ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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5.思いがけないサプライズ

「ハーイ、エルファバ。」

「ハーイ。」

 

エルファバは1人で図書室で本を読んでいた。セドリックはエルファバの向かいに座り、エルファバが話を聞けるように優しく本を取り上げた。

 

「その…どう最近?」

「思ったより、悪くないわ。」

「そうなの?」

「うん。酷い時はは地下室に連れ込まれて監禁されたし、殴られたし。」

 

エルファバはものすごい爆弾を放ったことに気づかず、セドリックのゴツゴツした指をなぞった。

 

「ごめんなさい。なんか悪いこと言ったかしら?」

 

固まるセドリックにエルファバは心配そうに顔を覗き込んだ。

 

「あ…いや…その…。ごめん。変なこと聞いてしまって。」

「?」

「君にそんな酷いことをする大人がいたなんて…許せないな。」

「そうね。あんまりいい思い出じゃないわ。それに比べたら、問題ないけど…。」

 

エルファバはセドリックの手の甲に頬を当てた。セドリックがいつもエルファバにやる仕草だ。

 

「パーバティは怒ってしまったからそれはとても悲しいわ。」

 

あれが起こった夜、ハーマイオニーがエルファバと一緒に付き添ってくれていた。治療を終え、夜部屋に帰ってきた時、1番最初にエルファバに話しかけてきたのはパーバティだった。

 

『エルファバ。あなたもそういう魔法が使えたのね。』

『パーバティ、エルファバは『ハーマイオニーあなたは黙ってて。』』

 

ハーマイオニーが擁護するのを遮ってパーバティはエルファバに詰め寄った。ラベンダーは複雑そうな顔でエルファバとパーバティを交互に見た。

 

『いつから?』

『…生まれた時からずっとよ。』

 

パーバティはため息をついて、早口で喋った。

 

『あなたってずっと私たちを入れてくれなかったわよね。エルファバ。確かにあなたと私はハーマイオニーやハリーほど仲のいい友達じゃないわ。けど、少なくとも私はあなたのこといい友達だと思ってたわ。私はあなたにいろいろ悩み相談をしてたしあなたの答えはいつも適切だった。女の子の中ではあなたのことよく分かってる方だと思ってたわ。けど…あなたは私のことこれっぽっちも信頼してなかったのね。』

 

エルファバは何を言えば正解なのかわからなかった。エルファバからすればパーバティを信頼してたか否かの問題ではない。単純に多くの人間にそれを知られることを恐れていたのであって、パーバティという人間を信頼していなかったという訳ではない。

 

「パーバティ!エルファバは今日何十人、何百人もの人を救ったのよ!?そんなこと…!!」

「お願いだからハーマイオニーは黙っててよ!あなたはどうせずっと前から知ってたでしょう?!あなたたちとは違うのよ私は!私とエルファバの信頼の問題をしてるの!」

 

エルファバが黙っているとパーバティはため息をついてベットに入って目も合わせずにお休みを言った。

 

それ以降パーバティとは話していない。

 

エルファバは何も話すのはフェアじゃないと思い、9歳の時に自分の身に起こった話をした。なんとなくセドリックならいいだろうと感じた。床は凍ってしまったがセドリックはそんなことを気にしてはいなかった。普通の家庭で幸せに生活してきたセドリックにとっては少々刺激の強すぎる話だったのかもしれない。

気がつけばセドリックはエルファバの向かいではなく隣に座った。

 

「こんな話するべきじゃなかったわね…ごめんなさ!?」

 

エルファバの体全体に硬いような柔らかいようなものがぶつかり、少し汗の匂いがした。

 

「エルファバ…知らなかった。そんな辛い思いしてたなんて…!ごめんね…。」

「えっ、何いってるのセドリック…あなたは何も…。」

 

セドリックは腕の中でエルファバを閉じ込めたまま、エルファバの頭を撫でた。エルファバはこの話をセドリックをしたことを後悔した。この話を聞いたことでセドリックは傷付いてしまったのだから。

 

それ以降エルファバはこの話をセドリックの前でするのはやめた。

 

