ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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12.告白

3人がマギーに話しかけるタイミングはそこから数日後の魔法薬学しかなかった。いつもエルファバと組んでいるマギーはずっと1人で作業を行っている。ハーマイオニーはユニコーンの毛を漁るマギーに近づいた。

 

「ハーイ、マギー。」

 

マギーは怪訝そうな顔をしてハーマイオニーをみた。

 

「狡猾さを重んじるスリザリンとは合わないんじゃなかったの?」 

「う、えっ、えっと…。」

 

ハーマイオニーは適当に毒ガエルを乾燥させたものの詰まった瓶を開けながら言葉を考えた。ひどい悪臭だ。

 

「わっ、私…あなたのこと誤解してたと思う…。」

「違うねグレンジャー。あんたはスミスからのヒントが欲しくてそんなこと言ってんだ。」

 

バカみたい、とマギーは席に戻ろうとした。

 

「違うわ!」

 

ハーマイオニーはマギーの腕を掴む。思いの外大きな声だったので、近くにいた生徒全員振り向いた。

 

「ハーマイオニー大丈夫かよ…。」

「人の心配をしている場合ですかなミスター・ウィーズリー?材料が全て大鍋で焦げ付いてるぞ?グリフィンドール3点減点。」

 

スネイプは意地悪く鼻を鳴らし、羊皮紙に大きくゼロを書いた。

 

「わっ、私、あなたのこと勘違いしてた。スリザリンだからマグル生まれを差別する嫌な奴だって思ってたの。でも…」

 

ハーマイオニーが言葉を考えた。ハーマイオニーがクリスマスの時にマギーになってマルフォイからいろいろ聞き出していたことは誰にも言ってはいけない。

 

「あなたも、私と同じ生まれだったことを最近知ったの。」

「へー、そりゃビックリだ。」

 

マギーは嫌味ったらしくわざと驚いてみせた。

 

「うちの母親はね、マグル生まれの魔女だ。スミスはずっと前から知ってて、うちがスリザリンから浮いてることを知っててできるだけ一緒にいたんだ。今日なんかスミスいないおかげでゴリラとチン"パンジー"に大鍋隠されたしね。てっきりあんたも知ってると思ってたけど。」

 

マギーは暴言を吐かれて怒り狂ってるミリセント・ブルストローネとパンジー・パーキンソンを鼻で笑いながら答えた。

 

「エルファバは私の前であなたの話をしなかったわ。」

「あいつらし。」

 

その口調からマギーもエルファバがいないことでひどく悲しんでることにハーマイオニーは気がついた。表に感情が出ないだけで、マギーもエルファバがいない寂しさを抱えている。マギーも自分と同じ思いをしているのだと。ハーマイオニーは頭を下げた。

 

「ごめんなさい。私はあなたを寮で差別してたわ。それはマグル生まれと純血を差別するのと同じこと。もし、これから良ければ、仲良くしてほしいわ。…エルファバのことを抜きにして。」

 

ハーマイオニーはマギーに手を差し伸べた。クラス全員がその様子を見守っていた。見守っていたという言葉は少し訂正すべきだろう。野次を飛ばそうとしたマルフォイの口はパーバティの呪いによって文字通り縫われていたし、バタバタ動いているゴリラとチン"パンジー"はグリフィンドール男子生徒たち4人に取り押さえられていた。

 

「いいよ。仲良くなってあげる。」

 

パシっとマギーは軽くハーマイオニーの手を叩いた。ハーマイオニーは嬉しそうに顔を上げ、マギーに抱きついた。

 

「うおっ!」

 

大柄なマギーでもハーマイオニー・アタックは結構強かったらしい。少しよろめきながらハーマイオニーを受けとった。

 

「今日は私と一緒に調合しない?」

「いい…けど。ポッターとかウィーズリーとかはいいの?」

 

マギーはハーマイオニーの髪の毛の中からモゴモゴと言う。

 

「僕はいいよ。ねっ?ロン?」

「え、あ、うん。」

 

ロンにはまだ抵抗があるらしい。ちょっと目が泳いでいるのをハリーは目ざとく気づき、思いっきり足を踏みつけた。

 

