ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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8.とんだクリスマス

「ハリー、食いモンっ!」

「はい。」

 

ハリーが少し膨らんだバックを渡すとシリウス・ブラックはすぐさまひっくり返し、中から出てきたミートパイやチキンやフルーツにがっつき始めた。

 

「ハリー。」

「分かってる。説明するよ。」

 

ハリーはエルファバに座るように促した。エルファバは冷たい石畳であぐらをかいた。

 

「新学期初日にフレッドとジョージにこの地図をもらった。君に見せた通り、これはホグワーツの地図で、どこに誰がいるのか分かる。理由は去年エルファバがいなくなった時にエルファバの存在を知ってたのに面白がって教えなかった結果エルファバが氷の中に閉じ込められた。それに対する償いとホグズミードに行けない僕を気遣ってくれたんだ。で、僕は暇さえあればずっとこれを眺めてた。」

「その時に彼の名前を?」

「そう。最初のホグズミード行きを見計らって彼のいる場所に来たんだ。彼に全部聞いた。…シリウスは無実だったんだ。」

 

(シリウス?)

 

エルファバはごく自然に呼ばれるブラックの名前に眉をひそめた。彼らの関係が相当親密になっている証拠だった。

 

「やっぱり僕が正しかったんだ。ピーター・ペティグリューと彼の立場は逆で、ペティグリューが最終的に自分の死を装ってシリウスに罪を着せたんだ。13年間アズカバンに囚われたシリウスは自分が無実だという真実で正気を保ち続けてた。けどある日新聞である記事を見つけたんだ。」

 

タイミング良く、シリウス・ブラックはかぼちゃジュースを一気飲みしながら古びた新聞紙を投げてきた。

 

「ロンがエジプトに行った記事。」

「まさかこれで見分けられたってこと?」

「俺は奴が変身した姿を何百万回も見てるからな。それに前足が欠けてる。」

 

シリウス・ブラックはエルファバを話が分かる人物だと判断したらしい。チキンを飲み込んでハリーに代わって話し始めた。

 

「いろいろ端折るが、俺はハリーを守るために犬になって脱獄した。でずっと犬になって必死にハリーの元へと近づいた時、気持ちの緩みからかさすがに体の限界が来た。前足を怪我してたもんだから倒れ込んでいたら、隣で寝てた黒猫と共にある少女が自分の部屋に俺を運んだわけだ。」

「私?」

「ご名答。まあ、こっからはお嬢ちゃんも分かってるはずさ。目覚めた時はこんなことしてる暇はねえと思ったが、俺を拾ってくれた子は魔女だと一発で分かったよ。見た目オルレアンだったからな。だから計画を変更したんだ。」

「杖を盗るために大人しくしてたってわけね。」

 

シリウス・ブラックのローブからはみ出てる白い杖を見ながらエルファバは答えた。

 

「まあ最初の目的としてはそういうことだった。けどお前がハリーという名前を出しただろう?『ハリーって親友からの手紙なの。優しくて頭も良くて、才能に溢れている…けどすごく謙虚な人なの。』って。」

 

シリウス・ブラックがわざと裏声を出してエルファバの口調を真似た。エルファバは恥ずかしいやらイライラするやらで顔を背けた。ハリーは苦笑した。

 

「だから、お前についていけばハリーに会える可能性がかなり高いと踏み杖を盗むのはやめてそのまま家にいることにした…勘は正しかった。これだよ。」

 

くしゃくしゃになった紙をこちらに投げてきた。開く見慣れた字で書かれてあった。

 

ーーーーー

 

エルファバ

やあエルファバ。今すごいこと聞いちゃったんだ。ハリーがおばさんを膨らませたって!ずっとハリーのこといじめてたマージ叔母さんって奴だよ。ざまあ見やがれだ!あ、でもパパが言うには怒りによる魔力の爆発だからお咎めはないってよ。だから心配しないでね。

ハリーはこれから漏れ鍋で過ごすらしいんだ。僕らもエジプトから帰ってきたらそっちで滞在する予定だけどそこで落ち合わないかい?ハーマイオニーは来れるってよ。今返事が来た。

返事待ってるよ!