ドラゴン騒動以降、エルファバは代表選手と同じくらい、いやそれ以上に注目の的だった。ほぼ全員がエルファバがアダムやルーカスと同じように杖を使わずに巨大なドラゴンを凍らせたのを見た。さらにエルファバは天候変化、観客席や柱、ハグリッドのコートを凍らせ、何もない場所から橋を出現させている。エルファバが廊下を歩けば誰もが指を指しヒソヒソとエルファバの話をしていた。

 

しかし、周囲の反応はエルファバの予想とは大分違うものだった。

 

「ねえ、どうやって杖使わないで魔法を使うの?」

 

ある日廊下を歩いていると小さい1年生たちが無垢な瞳でエルファバに聞いてきた。まるで天才児に勉強の方法を聞いてくるかのような物言いだ。

 

「別に…本当に大したことじゃないわ。」

「ドラゴンを凍らせたのに?」

「僕あんなの見たことない!」

 

この可愛い1年生にまともな答えをしないのは罪悪感がある。しかしながらロンにも同じようなことを聞かれたことはあるがエルファバからすれば凍らせるというのは呪文を唱えるよりも手っ取り早かったりする。しかし意識してそれでも杖を使い魔法を唱えようと努力するのは、制御できないし当たり前すぎてありがたみを感じないからだ。

 

エルファバは談話室の誰もが聞き耳を立てているのを感じながら答えた。

 

「本当生まれつきなの。多分何も教えられないと思う…ごめんなさい。」

 

あからさまにガッカリした1年生たちにエルファバはもう一度謝ってハリーたちの元へと戻った。

 

このように驚くことにエルファバを怖がるものはほとんどいなかった。大きな理由としてすでにアダムとルーカスという存在がいたからだろう。一部のボーバトンとダームストラングはその2人がいるということでホグワーツの生徒を見下している節があった。しかしエルファバの登場により彼らは縮こまり、ホグワーツ生から賞賛されることとなる。フレッドとジョージからこんなに面白いことをなぜ隠していたのかと怒られた。

 

「お前の身長が伸びてないのはその特殊な魔法が使えたからだな!」

「チビじゃないもん!」

 

明くる日、ハリーとロンはたくさんの進路資料の中でウーウー言っていた。エルファバが気がつけば2人は仲良くなって前のように普通に話していた。エルファバにとってはハグリッドが危険な動物を好む理由と同じくらいに謎である。そろそろOWLのために進路を決めないといけない時期だ。

 

ハーマイオニーは読み終わったであろう本の数冊をエルファバのためにどかしてニッコリ笑った。

 

「エルファバは何か興味のある職業はあるの?」

「私はもう決まってるの。」

 

エルファバはさらっと言い退けて本を読み始めようとしたところで、ハリーにそれを没収された。

 

「なんでもないかのように言ってるけど、君ぐらいだよ僕らの中で進路が決まってるの。」

 

エルファバはキョトンとハリー、ロン、ハーマイオニーを見た。誰もがエルファバの進路に興味を持っている。

 

「何になるの?」

「魔法薬学者よ。」

 

3人はその答えを聞いて、納得の声を上げた。が、その後ロンはガタッ!と立ち上がった。

 

「ってことはあのスネイプと7年間を共にするってこと?うっげー!!」

「仕方ないわ。」

「どうしてそれになろうとしてるの?」

「明白よハリー。」

 

ハーマイオニーは全て分かりきっているといった笑みでエルファバを見るのでロンが不満気に口を尖らせている。

 

「魔法薬を使えば、今魔法界で差別を受けている種族を救うことができるわけ。例えばヴァンパイアとか人狼とかね。」

 

エルファバはハーマイオニーの答えに正解だと微笑んだ。

 

「じゃあルーピン教授のために魔法薬学者になるのかい?」

「まあそれもあるわ。調べたら人狼長い間偏見を持ち続けられて、最近では人狼を就職させるとそこの機関がマイナスになってしまうような法律までできてしまったの。ルーピン教授が飲んでいた薬は煎じるのが難しいし高価だから就職できなければそのお金も手に入らないの。そんな悪循環も断ち切りたいし…私のためにも。」

 

エルファバは資料の山に頭を乗っけて物憂い気な表情で言う。

 

「精神安定剤みたいなものがあればどこかを凍らす被害も最小限に抑えられるかなって。」

「魔法界では精神的な治療の技術は発達してないの。」

 

