ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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4.ホグワーツのトラブルメーカー

豪華絢爛な装飾に鮮やかな寮の旗の下で在校生は新入生の入場を待った。

 

「エルファバ、凍ってる。」

「え。」

 

エルファバはロンに指摘されて慌てて机を覆う氷を溶かした。

 

「ごめん…。」

「まあ分かるよ。妹の組分けって心配だよな。」

 

ハリー、エルファバ、ハーマイオニーはホグワーツに到着して早々にグリフィンドールの厳格な寮監のマクゴナガル教授に呼ばれた。ディメンターによる影響を心配してのことだったらしいが、ハリーは全くもって平気でエルファバもまだ動揺している部分はあるものの、大丈夫だと答えた。今のところ、エルファバにはそれより大事なことがあるのだ。

 

「それでは、新入生入場。」

 

ゾロゾロと着慣れてない制服を着て、上級生は見慣れた美しい大広間を恐る恐るといった感じで新入生は歩いていた。

 

「うわああああっ!!きれええええっ!!なんでろうそくが浮いてるの?!しかも天井ふきぬけね!!…あれ?外雨だったのにどうしてこっちは満天の星空なの?まあ、いいや。とにかくすごい!!あたしここ大好きっ!!」

 

そんな控えめな新入生の中でうるさいのが1匹。

 

「エルファバ、凍ってる凍ってる!!」

 

(私、早く部屋行きたい…。)

 

「ミス・スミス、興奮するのは構いませんがもう少し静かに。」

「はーい!」

 

今まで組分け前にこんな注意をされた生徒はいるのだろうか?皆クスクス笑っていた。例年マクゴナガル教授が組分けの儀式を担当しているが、今年はハッフルパフの寮監であるスプラウト教授だった。きっとハリーとハーマイオニーに付き添っているのだろう。

 

「名前を呼んだらこの椅子の前にきてください。あなたがたの寮を決めます。」

「はいっ!」

「いい返事じゃミス・スミス。」

「ありがとう!」

 

ダンブルドア校長との掛け合いに今度こそどっと笑いが起こった。スミスという名字はポピュラーな名前なので誰もこのとても元気のいい少女があの無口で神秘的な容姿のエルファバ・スミスの妹だということには気づいていない。

 

一方フレッドとジョージは知っていたのでエディとエルファバを交互に見てお腹を抱えていた。

 

「エルファバ、僕凍ったチキンは食べたくないよ?」

 

エルファバは一見無表情だが頬がだんだん赤くなっていた。

 

「アベカシス、クリスティーナ!」

 

組分けが始まった。スミスはSなのでかなり後ろである。エディは身長が高くて目立つくせに落ち着きがないのでソワソワしていてまた笑われる。おまけに組分けが終わった子たち数名とハイタッチまでしている。ホームスクールだったとは思えないくらいのコミュニケーションスキルである。

 

(私、組分けの段階で友達ほとんどいなかったのに…。)

 

「スミス、エイドリアナ!」

「はいっ!やっと私の番っ!」

 

(いろいろ余計なのよいつも!どうしてそんな目立つことするのかしら…?)

 

自分も組分けの時にかなり目立っていたことを棚に上げてエルファバはエディを心配した。エディの黒髪にボロボロの帽子が被せられた。

 

エディの組分けは通常より長かった。次第に周囲がざわつき始める。

 

「組分け困難者?」

「いや、まだ4分だ。」

「あれって50年に1回だろ?」

「もうすぐ5分よ。」

「エルファバ、みんなが言ってる組分け困難者ってなに?」

 

ロンが不思議そうに聞く。

 

「組分けに5分以上かかる人のことを組分け困難者って呼ぶの。マクゴナガル教授とかフリットウィック教授がそうだったわ。噂だと最終的には生徒に任せるって話だけど…。」

 

エルファバはエディがどこに行くのかまるで見当がつかなかった。スリザリンはあり得ないだろう。エディがどれだけ勉強ができるか不明だがレイブンクローというイメージでもない。ハッフルパフの特徴として、どんな性格の生徒も受け入れるという傾向のため、組分け困難になる人間は大体キャラの強い他の3寮のはずだ。となると残りは…。

 

「グリフィンドールはダメ、グリフィンドールはダメ…!!」

 

エルファバは小声で願った。

 

「…ハッフルパアアアアアアアアアフ!!!」

 

(…え?)

