ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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7.第二の試練

「ハグリッドに巨人の血が?」

 

ダンスパーティーの翌朝、ロンは興奮気味にハーマイオニーとエルファバに報告した。

 

「そうなんだよ!多分マクシームにも!そんな告白をしてるのを聞いちゃったんだ!」

 

基本反応が薄いエルファバはともかくとして、ハーマイオニーからの反応が薄いことにロンはじれったそうに体を上下させた。

 

「なんとなくそんな気はしてたわよ。ハグリッドよりも身長の高いマダム・マクシームだって確実にそうだわ。けど狼人間への差別と一緒で巨人だからといって何かがあるって訳じゃないのよ。」

 

ロンは不満そうな顔をしたが、つい昨日ハーマイオニーと(エルファバには原因がよく分からない)ケンカをしたところだったのでこれ以上何かを言うのはやめた。ハーマイオニーは口いっぱいにコーンフレークを入れる。

 

「エルファバも分かってたの?」

「なんとなくね。」

「なんで教えてくれなかったんだよ。僕ら親友だろう?」

「確証はなかったし、ハグリッドも言わなかったってことは知られなくなかったのかなって。

 

ロンはハーマイオニーに反論できないこともセットで、エルファバのスコーンを1つ奪った。エルファバはロンを睨みつけた。

 

休暇が終わると、ハリーはとてもウキウキした顔で帰ってきた。クリスマスの出来事を興奮気味にノンストップで話しており、それを聞く役目はロン、ハーマイオニーからエルファバに代わった。

 

「チェルトナムの家でシリウスとリーマス…ルーピン教授のことだけど、その3人で過ごしたんだ。料理はマグルのスーパーマーケットで買ったチキンとサラダとケーキだったけど最高のクリスマスだった。3人の学生時代の話とか僕の1年と2年で起こった話とかして、本当本当楽しかった!大人になってからの話だけど、シリウスと僕の父さん、1回空飛ぶバイクに乗ってマグルの警察とデスイーターに追いかけられたんだってさ!それで…。」

 

言うまでもなく、聞く役目はエルファバに適役だった。比較的大人しいハリーが小さい子が今日起こったことを親に聞かせるようにずっと話している光景はなかなか面白いものだったが、部屋が一緒のロンは「僕もうお腹いっぱい。」と降参を宣言し、ハーマイオニーもハーマイオニーで早い段階でエルファバにその役目をパスした。

 

「ルーピン教授元気にしてた?」

「前に比べるとみすぼらしくなってた…けど君の手紙は受け取ってたみたいだよ。エディのブボチューバ事件は傑作だって笑ってたし。」

 

おそらくルーピン教授は就職ができていないに違いない。それでも手紙で喜んでくれたということを聞けただけで嬉しかった。ちなみに聞けば聞くほどシリウスのハリーに対する溺愛っぷりはすごいらしく、ハリーもハリーでやり過ぎだと言いつつも満更ではなさそうだ。親戚を親バカだと言っていたハリーだったが、今やシリウスもその道を爆進中だと誰も言う勇気はなかった。

 

「あ、そういえば僕第二の試練の謎が解けた。」

「「えっ!?」」

 

本を読んでいたハーマイオニーとチェスの駒を磨いていたロンは大きな声を上げた。

 

「すっごく重要じゃない!!どうやって!?」

「シリウスにヒントをもらったんだ。けど、問題はそのあとなんだよ。」

 

ハリーが言うには金の卵が隠していた言葉は海から大事な人を救う試練をしろということらしい。1時間水中を潜っていないといけないというのが最大の難関だった。

 

「なんか知らない?1時間湖に潜り続ける方法?」

 

口を開いたのはエルファバだった。

 

「泡呪文は?」

「「なにそれ?」」

「口に水圧に負けない泡をつける呪文よ。」

「いいかも。それって僕にもできる?」

「N•E•W•Tレベル。」

「じゃあ却下。」

 

そんなこんなで4人は休み時間は1時間ほど湖に潜れる方法を図書館で探す時間に費やすことになった。

 

「変身呪文で魚になるのは?」

「変身呪文って難易度高いし危険度が高いわ。」

「一生エラが取れなくなるかも。」

「うーっ。それは勘弁。絶対1時間で解けるやつにしてくれよ。」

「あ。これは?エラ昆布。」

「なにそれ?」

「食べるとエラとヒレができてきっかり1時間で元に戻る。」

「最高じゃないか!どこにあるのかな?」

 

