彼女は僕と同じ立場の人間だと思ってた。自分の死を恐れ、大多数の人間につく普通の、ジェームズやシリウスなんかと違う人間なんだと思ってた。あの時までは。
それは闇の帝王が人間以下の存在になり果てる半年前。
『ねえピーター。あなたどうしてここにいるの?』
『僕は1年前にデスイーターになるように言われたんだ…。』
本当のことを言えば、自分から進んで裏切ることを選んだ。デスイーターは当時対抗組織である不死鳥の騎士団の2倍の戦力を誇っていた。弱い自分が死ぬのは時間の問題だと感じ、自らスパイになることを選んだのだが、グリンダに臆病者だと思われたくはなかった。そっちの方がマシな理由に思えた。
『そう…。』
グリンダは神秘的な美しさだった。彼女の瞳を見れば誰もが彼女は多くの困難を乗り越えてきたのだと思う、そんな力強さがあった。グリンダはそんな瞳で何かを決心したようにピーターを見た。
『つまりあなたは脅されている…そういうことでいいかしら?』
『ああ。そうだよ。』
『じゃあ逃げましょう。』
ピーターはグリンダが何を言ったのかわからなかった。
『へ?』
『あなた…脅されてるんでしょう?あなた自身の意思でここにいるわけではない。正直最初はあなたの意思でここにいると思って警戒してたけど、見た限りあなたは常に怯えているわ。大丈夫、あなたを助けるわ。だから私を信じて。』
グリンダはピーターを心底心配した目で見ていた。
『実はね、"例のあの人"を倒す方法が見つかったかもしれないのよ。私がキーパーソンになるはずだわ…自分で言うのは嫌だけど。ダンブルドア教授にそれを打診してみようと思うの。あなたのことも…脅されているから助けてほしいって。』
その瞬間、ピーターはグリンダの好きな部分が全て醜く見えるようになった。瞳も、髪も、その自分に同情する優しさも。
『……ありがとう。君は優しいね。』
特別だと思っていた人間が自分と同じように臆病で、人を裏切るような人物だった。だからグリンダが好きだった。しかし、勘違いだったのだ。彼女は命をかけて不死鳥の騎士団のメンバーとしてここにスパイし、臆病者な自分と出会った。
彼女もジェームズ、シリウス、リーマスと同じだった。自分が彼女と同じだなんてなんと愚かしいことか。彼女と別れたその足でピーターは裏切り者の密告をした。その数日後、話があると言ってマグルの登山客が多い山へと誘い込んだ。
『ピーター、なに話って?悪いんだけどなかなか会えなくてまだダンブルドアには言えてないの。』
『ああ、そうなんだ…。』
『ピーター、どうしてそんなに震えているの?』
ピーターはその理由を答える必要はなかった。直後に悲鳴が聞こえ、グリンダがそっちに向かって走りだしたからだ。悲鳴に混じり笑い声もあった。
『なんてことを!!』
20人ほどのマグルが7人の魔法使いの手によって惨殺されていた。ヒステリックに笑う魔女は機嫌が悪く、死の呪文ではなくわざと痛みを感じるような殺し方でマグルの息を止めていた。グリンダが杖を取り出した。
『エクスペリアームズ 武器よ去れ』
杖を奪われたグリンダは困惑したようにピーターを見た。
『ピーター…!?』
『ご機嫌麗しゅうございます、下劣なスパイさあん?』
状況を把握したらしいグリンダは追い詰められているにも関わらず、毅然とした態度で7人の闇の魔法使いたちへ向いた。囲まれている以上、杖がなければあるのは死のみにも関わらずだ。
『下劣はどっちだかね、ミセス・レストレンジ。やっぱりあなたの義兄のルシウス・マルフォイはクロね。心配ご無用、あなたはすでに証拠がゴロゴロ出てるからあなたの髪のように真っ黒よ。帰って報告しないと。』
『お初にお目にかかりますミセス・スミス。しかし私の名前を報告する必要はない。我々のボスから君のことは全てにおいて再起不能にしてから始末するように命令されている。』
ルシウスの発言にデスイーターたちが舌舐めずりをしてグリンダの身体を見た。
『そうはいかないわ。今日は私が夕食を作る日なの、早く帰らないと。』
その毅然とした態度を見てピーターはますますグリンダに裏切られたという怒りが強くなっていった。
『面白い発見だわ、グリフィンドールにも腰抜けがいるのね。』
グリンダの言葉は恐怖から、友人たちを裏切っているピーターの心をえぐった。
『うるさいっっっっ!!!お前が僕を裏切ったんだああっ!!!レイブンクローは臆病者がいるって言ったじゃないかああああっ!!!』
『ええ。私は臆病者よ。…普通の人以上にマグルの夫とその娘を失うことを恐れてる…私の夫は私の活動を知らない、今も私が仕事してると思ってるわ。』
その自己犠牲がジェームズ、シリウス、リーマスに似ていた。ピーターは怒りで気が狂いそうだった。