 

ロン

 

ーーーーー

 

もう1通は魔法省の“M”マークが付いている手紙だった。

見覚えがない。

 

ーーーーー

ミス・スミス

 

本日14:17頃、貴殿の住居周辺において「物質一時停止呪文」と「呪文解除呪文」が使われたとの情報を受け取りました。しかし、調査の結果、国際機密保持法により貴殿が他者の命を守るための行為であったと認められたためここにお知らせします。

 

楽しい休暇を!

 

魔法不適正使用取締局

マファルダ・ホップカーク

 

ーーーーー

 

「この手紙でハリーもピーターもどこにいるのか分かった。だからもう1通の魔法省からの手紙を持って行ってハリーに見せた。ちょうど偶然にも…ハリーも叔母さんを膨らませて悪さをしたようだし(シリウスはハリーにニヤッと笑いかけた)、魔法を使った2人のホグワーツ生へのお目付役になったと伝えた。おかげで物事がかなりスムーズに進んだ。」

 

ここまでシリウス・ブラックが話したところでエルファバはたまらず言った。

 

「杖返してください。」

「悪いが俺もこれがないと困るんだよ。今は主に食べ物の調達とかあとは万が一身を守るときに。それにお嬢ちゃんの杖を交換したら俺がホグワーツ内にいるのがバレる。」

「でもそれは母の形見で…。」

「俺だって交換したいものなら交換したいさ。まだ杖の所有権がお嬢ちゃんにあるみたいで言うこと聞かねえんだ。杖元々も癖が強いみたいだしな。」

「エルファバ、お願いだ。もう少し待っててほしい。」

「ハリー。そもそも彼が話すことには全く証拠も根拠もないわ。仮に彼が無実だったとしても、アニメーガスである段階で違法だし杖を故意に盗んだんだから杖窃盗罪よ。普通の窃盗罪より罪が重いわ。」

 

ハリーは悲しげに顔を歪めた。エルファバの良心が痛む。

 

「君なら信じてくれると思ったのに。」

「ミスター・ブラック、私に忘却呪文は効きませんよ。」

「チッ。」

 

シリウス・ブラックはエルファバの杖を渋々しまった。氷がどの魔法も通さないのはエルファバ自身が証明済みだ。攻撃的なシリウス・ブラックには全く罪悪感が湧かなかった。

 

「ハリー。信じてないわけではないわ。この前ピーター・ペティグリューに会って、人柄が分かったの。」

「えっ?」

「は?」

 

エルファバはこの間の深夜に起こった出来事を説明した。シリウス・ブラックは長い顎髭を撫でながら考え込んだ。きっと長い間体を清潔にしていないのだろう。

 

「じゃあルーピン教授はピーター・ペティグリューと一緒にいる可能性があるってこと?地図には出てなかったけど…。ああ、ルーピン教授も僕の父さんたちと親友だったから注意して見てたんだ。」

 

エルファバが怪訝そうな顔をしたのが分かったらしい。ハリーが説明をいれた。

 

「ああ…その下り全部ミスター・ブラックに聞いたのね。」

「うん。ルーピン教授はシリウスに協力してくれそうか聞きたくて声かけたんだ…結果は難しかったけど。エルファバは、ペティグリューにひどいことされたんだ。信じてくれるよね?」

「ええ。信じるわよ。でも、私が言ってるのは世間的な信頼のことよ。」

「お嬢ちゃんの言う通りだハリー。残念ながら13歳の魔法使い2人の証言じゃ信ぴょう性はない。リーマスがピーターと接触したなら信じてくれると思ったが…魔法省も動いてないとなるとリーマスがピーターに丸め込まれた可能性、あるいは記憶修正されてるとか。俺らはあいつを甘く見てたが、今思うと意外とピンチの時に何かよく分かんねーパワー出してたもんだ。」

 

ハリーはエルファバがシリウス・ブラックを信用していないと思った時よりも落ち込んでいた。

 

「ああ、あと…お嬢ちゃんが言ってる日記帳ってのはこれか?」

 

シリウスは近くにある机の中をゴソゴソと探り、なにかを取り出した。

それは繊細な雪の結晶が描かれたボロボロのノートだった。紛れもなくグリンダのノートだ。

 