「僕が席をずれたら、ここでマックロードはハーマイオニーとやれるだろ?」

 

意外にもそう発言したのはシェーマスだった。マギーは驚いたように目を見開く。

 

「私今たまたまパドマの鍋も持ってるから2つあるの。だからこれ使って。」

 

続けてパーバティがマギーに鍋を渡した。

 

「あ…どうも。」

「ぼっ僕…「ネビルは自分の薬に集中しろ。」」

 

ディーンの見事なツッコミにグリフィンドール生は笑った。

 

「お取込み中申し訳ないが。」

 

ドスの効いた声が地下牢の明るい雰囲気をぶち壊した。

 

「グリフィンドール、無駄話につき全員2点ずつ減点。ポッター、よそ見をするなもう2点減点。」

 

なんというとばっちりだろうか。だが誰も気にしなかった。スネイプがハリーの点数を"ついでに"減点するのはハーマイオニーがどんな日でも授業の復習をすることと同じくらい普通の出来事だ。

 

「スリザリンは減点しないんですか?」

 

マギーの発言にスネイプはギロッと睨みつけた後、スリザリンから1点減点した。だがすぐにマルフォイの鍋を見て2点加点していた。

 

のちにこの話はグリフィンドールの中にスリザリン生が紛れたという異例なこととしてホグワーツ中に語られることになる。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「あいつ、自分のベットの下に隠したって言ってた。」

 

授業終了後、マギーは他には聞こえないように早口で伝えた。

 

「ウチはそれがなんだか知らないけど。」

 

3人は顔を見合わせマギーにお礼を言ったあと、急いでグリフィンドール塔へと走った。

 

「まあ、エルファバ考えたよな?」

 

ロンは合言葉を唱えた後でハアハア言いながら笑う。

 

「だって誰も考えないよ。スリザリンの生徒がグリフィンドールの生徒に関するヒントをもらうなんてさ。」

「ええ、でも隠し場所がエルファバにしてはちょっと無用心すぎるわ。もしかしたら簡単な保護呪文でもかけられてるのかもしれないけど…私見てくるわ。」

 

ハーマイオニーは階段を駆け上がっていく。

 

「これで日記を手に入れたらすぐにマクゴナガルに渡せばいいってことだよね?」

 

そう自分で言ってハリーは違和感を感じた。それを突き止めるにはそう時間はかからなかった。

 

「ねえ、おかしいと思わない?」

「ん?何が?」

「僕ら、この数日でマクゴナガルに何回か会ってる。授業も受けた。」

「うん。」

「どうしてマクゴナガルは何も僕らに聞いてこないんだ?」

 

ハリーとロンは側から見れば同じショックを受けたような顔をしていたに違いない。直後に降りてきたハーマイオニーも話を聞いていないにも関わらずついさっきレンガで頭を殴られたような顔をしていた。

 

「ないの。」

「「え?」」

「ないのよ。それらしきものが。しかもエルファバのお母さんの形見が入った箱も消えてるの…。」

「ハーマイオニー、気づいたんだけどマクゴナガルにもきっとこのことが知られてない!だってこの数日に1度も僕らに日記のことを聞いてこなかったじゃないか!」

 

ハーマイオニーは息を飲んだ。

 

「ジニーがやったのか?」

 

ロンは信じられないといった声色だ。

 

「わっ、私ベットの下で確認したんだけど、やっぱり、エルファバはベットの下周辺に簡単な保護呪文をかけてたわ。どういうのかわからないけど、きっと1年生のジニーが壊せるものじゃないと思うの。エルファバがつくったものだから…。」

 

ハーマイオニーの言い方はあまり確証がないことが滲み出ていた。

 

その時だった。

 

バチンっ!