 

「「「「…いっいええええええええええええいっ!!」」」」

 

全員、ハッフルパフ寮の生徒ですら一瞬拍子抜けした。エディは歓声のする寮の机へと走っていく。

 

「あ…よかった。」

 

エルファバはセドリックと握手するエディを見てホッとした。

 

(セドリック…。)

 

彼の母親のことを思うと胸が痛む。当然セドリックはエディがエルファバの妹であることは知らない。

 

「ハリー、ハーマイオニー、一体何だったの?」

 

2人は組分けが終わったと同時に戻ってきた。ハリーがロンに耳打ちで説明しようとした矢先、ダンブルドア校長が立ち上がった。

 

「新入生の諸君、おめでとう。心から歓迎する。さて、皆の者が宴のご馳走でボーッとする前にいろいろと話しておかなくてはならないことがある。」

 

いつにも増して慎重な面持ちの校長に誰もが耳を傾ける。

 

「皆が知っての通り、今年は安全のためにアズカバンの看守であるディメンターを受け入れた。」

 

一瞬で静かになった。

 

「あの者たちは入り口という入り口を堅めておる。ディメンターがいる限り誰も許可なしに学校から出るでないぞ。悪戯や変装に引っかかる代物ではないからのお。…透明マントでさえ無駄じゃ。」

 

付け足された言葉にロンとハリーは目配せを交わす。

まるで4人に釘を刺しているようだ。

 

「あの者たちには言い訳など通じぬ。監督生、首席の者よ。生徒をよろしく頼みますぞ。」

 

そのあとは楽しいニュースだった。ルーピン教授が闇の魔術に対する防衛術の授業を持つこと、そしてなんとハグリッドが魔法生物飼育学の授業を持つことになった。この発表には生徒が拍手喝采だった。ハグリッドは涙ぐんでいた。

 

「それでは、宴を。」

 

みんないきなり出現したご馳走にヨダレを垂らしてかぶりついた。こんがり焼けたミートパイに熱々のシチュー、揚げたてのフライドポテトやロンご所望のフライドチキンが金の皿を彩った。

 

「ってことはハグリッドは1人前の魔法使いとして認められたのね!」

 

カボチャのタルトを頬張りながらハーマイオニーは興奮気味に喋った。ハグリッドは去年、マグルの女子生徒を殺害したという汚名が晴らされたのだ。

 

みんながお腹いっぱいになって寝る時間だとダンブルドア校長は告げ、4人でお祝いを言いにいくとハグリッドはナプキンに顔を埋めた。マクゴナガル教授に去るように合図されたので4人はハグリッドを微笑ましく見てから自らの寮に戻った。

 

「パーバティ、ラベンダー。」

「久しぶりっ!」

「やっぱ寝るのはこのメンツでなきゃね!」

「宿題がはかどるしっ!」

「ちょっと、どういうことそれ?」

「冗談よハーマイオニー。」

 

ルームメイトとハグを交わし、明日使う教科書をバックに詰める。

 

「聞いて、みんな。私ね、すっごいいいことがあったの。超イケメンと友達になって、現在進行形で文通中っ!」

「なにそれ羨ましいわねっ!」

「あなたたちそろそろ寝なさいよ。」

 

そう突っ込むハーマイオニーも実際興味津々で聞いてたりする。

ハーマイオニーの態度もここ数年で随分軟化した。

 

「本当かっこいいんだから!」

 

ベットをくっつけ、それぞれの枕を抱えながらお互いの近況報告(主に恋愛話)を交わす。

 

「エルファバは?」

「?」

「ないの最近?」

「ないわよ。」

 