その答えを持っている人物は誰もいなかった。うやむやにしたままただただ日が過ぎていった。

 

「そういえば、君クリスマスのパーティーの時に近くにバーサ・ジョーキンスとアダムの近くにいたけど、何してたんだいあの2人?」

 

集中力が切れたハリーは気分転換に本を片付けていたエルファバに聞いた。

 

「えっそうなの?」

「うん。君が大広間の外にいて、男女のペアが周辺にいて、そのうちの1組に。」

 

エルファバが答える前にハーマイオニーがずいっとエルファバを押しのけてハリーに近づいた。その顔はまるで子供の隠し事を問い詰める母親のようだ。

 

「悪趣味ねハリー。」

「何言ってるんだいハーマイオニー?」

「ロン、この人私たちのクリスマスの様子をあの地図を開きながらクリスマス・ディナー食べてたのよ。どおりで誰が誰と踊ったのかやけに知ってるわけだわ。いいおつまみになったでしょうね。」

「そうなのかいハリー!?」

 

ハリーはゆっくりとハーマイオニーから目を逸らした。その先にいるエルファバは無表情にハリーを見る。彼女から表情は読めないが心なしか軽蔑しているように見える。ハリーは見間違いだと心の中で唱えた。エルファバがそこまで考えられるはずがない。

 

「ロン、君はパートナーの年下のハッフルパフ生に置いてけぼりにされてたね。」

「おい言うなよっ!!」

 

ハリーはロンにソファのクッションで殴られるのを笑って抵抗した。ハーマイオニーは全く、と腕を組んだ。

 

「さぞかし楽しいクリスマスだったでしょうね。どうせ、シリウスにいろいろ吹き込まれたんでしょう。」

 

ハーマイオニーが言うことは図星だった。シリウスは男女関係のプロフェッショナルでチキンを頬張りながら、地図上の点の動きを指差してこのカップルはいずれ別れるだろうとか、こいつらは多分とりあえず相手を探してくっついてるんだとかあれやこれや言っていた。そしてそういうのはよくないよと言いながらも嬉々として、こことここは付き合ってたのに今回は踊ってないとか、あの子は可愛いからモテるとかいろんな合いの手を入れていたのは我らがルーピン教授である。

 

「もうっ。」

「良ければシリウスの考察みんなに聞かせるよ。」

「結構よっ!高みの見物しちゃって!」

 

"ハリー叩き"にハーマイオニーが加わった。エルファバはキョロキョロと3人を見てからゆっくりと少し遠くにあったクッションを持って、よく分からずにペチペチと"ハリー叩き"に参加した。

 

「エルファバ!訳も分からず僕を叩かないでよ!」

 

しかし数日後、そんな順調な空気を吹っ飛ばすようなことをリータ・スキーターがまたやってのけた。

 

「ロン言ってないでしょうね?」

「言ってないよ!!言うわけないだろう!?」

 

ハリーは怒り任せに新聞をぐしゃぐしゃにして捨て、荒々しく昨日4人でじゃれたソファに座った。

 

「あの人、透明マントかなんかを使って隠れてたんじゃないかしら。」

 

ハグリッドがジャイアントの血を引いてることが新聞によって全ての人に知られてしまったのだ。

 

「盗み聞きしてたってこと?」

「ハグリッドバカだよ!あんなところで秘密バラしちゃうなんて!」

「授業が全部終わったらハグリッドに会いに行こう。僕はハグリッドに戻ってきてほしい。君もそうだろう?」

 

ハリーはものすごく威圧的にハーマイオニーを見た。

 

「今回きちんとした授業を受けて新鮮に感じたわ…でっ、でもハグリッドに戻ってきてほしい!」

 

ハリーの目の怒りの色が強くなったのでハーマイオニーは慌てて付け加えた。

 

ハグリッドの授業は正直なところ、評判はよくない。バックビークなどのヒッポグリフを扱った3年の時はまだしも4年になったらどういうわけか、ものすごい危険な動物を扱うようになったのだ。今教えている教授は危険な動物ではなく安全かつしっかりした知識を教えてくれるので優等生のハーマイオニーからしたら彼女に教えてもらったほうがいいに違いない。

 

その晩どんなにハグリッドの小屋の戸や窓をどんなに叩いてもハグリッドが出てくることはなかった。

 

「エルファバ、鍵穴の中で氷を作って鍵を作ったりできない?キーピッキングみたいなさ。」

「できないことはないけれど…ハグリッドの意思に反するんじゃないかしら。」

 