「あっ、それ!!どうして?!」

「クルックシャンクスだよ。」

「クルックシャンクス?」

 

突然出たなんも関連が無さそうなハーマイオニーの猫の名前だ。ハリーの代わりにシリウス・ブラックは続けた。

 

「ハリーと出会う前に俺は、クルックシャンクスと接触をしてたんだ。向こうは俺が人間だと確信して警戒していたが、最終的には俺の目的を理解し、いろいろ手助けしてくれた。食い物を運んできたり、ピーターが校内に入り込んでないか、あとはお金のやり取りとかな。その時にピーターの臭いがする品としてこれを持ってきたわけだ。」

 

エルファバはクルックシャンクスの頭の良さに舌を巻いた。ハーマイオニーが聞いたら泣いて喜ぶ。

 

「ピーターはそれを探して…何のために。」

「大方、お嬢ちゃんの氷のパワーに関することだろう。あの方ってピーターが言う相手は1人しかない。ヴォルデモートだ。日記帳を自分で隠した理由は分からないがおそらくヴォルデモートを探して見つけ出し自分を助けてもらう代わりに日記帳で情報を与えるつもりだったとかだろう。杖を使わずに操れるしかも魔法に無効化できる力…喉から手が出るほど欲しい情報だろうよ。」

 

エルファバは日記に手を伸ばすがシリウス・ブラックは首を振る。

 

「今は俺が持っていた方がいい。これをお嬢ちゃんが持っていた場合あいつが何をしでかすか分からないからな。13人のマグルを殺害した奴なんだ。いくらお嬢ちゃんが魔法を通さない氷を作れたとしても、お尋ね者で常に隠れている俺が持っているのが賢明だ。」

 

悔しいがその通りだとエルファバがガックリ肩を落とす。やり取りを聞いていたハリーが思わず口を出した。

 

「僕、あなたが早く無罪になってほしい。13年もディメンターと一緒にいて、逃げれた今もこんな生活してて…無罪の人がこんなことするべきじゃないんだ。」

「ハリー、そう言ってもらえるだけでありがたいよ。」

「僕ダーズリーなんかとじゃなくて、ゴットファーザーのあなたと一緒に暮らしたい!」

 

シリウス・ブラックの目が大きく見開かれた。まさかハリーがそんなことを思ってるとは考えてなかったらしい。かなり動揺していた。恐る恐るといった感じでやせ細った手をハリーの頭に乗っけて、ハリーのくしゃくしゃな黒髪に触れた。

 

「そんな…いいのか俺なんかで…?13年も離れてた俺で?」

「その…あなたが…良ければですけど…。」

 

ハリーは自分が思わず言った言葉が急に恥ずかしくなったらしい。少し顔を赤らめながらうなづいた。

シリウス・ブラックの顔はぱあっと輝いた。ハリーを助けるために死に物狂いでアズカバンから脱獄し、今も続く辛い生活が全て報われた… 13年の長い苦しみなどなかったかのような快活な笑みだ。

 

が、意地なのかエルファバという第三者が近くにいたからか、それは口に出さず少し乱暴気味にハリーの頭をワシャワシャと撫でた。

 

「君が望むなら。」

 

エルファバはその2人を眺めてた。ほとんどお互いを知らない人物が絆で繋がれることもあるんだとしみじみ実感した。ハリーが彼を信じ続けてた理由はこういうことだったのだ。

 

ハリーが嬉しそうに顔を上げた時、明るいグリーンの瞳が輝いていた。その瞬間、セピア色の女性がエルファバの頭の中で微笑んでいた。

 

(エルファバ・リリー・スミス。リリー。私のゴットマザー。)

 

ハリーの輝くグリーンと今はないグリンダの日記の中でグリンダと笑ってたあの女性の瞳が重なった。セピア色の彼女の瞳だけ、ハリーの瞳に色付いた。

 

「ハリー。君はジェームズに、君の父さんの生き写しだ。けど目だけ違う。目はリリー、君の母親にそっくりだ。」

 

シリウスはハリーの顔を見ながら言った。

 

ハリーとシリウス・ブラックを自分とゴットマザーに重ねていた。いつかこんな人が自分の前に現われるかもしれないと夢見ていた。しかしそれは本当に夢だった。

 