『あなたってコンプレックスの塊、』
やめろ…。
『優秀な3人に劣等感を抱いてる。嫉妬してる。』
やめろ…。
『なのになんも努力してない。』
やめろ…。
『臆病者と腰抜けは違うのよ。』
『やめろおおおおっ!!クルーシオ 苦しめっ!!!』
呪文をかけたにも関わらずグリンダは全く動かなかった。むしろ、
『なんなんだそれは!?』
グリンダは全く杖を持っていなかった。にも関わらずグリンダ周りを囲むように薄い氷の板が現れた。
『レダクト 粉々に!』
呪文が氷に当たって吸収される。氷になんの変化もない。
グリンダは必死なデスイーターを嘲笑うと両手を空にあげた。
『ついでだからあなたたちも道連れにしてあげる。』
周囲はだんだん刺すような寒さになり、肌を切り裂くような風が吹く。その風はだんだん豪風と呼べるほどの強さとなり、雪が混じりだした。
『こいつ杖をもう一本隠し持っていたぞ!!』
誰かが叫ぶが、グリンダは声を上げて笑った。
残忍で、人を見下す笑い。
グリンダは両手に何も持っていなかった。
『やめろっ!!助けてくれえええっ!!』
グリンダがデスイーターの1人に触れると一瞬で彼は氷の塊となった。グリンダが踏みつけると彼はガシャンとただの破片となる。対して殺されたマグルたちの周囲に手をかざすとドーム型の氷が彼らを包んだ。まるでこの豪雪から守るように。
ベラトリックスはグリンダに緑の閃光を何度も何度も飛ばしていくが、その度に大粒の雪が緑の閃光を包み、ただの氷の欠片となっていく。ピーターは脇目もふらず、他のデスイーターを押しのけて必死にその異常現象から逃げ出した。グリンダは普通じゃない、化け物だった。
『ピーター!!!』
グリンダが操る氷の棘がピーターに迫ってくる。
『あああああああああっ!!!』
あれほどに命の危険を感じたことはなかった。寒い。冷たいあの氷に自らを貫かれるという恐怖はこれまで感じたものとは桁違いだった。
『そうそう、逃げ惑いなさい。杖に依存しているあなたたちに私の“これ”なんか微塵も分からないでしょうね。』
そしてグリンダは杖も箒もなく宙へと浮いた。
『さあ、あなたのボスに伝えなさい!!私は何年でもこの氷の中で、夫と娘に会える時を待つわ!!』
この豪雪の中で死んでしまうと思った。目の前が真っ白な中で、自分の存在も消えると思った。命からがら逃げ切ったピーターは、ダンブルドアにグリンダが裏切り、多くのマグルと魔法使いを氷の中に閉じ込めたことを伝えた。ダンブルドアはひどく疲れ切った顔をした。
『それは確かなことかの?』
『…はい…この目で見ました。』
実際、魔法省からも同じ発表をされた。ルシウスの差し金だろう。グリンダの死をきっかけに夫のデニスは消息不明となった。リリーがその事実を知った時彼女の死をひどく悲しんだが、裏切ったことに関してはハッキリとそれは違うと言った。
『リリー、落ち着くんだ。ハリーが起きるよ。』
『私は落ち着いているわジェームズ。ピーター、グリンダがマグルを殺すわけないじゃない。デニスはマグルだし、子供だっているのよ?』
『でも、僕は見たんだ…。』
『そもそもグリンダ自身だって混血じゃないの。』
『リリー、奴ら全員が純血ってわけじゃないよ。混血だって沢山いるしコンプレックスを持ったマグル生まれだっている。』
ジェームズの言葉にリリーは首を振った。
『けど、私は彼女が人殺しになるなんて思えないもの!じゃああの子はどうなるの?エルファバは?私のゴットドーターは人殺しの娘として一生を過ごすの?そんなの許せないわ!私の親友はそんなことする人間じゃない!』
一方でピーターは闇の陣営からはピーターの失態であると責められ、次に失態を犯せばピーターの命はなかった。結局リリーは最期までダンブルドアにグリンダの無実を訴え続けて亡くなったらしい。
時は流れて11年後、ピーターの飼い主の友人としてグリンダとデニスの子供が現れた。飼い主の話によれば彼女の人生はグリンダがいなくなったことによりずいぶん悲惨だったらしい。何も罪もない娘を不幸にさせた罪悪感があったものの、グリンダにそっくりな彼女を見ると自分を侮辱したグリンダへの恨みが再熱した。
グリンダの痕跡を消すためにどさくさに紛れてグリンダの遺品を奪った。
"デニスには反対されたけど、やっぱり不死鳥の騎士団に入ることにした。私は自分の命が大切。けどそれ以上にデニスとこれから生まれる子供が平和に生きていける世界がほしい。"
ピーターはそう書かれたページをビリッと破り、捨てた。しかし、グリンダの日記を見るとグリンダはいかに幸せだったのか、よく分かった。
『僕は普通の人間を殺したのか…?違う、グリンダは杖を使わずに不思議な魔法を使ってた。あいつは普通じゃなかった。なんの努力もしていない非凡な人間だ…!』