 

「ハリー・ポッター!!」

「ドビー!?」

 

汚らしい枕カバーを羽織ったドビーはボールのような大きな目に涙をためていた。

 

「ハリー…ポッター…。」

 

その瞬間ハリーはピンときた。ドビーの両腕を押さえつけ、ドンっとソファで拘束した。

 

「ハリー!やめてあげて!」

「ドビー!日記はどこにあるんだ!?」

 

ドビーはボロボロと涙をしわくちゃな肌に流しながら叫んだ。

 

「ハリー・ポッター!!ドビーめは命令されたら従わなくてはならない運命にあるのでございますっ!!ドビーめはハリー・ポッターを危険な目にわせたくないっ!!しかしそれにも限界があるのでございますっ!!」

 

わんわん泣くドビー容赦無くハリーは怒鳴った。

 

「ドビー!!質問に答えろっ!!日記はどこだっ!?」

「ごっ、ご主人様がドビーめに命令して、本来の持ち主に返すようにとおっしゃったのでそうしましたああああっ!!教授に対しての手紙も妨害しなくてはならなかったのでございますううっ!!」

 

3人は固まった。ドビーはその隙に暖炉まで走り、思いっきり頭をぶつけ続けた。

 

「ドビーは悪い子っ!!ドビーは悪い子っ!!」

 

ハリーはハッとすると、ドビーの首根っこをつかんで"お仕置き"を止めさせた。

 

「いつだ?いつそれをジニーに渡したんだ!?それにエルファバの母親の日記は!?どうしてマクゴナガルは知らないんだ!?全部答えろ!!」

「言えませんっ!言えませんハリー・ポッター!ドビーは悪い子っ!エルファバ・スミスはあんなにドビーめに良くしてくれたのにっ!ドビーは何もできないっ!」

「エルファバの何を知っているのあなたは!?」

 

ハーマイオニーも怒っていた。

 

「言えませんっ!言えませんっ!」

「どうしてそこまで言って詳細が言えないんだ!?」

 

ロンも応戦してきたところでドビーはバシッと音を出して消えてしまった。

ハリーは叫び声を上げて思いっきりソファを蹴っ飛ばした。

 

「ジニーだ!ジニーを探そう!」

 

ロンとハーマイオニーはハリーの同意を求めた。今は闇雲に怒りを発散させる場合ではないことぐらいハリーにも分かっていた。

 

「ああ、探そう。」

「今ジニーって何してるんだ?」

「分からないわ!…もうすぐ授業だし私たちは今…。」

 

外からザワザワと声が聞こえてきた。

 

「みんな、どうしたんだい?これから授業だろ?」

 

ロンは一番乗りで入ってきたフレッドとジョージに尋ねる。

 

「なんか緊急で生徒は全員寮で待機だってよー。」

 

どちらかが力の無い声で答える。日記がジニーに渡ったと思われるこのタイミングだ。まさか。

 

「フレッド!ジョージ!ジニーは?!」

「「さあ?」」

 

3人は人並みを逆走して、入口へと向かった。

 

「待つんだ君たち!!」

 

パーシーだった。3人の前に仁王立ちして立ちふさがった。監督生の威厳としてここはテコでも動かないだろう。

 

「パース!ジニーはどこだい?!緊急なんだ!」

 

ロンは道を妨害されていることにイライラしながら聞いた。

 

「そのうち戻ってくる。全生徒が寮に戻るように言われたんだから。僕の手間をかけさせないでくれ。」

 

絶対戻ってこないという3人の思いは一致していた。

 

「パース!手間なんてかけさせないよ!僕ら今回のことで重要なことを知っててそれを教授に言わなきゃいけないんだ!」

「ロン!これはお遊びじゃない!君たちの探偵ごっこにはうんざりだ!」

「探偵ごっこだって?!僕らがいつそんなことしたんだ!?」

 

パーシーはロンを押さえつけようと必死だ。意図しているわけではないが、チャンスだった。ハーマイオニーはハリーに目配せし、ハリーは向かってくる人並みを縫いながら上手く寮から出たが…。

 

「ポッター!!!」

 

見つかった。しかも相手が悪いことにスネイプだった。眉間にシワを寄せ、悪魔の形相でハリーに近づいてきた。

 