エルファバよりも先にハーマイオニーは答えた。

 

「夏休みにハリーと一緒に買い物行ったことを、大人に茶化されたのに分かってないような子よ?」

「うわっ。」

「突っ込みどころ満載ね。」

「私はセドリックは絶対、エルファバのこと好きだと思うんだけど。」

 

セドリックを思い出し、罪悪感でエルファバは枕をギュッっと抱きしめた。

 

「なんかよく分からないのよ。みんなの言う恋愛と私が大事な人に思う愛情ってどう違うの?」

「そうねー、その人と会うとドキドキするの。四六時中その人のことを考えちゃって何にも手がつかなくなるっていうか…。」

「…それって生活に支障出るわよね?」

「「うん。」」

「なのに楽しいの?」

「「うん。」」

 

パーバティとラベンダーは3歳の無垢な少女を見るようにエルファバを見た。

 

「まあ、あなたにもわかる日が来るわ。」

「すごいわ2人とも。まだ13歳なのにそんなこと知ってるなんて。」

「エルファバ?なぜ私をカウントしなかったのかしら?」

「ハーマイオニー、経験あるの?」

 

エルファバの地味に失礼な発言にパーバティとラベンダーは笑い転げた。ハーマイオニーは頬を膨らませながらも思わず吹き出してしまった。

 

楽しい夜だった。

 

「あ、エルファバ。ずっと言おうと思ってたんだけど。」

「?」

「あなたがズボンとして履いてるの…男性用の下着よ。」

「!?」

 

 

ーーーーーーー

 

 

「あ、エリー!」

「エディ!初めての箒はどうだった?」

「もう最高っ!私近いうちに箒買ってもらうわ!」

「エディ!」

「マイケル!あとでお菓子ちょうだいよー?!」

「よおエディ!」

「ハグリッド!あなたが教授で本当に嬉しいわ!また金曜日ね!」

「あ、ルパンさー…じゃなかったルーピン教授!あなたの授業大好きよっ!」

「ありがとう。そんなに私の授業が好きなら宿題やってもらえると嬉しいな。」

「あっ、やっべ忘れてた!」

 

エディは年齢、寮、性別関係なく知り合いを作り、入学1週間足らずでエディの名前をみんなが知った。そして彼女はホグワーツ始まって以来最大のトラブルメーカーだと囁かれるようになった。

 

「グリフィンドール10点減点。」

 

エルファバはスネイプ教授とすれ違った瞬間、減点を食らった。

 

「すれ違っただけですよ?」

 

ロンが抗議するとスネイプ教授はこれ以上ないぐらいの不機嫌顏で言った。

 

「先ほど貴様の妹が貴重な毒ガエルの目玉を爆発させた。」

「ハッフルパフから減点すればいいじゃないですか。」

「口答えするなウィーズリー、2点減点。」

 

ロンとエルファバは目配せをして黙って大広間に向かうことにした。

 

「スミス!!見て、ディメンターよ!!ううううううっ!!」

 

エルファバは大広間に入って早々意地悪なパンジー・パーキンソンやその他大勢に野次を投げかけられる。エルファバとハリーがディメンターに遭遇して気絶したことは学校中で有名な話になっていた。マルフォイやその他スリザリン生がそれをバカバカしい仕草でするのだ。

 

「あんたって人のことバカにしてる時ただでさえデカイ鼻と下唇がもっとデカくなってるって知ってた?これ以上ブスになりたくないならやめな。」

 

スリザリン生であるマギーお得意の嫌味にグリフィンドール生は拍手を送った。特にロンは手が赤くなるまで叩いた。

 

「このデブっ!」

 

パーキンソンは顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「3点。」

「は?」

「ダメだね。人を侮辱する時はそんな抽象的だとなんとも思わない。そういやさっき熱心にその魚みたいな目をデカくする呪文を探してたけど、直径1センチくらいしかない脳みそを大きくする呪文でも考えてからウチのこと侮辱するんだね…もっともウチは侮辱されてもどうでもいいけど。」

