ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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【注意】
この話には性的で下品な表現が出てきます。


3.4人目の代表者

「さて、いよいよ結果発表じゃ!」

 

発表はハロウィン・パーティーと同じタイミングだった。かぼちゃの中にあった蝋燭の火が全て消え、ゴブレットの中の青白い炎が大広間を照らす。

 

「ダームストラングの代表選手は、ビクトール・クラム!」

 

拍手、歓声が大広間に響きクラムが無表情で隣の部屋へと歩いていく。カルカロフは大喜びだった。

 

「ボーバトンの代表選手は、フラー・デラクール!」

 

ロンのヴィーラが立ち上がり、大多数の男子生徒の注目を奪いながら後ろの扉へと歩いた。

 

「ホグワーツの代表選手は、セドリック・ディゴリー!」

 

隣の席のハッフルパフが総立ちとなり、セドリックが選ばれたことを喜んだ。足を踏み鳴らしピーピーと指笛を吹く。セドリックはその歓迎を照れくさそうに笑いながらもエルファバの隅を通る時はさりげなくくしゃっと頭を撫でた。

 

「結構結構!選ばれた代表選手は全力で…。」

 

エルファバは少し眠かった。正直あまり関心のない話題だったし、エディとこっそり羊皮紙でゲームをするくらい暇だった。まあセドリックが選ばれたのは喜ばしいことなのだが、本音は早く寝たいというところだ。

 

「ハリー・ポッター。」

 

親友の、呼ばれるはずのない名前が呼ばれる時までは。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「…分からないわ。ロンは何に怒っているの?」

「ああ、本当だ。ロンは何に怒ってる?」

 

翌日エルファバはハーマイオニーに意味が分からないといった口調で、ハリーはイライラした口調で聞いた。

 

「だから…ロンはハリーに嫉妬してるのよ。今までハリーばっかり目立っててロンは添え物扱いだったから…。」

「でもどれもハリーが意図したことじゃないわ。」

「ええ、そうよ。そうなんだけど…。」

 

ハリーは乾いた笑いをした。

 

「そりゃ傑作だ。どこへ行ってもジロジロと額を見られる役目ならいくらでも代わってやるって!」

 

生まれて初めて、ハリーとロンが険悪なムードになった。この2人は基本的にいつでも仲良くやってきたというのに、どうやらロンの嫉妬が原因で仲違いしてしまったらしい。

 

さらに悪いことにハッフルパフとグリフィンドールの仲が険悪化した。いつもは目立たないハッフルパフから出てきたセドリックの存在はもうハリウッド・スターに近かった。映画版をオードリー・ヘップバーンがやったら舞台版のジュリー・アンドリュースに同情票が集まり、結果アカデミー賞をジュリー・アンドリュースが取ったような現象らしい(エディの例え話)。

 

「けど…セドリック。ハリーは入れてないわ。彼そんな人じゃないもの。」

「そりゃ、本人はそう言うだろうね。…ごめん、ちょっと待ってね。」

 

セドリックは6年生の女子生徒の方を向きながら答える。

 

モヤぁっ…。

 

「ハリーじゃないわ。きっと他のハリーのことを狙ってる誰かなの。」

「そんなの確証なんかないよエルファバ…ありがとう。嬉しいよ。」

 

さっきからセドリックはエルファバの方を向かない。まとわりつく女子生徒の方を向いてばかりだ。

 

モヤぁっ…モヤぁっ…。

 

「セドリック、だから「ねーセドリックっ!」」

 

女子生徒数名がエルファバとセドリックの間に割りこんできた。エルファバはセドリックが見えなくなり、エルファバは仕方なくその場を離れた。

 

モヤぁっ、モヤぁっ、モヤぁっ。

 

一方でアダムとその取り巻きはマルフォイ並みに嫌な奴だった。アダムは自分が代表選手だと信じて疑っていなかったらしく、機嫌が最悪だった。しかしムーディ教授は火の玉事件以降彼に目をつけていた。さすがに大きな事件を起こす訳にはいかず、女子生徒に卑猥な言葉を投げかけるだけにとどめておいた。もちろんそれもそれでかなり迷惑だが。

