抗議をしようと口を開くが、それは叶わない。

 

「誰かを滑らせるのよ!そうしたら気が取られるでしょう?!あなた凍結呪文できるじゃない!」

 

エルファバは動揺した。もちろんあれは凍結呪文ではないし、そもそも杖からでたものではない。エルファバの体から放出されたものだ。

 

「でっ、でも...」

「迷ってる暇はないのよ!!ハリーがスネイプに殺されちゃうかもしれないのよ!?いいの!?」

 

もちろんハリーが殺されちゃうのは嫌だわ。でもハーマイオニー...

 

『"力"を使えばお前は悪い魔女になってしまう。』

『人々はお前を気味悪がり、離れていってしまう。』

 

今度は感情に身を任せるのとは訳が違い、いろいろな考えがよぎる。トロールの時は運が良かったのだから、というより今までばれなかったことのほうが不思議だった。それはみんなの"魔法は杖なしでないと使えない"という常識が盾になってくれたんだろう。

 

(でも、目の前でそれを見られたら?ハーマイオニーだって...)

 

友人の一大事にこんなことを考える自分が嫌だった。でも数年ぶりにできた友達を失うのが辛かった。かと言ってそれを隠そうとに友達にウソつくのも嫌だった。ウソは最大の罪だといろんな本で言っていたし、それは友達を裏切るのと一緒だとも言っていた。

 

助けるのも罪、ウソをつくのも罪。

 

エルファバは友達を裏切ることを選んだ。その方が自分にとって楽だからだ。

エルファバは杖を床に向け、もう片方の手を床に添えた。

 

「&¥::(@:!!」

 

エルファバはめちゃくちゃな呪文を唱える直前に床が氷で覆われるイメージをした。

 

パキパキっ!!

 

「ああっ!?」

 

哀れな犠牲者クィレル教授だった。見事に足を取られ、座っている教職陣のいる方向へとダイブし、ドタドタドタと何かがのしかかる音と同時にいろんな感情の声が会場に響く。

 

「デフィーソロ!」

 

上手くいったとすぐに証拠を消した。

 

「ハリーの呪いが解けたわ!」

 

ハーマイオニーはエルファバを見晴らしの良い場所へと引っ張る。今やハリーの思い通りになった箒は忠実に主人に従い、行くべき場所へとハリーを連れて行った。

 

「頑張ってハリー...!」

 

スニッチとハリーの距離はどんどん縮まり...

 

金色に光る何かがフッと消えたと同時にハリーは口を押さえた。

 

「何がおこったの?ハリーはスニッチを取ったの?」

「分からないわ。」

 

みんながハリーに注目していた。吐き気を催したように口を押さえた瞬間、全てが分かった。

 

ハリーの手に握られてたのはスニッチだった。

 

「ハリー、飲み込んだんだ...」

 

ポソリとつぶやいた瞬間、グリフィンドールの歓声がグラウンド全体を包み込んだ。呆気にとられているエルファバにハーマイオニーは飛びついた。

 

「私たち勝ったのよ!!勝った!!勝った!!やったあっ!!」

 

小さい子のように飛び跳ねるハーマイオニーに不覚にも可愛いと思ってしまったエルファバだ。

 

「あなたがハリーを救ったのよ!!」

 

少し濡れた瞳でエルファバを見てハーマイオニーは叫ぶ。

その瞳にはキョトンとしたエルファバが映っていた。

 

「私にはできなかったわホント!!火でスネイプのローブ燃やして気を引くって手もあったけど!!すっごいリスクが高かったの!!誰も1年で凍結呪文を成功させたなんて思わないわ!!」

 

ホントすごい!!とハーマイオニーはまたエルファバに抱きつく。今日の談話室はお祭り騒ぎに違いない。

 

エルファバがそれを楽しめるかは疑問だった。

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