 

マギーはあくびしてエルファバの隣に座った。スリザリン生と敵対するグリフィンドール生だが、マギーはもはやグリフィンドール生扱いだった。グリフィンドールとスリザリンの不仲を嘆くほとんど首無しニックと血みどろ男爵に希望の星として見られているが、本人は嫌がっている。

 

マギーなりの優しさで誘ってくれたことにエルファバは心が軽くなった。

 

「そういや、あんた妹いたんだね。」

「う…………………ん。」

「なに、嫌いなの?」

「…あまり、好きじゃないわ。」

「なんか入学して結構いろいろやらかしてるみたいだけど。」

「…はあっ。」

 

ここで、エディのここ数日の事件簿をご覧頂こう。

 

事件①「間違えた。」事件

 

それは入学式終了後に起こった。新しい監督生のセドリック・ディゴリーは新入生を案内し、黄色と黒のインテリアが施された居心地の良いハッフルパフの寮へと案内した。

 

『何か質問は?』

 

早くも女子新入生はがっしりした体型のハンサムなセドリック・ディゴリーにメロメロだった。真っ白な歯を見せて笑いかけられるとクラクラしてしまう。

 

『ここって黄色が目印なの?』

 

聞いたのは既に新しいハッフルパフ生全員と仲良くなったエディ・スミスだった。日焼けした肌に艶やかながらも手入れされていない髪の毛、人よりも大きな体をヒョコヒョコさせて聞く。

 

『ああ。ハッフルパフは黄色と黒がシンボルカラーだよ。グリフィンドールは赤、レイブンクローは紺、スリザリンは緑。』

 

エディはそれを聞いて、少し顔をしかめた。

 

『どうしたの?』

『いや…そんなに大した問題じゃないんだけど…。』

『僕で良ければ聞くよ?』

 

この一言でもう女子生徒はノックアウトである。ぼんやりとした女子生徒たちの頭にぶっこまれたのはエディの衝撃的なセリフだった。

 

『いや…間違えたの。』

『何を?』

『入る寮。』

『ん?』

『入る寮。』

『『『『…ん?!』』』』

 

エディは笑って頭をかきながら答えた。

 

『いやーさ、なんだっけあの帽子に?いろいろ迷われた挙句にさ、自分で選べって言われちゃって、ここがエルフィーが入った寮の名前な気がしたからさー。でもエルフィーのネクタイって赤だったの。でもここの人たちみんないい人たちだし、私はここで最高の学校生活を送れそう!』

 

在学生も新入生もこの発言には唖然とした。この事件は"新入生のエディ・スミスはヤバイ"と寮全体に広まり、さらには寮を超え、学年を超えた。この発言でエディはハッフルパフ内に不謹慎な奴と思う敵とめっちゃ面白い奴と思う味方を作り出すのだった。

 

そしてこれを聞いた読書中の彼女の姉は談話室のソファの上に雪を積もらせた。

 

事件② 走る炎事件

 

それは変身術の授業の時に起こった。新入生恒例のマッチ棒を針に変える授業はいわゆる"洗礼"である。ここでほとんどの生徒が散々複雑なことを書かされた挙句に魔法はチチンプイプイではできないことを悟らされる。

 

『んーんーんーんー!』

『ミス・スミス、唸るのはおやめなさい。』

『でもマクゴナガル教授、あなたはこれのプロフェッショナルだから分からないと思いますけど、なかなか難しいんですよ木の棒を銀の針に変えるの。』

『それをやらなくては何も始まりませんよ。』

『うーん、うーん…うわっ?!できたあっ!!』

『まだです。』

『え、どうして?』

『あなたのマッチ棒はツヤのあるマッチ棒に変化しただけです。』

『えー、だめですかー?こういうユニークな針いいと思いません?』

『銀色で尖っていない限り針とは呼べません。』

『そっかあ…ていやっ!』

 

エディが適当に杖を振った瞬間、何の変哲もないツヤのあるマッチ棒はメラメラと燃える炎となり、ネズミ花火のように教室を疾走した。

 