 

「あの人たちまた見てるわ。」

 

ラベンダーと一緒に課題をやっていた時、忌々しそうにスリザリンの席を見ていた。アダムと取り巻きがニヤニヤといやらしい笑いでこちらを見ている。取り巻きの1人が自分の胸の下で両手で何かを持ち上げて、揺らすような仕草をしてラベンダーを指差した。

 

「あの人たち、この前私の胸を掴んで、おっぱいおばけって呼んだのよ!?本当ありえない!!ホグワーツにはそんな侮蔑的なする人いなかった…!いかに周りが紳士的かがよーく分かったわ!エルファバも気をつけてね?」

「うん。」

 

この場にハーマイオニーはいなかった。

ハーマイオニーは完全にハリーの味方でハリーと常に行動していた。エルファバも事情はよく分からないが、なんとなくロンが悪い気がした。しかしロンは誰か味方を作りたかったらしく、暇があればエルファバの方に寄ってきた。なので結果的にエルファバはロン、シェーマス、ディーンという不思議なメンバーと一緒にいることが増えた。いつもとは違うメンバーと一緒にいるのはまあまあ面白かったが、ロンはともかくとしてディーンはエルファバとイマイチ話が噛み合わないし、シェーマスはあまりエルファバと目を合わせてくれない。なので少し居心地が悪かった。少なくともいつもの4人と一緒にいるようなあの落ち着いた感覚はない。

 

そして問題はもう1つ。

 

「あーあ。」

 

エルファバのりでベタベタになった数占いの教科書を見て、ため息をついた。ここ最近誰だか分からないが、エルファバにちょくちょく嫌がらせを仕掛けてくる。靴がなくなったり、羽根ペンがなくなったり、このように教科書を糊付けされたり。犯人は熱狂的なセドリック・ファンだろうとハーマイオニーが推測していた。

 

「エルファバ、あなたは自分の悪いところを認めない駄々っ子みたいに頑なだけど「駄々っ子じゃないもん。」まあ聞いて。エルファバ、あなたは美人なの。美人で秀才で非の打ち所がないあなたは妬まれてるのよ。それで今回、ハッフルパフの英雄サー・セドリックはあなたのボーイフレンド、グリフィンドールの反逆者ハリー・ポッターはあなたの親友。だからあなたをこき下ろすチャンスだと思ったんでしょうね。」

「そんな…。」

 

正直なところ、エルファバはいじめられて傷ついてるとかそういうのではない。ただ時たま授業に支障がでることをされると困るのだ。が、自分が仲のいい2人の間で板挟みになるのはいただけない。

 

「あんたもうちょっと自尊心持ったら?」

 

マギーはネズミの肝臓を大鍋に放り込みながら呆れ気味に言った。

 

「あとディゴリーのことならディゴリーに言いなよ。」

「セドリックは忙しいわ。第1の試練のこととか女の子の対応とか。」

 

セドリックが女の子に取り囲まれるのを見ると、エルファバはまたモヤぁっとした感情がエルファバの中でジワジワ広がる。セドリックがエルファバに話しかけるたびにセドリック・ファンはエルファバを犯罪者でも見るかのような目で見るのもあまりいい気持ちではなかった。

 

「まあガールフレンドを守れない奴とはさっさと別れたほうがいいよ。諦めな。」

「そう…かしら…?」

「とっとと別れなよ。あんたあいつと付き合ってて何の利点もないじゃん。ポッターがこのまま目立つようなことが起こったら、あんたに対するいじめが酷くなる。」

 

エルファバは穴が空いた大鍋を修復しながら考える。いじわるな女子生徒にやられたものだ。

 

「嫉妬って人の性格を悪くするのね。」

 