ハリーとロンにハーマイオニーは説明を加えた。

 

「なんだいそれ?」

「こういうことよ。」

 

ポカンと口を開けるロンをハーマイオニーは指差した。

 

アダムやカルカロフがエルファバに絡もうと何度も何度も試みている様子だが、毎回何かしらの妨害にあっていた。それはハリーやロンだったり、グリフィンドールの生徒だったり教授だったり。ありがたいことではあるが教授まで介入してくることはかなり違和感だった。

 

「多分、ダンブルドアが何か指示を出してるに違いないわ。ほら、"ハリーのパパ"が言ってたんでしょう?彼はデスイーターだって。」

 

"ハリーのパパ"をハーマイオニーが強く強調したのには訳があった。

 

「僕行きません!!」

「いいえ、行くのです。」

「行きません!!」

「伝統ですポッター!!」

「そんなの知りませんっ!!」

「あなたは代表選手でしょう!?」

「なりたくてなった訳じゃないです!!」

 

今や廊下で大激論を繰り広げているハリーとマクゴナガル教授に誰もが釘付けだった。

 

事の発端はこうである。クリスマスに開催される三校の交流を目的としたダンスパーティーについての説明がマクゴナガル教授からされて解散した直後である。マクゴナガル教授はハリーに耳打ちした。

 

「あなたは代表選手なのですからパートナーを探さなくてはいけません。」

「僕は行きません。」

 

即答だった。

 

「今年のクリスマスは家族と過ごすんです。」

 

シリウスと過ごせる初めての夏休みはクィディッチ・ワールドカップというイベントによって短縮された。クリスマスはイギリスでは家族と過ごす一大イベント。何としてもシリウスが無罪となった初めてのクリスマスは帰省するとハリーは意気込んでいた。

 

「あそこまでマクゴナガルに歯向かうなんておっどろきだよね。どんだけハリーってシリウス好きなんだろう。」

「ハリーがファザコンになっていくわ。」

 

しかし相手は伝統を重んじる厳格なマクゴナガル教授。手強かった。

 

「いいですか、ポッター。我々ホグワーツは代表選手を2人出すというタブーを既にしています。その中でさらにあなたがクリスマスのパーティーに参加しないとなるとホグワーツの評判が悪くなります。」

「知りませんそんなの!!」

「ポッターっ!!」

 

普段は穏やかなハリーだが自分が決めたものに関しては徹底的に曲げない不屈の精神を持っている。

 

「頑固ね。」

「けど初めて家族と過ごすクリスマスなんだから、いいんじゃないかしら。」

「もういっそダンブルドアに直訴すればいいのに。」

「まあね…そういえば分かっていると思うけど、あなたのパートナーはセドリックよ。」

「ハーマイオニー、そんなのさすがにエルファバも分かってるでしょ。」

「分かってるわよ。ただセドリックの前にエルファバが誰かにダンス申し込まれてオッケーなんかしちゃう前に言っておかなきゃ。」

「エルファバとセドリックがカップルだなんてもうみんなが知ってることだろ?」

「それを知ってたって言ってくる不届き者はいるのよ。」

 

ハーマイオニーの読みは当たっていた。どういう訳かドラゴンを丸ごと凍らせてもそしてそもそも彼氏がいるのは周知の事実であっても、ボーバトン、ダームストラング、そしてホグワーツ。ありとあらゆる男子生徒と女子生徒がエルファバにダンスを申し込んできた。

 

「ごめんなさい、私セドリックと踊るから。」

「私セドリックと踊るの。」

「私は…。」

 

最初は丁寧に断っていたエルファバだったが、段々面倒になってきて2日目あたりからはなるべく必要最低限の場所にしか行かずそれ以降は寮にこもった。ちなみにハリーはロンのアドバイス通り校長に直訴して「オッケーじゃよ。」の一言で全て解決した。ハーマイオニーはビクトール・クラムにダンスを申し込まれてオッケーした。

 

「私…本当に信じられないわ…。今までずっと彼が図書室に来てたのは私に話しかけるためなんですって。」

 

ハーマイオニーは興奮気味に、しかし誰にもバレないようにエルファバに言った。

 

同じ頃、ある男子生徒がボーバトンの生徒と話すエディに話しかけた。

 

