ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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1.燃える魔法使い

エディ・スミスの人生は輝きに満ち溢れていた。

 

常に好奇心と持ち前の行動力を活かしてトラブルを起こし、周囲から浮いていたエディだったが、去年そんな彼女の人生の転機があった。

 

それがホグワーツ魔法魔術学校への入学だった。

 

魔法魔術の学習、エディの個性を受け入れてくれる最高の友人等、時に厳しく時に優しい教授たち(一部ただただ意地悪な教授もいるが)、美しく摩訶不思議なホグワーツ城、ユーモラスなゴーストたち、魔法の悪戯グッズ。見たことがない魔法生物たち。

 

特に最初の年はエディにとって最高だった。入学前から良くしてくれたリーマス・ルーピンが教授になりエディを教えてくれた。そして、ずっと無視され続けていた姉のエルファバとついに仲直りができたのだ。エディの人生を映画にすれば第一作目で最高のエンディングだった。

 

エディにとってこの夏休みはその続きになるはずだったがー。

 

「エディ、機嫌直しなさい。」

「んー。」

「エディ。」

「なんでルーピン教授いなくなっちゃったのおおおおお!?」

 

エディは顔をクッションで埋め、脚をバタバタとソファで喚いていた。夏休み初日からずっとこんな調子だった。原因は初日の夕方に届いた手紙だった。

 

ーーーーーー

エディとエルファバへ

 

私は本日付で君たちの教授をやめることになった。君たちに出会えて本当によかった。今度は友人として会えることを願って。

 

R.J.ルーピン

ーーーーーー

 

短い別れの手紙にエディは大号泣した。大号泣したあと怒りの手紙を感情に任せて送ったのが、数日前。返信はない。父親は呆れながらもエディの頭を撫でる。

 

「もう、いいだろう。仕方がないこと…。」

 

父親はそう言って、言葉を切った。エディの右腕にある黒いものを凝視する。

 

「あっ。」

 

慌てて隠すももう遅かった。父親はエディの右腕にあるものが何かハッキリ分かったようだった。老けた顔にシワが刻まれる。

 

「えっへへ…かっちょいいっしょ…はは…はは…。」

「エディ、誰にお金を払ってもらった?」

「えっ、あー、いや、自分のお小遣いで、あーうん。」

 

エディが父親に部屋の角まで追い詰められたタイミングで、扉が開いた。

 

「あ、エルフィーおかえりい!」

 

エディは隣に最近仲良くなった姉を座らせ、安心したようにすり寄った。

父親は、姉妹を交互に見てソファに座らせる。

 

「エディ、そしてエルファバ。聞かせてくれ。お前の腕だが、どっからその模様は湧いて出たんだ?」

 

エディの右腕の真ん中にS字型の太い線があり、そこからいくつも黒い小さい花が咲いている。

 

「えーっと…。」

「エルファバ。お前だな?」

 

エルファバと呼ばれた少女は父親と同じくらい無表情に父親を見た。

 

「去年、グリンダの銀行の鍵を盗んだことぐらい分かってるぞ。」

 

エルファバは肩をすくめる。自白と判断したのか視線は父親のエディへ向いた。

 

「12歳でタトゥーを入れるなんて、不良少女にもほどがあるぞエディ。よそからなんと言われるか…。」

「大丈夫だよ。だって魔法学校に行くんだもん。それにロンドンにはタトゥー入れてる人なんていーっぱいいるもん。」

「あれはドラックの売人とかだ。やってしまったものは仕方ないが…そういうことはもうやるな。」

「はーい。」

 

エディはあっけらかんとしていた。父親は首を振る。

 

「エルフィーね!あたしのバスケクラブに来てもらったの!あたしは完全嘘つき扱いだったんだけど、形勢逆転。みーんなあたしに謝ってくれたわ。けど一部の奴が白い髪はじーさんばーさんの髪だって言ったの。ねえ、そんなことよりパパあたしもう機嫌直ったし、タトゥーもオッケーしてくれたし、いいでしょう?」

「反省してるのかエディ…分かった分かった。ダイアゴン横丁に行こう。」

「っいやったー!!!」

 

エディはエルファバの腕を掴み、走り出す。エルファバは反対の手で父の手を繋いだ。その行為に父親は心底驚いたようだった。

 

「ダメ?」

「まさか。」

 

エルファバはある日を境に父親との距離を縮めようと努力している。父親もエルファバとエディとの時間を作ろうとこのようにショッピングに行ったり、映画を観に行ったりしている。