マギーの推測通り、事態は悪化を極めた。代表選手を特集した記事ではハリーが鼻もちならない人物にかき立てられ(「あれだよ、マイケル・ジャクソンが変態みたいに書かれているのと一緒。記者はドラマティックに話を歪曲すんのが好きなの。」とエディは言っていた)、ハリーとセドリックがエルファバを取り合っているかのような書き方をされたためにいよいよセドリック・ファンがヒートアップしてエルファバいじめが酷くなった。

 

「あーら、ポッターのガールフレンドがなんのようかしらー?」

「別に…。」

 

ただ中庭を歩いてただけでレイブンクローの5年たちに絡まれた。何も用がないにも関わらず、である。

エルファバをいじめている中心人物だ。不幸なことにスリザリンのパンジー・パーキンソンやその取り巻きもクスクスと笑って指を指している。そしてさらに不幸なことにハリーとロンはスネイプを侮辱したことで罰則中でハーマイオニーは図書室、エルファバと仲のよいハッフルパフ生も見て見ぬ振りだ。

 

「えー?聞こえなーい!あなたの声小さすぎて分からないわー!」

 

エディには意地悪する奴を凍らせればいいと言ってるが、そうはいかない。アダムやルーカスがこっちを見ている。

 

(こんな不幸な状況ってそうそう無いわ。どうやって切り抜けようかしら。)

 

「私はセドリックのガールフレンド、ハリーは私のベスト・フレンドよ。」

「じゃああなたの"かわいい"友達のようにシマリスにしてあげましょうか?」

 

ハーマイオニーが呪いで前歯が伸びてしまったのは学校中で有名な話になっている。スリザリンの女子がどっと笑った。その笑いがエルファバの着火剤だった。

 

「ハーマイオニーをバカにしないでよ!!」

「面白いじゃない?ガリ勉にただ傷がついてるだけで有名なメガネ、あなたって面白い人と友達になってるのねえ。勉強なんてやればいくらだってできるようになるし、傷がついて有名になるぐらいなら私だってできるわ。」

 

怒りがエルファバの意識から体を切り離し、次の行動に備えて準備をする。

 

(この人たちの周りに氷の塊を作って閉じ込めるの。それでどんどん接近させて逃げ場をなくして、限界まで押しつぶしてやるわ。許さない、許さない、ハリーとハーマイオニーをバカにして…許さない!)

 

「エルフィー、ストップストップっ!」

 

エディがエルファバに飛びついて、エルファバの視界を覆い隠した。

 

「エルフィー、今のやばかったよ。」

 

エディは耳元でエルファバに囁いてからゆっくりと離れた。周囲がざわついている。視界がハッキリするとその訳が分かった。

 

中庭全体にデコボコした氷の床が現れて生徒たちが足を取られていた。そしてレイブンクロー生たちを取り囲む氷は先端が鋭く、その先端は彼女たちのスカートやブラウスを引き裂いていて、彼女たちはパニックを起こしていた。

 

「あんたらさあー、悲鳴上げてるけどそれぐらいのことしてんじゃん。あたしの魔法、かっちょいいっしょ?」

「あっ、あんた2年のハッフルパフ劣等生でしょ?!こっ、こんなことできるわけない!!杖も出してないあんたに!!!」

「あっはー!バレた?さっすがレイブンクロー生!あんたらの反応が面白くて便乗しちゃった〜。とにかくあたしはいじめなんて大嫌いなの。」

「エディっ!」

 

レイブンクロー生の1人が氷の棘を抜け出し、杖を取り出した。しかし、エディの方が速かった。エルファバが見えない速さで杖を取り出し、呪文を唱えた。

 

「エクスペリアームズ 武器よ去れ」

 

エディはバスケのボールを取る要領で彼女の手から飛び出した茶色い棒を掴んだ。

 

「何を…!?」

 

4人ほどのレイブンクロー生がエディに杖を向け、呪いをかけようとした。しかしエディはそれをまるで踊るように華麗に避け、しなやかに杖を奪っていく。たった1つの呪文でしか対応してないが、2年のエディは5年のレイブンクロー生を圧倒していた。