「一体何をしてるのかね?全生徒例外なく寮に戻るようにと言われていたはずだが?」

「ええ。そうなんですが、今回のことで重要なことを知っててそれを教授に言わなき「何を言い訳してる?全く傲慢なことだ。この非常事態においても目立ちたいか?父親そっくりだ。」」

 

ハリーはただでさえドビーの件で怒り爆発寸前なのにスネイプのいびりを我慢している余裕などない。

 

「ジニー・ウィーズリーを見ませんでしたか?!彼女が秘密の部屋に関する「ミス・ウィーズリーなら自分の寮に戻りましたがね?嘘は感心しませんぞ?さあ、早く寮に戻るのだ。さもなくば貴様の寮から減点するぞ?」」

 

ハリーはしばらくスネイプとにらみ合っていた。このまま引き下がるなんてできない。しかしこれ以上何を言ってもハリーの言うことをスネイプが聞いてくれるとも思わなかった。相手が悪かった。

 

ハリーは諦めて、太った貴婦人(レディ)に合言葉を唱え、中に入った。

 

「ハリー!!なんてことしてくれたんだ!?監督生の僕を無視して出ていくなんて!!」

 

そう間近で唾を飛ばして怒鳴るパーシーなどハリーの眼中になかった。

 

「ジニー?」

 

なんとジニーは帰ってきてた。談話室の隅でハーマイオニーとロンが話をしている。ジニーは目をこすっていた。

 

「ごめん…。ごめんパーシー。」

 

ハリーは適当に謝り、急いでジニーのところへと向かった。

 

「ああ、ハリー。」

 

ジニーがハリーに気がつくとうつむいて黙り込んでしまった。実のことを言うとジニーはつい数日前、ハリーに自作の歌入りのバレンタインカードを送っており、それが授業中に流れてクラス中に笑われるというハリーの人生の中で恥ずかしい出来事ランキングベスト3に入る出来事を作った張本人なのだ。

 

「どうなってるんだ?」

 

ハリーはジニーを見ないようにハーマイオニーとロンに尋ねた。

 

「今、日記について聞いたわ。いろいろ教えてくれた。」

 

まずジニーの学用品の中にあったのをエルファバが発見し使用していたこと、その後エルファバがジニーに貸してジニーがその日記に自分の悩みを書いたこと。そのあとジニーは日記に執着すると同時に体調不良、記憶の欠如が起こった。エルファバにその日記を返却するとそれがなくなった。

 

「…それで?」

「それを今から聞くの。ジニー…教えて?」

 

ジニーがすすり泣いていることにフレッドとジョージも気づいて近づいてきた。そうするとジニーは口をつぐんでしまった。

 

「ジニー、頼むよ!大事なことなんだ!」

 

ロンはしびれを切らして急かした。

 

「こんなこと言ったらみんな私のこと嫌いになっちゃう!!」

 

ジニーは泣きながら、自分の部屋に逃げようとした。しかしそれは叶わなかった。

 

「ジニー。」

 

赤毛のどちらかがそれを止めた。

 

「「逃げるな。」」

 

ジニーは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら自分の兄たちを睨みつけた。

 

「2人には分からないわよ!私…本当にひどいことしたわ!エルファバが今ああなってるのは私のせいなの!まるで自分が自分じゃなくなったみたいで…本当どうしたらいいか!!」

「ジニー、一体何をしたんだ?やったこと次第では僕は監督生として教授たちに報告しなきゃならない。」

 

パーシーの一言でジニーは震えた。今やこの一連の出来事はグリフィンドールの談話室にいる全員が見守っていた。

 

「そんなに怖いのかジニー。」

 

ジニーは痙攣したようにうなづく。

 

「フレッド、じゃあ手本を見せよう。」

「そうだなジョージ。」

 

そう言うと双子はおもむろに談話室のテーブルに登って話し始めた。

 

「パース静かに!」

 

ロンは注意しようとするパーシーを止めた。

 

「みんな聞いてくれ。」

 

生徒たちは何が始まるんだろうと皆不思議そうに赤毛双子の元へ集まった。いつになく真剣な顔をする2人にみんな興味をそそられた。

 