「おい。」

「ドラコじゃん。どうしたの?」

 

ドラコ・マルフォイはマフラーで赤くなっていく頬を隠し、睨みつけるようにエディを見た。

 

夏休み中、ずっとエディが忘れられなかった。何度も何度も手紙を書いては破り捨てた。クィディッチ・ワールドカップでエディが来るのではないかという淡い期待があったが、代わりに会った面々はグレンジャーとウィーズリーとポッター。そこで白い姉の方がいれば妹のエディもいるとふんでいたのに姉妹共々いなかった。当然自分の父親がこれを知ったら間違っていると諭されることくらい分かっていたので、会わないほうが良かったのかもしれない。しかしこれまでずっと同じような仲間とばっかり過ごしている中で、エディという存在はとても新鮮だった。

 

「お前、ダ…ス…行きたい…か?」

「ん?ごめんなんて言った?」

 

ドラコは丁寧に誘うなどという礼儀はかなぐり捨てた。

 

「っ!!ダンスだよダンス・パーティー!!美味いものいっぱい食いたいかって聞いてるんだ!!」

「うん!!ダンス・パーティー行きたい!!」

 

エディはニッコリ笑った。まだあどけなく純粋無垢な笑みで。ドラコにはホグワーツ中がそれで輝いているように見えた。

 

「じゃあ連れてってやる。」

「え、どうやって?」

「僕のパートナーになったら食えるぞ。」

「え、いいの?」

「ああ。」

 

エディは飛び跳ねてドラコに抱きついた。

 

「ありがとうっっ!!あたし本当に行きたかったの!!でも2年生は行けないって言われて…本当本当ありがとうね!!」

 

チュッとエディはドラコの頬にキスをした。

 

「ばっバカっ!!」

 

ドラコは今しがたキスされた頬に手を当てながら後ずさった。

 

「なに照れてんの。かーわーいーいー!初めてじゃないのにねー!エルフィーのこととルーピン教授のこと言わないって約束でキ「うるさいっ!!」」

 

慌てて周囲を確認して逃げるように去るドラコをエディとボーバトンの生徒はクスクス笑っていた。

 

「…というわけであたしはドラコと行くから!!」

「「「「「はあ?」」」」」

 

しかしドラコ・マルフォイという人物を知るホグワーツ面々はボーバトンの生徒ほど微笑ましくはしてくれなかった。エディがそれを宣言したことでホグワーツ生徒の9割近い人から総スカンを食らったのは言うまでもない。

 

「エディ、あいつは最低だ。」

「あんな人とダンスに行ったら君の評判が落ちるよ。」

「私に呪いをかけたのよ?」

「マグル生まれを穢れた血って呼ぶし!」

「この前私のことを気味悪い雪女って呼んだわ。」

「親父がデスイーターだぜ?」

「我が友よ。君のためにやめるべきだ。」

「あいつ頭皮黄色信号だよな。」

「ホグワーツ歴史史上最悪のシーカー。あ、ちなみに最高は君だぜハリー。」

「あ、どうも。」

「百歩譲ってスリザリン生がいいとしてあいつだけはやめとけ。」

「私もスリザリン生だけど、彼はあんまり好きじゃないわ。」

 

最後の最後に大親友でスリザリン生であるアステリアに聞いたところこのような回答が返ってきた。

 

「えー。悪い奴じゃないよドラコは。ただちょっと自慢好きなだけで。」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

エルファバは1時間目の数占いの授業にハーマイオニーより遅れて入って来た。不幸なことに朝にバーサ・ジョーキンスに遭遇したのだ。

 

『ねーねー、あなたの家族構成は?どうやって氷を作ってるの?気持ちが高ぶるといろんなもの凍らせちゃったりする?ハリーとは今どんな関係?セドリックとは?』

 

これはダンス・パーティーに誘う男子生徒よりもうっとおしく、早く終わらないかと強く願った。なんだかんだで最終的にムーディー教授が追っ払ってくれたからいいものの、あと数分で授業に遅れてしまうところだった。

 

(ああ、良かったわ間に合って。)

 

エルファバはふと、周囲を見ると違和感を覚えた。

 

皆がエルファバを見る目、目、目。

 