 

「あたしの心の王子様の授業は真面目にやるの。」

「今はムーディ教授でしょう?」

「やめてエルフィー。」

 

エディは汗ひとつかかずにニッコニッコして、取り上げた杖4本を踏みつけた。ミシミシっと杖が鳴いて、地面にひれ伏すレイブンクロー生はヒッと声を上げる。エディはローブをゴソゴソやって容器を取り出す。そして状況を把握しないレイブンクロー生のところへ近づいた。

 

「ブボチューバー・アターーーーーーーーック!!」

 

ーーーーーー

 

ルーピン教授

 

お元気でしょうか。お返事がありませんが、これを書いたらあなたが笑ってくれると思い書いてます。

ブボチューバーという液体がありますよね。原液だと皮膚に害があるあれです。私がいじめられた時にエディはどういう訳かそれを持っていまして、それを私をいじめていた年上のレイブンクロー生の顔にぶっかけました。とても大変な騒ぎになり、エディは1ヶ月ボーバトン魔法アカデミーが連れてきた馬の粗相の処理をしなくてはならなくなりました。

しかし寮監であるスプライト教授は目の前でハッフルパフが関係するいじめが行われたにもかかわらず、自分たちの嫉妬が原因で見て見ぬ振りをした一部のハッフルパフ生に激怒し、被害者が身内といえども果敢に先輩に立ち向かったエディを褒め称えたらしいです。当然やり方には顔をしかめていたそうですが。

そしてエディは素晴らしい決闘術の才能の持ち主です。年上のレイブンクロー生4人をたった1つの呪文で圧倒してました。またぜひ見に来てくれればと思います。

 

長文失礼しました。教授もお元気で。

 

エルファバより

 

P.S.私とハリーは今もこれからも親友です。

 

ーーーーーー

 

これが送られて来た手紙の主は久しぶりに声を上げて笑った。送り主の妹の決闘術の才能に感嘆の声を上げ、送り主がいじめられていたということを心底心配し、最後の追伸で分かっているよ、と微笑んだ。

 

しかし、彼が返信を返すことがなかった。

 

「エルファバ。」

 

セドリックがその数日後に図書室で話しかけてきた。今日はファンはいない。なぜか晴れやかな気持ちになった。

 

「ごめん。君が嫌がらせ受けてたなんて知らなかった。スプラウト教授が談話室で怒ってるのを聞いて知ったんだ。だけどどうして言ってくれなかったんだい?」

 

エルファバはキョトンと見る。セドリックはしびれを切らしたように言う。

 

「僕はポッターと君を取り合ってるわけじゃない。正真正銘君のボーイフレンドだ。そうだろう?なのにどうして君のピンチを教えてくれなかったんだ?」

「え…だって忙しそうだったし…。」

「君の方が優先順位高いに決まってるだろう?」

 

セドリックが珍しくイライラしている。いつも穏やかでマイナス感情とは無縁な彼が、ライトブラウンの髪をガシガシやりながら眉間にシワを寄せている。

 

「なんで君ってこう…もっと主張しないんだ?君が主張しなきゃ君はずっとポッターか僕に取り合いされてる女の子になるんだよ?」

「そうじゃないことぐらいあなたが1番分かってるじゃない。」

「ああ、そうだ。僕と君が1番分かってる。けどそれだけじゃダメなんだよ。他の人にだって君が僕のガールフレンドだって分かってもらわないと。」

 

なんで、と言う前にエルファバの体が宙に浮き、セドリックの顔が迫ってきた。そして唇や頬、額に柔らかいものが強く押し当てられた。エルファバは数秒して、セドリックに抱き上げられているということが理解できた。

 

「なんで言わないと分かんないかなあ…?」

 

セドリックはエルファバの耳元で吐き捨てた。

 

「セドリック、なんか怖いよ…。」

「本当、僕が代表選手になってもポッターの心配ばっかりするし、大事なこと言わないし今度はウィーズリーと君のファンとずっと一緒にいるし。」

 