「あなたが無罪になるように協力します。」

 

シリウス・ブラックと別れる直前エルファバは言った。

 

「ただし無罪になった暁には杖を返してください。それと私はお嬢ちゃんじゃなくてエルファバです。」

「…分かったよ。」

 

シリウス・ブラックは頭をガシガシかきながら気まずそうに答えた。

 

「けど、見た目が本当に"お嬢ちゃん"なんだよな。13歳とは思えねえ。年齢詐欺してんじゃねーか?」

 

シリウス・ブラックはニヤニヤしながらエルファバをからかった。エルファバは無表情にシリウス・ブラックを見てからさっさと空き教室を出た。

 

「エルファバ。マントかぶって。」

 

ハリーと一緒に透明マントに入り姿が見えないまま、グリフィンドール寮へと帰って来る。ガラガラの寮でハリーとエルファバはシリウスを無罪にする計画を立て始めた。

 

「まずペティグリューを探さなきゃ。どこにいるのかな?僕ここ最近クィディッチの練習で疲れて全然地図見れてなくて…。」

「ペティグリューはネズミになれるからこの地図にはのってない場所に潜んでるかも。バジリスクみたいにパイプとか排水溝とか。」

「そうだね。もしそうだとしたらどうやって捕まえよう…?」

「ルーピン教授がペティグリューをどうしたのか聞いたほうがいいかもね。忘却されてるなら忘却したということが証拠になるかも。…ねえ、これロンとハーマイオニーには言わないの?」

「君も言ったようにまだ彼らを信用させる証拠がない。下手にシリウスの居場所とそれを知る手段を2人に教えたくないんだ。」

「…分かった。」

 

隠し事が嫌いなハリーがここまでするのだから相当の覚悟だろう。4人で考えれば心強いがハリーの意見も一理ある。2人で計画を立てているとゾロゾロとホグズミード帰りの生徒が寮を出入りするようになり、それはお開きになった。

 

ーーーーー

 

1番好きなシーズンは何かと聞かれたら、エルファバは迷わずクリスマスだと答える。いい子でいればサンタクロースはやってくる。しかしエルファバの場合は違った。エルファバの元にサンタクロースが来たことはなかった。エルファバはずっと自分が悪い子だからだと思っていたが蓋を開ければなんてことはない。サンタクロースは親なのだから。

 

(でも、1回そんな夢を見てみたかったなあ。)

 

ホグワーツ入学前、クリスマスのたびに悲しい思いをしたのを覚えている。窓から聞こえる笑い声を聞くたびにエルファバは自分が嫌いになっていった。しかし今は違う。サンタクロースではないがそれよりも素晴らしくて大事な友達たちがクリスマスにプレゼントをくれるのだから。

 

「メリークリスマス、ハーマイオニー!」

「メリークリスマス、エルファバ!」

 

起きがけにエルファバとハーマイオニーは抱き合った。

去年のクリスマスはエルファバが諸事情により医務室にいたし、秘密の部屋の騒ぎであまりクリスマスどころではなかったので、しっかりと堪能するのは2年ぶりだ。

 

今も悩み事は尽きないし、完全に心が晴れている訳ではなかったが。シリウス・ブラックという別の悩みの種も増えた。

 

「クリスマスプレゼント見に行きましょう!」

「うん。」

 

エルファバとハーマイオニーは起きたのが早かったらしい。談話室には誰もいなかった。

 

クリスマスツリーに駆け寄り、エルファバは早速丁寧に包み紙を開け始めた。ハリーは書くたびに色が変わるインク、ロンは毎年恒例のお菓子セット、エディからはマフラー。ミセス・ウィーズリーからは真紅のセーターと手作りのミンスパイ、ナッツ入りの砂糖菓子だ。ハグリッドは噛み付く財布だった。セドリックからはキレイな髪飾りだった(「ねえ、もういい加減セドリックがあなたを好きだと認めたらどう?」「もうっ、そんなんじゃないったら。」)。

 

「うわっ。」

 

ハーマイオニーからはエルファバの身長ほどある熊の人形だった。足の裏を押せば小さくなる。しかもラベンダーのいい匂いがする。エルファバは肌触り最高の熊に抱きついた。心が軽くなった気がする。

 