教室は大パニックとなった。マクゴナガル教授がすぐに収集してけが人はでなかったものの授業どころではなくなり、哀れな新入生数名が号泣してハッフルパフの初回の授業は終了した。

 

『………ごめんなさい。』

 

この時ばかりはエディも反省した。

 

『……………以後気をつけるように………。』

 

この事件も回りに回って姉の耳に届き、教科書数冊を凍らせた。

 

事件③追いかけっこ事件

 

これは本人たちからすれば特に事件でも何でもなかったが、エルファバ・ファンクラブ・メンバーとエルファバの周囲の人間からすればただ事じゃなかった。

 

『エールフィイイイイイイイっ!!』

『!?』

 

エディが入学して3日後の昼食の場で、遂にエルファバはエディに遭遇してしまった。

 

『何?エルファバあの子と知り合いなの?』

 

一緒に来ていたパーバティに聞かれたがエルファバは答える暇はなかった。

 

『あっち行ってエディ!』

『エルフィー、あなたグリフィンドールだったのね知らなかった!ロミルダと同じね!』

『大きい声で喋らないでよ!』

『エルフィー、聞いたわ!エルフィーって勉強すっごいできるんでしょ?!』

『うるさいっ!あっち行ってよ!』

『あとさあとさ、有名人と親友で毎年悪者と戦ってるんでしょ?!ほーんとかっこいい!!で、エルフィーは今年飛行訓練するんでしょ?!一緒に2人で箒買わない?クラス違うから一緒に使おうよ!!』

 

エルファバは、本来1年生で受けるべきだった飛行訓練を体が貧弱だと言う理由で(と、本人は思っていた)免除されていた。

が、ここ数年で体力もつき去年に至っては大蛇と戦ったこともあり飛行訓練に充分な体力があると判断されて1年生に混じる形で授業に参加することになった。その情報をどこから仕入れたのか。

 

『ミス・スミス!!教職員用のテーブルに入ってくるんじゃありませんっ!!』

『ごめんなさーい!待ってエルフィー!』

『ミス・スミスとミス・スミス!食事中に動き回らないでくださいっ!減点しますよっ!』

『はーい。』

 

マクゴナガル教授とスミス×2の攻防戦を全員がポカーンとした目で見ていた。

何を勘違いしたのか呆気に取られた生徒陣にふふんっと得意げにエディは言った。

 

『ふふんっ!私のお姉ちゃん美人でしょ?エルファバ・スミスっていうのよ。』

『君、エルファバ・スミスの妹なの?!』

『うん!』

 

質問したハッフルパフ生のジャスティンはあんぐりと口を開け、その他のエルファバ・ファンとともに動揺してグリフィンドールにいるエルファバ・ファンクラブの管理者であるウィーズリーを見た。

 

『『俺らだって今年知った!!』』

 

黒髪と白髪、日焼けした肌に真っ白な肌、がっしりと筋肉のある大柄な体に少し不健康そうな細い体。そして、思ったことを脳を通さずに表に出すエディと思ったことを一切表に出さないエルファバ。

 

2人はどこをとっても全く似ていなかった。

 

『まあ2人とも放ってても目立つってことぐらいよね共通点は…。』

 

パーバティは誰もが思ったことをその後エルファバに直接告げた。

 

『やめて!』

 

パーバティは生まれて初めてエルファバに怒られた。そしてそのあとものすごい勢いで謝られた。

 

ーーーーー

 

 

「まー、あんたら2人が仲良くしてるところが想像できないけどねむしろ。」

 

その他にもフリットウィック教授吹っ飛ばし事件とか巨大ミミズ出現 in 闇の魔術に対する防衛術とか薬草学で本来人間には攻撃しないはずの蔓に嚙みつかれたとか話せばキリがない。その二次被害として全てエルファバに降りかかっているのだ。ついさっきスネイプに減点されたように。

 

「半年はバレないようにする計画だった…。」

「いや、無理でしょ。」

 

エルファバは頭を抱えた。

しかしエディのおかげでいいことも起こった。

 

「エルファバ。」

 

それは初回の数占いと変身術の授業を終わらせたお昼休み。図書館前の廊下で話しかけたのはセドリックだった。エルファバは本を数冊抱えたまま、どうしたらいいか分からずに身構えてしまった。

 

「君の妹について聞きたいことがあるんだ。」

(え、エディ?)