「休み最終日。エルファバ大捜索が行われたのは皆周知の事実。その次の日にエルファバが襲われたのも。」

 

生徒たちはそれぞれ同意の声を出した。

 

「エルファバ大捜索の時、俺たちは独自のルートでエルファバがどこにいるのか知っていた。」

 

談話室の中に動揺が走った。ハーマイオニーとハリーはとっさに知ってそうなロンを見たが、ロンですら訳が分からないといった顔をした。

 

「なんで居場所を言わなかったのかという理由は単純だった。面白いから。」

 

動揺は今度は失望や怒りに変わった。1人の女子生徒の命が関わったことにも関わらず、それを"面白いから"という理由で片付けられるはずがない。

 

「フレッド!ジョージ!そんなこと許されるとでも思ってるのか!?」

 

パーシーに関しては激怒していた。ジニーはパーシーの激昂ぶりにビクッと体を震わす。自分が怒られてる気分になってるのだろう。

 

「思ってない。だからこうやってみんなの前で言ったんだ。」

「まさかこんなことになると思わなかった…ってのは言い訳だ。」

「どこにいたんだい?」

 

ハリーは思わず聞いてしまった。あそこまで探しておいていないとどこにいるか気にしない訳がない。

 

「「女子塔。」」

「ええっ?」

 

1番驚いたのはハーマイオニーだ。

 

「私何十回も全部の部屋を見て回ったのよ?」

 

抜け目のないハーマイオニーのことだ。どこかを見落とすなんてありえるだろうか?

 

「というか、女子塔に男子が入れるわけないだろ?どうやって「まあ、とにかくだ。」」

 

ロンの疑問を遮った。

 

「俺らがあの時居場所を言えば、エルファバは氷の中に閉じ込められないですんだんだ。」

「どうすればいいのか分からない。けど俺らに今出来るのは自分の行動を反省すること、それだけだ。」

 

少しの沈黙の中、パーシーが口を開いた。

 

「こうなると思ってたから僕は常日ごろから君らのことを…!!」

 

パーシーは下唇を噛み締めていた。

 

「やめろよパーシー。パーシーは自分の出世のこと考えてるんだろ?兄貴のことじゃなくて…。」

 

発言したのはロンだった。

 

「なんだと?」

「誰がこんなこと予想できた?無理だよ。怪物がなんだったかすら分からないこの状況で、エルファバが怪物と対峙したなんて誰が予想できる?フレッドとジョージは悪くない。」

 

ロンは複雑そうに顔を歪めた。ハリーは今この状況で1番辛いのはロンであることに気がついた。フレッドとジョージのこと、パーシーの態度、そしてジニーだ。

 

「あんがと、我が弟よ。」

「お前ってば、最高だぜ。さて。」

 

フレッドとジョージはジニーを見た。まだ泣いているジニーだったが、もう覚悟を決めたようだった。

 

「ジニー。準備はいいか?」

 

ジニーはうなづいて、2人の立っているテーブルへと向かった。

 

「ジニー!ここではダメだ!僕が教授を「ペトリフィカス・トタルス 石になれ。」」

 

喚いていたパーシーが固まり、どさっとカーペットの上に倒れた。

 

「罰はあとでいくらでも受けるよ。でもね、妹の決意を無下にすんな。」

 

全身金縛り術をかけたのはなんとアンジェリーナだった。動かないパーシーにそう言うと、ジニーに続きを促した。ジニーは深呼吸して話す。

 

事の経緯は、ある日記から始まった。

エルファバが使用していた日記をホームシックだったジニーに貸してくれた。その日記の虜になったジニーは全ての悩みを日記に書き綴った。しかし、そこから記憶が無くなったり体調がすぐれないことが増えた。日記が原因だとは思わなかったが、エルファバへ日記を返したらすぐに体調が回復する。

 

エルファバはというと日記の影響を受けず、普通だったという。ジニーはそれを不思議に思い、次の日にエルファバが取りに行くという約束で借りた。

しかし日記にいるトム・リドルという存在がジニーをまた日記の虜にさせた。何をしたかは記憶にないが、エルファバを"精神異常者"と言ったらしい。

しばらくしてジニーがエルファバをたずねると、日記がジニーに呪いをかけて違う人格を作り出して、これまでマグル生まれを襲わせているのではという推測を立てていた。ジニーはそれに恐怖した。