 

ーーーーーー

 

その日は夏休みが始まって数日経った時のことだった。

 

魔法省の紋章が付いた手紙がゴミ箱に入っており、エルファバはこっそりとそれを取り出して見ると、グリンダの無実が決まったことを知らせる文章が書かれていた。理由はグリンダが大量殺人を行ったという証言をしたのはあのピーター・ペティグリューであり、再調査した結果あの場にいた魔法使いの数名がデスイーターであったということが分かったからだそうだ。魔法省が管理していたグリンダの遺体は返却されると記載があった。

 

父親は夏休みが始まってから一度も家には帰ってきていない。エルファバとエディが魔法省から来た手紙を捨てる訳がない。母親が捨てたのだろう。エルファバはそれを自分の部屋に保管し、深夜1時頃に父親の帰って来たのを見計らって書斎に侵入した。

 

『グリンダは無実だって。』

 

くしゃくしゃになった手紙を何度も何度も読むと父親は椅子にもたれかかって、大きくため息をついた。エルファバはただ単に自分を冷遇した父親への軽い仕返しのつもりで本当ならここでさっさと去ろうと思ってた。それだけ伝えて部屋から出ようとすると、父親の弱った声を聞いて思わず立ち止まった。

 

『なんで、信じてやれなかったんだろう…?』

 

エルファバはドアの前でじっと立っている。

 

『エルファバ…こっち来てくれないか…?』

 

その口ぶりはまるでエルファバがそれを拒否するのを予想してるような話し方だった。エルファバは少し躊躇したものの、父親から1メートルほど距離を置いて近づいた。

 

『もっと近くに来てほしい。』

『えっ。』

『嫌か?嫌ならいいんだが…。』

『イヤじゃないけど…いいの?』

 

エルファバの問いに父親は自嘲的に笑う。

 

『そうだよな。困るよないきなりそんなこと言われても…。』

 

父親はゆっくり、エルファバが触れればすぐに逃げてしまうかのようにエルファバに手を伸ばした。そして指先に触れるか触れないかのところでエルファバの様子を伺い、エルファバが抵抗しないのを確認してエルファバの手を握った。

 

『私は父親としても夫としても最低だった。あいつを信じてやれなかった。』

 

父親はエルファバの手を確認する。自分が思っていたのとは違ったようだ。

 

『たった1つの情報で、あいつに裏切られたと思った。その日からお前を1人で育てることになって、正直…複雑だった。お前のことは愛してるけれど、ところどころにグリンダの影を見てしまっていたんだ。それでもなんだかんだでやってきた。けれどあの日から本当にどうすればいいのか分からなくなった。』

 

それはエルファバにとって人生で最も恐ろしい日だ。大人たちに全てを捻じ曲げられた日。

 

『私が…グリンダの娘じゃなかったら…お父さんは私を…助けてくれた…?』

 

父親はエルファバの途切れ途切れの発言にショックを受けたようだった。

 

『違う…違うよエルファバ。』

 

今度は何の躊躇もなく、父親はエルファバを抱きしめた。これにはエルファバもビックリしてしまい、危うく床を凍らせるところだった。

 

『そんな思いをさせていたのか…ごめんなエルファバ…ごめんな…。』

 

父親は何度も何度も謝罪を繰り返す。エルファバは父親が最後に抱きしめてくれたのはいつだったかと考えていた。

 

『こんなこと言ったら言い訳になるかもしれないが…私は仕事でずっとケニアに行ってたんだ。帰って来たら、お前が家にいなかった。どこにいるのかと聞いたらエディが言ったんだ。エルファバは悪いことをしたから叔父さんの家にいると。』

 

それはエルファバが記憶する限り母親がエディに言った言葉だ。4、5歳だったエディにしてみれば何の重みも持たない言葉だったのだろう。実際彼女は忘れている。

 

『あいつの兄貴の家に行ったら、お前が…ボロボロだった。あの時は見る影がなかった。』

 

父親の言葉が所々震えているのを聞いた時、あの出来事がトラウマとなっているのは父親だけではないことをエルファバは知った。

 

『じゃっ、じゃあ…。』

『ああ、お前をあの環境からは救い出した。けど…俺はその時、ミスを犯したんだ。いや、ミスとは言えないな。ただ偶然…お父さんは普通の人ができないことを出来てしまったんだ。』

 