「どうしたらもう少し大人しくなるかな?」

 

セドリックのユーモアであることはすぐに分かった。きっとエディのことはエルファバと話す口実だったに違いない。

 

「そうね…悪気はないから本当にダメなことはダメな理由を説明すれば言うこと聞くはずよ。でもたまに本当に本人の無自覚なことでトラブル起こすから…その時は見なかったフリをしてほしいわ。」

「それは無理だよ。僕は監督生だし。」

「ええ、だから言ったの。」

 

エルファバも出来る限り普段上げない口角を必死に上げた。ラベンダー曰く(スリザリンのブサイクな女子を除いてと言っていたが)、女の子の笑顔は男子を魅了する最大の武器らしい。

 

(セドリックを魅了したら少しコミュニケーションが上手くいくかしら?)

 

エルファバはそれを友達として大事なセドリックとのコミュニケーションの潤沢油扱いとして使用した。上手くいったようだった。

 

「悪い冗談を言うようになったね。」

 

セドリックはくくっと笑ってから、真剣な顔つきで話し始めた。

 

「この前はごめんね。母さんが、あんな風になってしまって。」

「いいの。」

「母さんが君に謝ってた。僕も母さんの弟のこと知らなかったし、その…君のお母さんのことも。」

 

エルファバはどう返事していいのか分からず、セドリックの制服で輝くPのバッチを見た。

 

「君も辛かっただろうに。」

「そんなことないわ。」

 

疑わしそうな顔をセドリックにされたのでエルファバは付け加える。

 

「本当なの。彼女の存在を知ったのつい最近だし。」

 

そうか、とセドリックは曖昧に微笑んだ。セドリックはとてもいい人で信頼できるがまだいろんなことを話すのには早かった。

 

「私、そろそろ行かなきゃ。」

「ああ。また話そう。」

「うん。」

 

セドリックが背を向けて図書館に入ろうとした時、エルファバは思わず声をかけた。

 

「ねえ、セドリック。」

「なんだい?」

「もしもの話だけど。」

 

エルファバはゆっくりと息を吸った。

 

「例えば…私が誰かを傷つけるような魔法を持ってたとして、あなたにも危険が及ぶとしたら、あなたは私から離れる?」

 

その言葉を口にした後、エルファバはセドリックが放つ雰囲気に縛られてそこから離れられなかった。あまりにもセドリックが真剣な顔でエルファバを見てくるのだ。

 

「ごめんなさい…冗談よ。」

 

セドリックはゆっくりとエルファバに近づいてきた。

 

「?」

 

腕を掴まれたと同時にエルファバの世界は暗くなり、代わりに少し体温の高いセドリックの腕がエルファバの体を包み込んだ。セドリックのくせっ毛の強い髪がエルファバの髪に触れてくすぐったさを感じた時、エルファバのこめかみに柔らかいものが押し当てられた。

 

「これが答え。」

 

セドリックはエルファバをゆっくり離す。耳元で話されるのでむず痒かった。エルファバはセドリックの腕の中で見上げながら戸惑った。

 

「えっ…と…セドリックが盾になって私からみんなを守るって…こと?」

「違うよ、"君を"守るんだ。」

 

やっぱり分からないか、とセドリックは笑う。セドリックの行動の意味が分からず戸惑うエルファバに微笑む。

 

「そろそろお昼食べに行かなくていいの?」

「あー…そうね。それじゃあ。」

「バイバイ。」

 

セドリックの腕の中から離れたエルファバは先ほど柔らかいものが当たったこめかみを触って考えた。

 

(…キス…だったけど、唇ではなかったから愛のキスではないわよね?)