セドリックの肩越しにエディと友達(ホグワーツとボーバトンだった)がいた。見た感じどうやら会話が全部聞こえているようだ。エディが代表して口パクで主張してくる。

 

《なにしてんの!いえ!あいしてるっていえ!》

《なんで?》

《セドリックはしっとしてんの!》

《しっとお?》

「よそ見しないで。」

「あっ、はい、ごめんなさい。」

 

エディと友達たちは何事もなかったかのように背を向けた。しかしセドリックグイグイくるねえ、とか意外と肉食?独占欲強め?など、まる聞こえなのはセドリックも同じなようで、段々セドリックの体が熱くなっていく。

 

「…エルファバ、お願いだからエディに逐一報告しないで。」

 

セドリックはエルファバの肩に頭をぐりぐり擦り付けた。セドリックの髪質は硬いので首に当たって少し痛い。

 

「セドリック、私どうしたらいいの?」

 

エルファバからすればセドリックが代表選手になった時、充分お祝いの言葉は送った。ハリーのことを出してきたのはセドリックだ。ロンといるのはロンがエルファバに味方になってほしいからだ。

 

(もうっ。嫉妬っていう感情って本当厄介なのね。ロンや女の子がいじわるにしちゃうしセドリックを怒らせちゃうし。厄介ね。)

 

「どうって…できればもっと僕を頼ってほしいし…もうちょっと僕を見てほしい。」

 

ここで聞いてたエディからの指令が入った。

 

《えるふぃーももやもやしてたこといって!》

《え〜?》

 

エルファバは困りながらもエディ教官の言う事を聞くことにした。

 

「あの…セドリック、私も女の子があなたの周りに来る度になんか…モヤぁって。モヤぁってしたの。」

 

エルファバは恐る恐るセドリックを見ると、先ほどのセドリックとは打って変わって、なんというか、少し嬉しそうだったのだ。

 

「モヤってしたの?」

 

心なしかニヤついてるのを抑えている。

 

「うん。」

「そっか。そうなんだ。こんな気持ちしてるの僕だけかと思ってた。」

 

セドリックは晴れやかにエルファバを下ろした。

 

「まあ、こういう時だけエディに感謝だね。」

 

それ以降、エルファバはセドリックとまた普通に接するようになった。いや、正式には普通とは言えない。たまにセドリックが人前でエルファバにキスしたりするのがエルファバは恥ずかしかったが、セドリックは御構い無しだった。その行為はセドリック・ファンとエルファバ・ファンの心を折ったそうだ。

 

エディが目立ったために、その前に起こった中庭が凍るという謎の現象については誰も言及しなかった。一部を除いて。

 

「マギー。そこのワニの肝臓取ってもらっていいかしら?」

 

魔法薬学の授業中、エルファバは中の液体がピンクから赤になるのをじっくり観察しながら、隣のマギーに話しかけた。しかし返事はない。

 

「マギー?」

「あいつならどっか行ったぞ。」

 

エルファバはその声を聞いてギョッとした。その声はアダムだった。マギーのいたはずの席に座り、頬杖をついてニヤニヤといやらしい目でエルファバを見ている。

 

「あっ…ハーイ…アダム。」

 

エルファバはアダムの近くにあるワニの肝臓を取り、薬を作るのに忙しいフリをした。ハーマイオニーやパーバティ、ラベンダーの心配そうな視線を感じる。みんなアダムとその取り巻きたちの被害者だ。ロンたちといたことはアダムたちからエルファバを遠ざけていた。しかし今は複雑な薬を作るのに必死で気にすることはできても、スネイプの目が光るこの地下牢でグリフィンドール生が行動に移すのは無理だ。エルファバの体を舐め回すように見る。

 

「案外、いい体してるな。清純そうな顔してボーイフレンドとヤリまくってんのか?」

 