ドラゴンを凍らせた時ですら感じたことのない感覚だった。まるで今にもエルファバが爆発してこの教室を破壊してしまうのではないかと皆が恐れているかのようだった。授業を体験している一部のボーバトンやダームストラングの生徒も同じようにエルファバを見ている。

 

エルファバは怖くなった。

 

「ハ…ーマイオニー…?」

 

エルファバは恐怖でクラクラする頭を必死に正して、1番この状況を説明してくれそうな親友を探した。

 

「エルファバ…!」

 

ハーマイオニーは倒れこむようにエルファバに抱きついてきた。

 

「どうしたの?」

 

ハーマイオニーの目は真っ赤に腫れ、体は震えている。

 

「新聞が…!」

「新聞?」

 

ハーマイオニーが片手でグシャグシャに潰している新聞をエルファバは取った。

 

「あの人最低よっ!!」

 

新聞の一面にデカデカと載っているのはエルファバの写真だった。あの日、第一の試練でエルファバが柱に触れてそれが氷に変わり、エルファバがさめざめと泣く。

 

エルファバは目を通した。

 

ーーーーーー

ハリー・ポッターの悲劇の共通点

 

先日、"生き残った男の子"ハリー・ポッターと"ホグワーツ随一の美少女"エルファバ・スミス、そして"ホグワーツ1のイケメン"セドリック・ディゴリーの三角関係をお伝えしたが、今回リータ・スキーターはその三角関係は我らがハリー・ポッターが勝利するだろうと断言した。

魔法使いはマグルの世界で拒絶される。それは周知の事実だ。過去の長い歴史の中で魔法使いはマグルから迫害を受け身を隠す結果となった。…にも関わらずホグワーツの校長であるアルバス・ダンブルドアはどういうわけか、"例のあの人"を見事打ち破った英雄であるハリー・ポッターをマグルへと預けたのだ。

 

『彼のマグルの親戚はひどかったみたいです。彼を無視したり、ご飯をあげなかったり。』

 

多くの生徒がハリー・ポッターがその親戚に虐待を加えられたと証言している。ハリー・ポッターはその虐待がトラウマになり、今でも自分の不幸を嘆いているという。

そして、エルファバ・スミスだが今回恐るべき事実が明らかになった。彼女もまたマグルの家庭で育てられたが、母親が情緒不安定であり、幼い頃は魔力のない妹と差別されて育ったという。さらに彼女が成長すると彼女の美貌を妬んだ母親はマグルの男たちの元へと彼女を金で売り、彼女はマグルの男たちに数年に渡り身体的、精神的、そして性的虐待を受けた。その結果彼女の精神は蝕まれ、感情の爆発が起こるとドラゴンを凍らせてしまうほどに強力な魔力を発動させるという。

 

『私は彼女に足を凍らされた経験があります。ただ話しかけただけなのに。』

 

同級生であるパンジー・パーキンソンはこう言う。彼女が凍らせた物は数知れず、ダンブルドアは火消し作業に走っているという。

この2人はマグルから迫害されたという共通点を持っており、時折2人でその傷を分かち合っているという。

 

『僕は平和に生きてきた人間だ。彼女の気持ちを完全に理解することなんてできない。』

 

セドリック・ディゴリーもこんな諦めの言葉を言うほどに彼らの過去は2人を密接に繋いでいる。2人のそんなマグルから迫害された苦しい過去をひた隠しにして適切な処置をしないアルバス・ダンブルドア、そしてファッジ政権がこれを放っておくという今の魔法界の現状は大いに疑問が残るところである。

 

ーーーーー

 

「…そんな…。」

 

カラカラの口からやっと出た言葉だ。誰も何も言わない。

 

「この記事はエルファバの名誉を汚してるわ!!!これを書いたらエルファバがどんな目で見られるか!!!」

 

ハーマイオニーが大声で泣いてエルファバに抱きついた。

 

「雪…。」

 

レイブンクローの生徒がぽそっとつぶやいた。気がつけば教室中に白い粉雪がヒラヒラと降っている。

 

「本当なの?あなた、アダムやルーカスみたいに操れないの?」

 

エルファバはハーマイオニーを抱き寄せながら、なるべく感情を抑えて、ゆっくり言った。

 