そうは言ってもデニスや娘と幸せそうに笑うグリンダの日記を全て燃やせるほど、ピーターは非情になれなれなかった。グリフィンドール塔の近くに日記が入った箱を埋めた。今はどこにあるか分からない。
何もかも、全て、自分の臆病さが招いた結果だった。
「あ…あ…あ…。」
周囲の草木は枯れ、霜がすべてを覆っていた。全てがだんだん黒くなっていく。罰なのかもしれない、ピーターはそう思った。しかしピーターは全ての罪を思い出してもなお、罰を受ける覚悟はなかった。
「やだ…やだ…!!ぼぐはじにだぐない!!!じにだぐない!!やべろ!!だのむよ!!」
鼻水と涎を垂らしてピーターは懇願した。
ピーターの脳裏に浮かぶ、学生時代の思い出。木の下でジェームズが、シリウスが、リーマスが笑っている。くだらないことで笑って過ごす学生時代は最高の思い出だった。
ーーーーー
シリウスの手足は鉛のようだった。まぶたが重くて開けられず、居心地のいいベットにいつまでも寝ていたかった。
「…いやはや、しかしどう対処しようか?こんな失態が知られれば私の支持率は急降下だ!」
「そうじゃのコーネリウス。しかしシリウスは13年も無実の罪でアズカバンにいたのは事実じゃろう?それを隠してあとで露呈するよりもよっぽどいいじゃろう?」
「まっ、まあ、そうだな…しかしどう言えば…?」
「全てを恐れることなく、伝えるのじゃ。包み隠さず。おおっ、噂をすれば起きたようじゃなシリウスよ。」
目を開けると、シリウスはちょうど白い髭の老人と目が合った。隣にいるのは確か現大臣のコーネリウス・ファッジだ。
「チョコレートを食べるのじゃシリウス。まずはそっからじゃ。」
シリウスは訳も分からずにチョコレートをかじる。ダンブルドアはファッジに席を外すようにお願いし、シリウスの近くに座った。
「あっ、あの…俺は…!」
「無実じゃよ。」
「…は?」
「君にキスが行われる数分前、新たなる事実が発覚したのじゃよ。わしらは君がいるという話を聞いてクィディッチ競技場へと向かったのじゃが、どうももぬけの殻じゃ。そうするとどういうわけか、どこからともなく音が聞こえてくる。ピーター・ペティグリューが自らの罪を棚に上げ、君やジェームズの才能に嫉妬するその瞬間の声じゃ。全ての歯車がぴったりと重なった。間一髪、君は助かっ「そうだ!ピーター!あいつは逃げた!いってえっ!」」
シリウスは背中の痛みにうずくまる。
「落ち着くのじゃシリウス。君は怪我人じゃからのう。よく聞くのじゃ。奴は逃げてはおらぬ…むしろ…キスはピーター・ペティグリューに執行された。」
心臓を直接撫でられたような感覚がした。
「ディメンターは直前になってキスを阻まれたことにひどく腹を立ててな。真犯人がピーター・ペティグリューだと分かると真っ先に奴の元へと向かい…執行したのじゃ。」
ダンブルドアの発言にはディメンターへの嫌悪が見え隠れしていた。
「真実は闇の中じゃ…しかし、ホグワーツの教授30名以上がピーター・ペティグリューの自白を聞いた。じゃから晴れて君は無罪じゃ。」
ちいと手続きが面倒じゃがな、とダンブルドアは笑う。まずシリウスの脳裏に浮かんだのはハリーの顔だった。ゴットサンと、ジェームズの息子と暮らせる。犯罪者としてコソコソ隠れるのではなく堂々と、胸を張ってこの世界で…。
「けど…そんなことで…。」
「ああ、そうじゃ。当然謎は残る。ミス・スミスを…黒い子と白い子のことじゃが、人質にした理由や脱獄した手段などを伝えないといけない。君が無罪放免になるまでに不可解なことが立て続けに起こったのじゃ。」
ダンブルドアはチラッとマダム・ポンプリーを見た。マダム・ポンフリーは誰かにブツブツと文句を言っている。
「今朝聞いた話じゃが、4人の生徒が雪崩のように階段から落っこちたそうじゃ。不幸なことにホグワーツの階段は動く。結構な大惨事になったようじゃの。しかし4人は全員平気だと言い張って医務室に来ようとせんかった。まあ半強制的に来させたがの。」
ダンブルドアがそれをさも愉快そうに話した理由をシリウスは少し考えてからハッと思い出した。
「ジェームズが俺を助けてくれました。」
「ほお?」
「ジェームズの守護霊は銀色の牡鹿だった。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが…ジェームズが俺を助けてくれたんです。」
「さすがじゃの。彼はどんな時も自らを省みず友人を助ける。」
シリウスはハリーが誇らしかった。13歳で有体の守護霊を作れる魔法使いはこの世に何人いるのだろうか。しかもジェームズの雄鹿を…。
「いい加減本当のことを話すのだ!!」