父親はエルファバをゆっくり離し、頭を撫でる。

 

『持っていた杖でお前の体を蝕んだ傷を全て治したんだ。』

 

確かにエルファバの体には大きな傷跡はない。それを不思議には思っていたが、

 

『それの何がミスなの?』

『お前がされた虐待の数々を法的に訴えることができなくなった。お前は事件のショックから記憶を失った。あいつらはしらばっくれた。』

 

イギリスの法律では婚姻を継続しがたい重大な理由があり、2年の別居期間がある場合のみ離婚が許される。例外的に暴力などは別居期間がなくても離婚が受理されることもあるが、エルファバの場合その証拠がなくなってしまった。

 

『あの時まではあいつとは上手くいってたから離婚の理由が作れなかったんだ。それに離婚したとしてもお前たちを預けれる場所がなかった。私の親は魔法を良しとしていなかったからお前を見ればあの出来事の二の舞になることは目に見えてたし、グリンダの両親は既に他界してた。グリンダの弟はお前の知っての通りだ。友人とは完全に縁を切っていた。その日から私はお前から逃げ続けた。』

 

父親はあの日からエルファバに接触する機会は減った。必要最低限のことだけやって余計なことはしなくなった。

 

『去年、お前は言ったよな。自分じゃなくて杖が大事なんだろうと。心のどこかで私が逃げ続けてもお前はちゃんとやっていけると思ってた。だからあんなふうに思われてるなんて思わなかったんだ。手紙も避けられるし、バカだと思うかもしれないが…その時になってやっと自分の愚かさが分かった。』

 

2人の間に長い長い沈黙が訪れた。エルファバも父親もお互いに気を使い、何も話さなかった。

 

『許してくれないか?』

 

しばらくして口を開いた父親は言うだけ言ってみようといった感じだった。答えに期待してない。

 

『私は魔法のせいで親に気味悪がられて、あまりいい思いをしなかった。だからどうやって娘たちと接すればいいのかわからない。お前が負った傷を父親としてどうやって癒せばいいのか分からない…それでも、私はお前を愛してる。エディもお前も、私の大事な娘だ。もしもお前がそれでも許してくれるなら…私はお前の父親でありたい。』

 

エルファバは少し躊躇しながらも父親の膝に座り、身を委ねた。

 

『ずっと、こうしてほしかった。』

『これから何度でもやるよ。』

 

父親はエルファバに腕を回し、包み込んだ。そのままエルファバは寝息を立てて眠ってしまった。

 

ーーーーー

 

「でも、パパに傷のことバレなくて良かったよ本当に。」

 

エディはアイスクリームサンデーをカウンターで食らいながら、ヘラヘラと笑う。エルファバはため息をついて言った。

 

「エディ、タトゥーは傷のカモフラージュなんだからなるべく隠してよ…ルーピン教授のためにも。」

「分かってるーって!ねえねえ!それよりもあの話の続き教えてよ!秘密の部屋の話!」

 

エディはエルファバの冒険(災難)を聞くのが好きだ。エディがあまりにも目をキラッキラさせるのでエルファバも思わず話の続きをしてしまう。エディは意外と聞き上手で投げれば返ってくる見事な反応をする。

 

「ほんっとすごい!エルフィーっていうか4人ともトラブルメーカーだねえ!」

「あなたには言われたくない言葉ね。」

「それで、どうやって秘密の部屋って行くの?」

「それ聞いてどうするの?」

「行くに決まってるじゃん。」

「おばかさんね。」

「だってさ、巨大な蛇の死骸があるんでしょ?しかも1000年以上隠された部屋っ!ロマンがあるじゃーん?」

「エディね…近所に落ちてるものとは訳が違うのよ?それにエディじゃ行けないわよ。」

「え、なんで?」

「だって…。」

「え、なに教えてよ。」

「ヒントになっちゃうから言わない。」

「えー、教えて教えて教えて!!!」

 

エディはエルファバに抱きつく。エディはエルファバの身長を越していたため、エルファバはよろけて危うく椅子から落ちるところだった。アイスクリームパーラーのお兄さんがそれを見て笑っている。

 

「そういやさ、結局ハリーはシリウスと暮らせてるの?」

「ええ。」

 

エルファバは少し前のことを思い出して、顔をしかめた。

 

図書館へ本を返却した帰り道、曲がり角を曲がったら突然“姿あらわし”でシリウスが現れてそのまま状況も分からず黒髪のカツラを被らされ、シリウスの娘を演じることになった。なんだかんだで上手くいったが、毎年このイベントがあるという。