 

ジニーは自分が犯人だという事実から逃げた。

 

エルファバの制止を無視して日記に自分のことを書き続けたという。

 

「…怖くなって…でも誰にも相談できなかった…。エルファバがいなくなったって聞いて、私のせいだって思ったの。だから見つけたらすぐに謝って、一緒に教授と日記を持って行こうって思ったら…次の日エルファバは氷の中にいて、日記もなくなってて…。」

 

ジニーはうずくまった。とてもおかしな話で信憑性に欠ける。しかしたった11歳の魔女がここまで大きな事件を引き起こせるはずがない。

可能なのだとすれば、第三者が関わっていると考えるのが妥当だ。しかしそれを理解している上級生ならまだしもそれを11歳、12歳の生徒に理解しろというのも無理な話だ。現に1年生の数人は疑わしそうな顔をしている。

 

「彼女の言ってることは筋が通ってる。」

 

アリシアが声を出した。

 

「私はこの子が今回の事件の犯人だとは思わないよ。だからこのことで誰かが彼女をいじめてるとか言うのが耳に入ったらタダじゃおかないからね?」

 

アリシアは1年生たちが固まっているところをギロリと睨みつけた。上級生の睨みは下級生を震え上がらせる。

 

「こんなふうに言わせる必要あったのかな…?みんなの前で言わせるなんてジニーがかわいそうだ…。」

 

ネビルがボソッとつぶやいた。大勢の関係のない生徒たちにフレッド、ジョージ、ジニーのしたことを知らせるというのは確かに疑問を持つことだろう。生徒は何もできないし最悪の場合、話が歪む可能性だってある。ネビルはそのことを感覚的に気づいたのだろう。

 

「もちろんあったさ。ロンの妹を守れるだろ?僕らが彼女が無実だという証人だ。」

 

答えたのはディーンだった。ネビルはその言葉にそうか、と納得した。もういいだろうと判断したのか、赤毛双子とジニーはテーブルを降りた。ジニーは双子の兄にお礼を言っていた。

 

「あなたがずっとつんけんしてたのはわるい魔法のせいでしょ?」

 

1年生たちがジニーに寄ってきた。

 

「てっきり私たちが嫌いなのかと思ってたわ。私はメアリー。この大きいのはダニエル、金髪がケイトリンで小さいのがマイクよ。よろしくね。」

「…よろしく。」

 

ジニーは同級生たちに囲まれて弱々しく微笑んだ。

 

「校長のところへ行こう。」

 

この空気を乱して申し訳ないとハリーは少し罪悪感を覚えたが、今はそれどころではない。

 

「ジニー。日記を持って、校長室へ行こう。僕らと一緒に。」

 

ジニーはキョトンとした。

 

「もちろん校長に会いに行くわ…でも、私日記がなくて…。」

「屋敷しもべ妖精が日記を持って来なかった?」

 

ハーマイオニーの問いにジニーは首を振った。

 

「じゃあ、あいつ嘘ついたのか?わざわざ嘘をつくために僕らのもとに?」

「まさか…。」

『ごっご主人様がドビーめに命令して、本来の持ち主に返すようにとおっしゃったのでそうしましたああああっ!!』

 

本来の持ち主…。

 

「エルファバ!」

 

ハーマイオニーは大声を出す。しかしグリフィンドールはもうガヤガヤと喧騒が戻っていたので誰も気づかなかった。

 

「ハーマイオニー、エルファバは氷の中だ。」

「もしも!」

 

ハーマイオニーはずいっと顔を寄せる。

 

「もしも、私たちが全員ここに集められた理由が、エルファバが氷から出されるってことで安全面を考慮されたことだったら?だったらつじつまが合うじゃない!」

「ドビーがそれを知ってたってのかい?」

 

ハーマイオニーは1年たちに聞こえないように声をひそめる。

 