話を遮った怒鳴り声にシリウスは眉をひそめた。自分が、何よりジェームズがこの声の主が嫌いだった。そしてそのあとに生徒たちの抗議が聞こえた。
「本当のことも何も僕たち階段から落ちたんですスネイプ教授。」
「ええ、本当に。」
「嘘をついても無駄だ!!階段から落ちてこんな傷がつくはずがない!!昨晩消灯時間以降に出歩いたな!?」
「嘘だと思うならグリフィンドール生全員に聞いてください。」
「もしも、僕らが同じ時間に2人存在したとかなんとかなら話は別ですけどね。」
カーテンの隙間からくしゃくしゃな黒、フワフワの赤、ボサボサの白、もさもさな栗の髪がシリウスの目に入った。4人の後ろ姿には各自擦り傷をつくったり青痰があったりするが、大怪我をした者はいないようだ。スネイプは4人に何かを言おうとするが逆にマダム・ポンフリーに怒られて、仕方なく退散した。
ハリーがまるで居場所を知っていたかのように後ろを向く。シリウスと目が合ったがハリーはすぐに目を逸らし、他の4人と歩きだす。
「君が無罪になって会うのは初めてじゃというのにずいぶん親しいようじゃのお。」
ダンブルドアはいたずらっぽく笑った。
ーーーーー
4人が"一緒に階段から落ちた"数日後、シリウス・ブラックの無罪が大々的に報道され、ホグワーツ中が騒然となった。新聞には当時の魔法省が起こした失態の数々、13年間も地獄のような環境におかれた無実の男の悲劇や13年も犯罪者を逃していたファッジの政権への批判が書かれていた。
「僕の杖と地図、戻ってきた!!」
ハリーはその日の放課後、嬉しそうに自分の杖をブンブン振りながら寮に戻ってきた。
「本人はもうここを出たらしくて、それは残念だったけど。あっ、エルファバのもあるよ!日記もね。」
ハリーはエルファバに羊皮紙の巻かれた白い杖と日記を渡してきた。
「良かったわ。そのまま持ってかれたらどうなるかと…。」
エルファバはそう言いかけて、杖に巻かれた羊皮紙の特徴的な文字で書かれた短い手紙を読んで固まった。
ーーーーー
可愛いおチビさん
あなたがずっと返してほしいと言っていた大事な大事な杖、お返しします。おチビさんの杖が余ると思いますので回収させて頂きますね。次会う日までに1ミリでもあなたの身長が伸びて大人の色気がついていることを願って。
黒犬より
ーーーー
エルファバはとっさに自分のローブに手を突っ込んだ。
「ない。」
「エルファバ?どうしたの?」
「あの人今度は私の新しい方の杖持ってったわ。」
「え?いつ?」
「分からないわ。だって最後の授業の時はあったもの。」
(あの人…やっぱり好きじゃないわ。)
みんなあの夜の出来事をもとに様々な憶測をたててはいるが誰も真実に近づけるようなことを言っている人間はいない。
「なんか自分だけ真実を知ってるなんていい気分。」
「ロンったら。」
ハーマイオニーはロンの浮かれっぷりにため息をついた。ハーマイオニーの顔の腫れは大分引き、ロンの手に巻かれた包帯も今日中に取れる予定だ。
「けどさ、なんで僕らに言ってくれなかったんだよ?」
「だってマクゴナガル教授と約束してたんですもの。」
しれっと言うハーマイオニーにロンは不満げに額にシワを寄せた。
今は中庭で特に話を聞いている生徒もいない。心置きなく話せた。
「でももうやらないわ。だって気が狂いそうだったわ。学期末には逆転時計は教授にお返しする。」
「ねえ、君たち。」
2人に話しかけたのはハッフルパフの監督生、セドリック・ディゴリーだった。ハーマイオニーの中でエルファバの彼氏候補第1位である。ハリーのグッジョブな計画を聞いた時ハーマイオニーは大喜びだった。
エルファバ自身もセドリックに秘密を知られたが受け入れてくれたと話していた。もうこの2人を隔てるものは何もない。あとはセドリックが勇気を出すだけだ。
「エルファバの友達だよね?探してるんだけど。」
「ちょうどあなたの後ろにいるわ。」
セドリックが後ろを向くと、1つの丘を挟み、足に包帯をグルグル巻きにしたエディが木の下で友人と話していた。しかしエルファバの姿は見えない。
「えっ?」
「ごめん、エルファバ丘の陰に隠れてるっぽい。今から仲直りするんだよエディと。」
「えっ、どうして?」
あれほどまでにエディを拒絶していたエルファバが、どういう風の吹き回しでそんな思いに至ったのかセドリックには理解できなかった。
「そうね。階段から落ちてその怖さを知った時、エディのことが心配になったらしいわ。というか素直になろうと思ったんですって。あの子も複雑なようで単純だからねー。」
「それってすっごい複雑ってこと?」
「ロン、あなたは黙ってなさい。」
セドリックはロンとハーマイオニーのやり取りを聞いてはおらず、エディにコソコソ接近する白い少女を観察していた。