 

「まあお小遣い貰えたからいいわ。」

「でも金色のお金数枚ぐらいでしょ?」

「ガリオンよエディ。まあ悪くないわ。結局クィディッチのワールドカップに誘われてそっちへ行くことにしたみたいだけど…。」

 

ハリーのその時の苦悩に満ちた手紙は、これまでにないくらい重々しかった。クィディッチのワールドカップに行きたい。けどシリウスとの初めての夏休みを堪能したい。2人分チケットはないため、ハリー1人でしか行けない。シリウスをおいて行きたくはない。何がベストアンサーか。

 

結論、シリウスが察して行ってくるように促して事なきことを得たようだった。

 

「そんなことよりエルフィー大変。あと5分と45秒でセドリックが来るわ。そっちの方が重要よ。いい?大晦日にエルフィーからセドリックとキスをするのが今の最終目標だからね?いやー、告白した直後に嬉しくて人前でキスしちゃうセドリックはなー…紳士じゃないけど、イケメンだから許そう。はい、これからセドリックと一緒にいる時にしてはいけないことは?」

「男の子の話をしちゃいけない。」

 

まるで学校の問題を解いてるようである。エディは大げさな身振り手振りで"指導"する。

 

「その通りよエルフィー。わざと男の子の話をして相手の気をひくっていう高等テクニックもあるけどエルフィーは使えないの分かってるからいい。とりあえず、ハリーやロンとのことを楽しそうに話しちゃダメなの。」

「エディ、あなたどうしてそんなこと知ってるの?」

 

この夏のエディの話を聞いた限り、エディにそれっぽい人物はいない。

 

「エルフィーにボーイフレンドができたってことであたしの友達たちが総力を上げてアドバイスをくれたの。大丈夫、全員勉強はできないけど男をオトすことにかけてはプロフェッショナルなビッチたちよ。」

 

(それっていいことなのかしら。)

 

「あ、ヤバイそろそろね。あたしはパパと一緒にいてこっちには来させないようにするから!!エルフィー。エンジョイっ!!」

 

エディはガッツポーズを決めて自分のアイスクリームを持ってそそくさと移動した。ちょうど数分後、ガタイのいい男の子がエルファバの前に座った。

 

「久しぶり。」

 

ますます身長の高くなったこのハンサムな青年はセドリック・ディゴリーだ。ハッフルパフの希望の星、尊敬の的、そしてホグワーツ内のイケメンランキング常に上位(ちなみにそのランキング内にはハリーも入っているらしい、本人が聞いたら嫌がりそうだが)の青年だ。数ヶ月前にエルファバは成り行きでセドリックのガールフレンドとなった。

 

「セドリック、元気だった?」

「うん、明日からクィディッチ・ワールドカップなんだ。その前に君に会えて嬉しいよ。」

「セドリックも行くんだ。」

「そう、父さんの話によるとポッターとウィーズリーも一緒に来るって。君の親友たちが来るから君も来ると思ってたんだけど…。」

 

セドリックは少しガッカリしたような声色でエルファバは申し訳ない気持ちになった。

 

「ロンに興味あるか聞かれた時に断ったの。今年はエディといたいなって思って。」

「そうなんだ。そしたら君の分まで楽しんでくるね。」

 

エルファバは、うん。とうなづいてからその流れでハリーがクィディッチがうまい話をしようかと思ったがエディの話を思い出しやめた。ウィーズリー一家と会うということだったのでロンから聞いたフレジョの面白話でもしようかと思ったが、またエディの話を思い出して止める。

 

「どうしたの?なんか考え事してる?」

「なに話そっかなって。私あなたを嫉妬させる高等テクニックができないからロンとハリーの話はしちゃダメらしいの。」

「よく分からないけどそれって僕に言ったらダメなことじゃない?」

「そうなの?」

 

セドリックはエルファバがキョトンとしたのを見て、フッと吹き出した。

 

「やっぱり君って本当面白い。」

「そんなことないわ。」

「君のそういうところ僕は好きだよ。」

 

あんまり褒められている気がせず、エルファバは顔をしかめた。

 

「あと、嫉妬に関してはあんまり認めたくないけどそんなことしなくても平気だよ。たまにポッターがエルファバの頭をこんなふうに撫でてるのとか見ると…なんていうか、少しイラッとはくる。」

 