エルファバはアダムの言葉を無視した。これがラベンダーなら金切り声を上げて呪いをかけているところだが、そういうことにかなり疎いエルファバは何を言われているのか理解できなかった。

 

「チビのくせに発育はいいようだな。」

「チビじゃない。」

 

そこは否定したが。

 

「その発達途中の柔らかそうな胸を揉んでみたいところだが、あとでにしてやるよ。本題に入ろう、氷の"力"があるのはハリー・ポッターか。」

 

エルファバが驚いてわずかに体を震わせたのをアダムは勘違いしたようだった。やっぱりな、と笑う。

 

「ポッターが濃厚だな。氷の“力”があったのなら“例のあの人”から逃げられたのも頷ける。俺らの親族では専らその説が強かったんだ。どうだ?親友として心当たりでもあるか?」

「別に。」

 

常に無表情なのが功を制した。表情が出ないのでビクビクしているのを知られることはないはずだ。

 

「俺は木の棒がなくても全てのものを燃やし尽くすことができる。これを持てるのは世界で1人だけだが…一応ルーカスも持ってる。俺の親たちは毎回そこで情報交換をしたんだ。俺もルーカスと遊ぶのが好きだった。本人は嫌がってたけどな。」

 

(この人、なんておバカなの。)

 

自分の出生や"力"のことをここまでペラペラ話すのは愚かにも程がある。しかしエルファバが知らない情報を提供してくれるので黙って聞くことにした。

 

「そこで聞いたのが、イギリスには氷を操る奴がいるってことだ。1度も会ったことはないが、噂じゃホグワーツにいるんだと。」

「…そう。」

「ポッターは"生き残った男の子"だ。俺らの炎は全ての呪文を焼き尽くす。死の呪文もな。あいつがガキの時に氷で身を守ったっていうのもありえなくはない。」

 

エルファバは薬が仕上がり、火を消す。

 

「どうだ?面白いだろ?ポッターはここまでお前に話したか?ん?」

 

エルファバはチラッとハリーを見た。気の毒に、スネイプのいびりに耐えている。アダムはエルファバの耳に口を寄せ、囁いた。

 

「第一の試練、楽しみだな。」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「本っ当最低!」

 

放課後、ハーマイオニーはアダムがエルファバに放った卑猥な発言に大憤慨していた。エルファバが今まで聞いたことのないような言葉でアダムを罵った。

 

「心配しないでエルファバ。次アダムがエルファバに近づこうもんなら私が呪ってあげる。クラムといいベルンシュタインといいダームストラングにはロクな奴がいないわ!それにバーサ・ジョーキンズ!私にハリーとセドリックとエルファバの関係をしつっこく聞いてきたのよ。何度も何度も同じ答えを言ってるのにまるでエルファバがハリーと恋人だって言わせたいがために誘導してくんの!大人としてありえないわ!」

「その人どうしてハーマイオニーに…?」

「あなた最近ロンたちと一緒にいたでしょう?意外とあの3人あなたのいじめ以降睨みきかせてくれてるのよ…特にシェーマス。」

「そうなの?」

「ええ。あとリータ・スキーターって奴も気をつけて。ハリーについて嘘八百書いた女よ。スキを突いてあなたにインタビューしてくるかもしれないわ。」

 

エルファバはロンたちにお礼を言わなければと思ったが、その"スキ"をつかれてしまった。夕食後、セドリックを探していた時に目の前に突然、ワニ革のバックを持った真っ赤な爪の女性が現れたのだ。

 

「こんにちは。あたくしはリータ・スキーター。記者ざんす。」

 

(来た。)

 

「どうも。」

 

エルファバは軽く会釈してさっさと逃げようとしたが、爪が食い込むほどにエルファバは腕を掴まれ、捕らえられた。

 

「インタビューしたいんざんすけど、よろしいかしら?」

「ちょっと今は「素敵ざんすわ。」」

 

エルファバは廊下の隅に連行された。

 

「えっ、いやっ、ちょっと。」

「それでー?学校1のハンサムボーイと生き残った男の子、どっちと付き合いたい?」

 