(なんて言おう。どうしよう。ハーイでいいのかしら?こういう時なんて言えばいいのかしら?本のどこを探しても長年拒絶し続けた妹との仲直りの仕方なんて書いてなかったわ。どうしよう。意外とエディは気にしていないかも?いや、そんなことないわ。あの子も繊細だもの。でも「あっ、エルフィー!!」
エディは友達がいるのを気にせずにこっちに駆け寄ってきた。
「エルフィーが言ったこと本当だったね!あたしあいつに頬擦りとかしちゃってた。今思うとホント気持ち悪いっ!うう〜っ!!…エルフィー?」
「なに?」
「あっち行って!とか言わないの?」
周囲にいた友人たちは空気を読んで周りから姿を消した。エディは怪訝そうにエルファバを見つめた。
「エディ。」
エルファバのはエディの手を握る。色黒なエディの肌と色白なエルファバの肌。
「私ね、あなたは覚えてないでしょうけど、間違えて私の"力"でエディを傷つけちゃったの。そのあと、もう2度とあなたを傷つけないように必死に避け続けた。酷いこといっぱいいっぱい言ったわ。けど、私…あなたが大好きよ。ずっと私のこと、こんな私を好きでいてくれてありがとう…。これから、私はあなたの普通のお姉ちゃんでありたいわ。」
エディはまるでそれを予期してたかのように、ふふんっ、と得意げに笑った。
「エルフィー、あたしこんな日が来ること、分かってた。分かってたの!エースオブベースが今年のビルボードで何曲もランクインすることぐらい分かりやすいよ!」
エルファバはエディのわかりづらい例えを聞き流した。エディは改めてぎゅっと手を握る。
「エルフィー、あたしの話を聞いてほしい。ホグワーツに入学する前と入学したあと、ぜんぶ、ぜーんぶ!!エルフィーも友達紹介して!!ボーイフレンドも!!絶対ね!!」
「うん。」
「あたしの好きな曲全部聞いて!!」
「うん。」
「あたしのために…雪だるま作ってくれる?」
エルファバは周囲を見渡しハーマイオニーやロン、セドリックしか見ていないことを確認すると、左の手のひらをエディの前に見せ、右手を手品のようにクネクネさせると、キラキラと輝く粉が現れて一瞬で2つの玉がエルファバの手の上に乗っかった。
「もちろん。」
ハーマイオニーたちの場所からエルファバがふっと見えなくなった。エディがエルファバに抱きついたのだ。エディの重さに耐えられらなかったエルファバはそのまま芝生に倒れこんだ。
「エルフィー!今からルーピン教授のところに行くよっ!」
「え…え?」
「エルフィーだってどっちみち罰則でしょ?」
「まあ、そうだけど…。」
エディはエルファバをつかんで走り出す。エルファバは走りながらロンたちに手を振った。幸せそうだった。
多くの生徒があの事件を見た。ホグワーツ内に人狼がいるという事実は確定したが、幸か不幸かあの暗闇の中でルーピン教授がそうだと断定できる人間はいなかった。ルーピン教授がそうなのではないかという疑惑は生徒たちの中では拭えなかったが、確証がないことをいいことにそれはあくまで噂にすぎないとダンブルドア校長は言い張った。というか強引に押し通した。唯一公式で真相を分かっているマルフォイはエディが口止めしたらしい。あのマルフォイをどうやって口止めしたのかというのはエディのみぞ知る。
「今頃、校長室には親御さんからクレームの手紙が大量に届いてるだろうね。私のところにも吠えメールがいくつか届いたし。」
「クレーム?みんなどうしてそんな意地悪するの?」
「私のような人間が生徒を教えるというのはあまり良くないことなんだよ。」
エディはムスッとクッキーをかじる。自分のお気に入りの人がいわれのないことで嫌がらせを受けるのが嫌で嫌で仕方がないようだ。
「ほうら、また来た。」
フクロウが赤い便箋と手紙を落としていく。ルーピン教授は開けようとはせずにそのまま暖炉に投げ込んだ。その手紙が火の中で小さく化け物とか、人間ぶるなとか言っていたのはルーピン教授も聞こえているはずだ。ルーピン教授は曖昧に微笑んで、再び席に戻った。
「…ルーピン教授?」
エルファバはティーカップを置いておずおずと聞いた。
「なんだい?」
「ごめんなさい。私教授のことを知らずにたくさん失礼なことを言いました。それに意味もなく怖がって…本当にごめんなさい。」
(あなたには私の気持ちは分からないとか、その他もろもろ。むしろルーピン教授は誰よりも私のことを理解してくれてたわ。)
「大丈夫さ。そんなに大したことじゃない。君の過去を考えたらね。それより君たちはいいのかい?」
「なにが?」
「私と一緒にいて怖くないかい?」
「何言ってんのルーピン教授。全然怖くないよ。だってルーピン教授は薬飲めばいいんでしょ?」
「まあ、そうだけど…。」