「エルファバがカードに書いてたじゃない。犯人はきっとマルフォイの父親だって。」

「じゃあ、ドビーのご主人って…」

「なるほど!マルフォイの父親はホグワーツの理事だからきっとホグワーツの内情を知ってる。で、エルファバは何か重要なことを知っててまずくなったからエルファバをバジリスクで襲って返り討ちにあった。だってエルファバは混血だもの!それ以外考えられない!それに困ったマルフォイの父親はエルファバが出てくるタイミングを見計らってもう一度エルファバに日記を持たせる気なんだ!」

 

ピースが当てはまっていく。しかし一つだけ疑問は残った。

 

「でもどうしてわざわざエルファバに日記を渡すんだ?言っては申し訳ないけどエルファバはジニーと違って操られてないって言ってたし。エルファバに日記を渡してもメリットなんてないはずだ。」

「分からないわ。でもエルファバに日記が渡ったならエルファバは操られていないだろうし、話が早いわ。」

 

パーシーが金縛りにあっているということで3人は楽に寮から出て行けた。

 

ーーーーー 

 

同時刻、医務室近くの廊下。

 

幸いだったのは生徒が全員安全地帯にいるということ。

不幸なのは数時間前にダンブルドア校長がエルファバ・スミスを死なせたということで停職になったこと。

 

「ミス・スミス、落ち着きなさい。」

 

石造りの廊下は、氷と冷気に包まれている。マクゴナガル、フリットウィック、スネイプが女子生徒に杖を向けていた。パジャマ姿のエルファバは虚ろな顔で3人を見ている。

 

無事に氷の中から救出されたエルファバだったが、意識が戻ると"力"で教授たちを攻撃してきたのだ。

 

バキバキっ!バキバキっ!バキバキっ!

 

壁や天井から氷の棘が生えてくる。その棘は3人を追い詰めていく。

 

「プロテゴ 護れ!プロテゴ!プロテゴ!」

 

フリットウィックが作った盾を棘が次々に破っていった。

 

「フィリウスダメですっ!魔法は効きません!」

「やむ得ませんな。」

 

スネイプは天井にある石細工の装飾を破壊した。それはマクゴナガルによる呪文で、エルファバには当たらない、しかし氷による攻撃は防げる的確な位置に落とされた。

 

「ほんの時間稼ぎです。あの子をどうやって止めましょう?」

「私の倉庫にデニスからもらったマグルの使う薬品が残ってます。それでなんとかミス・スミス本人を麻痺させれば…。」

 

バキバキバキバキっ!!

 

3人はとっさに杖を構える。

 

「そんな…!!」

 

エルファバの氷の棘は石の塊を貫通した。バラバラと床に残骸が落ちていく。

 

「氷であんなこと…!!」

「この際一回あれが氷だという固定概念は捨てましょう。ダンブルドアもそもそもあれは氷ではなく氷に限りなく近い未知の魔法だと明言していた…さもなくばこっちがやられる。」

「セブルス、ここは我々がなんとか抑えます。だからマグルの薬品を。」

 

マクゴナガルは呻くようにスネイプに言った。スネイプはうまいこと氷の妨害をかわしながら地下牢へと向かっていった。今度エルファバは3人の足元に"力"を放った。次々に放たれる小さな氷の塊はツルツルと3人のバランス感覚を奪っていく。マクゴナガルは危うく転びかけたフリットウィックの頭をつかんだ。

 

「ありがとうミネルバ!」

 

エルファバの片腕には黒い本らしきものを抱えていた。マクゴナガルは不審に思った。なぜ、この状況であんなものを大事そうに抱えているのか。長年培ってきた勘だ。

 

「エクスペリアームズ 武器よ去れ!」

 

紅色の閃光が真っ直ぐエルファバの腕に向かった。しかしエルファバの体に触れることはなかった。マクゴナガルは下唇を噛んだ。

 

エルファバは目の前で薄い氷の壁を作ることで呪文を回避したのだ。

 

「ミス・スミス!返事をしなさい!」

 

エルファバは2人を睨みつけ、フウッと息を吐くと、肉眼で見えるほどの大きな雪の結晶が空中で舞った。エルファバはそれを素手でつかんだ。

 

「------。」

 

エルファバが何を言ってたのかは理解できなかった。

 

バキバキバキバキ!