ディメンターによって呼び覚まされた悪夢を癒してくれるのはいつだって友達だった。

 

エルファバとエディは2人で大広間まで降りるとハリーとロンが待っていた。

 

「メリークリスマス!ロン、ハリー!」

「メリークリスマス、エルファバ。プレゼントすごくクールだった!あの動く人形を見れば箒乗る時の正しいフォームがわかるよ!」

「ハリーこそ。あのインク本当に綺麗…」

 

ハリーとエルファバが仲良く話しているが、ハーマイオニーとロンがお互いに全く口を効いていないことに気づいた。

 

「今度は何で喧嘩してるの。」

 

もはやこの2人が喧嘩しているのは日常茶飯事なので特に驚かない。小声で聞いたエルファバにハリーは肩をすくめた。もう相手にしないことにした。

大広間には大きなテーブルが中央に1つ、その上に食器が十二人分用意されていた。どうやら今年は教授たちと一緒にクリスマスを過ごすらしい。

 

「メリークリスマス!よくぞ来てくださった。さあ、お座りお座り!」

 

ダンブルドア校長はずいぶんご機嫌で、陽気にスネイプにクラッカーを渡したり自ら三角帽子を被って皆にご飯を食べるように促した。

 

教授たちを交えた夕食はなかなか面白かった。噂の死を予言するトレローニー教授にも会い、エルファバは死を宣告された。(「白い髪!!!貧弱な体!!!残念ながら…もうまもなく…!!」「貧弱じゃないもん。」)

ダンブルドア校長はエルファバに少し多めにローストビーフを切り分け、いたずらっぽくウインクをした。

ハリーはロンやハーマイオニーを置いて、ご馳走を持って早々に立ち去った。

 

(…シリウスに食べ物を持って行ったのね。教授の前で少し大胆じゃないかしら。)

 

案の定、その背中をスネイプがジッと見ていた。エルファバは心臓に悪く身震いがした。

 

「おうおう、そうじゃ。」

 

ダンブルドア校長はそんなことを全く気にせず、話し出した。エルファバは引き続きローストビーフをかじっている。ハーマイオニーはマクゴナガル教授と話し込み、ロンもどこかへいなくなった。教授陣とクリスマスを過ごすのは気まずく、ハリーを追いかけて行ったのだろう。

 

「エディ・スミスが入学してからホグワーツはずいぶん明るくなったのお。わしは嬉しい。エディは全ての寮の架け橋となってくれていると思う。あそこまで分け隔てなく人と関われる子も珍しい。」

 

エルファバは嬉しいが、素直にその感情を表に出せなかった。

 

「エディは…元々魔力はあったんでしょうか。私正直エディに魔力があった記憶がなくて。」

 

と、自分で言ってふとエディが魔力を発揮するであろう頃に自分がそもそもエディのそばにいなかったことに気づいた。

 

「エディは優秀な魔女だとスプラウト教授が力説しておったぞ。問題は興味のあるものとないものの差が激しすぎることだとも。」

 

ヒクヒクと髭を動かしながら、ダンブルドア校長は話す。エディという存在が面白くてしょうがないといった顔だ。対してスネイプは不愉快極まりないという顔をしていた。エディはスネイプの授業で何度も薬品を爆発させているという噂である。フィルチからもフレッドとジョージ並みに目をつけられているとも。

 

「きっと、君らは良いコンビなんじゃろうな。あの子はいつも君の自慢をしているそうじゃし。仲良くしておいた方が今後哀れなミスター・ディゴリーやその他教授を救うことになるかもしれん。もちろん、君も。」

 

にっこり笑いかける校長にエルファバは曖昧に笑っておいた。いろいろ言いたいことはあるが…確実に入れるのはエディのトラブル気質は決してエルファバがいたところで解決するわけではないということだ。

 

エルファバは冷めたクリームパスタを自分でよそいながら、今ここにエディがいたらどんなに楽しいかと考えた。

 

 

ーーーーー

 

エルファバは寮の戻ると、なんとハリーとロンVSハーマイオニーという構図が出来上がっていた。理由はこうだ。

 

「ハーマイオニーが世界最高の箒を!!教授に調べるように指示したんだ!!」

「ピカピカの箒が1度解体されちゃうんだよ!!」

 