ルーピン教授はこれ以上聞いても答えは同じだと思ったのだろう。それ以降言及はしなかった。
「夏休みはね、エルフィーのこといないって言いやがった友達にエルフィーを紹介するの。で、エルフィーと一緒にショッピング行って、お菓子つくって、公園でブランコして、宿題手伝ってもらって、あとアイススケートもしたい!」
エディがいろいろ言うのをエルファバは黙ってとても嬉しそうに聞いていた。ルーピン教授はそんな2人を微笑ましく見守った。
幸せだったのは2人だけではない。今年グリフィンドールは見事決勝戦でスリザリンを負かし、優勝した。チームを優勝へと導いたハリーは大スターとなり、バタービールを大量にかけられてびしょ濡れだった。お祭り騒ぎのグリフィンドール生の中にはエディもいた。エディがいれば他寮の生徒も来るわけで、皆は寮を飛び出し、赤、黄、青のネクタイをした生徒たちが大広間で食べたり飲んだりした。
数少ないがエディに着いてきた緑のネクタイをした生徒もいたらしい。エディの功績に首無しニックと血みどろ男爵は涙ぐみ、ダンブルドア校長もかなり上機嫌だったそうだ。
「エルファバ!」
セドリックは危うくバタービールをかけられそうになり固まってたエルファバを引っ張ってあまり人のいないところへと連れ出した。
「ありがとうセドリック。」
「いや、大丈夫!あのさ、」
「うん。」
「僕のガールフレンドになってくれない?」
セドリックはいたって真面目だった。エルファバはハーマイオニーやラベンダーが散々言っていたことをセドリックが口に出し、また別の意味で固まった。
「…あー…それって…?」
「悪いことじゃないからとりあえずイエスって言って!」
「いっイエス?」
「ありがとう!」
セドリックはエルファバに軽く唇にキスをしてから、再び人ごみの中に紛れていった。友人たちはヒューヒューと大いに茶化し、うるさい、黙ってくれ、とセドリックは叫んでた。
「…へ?」
それ以降にちょっとした事件が起こったのは、テスト後の話だった。ハリーが占い学のテストの時にトレローニー教授がおかしくなったという。
「闇の帝王は自らの力で再び立ち上がるであろう、以前よりさらに恐ろしく、新たなる力を手に入れ、全ての者の希望を燃やし尽くすであろう。」
ずっとハリーはそれが引っかかっていたようだが、誰もその意味は理解できない。
「闇の帝王ってヴォルデモートだろう?ダンブルドアが言うにはあいつは死んでるように生きているのに自分の力で立ち上がるとか。」
「まあ、あの人頭おかしいし気にしなくていいんじゃないかしら?」
ハーマイオニーはしれっとそう言った。ロンは肩をすくめた。エルファバも訳が分からないといった感じでグリンダの日記から顔を上げた。
「ダンブルドア校長に言うべきかもね。」
それしか言えなかった。
エルファバが巻き込まれたエディの食人蔓騒動や、全教授が巻き込まれたフレジョ&エディ主催のエイプリルフール・ドッキリなど、多くの事件がありながらも、あっという間に家に帰る日がやってきた。
「エルファバ。」
「なにハリー?」
同じコンパートメントでハーマイオニーとロンは爆睡していた。エルファバは改めて戻ってきたグリンダの日記を丁寧に確認していた。
「僕思い出したんだけど、僕の母さんがね、ヴォルデモートに殺される直前、 言ってたことがあって…。」
「?」
「デフィーソロって言ってたんだ。それって君が氷を溶かすときに使う呪文だろう?」
「えっ、ええ。」
「何度も何度も唱えてたんだ。」
ハリーは考え込む。エルファバもその意味がわからなかった。おそらくハリーの母親であるリリー・ポッターはグリンダから聞いたに違いない。
「1つ心当たりがあるとすれば、私の名前ね。」
「名前?」
エルファバは日記をめくり、あるページをハリーに見せた。
「私のミドルネームはリリー。ゴットマザーはリリー・ポッターなの。」
ハリーはまじまじとグリンダとリリーが映った写真を見た。
「2人ともお腹が膨らんでる。」
「そうね。」
「僕ら、生まれる前から出会ってた。」
「ええ。」
「僕の母さんが君のゴットマザーってことは、僕ら兄妹だったんだね。」
「姉弟かもよ。」
何かを思いついたようにハリーはエルファバの頬をぶしゅっと潰した。
「ひゅふぇ?」
「なんで黙ってたの?」
「ふゅふぁっひふぃっふぁ。(さっき知った。)」
「嘘だ。」
「ふゅひょふぇふひゅひふぁひぇん。(嘘ですすいません。)」
「僕が納得する理由を5秒以内に言いなさい。」
「ふぁっふぇふぃふふぁふぁふぁっふぁひょん。」
ハリーはエルファバの頬から手を外し、腕を組んだ。エルファバは頬を触りながら弁解した。
「本当に最近まで気づかなかったのよ。私ゴットマザーは生きてると思ってて、ちょっとショックだったの。けどそれをハリーに言うのは失礼でしょう?ごめんなさい。」