「操れない…操れない。」

「じゃあ僕らを凍らせる可能性もあるってことだ。」

「っ!!なんて物言いなの!?それが何!?今までエルファバがあなたたちを凍らせたことがある!?この子は自分のどうしようもない、手の届かない場所で酷い心の傷を負わされたのに!!彼女がこれをコントロールできないことでどれだけ悩んでたか!!」

 

それ以上ハーマイオニーは嗚咽して、喋ることはできなかった。

 

ドラゴンを凍らせた時はきっと誰もがこの得体の知れない能力をエルファバが操れたから皆が賞賛したのだ。得体の知れない能力を本人が操れないとなると途端に人は自分を疎む。それが精神的な原因だったら尚更だ。

 

「ハーマイオニー…ごめん…私行くね。」

「私もついていくわ。今日は授業なんか受ける気になれない。」

 

ドラゴンを凍らせた時、エルファバは終わったと思った。エルファバが築き上げてきた全てが。一歩歩き出すたびに床は不思議な模様を描き、その度に教室にいる生徒たちは恐怖の声を上げる。

 

自分が恐るべきは"力"を知られることではない。"力"を操れないことを知られることだった。エルファバは教室を出る前に、後ろを振り向いた。

 

「デフィーソロ」

 

エルファバが教室に残した跡がまるで昔からいなかったように全て消えていく。

 

その日からエルファバの学校生活は180度変わってしまった。皆がエルファバを避けるようになった。触れると凍ってしまうと思われているようだった。ハッフルパフの5年生が教科書と羽ペンを落として、エルファバが一緒に拾おうとしたら、彼はそれらを全部放置して逃げてしまった。

 

「大丈夫。すぐ終わるよ。」

 

呆然と立ち尽くすエルファバにハリーは肩を叩いた。彼はこんな風に人から避けられるのには慣れっこだった。

 

「シリウスからの伝言。いじめるやつは凍らせるか呪いをかけろってさ。できない場合は俺がやってやるって。」

「…もうっ。」

 

なんともシリウスらしいアドバイスだ。思わず笑ってしまった。

 

「ねえ。」

 

バーサ・ジョーキンズはハリーとエルファバに話しかけた。

 

「おおっと。お願いあなたは近づかないで。私凍りたくないもの。」

 

バーサは動いたエルファバを(近づこうとしたのではなく逃げようとしたのだが)、制止した。

 

「ねえねえ、やっぱりあなたたちってそういうトラウマで繋がってるの?同じ穴のムジナって感じ?」

「それ以上ゴチャゴチャ言うと呪うぞ!!」

 

ハリーの一喝にバーサは怖い怖いと言いながら逃げていく。

 

「誰が君の過去を言ったんだろう?確かにほとんどがウソだけど、ちょっと本当のことだってあるだろう?」

 

大広間に入っていく段階でハーマイオニーと合流した。

 

「それ私も考えてたの。いろいろめちゃくちゃだけど一部だけ合ってるっていうのも変な話じゃない?だから誰かが何か言ったんじゃないかしら。このこと知ってるのは?」

 

ハーマイオニーはとても優しくエルファバに聞いた。周囲はエルファバを病原菌を見るような目で見ているのが視界に入っているのだろう。

 

「あなたたち3人と…セドリック。」

「じゃあセドリックが?」

「セドリックはそんな人じゃない…と思う。」

「僕もそう思う。というか、あんなにエルファバにゾッコンなセドリックがそんなことしない気がする。例えばセドリックが友達に言ってたとか?」

「あり…えるかな?」

 

ちょうどその時3人の間に黒い何かが横切った。

 

「エルフィーっっっ!!!」

 

顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしたエディがエルファバの上にのしかかった。

 

「エルフィー!!!あたし知らなかった!!エルフィーがそんなそんな辛い思いしてたなんて!!どうして言ってくれなかったの?!あたしエルフィーの妹なのに!!なにもできなかったあああああっ!!」

 

エディの大号泣は大広間中に響き、お昼で少しざわついてた生徒はシンっと静まり返った。

 

「エディ…しょうがないわ。あなたはまだ6歳とか5歳とかそれくらいだったのよ。それにあの記事には一部ウソがあるわ。だからそんなに気にしないで。」

 