 

大広間に行けばハーマイオニーとロンがいつものように口論していた。

 

「トレローニー教授は君にはオーラがないって言ってた!君は1つの教科でも自分が劣等生に見えるのが嫌なんだ!」

 

ハーマイオニーが口を開く前にエルファバが入った。

 

「今度はどうして喧嘩しているの?」

 

ロンとハーマイオニーが気まずそうにそっぽを向いたので代わりにハリーが答えた。

 

「黒い犬のことだよ。ほら、僕らが占い学で見た。」

 

ハリーがトレローニー教授に死を宣告されたことはあっという間に広まっていた。ティーカップに黒い犬が現れたということが、マクゴナガル教授曰く毎年恒例行事らしい。

 

「あの人インチキよ絶対!」

「まあ僕が少し神妙な顔してるから2人は心配してくれたんだけど、別にそれに関してはそこまで心配してないよ。だって黒犬はシリウス・ブラックなんだろう?」

 

ハーマイオニーは咎めるようにロンを見た。

 

「え、言っちゃいけなかったの?」

「別にそうではないけど…調べたらシリウス・ブラックは動物もどきじゃなかったわ。あまりハリーに期待させたくなかったの。」

「そんなのどうやってわかるのさ?」

「あなたマクゴナガル教授の話聞いてた?動物もどきは今世紀で7人しかいないのよ。さっき調べたらシリウス・ブラックもピーター・ペティグリューも名前が載ってなかったの。ハリーに期待させちゃって悪かったけど、きっと私の勘違いだったわ。だってそんな複雑な魔法を使える人物が偶然2人もいるなんて思えない。」

「いや、偶然じゃない。」

「どういうことハリー?」

 

4人は額を寄せ合って他に話が漏れないようにする。

 

「変身術の授業の後、マクゴナガル教授にシリウス・ブラックとピーター・ペティグリューの関係を聞いたんだ。」

「本当に?」

「うん。最初は教授も話すことを躊躇してたけど諦めて教えてくれた。シリウス・ブラックとピーター・ペティグリュー、そして僕の父さん、は学生時代の親友だったんだ。」

 

ロンとハーマイオニーは顔を見合わせる。

 

「それって…。」

「僕の父さんと母さんがヴォルデモートに狙われた時、シリウス・ブラックの中に魔法で父さんと母さんの居場所を封じ込めた。けど、シリウス・ブラックはすでにヴォルデモートの手先で、奴に父さんと母さんの居場所を教えた。」

 

ハーマイオニーは呻き、ロンは息を飲む。

 

「そのあとだ。ピーター・ペティグリューはシリウス・ブラックの裏切りを悟り、ブラックをマグルのいる通りで追い詰めた。けど、ブラックの方が攻撃が速くて、ピーター・ペティグリューは木っ端微塵に吹っ飛んでしまった。ここまでが語られてきた事実だってマクゴナガル教授は言ってたよ。」

「けど、ピーター・ペティグリューは現れたわね。」

「そう。けど、シリウス・ブラックとピーター・ペティグリューが親友だったなら同じ動物もどきでも話は通じる。現にシリウス・ブラックと父さんは学校内でもすごく優秀だったらしいから。」

「じゃあ、違法で動物もどきになっていたと…申請しなかった理由は分からないけど確かに繋がるわ。」

 

これはハーマイオニーも納得したらしい。

 

「けど、おかしいよね。生きてたとしてスキャバーズはどうしてずっとネズミになって隠れたんだろう?」

「もしもピーター・ペティグリューとシリウス・ブラックの立場が逆なら?ピーター・ペティグリューがシリウス・ブラックに僕の父さんと母さんを裏切った罪をなすりつけたとしたら?それで死んだフリをして逃げ続けていたら?」