エルファバから犬の耳が生えて、それがパッタリとしおれているのがハリーには見えた。何度見てもエルファバが落ち込んだ姿は悪戯して飼い主に怒られている子犬にしか見えない。
「僕に気を遣ってたの?」
「うん…。」
ロビンはエルファバがハリーにいじめられていると思ったのか、檻の中で暴れていた。
「…ふふっ。」
「なんでハリー笑ったの?」
「だって落ち込んだ君が面白いんだもん。」
「面白くないよ!」
「面白いよ!1回録画してあげるよ!あっはは!」
「ハリー!」
立場が逆転した。エルファバは腕を組んだいつまでも笑い続けるハリーを睨みつけた。
「けど、そうだとしても、なんで母さんはその呪文を唱えたんだろう。こんなこと言ってしまってはあれだけど、それを唱えても母さんがどうにかなったとは思えない。だってその呪文は氷を溶かす呪文だ。しかも君の氷だけ。」
ハリーは一通り笑い終わると、真顔で言った。
「まさか、なにか君の氷にまつわる何かなのかな…僕が生き残った理由。」
「今度調べてみるわ。」
「分かった。なんかあったら教えて。」
「うん。」
濃い1年だった。エルファバはハーマイオニーの家族に挨拶をし、セドリックに電話番号を渡して、ぎこちなく額にキスをされてハリーとロン、ウィーズリー双子を驚かせた(「嘘だろエルファバ!君にボーイフレンドができたなんて!いったいどこをどうなったらセドリック・ディゴリーと付き合うんだい!?」「ロン、失礼だよ」)。ミスター・ウィーズリーとミセス・ウィーズリーにも改めて挨拶をし、ハリーの叔父叔母のところにも行こうと思ったが、ハリーが誰かと話し込んでいたのでやめた。マギーにも電話番号を渡す。そしてラベンダーに本を返しー。
「エルフィー、なるべくパパとママのところに行かないようにしてるでしょ?」
見かねたエディが呆れてこちらに来た。
「うん。」
「2人とも待ってるよー?」
「私たち仲良くなったこと、なんて言えばいい?」
「エルフィー、あたしたち姉妹なんだよ?仲良くしていけない理由なんてないよ。」
「普通はね。」
エディはエルファバの手を繋ぎ、2人の元へと歩き出す。友達の家族を見ると、父親と母親の関係は完全に冷え切っていた。母親は父親に話しかけようとするが父親は距離を取り、目も合わせない。
「パパー!!ママー!!」
エディが大声で2人を呼ぶとどちらもこちらを振り向いた。そしてどちらもとても驚いていた。
「ただいま!っという訳であたしエディ・スミスはエルファバ・スミスと無事仲直りしましたー!いえーい!」
エディにはまだ過去に起こったことを話していなかった。あれを思い出すと、どうしても2人に対する怒りの感情が浮かんでくる。
(どうして助けてくれなかったの?どうして私を置いていったの?私が人殺しの娘だから?人殺しの能力を持っているから?)
「大変な1年だったな。」
父親はエディの頭を撫でる。エルファバはいないかのように扱った。
「本当ね。」
父親にならい、母親もエディにだけ声をかける。エルファバは肩をすくめた。
「エルフィー、今年も最強だったんだよ。ハリーのパパの無実を証明してちょーかっこいいんだから!!!あとね、エルフィーとホグワーツをいーーーっぱい探検したのよ!ああ、パパとママに見せたかったな。もう、あたしホグワーツに来て良かった。友達もいーっぱいなの!って、エルフィー?」
エディのエルファバは途中で中断された。エルファバはものすごく強い力で引っ張られていった。人ごみから少し外れた公衆電話の前で立ち止まると、エルファバの両肩を掴んで動揺したように言った。
「エルファバ!!落ち着いて聞いてほしいんだ!!」
さっきエルファバと別れたハリーはメガネをずらして、エルファバを揺すった。
「私は落ち着いてるわよ。」
「僕、シリウスと暮らすんだ!!!さっきシリウスが変装した姿で僕に近づいて、7月の中旬から一緒に暮らせるって!!!ダーズリーたちと2週間くらいいれば、僕シリウスと一緒に暮らせるんだ!!!」
ハリーはエルファバに抱きついて飛び跳ねた。ガタイのいいハリーが軽いエルファバを抱えたのでエルファバも跳ねた。その興奮っぷりは今まで見たことがない。クィディッチが優勝した時もここまで興奮してなかった。
「僕は、本当の…僕を本当に愛してくれる人と暮らせるんだ!」
「おめでとう。」
エルファバは小さい子のように大喜びしているハリーを見て、とても嬉しくなった。例えて言うならバタービールを一気飲みした気分だ。
「良かったわね。今シリウスはどこにいるの?」
「僕ね、すっごく嬉しかったんだけど、シリウスに子供だと思われたくなくて、嬉しいの頑張って隠したんだ。エルファバに伝えてくるって言って!僕、本当、本当幸せなんだ今!最高のパトローナスが出せるよきっと!」