エルファバはエディの頭を優しく撫でる。エディは目をグリグリ擦って何度も何度もうなづいた。自分が魔力のないと書かれたことに関してはあまり重要ポイントではないのがなんともエディらしかった。

 

「私お昼食べないと…。」

 

エディはヨロヨロと立ち上がって、グリフィンドールの席へと戻っていく。エルファバはハリーの手を借りて立ち上がった。

 

「ああ、そうさ。エルファバに触ったよ。なんか文句あるなら後で言ってくれ。」

 

ハリーはエルファバに触れたことで驚愕の声を上げた生徒たちを睨みつけた。毎回毎回食事を大勢の前でするのは苦痛だった。しかしここで逃げてはもう戻れない気がした。ロンは先に席を取って待ってくれている。エルファバの背中を叩いて口角を上げる。

 

「みんなどうせすぐ忘れるさ。ハリーだってスリザリンの継承者とかなんか言われたり、今回だっていろいろあったけど大丈夫だろ?今日のコーンポタージュ食べて元気を…?」

 

ロンが言葉を切った。エルファバの背後を見ている。エルファバが振り向くと意外な人物が立っていた。

 

「やあ。」

 

ルーカス・レインウォーターは長身でモデルのような体型と彫刻のように完璧な顔だった。女性たちがキャーキャー言うのもうなづける。ロンはこの能力を持つ人間はみんな美形なのかと思ったが、アダムの存在を思い出してその仮説を頭から消した。

 

「この子借りてもいい?」

 

指差されたエルファバはまるで飼い主から離される子犬のような顔で3人を見た。

 

「大丈夫。取って食ったりはしないからさ。」

 

ね?とエルファバに向かって言うルーカスはとても穏やかでなんとなくエルファバはこの人ならいいかなと思い、コクリとうなづいた。

 

「ありがとう。時間は取らせないよ。」

 

ルーカスとエルファバといういろんな意味で異色な2人を生徒たちは目で追っていった。大広間の外のホールのあまり目立たないところまでくるとルーカスはエルファバに向き直った。

 

「君も大変みたいだね。」

「ん…まあね。」

 

そういうことに鈍感なエルファバでも壁に寄っ掛かるルーカスは絵になると思った。少しウェーブのかかった明るいブラウンの髪も顔の絶妙な位置にかかっている。

 

「ダンス・パーティーさ、俺と踊らない?」

「……………はい?」

 

なんの前触れもないお誘いにエルファバは一瞬理解するのに時間がかかった。

 

「だって君あの代表選手と踊るんでしょ?こんな状況じゃあ好奇の目で見られるし、どう?あ、もうあの人には許可取ってるから平気。」

「いや…どうして?」

「反応意外だな。自惚じゃないけど俺と踊るって言われたらもっと喜ぶと思ってたよ。」

「いやとかではなくて…。」

「君高嶺の花の傲慢で嫌な奴だと思ってたけど、案外可愛いね。」

 

ルーカスはひょうひょうと言うがエルファバが全くついていけてない。顔が無表情だが目だけがコロコロと動いているのは端から見るとなんとも滑稽である。

 

「君は変装して俺のパートナーになればいいよ。その方が楽でしょ?」

「うっうん…セドリックは大丈夫なのね?」

「本人も君はなるべく目立つべきじゃないって言ってたから。」

 

しかしエルファバはふと思う。一緒にダンスを踊るということは男女において素晴らしい夜になるという。セドリックはそんな夜を他の男性と過ごすことを許可するとは思えなかった。

 

「セドリックにもう一回話聞いてからでもいい?」

「いいよ。俺は焦んないから。」

 

ルーカスは手をヒラヒラさせて大丈夫だとアピールする。

 

外は曇っていた。今にも雨が降りそうで校庭に出ている人は誰もいない。エルファバはこのどんよりとした灰色の景色を純白に変えてしまいたいという衝動に駆られた。

 

「できるの?」

 

ルーカスは心を読んだかのようにエルファバに聞いた。エルファバは窓を少し開け、手を出した。エルファバの手から冷たい風が球体を作り、空高く飛んでいった。その数秒後外は一気に冷え込み、雲の色も変わってきた。

 

「きた。」

 

空から降ってくる小さな小さな粒はエルファバの手に止まり、一瞬で見えなくなった。

 

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