誰もいない談話室での2人の憤慨っぷりは大したものだが、エルファバは至って冷静だった。

 

「…誰からのプレゼントだったの。」

 

エルファバは紅茶を飲み干して静かに聞いた。2人は少し詰まったが、ロンが答えた。

 

「名前はなかった。ハーマイオニーはシリウス・ブラックだって。奴が呪いをかけたかもしれないからって。」

 

エルファバはちらっとハリーを見たが、どうやらビンゴらしい。エルファバからサッと目を逸らした。

おそらくシリウスがあの後サプライズであげたのだろう。クルックシャンクスがお金を確保したと言っていたのはそのためだ。が、今のハリーは事情を知ってもなお、ハーマイオニーにはそれを言えない。

 

「ふーん。」

 

(じゃあハーマイオニーは悪くないじゃない。)

 

エルファバの物言いに若干のトゲがあるのにハリーもロンも気がつかないわけにはいかなかった。ちょっとたじろいで、ハリーはエルファバの説得にかかった。

 

「エルファバ、仮にだよ。もしもすっごい高級で貴重な本が匿名で君の元に届いたとしよう。その本を読もうとした直前、その本には呪いがかかっているかもしれないから1度解体するって言われて没収されたらどう思う?」

 

ハリーの問いにエルファバは淡々と答えた。

 

「別に呪いがかかっていなかったら戻ってくるでしょうから待つわ。ダメだったら…まあ今度自分で買うわ。」

 

これは間接的にハリーに箒は確実に戻ってくるのに何をそこまで怒っているんだと言っていた。ハリーにも伝わったらしく、顔を歪めた。

 

「2人ともハーマイオニーが良かれと思ってやったのに、自分の自己欲求を妨害されたから怒ってるのね。少し意地悪よ。」

 

エルファバは荷物をまとめ、さっさと自分の部屋へと戻る。

入って真っ直ぐにベットの上ですすり泣くハーマイオニーの前に座った。

 

「私の判断よ。ハーマイオニーは悪くないわ。」

 

ハーマイオニーが口を開く前にエルファバは言った。ハーマイオニーはこういう時、同情されるのを嫌がるのだ。エルファバは自分の意思で来たことを知ってほしかった。

 

「男ってバカなのよ。」

 

ハーマイオニーはため息をついてエルファバによりかかる。ハーマイオニーの豊かな栗色の髪がエルファバの顔に覆い被さり、なにも見えなくなった。

 

「箒と自分の命どっちが大事なわけ?もしものことだってあり得るじゃない!ハリーはシリウス・ブラックが無実だって信じて疑わないからあんなこと言うのね。ロンも便乗してっ…関係ないじゃない!あれが本とか何かだったら絶対私の味方してくれた!」

 

エルファバは黙って話を聞いていた。

 

「…ごめんなさい。こんなに愚痴って。」

「いいよ。だって私のゴットマザーがハリーのお母さんだって知った時、私が部屋中凍らしてすっごい寒い中でもハーマイオニーは最後まで慰めてくれたじゃない。それだけじゃない…もう何回ハーマイオニーに慰められたか分からないわ。」

 

エルファバはハーマイオニーの手を握り、口角を上げる。

ハーマイオニーの髪に隠れて全く見えないが。

 

「プレゼントありがとう。あのクマさんと寝始めてから快眠なの。」

「良かった。もう深夜に遊びに行っちゃダメよ。」

 

エルファバは驚いてハーマイオニーを見た。髪で隠れて見えないが。

 

「やだ…知ってたの?」

「当たり前じゃない。あなたがいなくなるとロビンがニャーニャーうるさいのよ。クルックシャンクスに八つ当りするし。ラベンダーとパーバティは気づいてないと思うけどね。」

 

ハーマイオニーは顔を上げて、いたずらっぽく大きな前歯を見せて笑う。やっとエルファバはハーマイオニーの顔が見えた。目が腫れている。

 

「…ごめん。」

「でも窓から見てあなたの"作品"、月に反射して綺麗だった。今度お昼とかに見せてよ、ねっ?」

「…頑張る。」

 

エルファバとハーマイオニーは仲良く、本を読み始めた。

 

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