 

エルファバが結晶を床に叩きつけた。地面から高さ4、5メートルほどの分厚い氷の壁が迫ってくる。

 

「走って!!!」

 

あの壁に押しつぶされたらひとたまりもない。氷の壁が、迫る。2人は必死だ。

 

「ああ!ミネルバ!」

「っ!!」

 

マクゴナガルが氷に足を取られて、転んだ。膝にくる激痛でうずくまった。

 

壁が、迫ってくる。

 

フリットウィックはマクゴナガルを魔法で浮かし、曲がり角へと飛ばした。それに続きフィットウィックも曲がり角に、滑り込む。

 

壁はすぐ近くで大きな音を立てて崩れていった。

 

「ミネルバ、無事か?」

「ええ、ありがとう…。」

 

マクゴナガルはよろよろと立ち上がった。

 

「いない。一体どこに…?」

 

氷の壁をつくったエルファバは氷という大きな爪痕を残して忽然と消えていた。

 

「ミス・スミスはどうしてこんなことを…?」

 

マクゴナガルが考えにふけってたとき、"奴"はやってきた。

 

「いやいやー。つい迷ってしまいましてね。どうですか私のこの美しい氷の芸術っ!」

 

マクゴナガルとフリットウィックはギロリとロックハートミスター・KYを見た。

 

「ちょっと攻撃的ですが、いかがです?この暗いホグワーツにパンチが効いてると思いませんかねえ?」

「適任者だわ。」

 

マクゴナガルは名案だと言わんばかりにポンっと手を叩く。

 

「あなたのような英雄なら今のミス・スミスを止められるでしょう。」

 

フリットウィックも便乗してキーキー声で言った。ロックハートはキョトンとした。

 

「ミス・スミス?もう死んだんじゃ「彼女は今氷の棘を出しながら暴走してます。怪物が原因かもしれません。それかあなたの呪文が彼女の体の中に入り込んだのかも。」」

 

マクゴナガルはテキパキとまるで今日の業務を説明するかのようにロックハートに説明する。

 

「私とフィリウス、そしてセブルスが止めようとしましたが全く歯が立ちませんでした。数々の英雄談を持つあなたなら彼女を止められる。違いますか?」

 

ロックハートは誰でも分かるくらいに固まった。

 

「そっ、そー…ですねー…。装備してきますっ!」

「よろしくお願いします。ホグワーツ存続のためにも。教授全員とダンブルドア校長に連絡を。生徒たちは引き続き寮で待機です。理由は例の怪物が動き始めた可能性があると言いましょう。ミス・スミスを守るためにも。」

 

2人は毅然とした態度で去っていく。

 

 

 

 

さて。

 

 

 

 

ロックハートは焦っていた。当然である。なぜなら皆さんご存知の通り彼がやった偉業は全て嘘。人がやったことを全て自分のものとしていた。幼少期から姉弟の中で唯一魔力を持っていたので魔女である母親からえこひいきされた。レイブンクロー生時代は自分が有名ではないと知り、目立つことに集中した。おかげで在学中では超有名になった。卒業後はひたすら忘却術を学び、他人の才能を自分のものとする術を得た。

 

そんな自分が今、本当に怪物エルファバ退治を任された。こんなの契約書になかった。

 

逃げよう。ロックハートは決心した。

 

そのときだ。

 

「「「教授!!」」」

 

曲がり角でグリフィンドールの問題児に遭遇した。

 

「やっ、やあ坊やたち…。」

 

確かこの3人は怪物エルファバの友達だ。自分のことは黙っておく。むしろ黙っておかないと自分の名誉が

 

「教授!僕ら今の話聞いてました!」

「僕らも止めます!」

「私たちこの事件のこと知ってるんです!」

 

ロックハートは自らの死亡フラグがキレイにたつのを感じた。

 

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