黄緑色の長い羽ペンと羊皮紙がどこからか現れて、滑るように内容を書き始める。

 

「ハリーとはただの友人です。」

 

《エルファバ・スミス、ハリーと同学年でありホグワーツでは学校で最も美人と名高い彼女だが、どこか性格が悪そうなのが顔に出ている。今や、代表選手であるセドリック・ディゴリーと代表選手であり生き残った男の子という羨ましい選択肢を持っているが、彼女は余裕綽々に気だるそうだ。》

 

「…あの…。」

「もー、ペンのことは気にしなくていいざんす。さあさあ、謙遜しなくていいざんすよ?どっちも悪くない選択ざんすよねー?顔と名声、どっちが好み?」

「…。」

 

(どうやら面倒なものに引っかかってしまったようね。)

 

《ハリーは悲劇の少年よ。とても傷つきやすくて、私が一緒にいてあげないと死んじゃうんじゃないかって不安で不安で、私もいろいろと家庭内であったから彼とは共鳴できる部分があるんです。》

 

「どうやって私の家族のことを?」

「だからペンのことは気にしなくていいざんす…あら、家庭問題が?」

 

スキーターがにんまりと笑ったのを見てエルファバはしまったと思った。カマかけられた。

 

「『あなたとハリーの悲劇の共通点』なんて記事どうざんす?あなたも複雑な家庭事情が?例えば父親からの虐待とか、母親からの育児放棄とか。そこまで大きくなくてもいいざんすよ。妹や弟との格差なんかどうざんす?」

 

バキバキっ!!

 

スキーターの笑顔が強張った。ポトッと羊皮紙と派手な色の羽ペンが床に落ちる。羽ペンは落ちた時に銀色の破片と共に粉々になった。

 

「何かご質問は?」

 

スキーターは一気に温度が下がった廊下でフルフルと震えていた。エルファバがいる場所からヌルヌルとゆっくりと得体の知れない銀色のものが壁、床を伝ってスキーターを追い詰める。

 

「何かご質問は?」

「ひっひいいいいっ!!」

 

スキーターはペンも羊皮紙も置いて、走りづらそうなヒールを鳴らして逃げていく。エルファバはグリンダの白い杖を取り出して、いつもの呪文を唱えた。

 

「どんどん強くなってる…。」

 

ブボチューバー事件も今回の事件もそうだが、感情によって表れる氷の大きさや形が確実に大きくなっている。マイナスな感情によって氷が作り出される時、エルファバは感情のコントロールができなくなる。この氷と同じように自分の心も冷たく、残酷になるのだ。その対象の人物がどうにでもなればいいと思う。

 

(このままではアダムやルーカスに氷を操る魔女が私だってバレてしまうわ。)

 

エルファバは静かに深呼吸をする。

 

「どうにかなるわ…どうにかなる。」

 

 




ハッフルパフ談話室にて。

スプラウト教授「全く!!!ハッフルパフ生としていじめを見過ごすのは恥ずべき行為です!!!
エディ「ええ、そうですとも!」
スプラウト教授:「確かにミスター・ディゴリーがハッフルパフ寮からホグワーツ代表として参加したことは誇らしいこと。しかしだからと言ってミスター・ポッターといがみ合う理由はございません。ましてや何も関係ないミス・スミスへのいじめを見て見ぬふりをするとは言語道断です!」
エディ「おっしゃる通り!」
スプラウト教授「ミス・スミス。被害者が姉とはいえあなたの行為は勇敢でした。が、やり方は感心しません。よって罰則を。」
エディ「ぬわんですって!?!?」
スプラウト教授「そもそもブボチューバーの原液などなぜ持ち歩いてたんですか!?」
エディ「えっとー(フレッドとジョージに持ってこいって言われたなんて言えないし…。)」
スプラウト教授「罰則です!!!」
エディ「そんなあああああ!!これも全部セドリックのせいだからねえええ!!」
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