「あー…ハリー?」
「ロンとハーマイオニーにも言いたかったんだけど、2人とも先帰っちゃってて!ああ、本当、ついに親と暮らせる!ダーズリーみたいなのじゃなくて僕を本当に大切にしてくれる人と!シリウスが無実になっていつか暮らせるとは思ってたけど、こんなに早いなんて思わなくて!だってダンブルドアは最低でも来年の夏からだからって…あんまりニヤついてると変だよね?ああ、シリウスにもう一回会う前にちゃんとしなきゃ!」
「ハリー?」
エルファバは破顔しているハリーに非常に残念なお知らせをしなくてはならなかった。
「…後ろに…。」
ハリーの真後ろにもじゃもじゃの茶髪に顔が覆われた高身長の男性がニヤニヤしながら公衆電話に寄っかかって腕を組んでいた。エドワード・ホップカークだ。トレンチコートを着こなす彼は完全にマグルの世界に溶け込んでいる。ウキウキしていたハリーのテンションは急降下し、固まった。
「あっ………、やっやあシリウス。」
「最初に言った時に思った以上に反応が薄かったからショックだったよ。良かった。これから、からかうネタができた。」
「エルファバ、ロックハートが使ってたのなんだっけ?」
「忘却術?」
「早くそれ覚えなきゃ。」
「なんでだよーかっこいいぞ?グリフィンドールを優勝に導いた勇敢なるシーカーがゴットファーザーと一緒に暮らせるって喜んでうさぎのように飛び跳ねて女の子に抱きついてるのは。」
「やめて!」
ハリーは怒ったロンみたいに耳が真っ赤だった。が、どこか嬉しそうだった。ブラックはハリーと喋るのは何よりの喜びなのは言わずもがなである。
「やあ可愛いおチビさん。杖をどうも。偶然にも君の杖は俺にとっても合ってた。杖の木と芯はなんだ?」
「シカモアでドラゴンの琴線です。あとミスター・ブラック、おチビさんって言わないで頂けますか?」
「シリウス、エルファバに身長のことは禁句だよ。」
天然かわざとか、ハリーは余計な一言を足した。
「じゃあ、俺のことシリウスって呼べよ。そしたらやめてやる。」
ブラックはまるで新しくできた面白いオモチャでどうやって遊ぶかを考えるようにエルファバを見た。エルファバはそんなブラックを精神年齢はハリーより下だと呆れつつも、小声で答えた。
「……シリウス?」
「上出来だ"チビちゃん"。」
「エルフィー!!行くってさー!!」
エルファバが抗議する前にエディが呼びに来た。そろそろ友人と別れないといけない。エルファバはニヤニヤ笑うブラック改めシリウスをムスッと睨んだが、諦めた。
(文句はハリーの家に行く時にしてやるわ。)
「いい夏休みを。」
「君もねエルファバ!」
上機嫌なハリーとシリウスはエルファバに手を振る。エディは反対の手を握った。
「ん、あたし、このおじさんに会ったことある?」
エディは変装したシリウスをまじまじと見つめた。
「私たち姉妹を人質にした悪いやつよ…あ、それをダーズリー一家に漏らせば「おい、やめてくれ!!」」
エルファバとエディはシリウスの必死さにカラカラと笑った。ハリーも照れ笑いしている。幸せな親子に別れを告げ、2人は両親の元へ駆け出した。
「なんだか分からないけどおじさんとハリー元気でねー!…エルフィー、あたし決めた。」
「?」
エディは声のトーンを落とした。
「あたし、何があってもエルフィーを守る。」
「ありがとう。私も何があってもエディを守るわ。」
エルファバとエディは2人で車に乗り込んだ。2人は口論したのだろう。そんな雰囲気だった。しかしそれをエディが見事に壊してくれた。
「あたし話したいことがいっぱいあるの。まず入学2日目にしてあたしはホグワーツの全てを知るって決めてね、クラブを作ったの。ああ、手紙で言った通りバスケットボールのクラブも作ったけどそれとは別のね。もうホグワーツったら本当いちいち面白くて…」
ゆっくり動き出す車から肩を組んでいたシリウスがハリーを離し、親戚のダーズリー達に引き取られていくのが見えた。ゴットマザーがいないエルファバにはこんな日は来ないだろうが、気にしなかった。
「談話室はハッフルパフも悪くないけど、1番はグリフィンドール。グリフィンドールの談話室は他の寮に比べても圧倒的に椅子が多くて、暖炉もあって、交流スペースとしては4つの寮の中で最高なのよ!ね、エルフィー!」
「うん。」
エルファバはハーマイオニーの家にも行ける、ロンの家にも行ける、7月末になればシリウスとハリーの家にも行ける。マギーの家も歓迎してくれるだろうし、また改めてセドリックとも食事をすることになった。エルファバの行く場所はたくさんあるのだ…エディと一緒に。
エルファバとエディの夏休みが始まる。