「まさか!」

「じゃなきゃわざわざ今になってシリウス・ブラックは脱獄してピーター・ペティグリューを追うんだい?」

「ハリー、逆になぜシリウス・ブラックは今になってピーター・ペティグリューを追うの?13年間も経った今!それにネズミなんていっぱいいるじゃない!偶然ハリーに会って、そこで偶然ロンのネズミを捕まえて、それがビンゴだったなんておかしいわよ!」

「それは…直接本人に聞かなきゃ分からないけど、それでもピーター・ペティグリューの行動だっておかしい!」

 

ハリーとハーマイオニーは一通り議論を終え、クルッとエルファバとロンの方を向いた。2人はちょうど銀の皿の上に出現した美味しそうな焼きたてココナッツクッキーに気を取られていた。

 

「エヘンっ!」

「「?」」

 

ロンもエルファバも唇の端にクッキーのカスをつけていた。

 

「「どう思う?」」

「えっ…あー…僕は、シリウス・ブラックがクロだと思う。…ブラックなだけに?」

 

ハリーはロンは自分の味方をしてくれるに違いないと思っていたのだろう。顔をしかめていた。

 

「パパが言ってたんだけど、アズカバンって大体の人が気が狂っちゃうんだって。シリウス・ブラックの頭がおかしくなっちゃって、自分は無実でスキャバーズこそ真犯人だって思ってるっていう可能性が高いんじゃないかなあ。」

「君はピーター・ペティグリューをスキャバーズだと思ってるからそう言うんだ。」

「君こそ、シリウス・ブラックを気の良いおじさんのエドワード・ホップカークだと思ってないかい?」

 

ハリーはムッとしてエルファバが手を伸ばしたココナッツクッキーをひったくり口へ突っ込む。エルファバは最後の手持ちの金を取られたような顔になる。

 

「次はハグリッドの授業ね。」

 

エルファバは自分に白羽の矢が飛ぶ前に話題を変えた。

 

「そうね。ハグリッドはホグワーツにいる動物のほとんどを手懐けるし、どんなことするのか楽しみだわ!」

「スリザリンと組まされるのが最悪だけど。」

「魔法生物飼育学はマギーいないしね。」

「あら、ロン。あなたがそんなこと言うなんて。」

「あいつ面白いよ。マギーの発言でスリザリンの連中が真っ赤になって怒るのが超楽しい。」

「僕らでなんとかハグリッドの授業成功させてあげようよ。」

 

時間になり、4人は立ち上がってこちらに向かって気絶するフリをするスリザリン生を無視して歩き出す。

 

「ねえ、ハーマイオニー。」

「なあにエルファバ?」

「私1つ分からないことがあるの。」

「何かしら?」

「あなた、数占いの授業に出ながらどうやって占い学に出たの?」

「やあねエルファバ。そんなことできるはずないでしょ。あれは同じ時間にあるわけだし…。」

 

エルファバはジッとハーマイオニーを見てから考えた。

 

(ハーマイオニー隠し事してるわね…まあ、私はこの2年間でいろいろ隠し事してて許してもらったのだから、ハーマイオニーの秘密の1つや2つ気にしちゃダメよ。きっとハーマイオニーにも事情があるんでしょうし。)

 

しかし、ロンとハリーはそうは思わなかったようだった。どうやら2人の話を聞いてたらしく目配せをしていた。

 

ふとハッフルパフの席を見ると、エディが多くの人に囲まれていた。とても楽しそうに笑っている。それを見るとエルファバの心は温かくなった。

 

(たくさん友達出来たのね。)

 

少し離れた場所でセドリックが友達に囲まれていた。セドリックはハッフルパフ中の憧れだと聞いたことがある。軽く手を振るとセドリックの周辺がヒューヒューと口笛を吹いて盛り上がる。セドリックは照れ臭そうに近くの友人の頭を掴み、エルファバに振り返した。

 

(なんであんなに盛り上がってるのかしら?)

 

「ふふんっ。」

「なにハーマイオニー?」

「別に?」

 

ハーマイオニーは3年越しの計画の成功を確信して機嫌が良くなった。

 

 

 

 

 

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