と、セドリックはエルファバの艶やかな髪を撫で、そのまま髪を自分の指の間に通す。

 

「けど、どうしようもない問題さ。だって君らは親友なんだから。アレックスと僕が親友なのと同じ理由だよ。頭ではそうやって処理してる。」

 

セドリックはしばらくエルファバの髪を弄んだ後、少しため息をついて頬杖をついた。

 

「けど変だよね。だってポッターはグレンジャーの頭は撫でない。そもそも女友達の頭なんて撫でないよ普通。少なくとも僕はそうだ。」

「………やっぱりヤキモチやいてるんじゃ……?」

「そうだね。」

 

エルファバは少し拗ねたように口を尖らすセドリックが少し子供っぽくて可愛いと思ってしまった。エディの言っていたギャップ萌えというやつだろうか。

 

「逆に君がワールドカップに来なくて良かったかも。ポッターやウィーズリーの嫉妬してる僕をあの双子たちに見られたらなんて言われるか。そんなものを父さんに見られでもしたら…身震いする。」

 

大げさに言うセドリックにエルファバはなんて言えばいいのか分からず、目線を逸らした。そんなエルファバをじっと観察してからセドリックは笑った。

 

「1つ言っていい?去年、君にもっとアプローチしたほうがいいって言ったの、アレックスなんだ。もっと君に触ったりハグしたりキスしたほうがいいってさ。けど、そういうの意識してやるのってすごくむず痒いんだよね。君もそのアプローチあんまり気付いてないみたいだし。」

 

図星だった。それを言われた瞬間心当たりのあるセドリックの言動が2、3個ほど思い浮かんだ。

 

「もちろん君のことは1人の女性として好きだし、君が僕のガールフレンドであることは本当、嬉しいよ。でもやっぱり僕らにはそういう駆け引き似合わないよ。だからさ、」

 

セドリックはエルファバの頭から手を離し、フッと微笑んだ。

 

「最近読んだ本のこと教えて。」

 

そのあとエルファバは肩に力を入れずにいつも通りセドリックと話せた。パーバティからはエルファバからキスの1つぐらいするべきだとアドバイスされていたが、身長的な問題でできなかった。ジャンプすれば届くかもしれないがなにかしらのミスでセドリックの唇にエルファバの歯が当たった時などのことを考えると申し訳ない、とかそんなことを考える必要がないのだ。

 

「セドリックいい男ね。」

 

長いことセドリックと話し、それを報告したらエディは専門家ぶって語った。

 

「この超絶鈍感娘エルファバ・スミスをガールフレンドにしただけあるわ。エルフィー、逃しちゃダメよ。」

「エディ、あなたそんなに私の心配しなくていいのよ。」

「大丈夫。あたしは心の王子様のルーピン教授と結婚するって決めてるから。」

 

エルファバはエディの心の王子様のことが気になっていた。今年から反人狼法が可決されてしまい、彼は魔法界で就職するのはほぼ不可能になってしまった。思慮深く賢い彼がそんな酷い目に遭っているということが納得できない。

 

「エディ、ルーピン教授にクッキーあげようよ。」

「いいけど、まずエルフィー料理できるようにならなきゃダメだよ。だってさ、エルフィー卵も割れないじゃん。この前ビックリしちゃったよーエルフィーの手が卵まみれになってるんだもん。」

「頑張るから教えて。」

「練習用の卵はエルフィーが買ってね。」

 

ーーーーーー

 

 

「ロンっ!!!ハリーっ!!」

 

新学期当日、エルファバは2人に抱きついた。

 

「私、本当に本当に心配したのっ…!!大丈夫?」

 

ロンもハリーも困ったようにエルファバを見る。

 

「見た通りだよ。みんな無事。」

 

そうなだめてもエルファバはハリーとロンに駄々をこねた子どものようにしがみついていた。

 

「エルファバ、大丈夫だって。昨日電話もしたじゃん。」

「うん。」

「エルファバ、コンパートメント探すから離れてもらっていい?」

「やだ。」

「エルファバ。」

「やだ。」

「今のエルファバ、5歳ぐらいに見えるよ。」

「いいもん。」

「エルファバ、お土産のスパイダーマンの人形あげるから離れて。」

「…………………分かった。」

 

エルファバは渋々、2人から離れた。改めて親友たちを見るとロンはますますノッポになって、ハリーもハリーで身長がグーンと高くなっている。3人は列車が発車すると同時にミスター・ウィーズリーとミセス・ウィーズリーに手を振った。

 

「けど、けど、私本当に心配したのよ?一瞬でエディの部屋が凍っちゃった。」

 

エルファバがエディの部屋を凍らせた原因は数日前に出た記事だった。ハリー達が行っていたクィディッチのワールドカップで襲撃があったというニュースでエルファバはパニックになり、エディもエディで友達がたくさん観戦に行ったので2人ともパニックになり最終的には2人で友達に電話しまくり無事を確認したことで解決した。

 

「数人ぐらい亡くなった人がいるって書かれてたし、「あれはウソよ。デマよデマ。」」

 

エルファバの抱きつくターゲットは今度ハーマイオニーになった。同性の特権か、ハーマイオニーはエルファバがしがみつくのを良しとした。

 

「エルファバったら甘えん坊ね。新聞を100%鵜呑みにするべきじゃないわ。ロマン・ローランだって今日の新聞はウソの巣窟だって言ってたじゃない。」

「「誰それ?」」

「あなたたち本読まないの?」

 

ハーマイオニーは無知なハリーとロンにため息をついて空いたコンパートメントに入った。

 

「シリウスもエルファバみたいに心配してた。彼ってば僕のこと小学生みたいに扱うんだ。どっちかっていうと彼の方が子供っぽいと思うんだけど。」

 

そうは言いつつもハリーは嬉しそうだった。本気で自分を心配してくれる大人が身近にいることが喜ばしいことなのだろう。ハリーにはいつでもおいでと言われていたが2人の大事な夏休みを邪魔したくはないので今年は行かなかった。

 

「シリウスとはいい夏休みだったの?」

「うん。人生の中で最高の夏休みだった。シリウスはよく魔法省に連れて行かれるのが嫌そうだったけど、それ以外は楽しくやってるよ。彼ったら興味のあることはトコトンやるけどないことには本当無頓着で…家事は全般僕の仕事。多分僕が学校にいる間はルーピン教授が来てくれるから大丈夫だと思うけど。」

「ルーピン教授?」

「話を遮ってごめんなさい。けどエルファバ、1つ言わなきゃいけないことがあるのよ。」

 

エルファバはハーマイオニーに擦り寄りながら、不思議そうに首を傾げた。

 

ハーマイオニーは事件の経緯を話し始めた。ワールドカップが終わった夜に仮面を被った集団がマグルたちを人質に宿泊施設に襲撃をかけた。しかしある人物がハリーの杖で闇の印を空にあげるとその人物は杖を屋敷しもべ妖精に押し付けて逃走した。そこはエルファバも大体新聞で知る通りだった。

 

「本っ当にありえないわ!!こんな奴隷制度が魔法界に蔓延ってるなんて!!」

 

ハーマイオニーはハウス・エルフの対応にかなり憤慨しているようだが、そこの話題はエルファバに言いたいことではないらしい。ハーマイオニーがクラウチというハウス・エルフの主人への悪口の遮って話しだす。

 

「実は新聞と違うところがあるんだ。仮面の連中が逃げ出した理由なんだけど。」

 

エルファバの猫であるロビンはゴロゴロと喉を鳴らしてエルファバの膝を堪能していた。

 

「仮面の連中の1人が森に逃げ込んだ僕らを見つけて、狙ってきたんだ。僕らは追い詰められてどうしようもなくなった時…いきなり、そいつが燃えたんだ。」

「燃えた?」

「うん。文字通り、火がついた。そして僕らの背後から男性が現れて、大丈夫かって聞いて僕らが大丈夫だって答えるとその人は森から飛び出して大きな火の玉を仮面の連中に飛ばした。彼はどんどん炎を出して何度も何度も奴らを攻撃した。その炎は人質のマグルと奴らの繋がりも切って、最終的には闇の印が出る前に奴らは退散したんだ。」

「彼、杖を持っていなかったのよ。」

 

ハーマイオニーはハリーが言いたいことを引き取った。

 

「両手から炎を出してた。ドラゴンみたいに。あなたと同じよエルファバ。あの連中が彼に呪いを放ってたけど、彼の炎はそれを全て焼き尽くしていたわ。そのあと魔法省の職員が来たらさっさといなくなってたけど。心当たりない?」

 

コンパートメントの外ではガヤガヤと生徒が話している。その音がエルファバの中から全て消え、今親友たちから告げられた事実のみが頭に残る。

 

「あなたのような人がいるのよこの世界に。」

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