他の生徒たちはハグリッドがいないのを寂しがったが、授業は持たなくていいと思っているようだった。あの授業はハグリッドの人柄で持っていたようなものだ。授業は引き続きあの女性教授がやり、授業中もずっとスリザリン生徒がハグリッドをバカにして笑うのでハリーがその辺にあった大量の雪の塊をそいつらに浴びせた。

 

「エルファバ、雪の棘をあいつらの頭上に降らせてくれ。」

「それか氷の滑り台作って湖に放り込んで。」

「氷の巨人を作ってさ、あいつらをホグワーツ城から投げるってのは?」

「うーん、悪くないけど今回の場合はちょっとまずいよ。」

「じゃあ、奴らの口の中凍らせてよ。」

 

パーバティが言った。エルファバは驚いて、周辺の木々を凍らせてしまった。パーバティがエルファバに話しかけたのは第1の試練の時以来だ。

 

「できるエルファバ?」

「…できないことはないけど、証拠がないほうがいいと思うわ。」

 

幸いまだ雪が残っているので木々が凍っても違和感はなかった。パーバティは堰を切ったように話し始めた。

 

「エルファバ。私ごめんなさい。意地はってて、あなたのこと何も知らなくて…。記事が出てからも酷い態度取ったから謝るタイミングを完全に見失っちゃって…。許してくれる?」

 

エルファバは言い終わる前にパーバティに抱きついた。

 

「もう一生喋れないかと思ったわ。」

 

エルファバはパーバティからゆっくり離れて、笑った。

 

「また一緒にしゃべろうね。」

「うんっ!」

 

エルファバとパーバティは2人でユニコーンの子供を優しく撫でた。

 

エルファバの笑顔にシェーマスが悶絶してたのと、スリザリン生をハーマイオニーがえげつない魔法で黙らせたのをエルファバは見ていない。

 

 

ーーーーー

 

 

ホグズミードは相変わらず混んでいた。エルファバは父親への手紙の返信を書いてからエディのお土産(ざっと20個はあり、しかも多岐に渡り「エルファバ!エディを甘やかすんじゃないの!」とハーマイオニーに言われた)を購入してからホグズミードのパブで3人に落ち合った。

 

「ハグリッドは?」

「「「「「いない。」」」」」

 

どういう訳かハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてマギーとルーカスがカウンターにいた。改めて見ると不思議なメンツである。

 

「そういえばマギーってさ、エルファバの能力のこと知ってたの?」

「知ってたよフツーに。」

 

ロンの問いにマギーは何を今更といった感じでバタービールを仰いだ。

 

「知ってたっていつから?」

「ウチはスミスの母親の能力のこと知ってたから娘もそうだろうなって思ってた。だから知り合う前からだよ。」

「ふーん、じゃあずっとナイショにしてたんだー。やーさーしっ!」

「うっせ。」

 

マギーは鬱陶しそうにルーカスを睨んだ。ルーカスは何かを知っているかのように含み笑いをする。

 

「ルーカスはてっきりこういう場所は好きじゃないと思ったわ。」

「イケメンのハリー・ポッターくんとお近づきになりたくて。」

 

ルーカスがハリーの肩に手を回すとハリーは飲んだバタービールを吹き出した。ハリーとルーカスの顔の距離は普通ではない。

 

(今にもルーカスがハリーにキスしてしまいそうね。)

 

「うん、そう意味だよハリー?」

「…あっ、あの、ごめん。君の気持ちは嬉しいんだけど、「ははっ!冗談だよ。」「目が本気だった目が!」」

 

しれっと言うルーカスにロンはつっこんだが、大して気にしてないようだった。

 

「まあ冗談は置いておいて、俺は連中の動向を見てたんだよ。」

 

ルーカスが顎で指す先には、小さい人のような生物が1人の人間を囲んでいた。

 

「バグマンだ。」

「周辺にいるのはゴブリンね。」

 

おどろおどろしい雰囲気だ。パブの角でゴブリンたちは全員腕組みしているし、バグマンは神妙な面持ちで何かをまくし立てている。あまり近づきたくはないし現に誰も近づいていない。

 

「よしっ、バーサ・ジョーキンスはいないな。」

「どうしてホグズミードにいるんだろう?トーナメントはまだまだ先だろ?」「さあね。」

「ハリー!」

 

バグマンはハリーを見つけるなり、たちまち神妙な顔つきを剥いで少年のような笑みで大股歩きでハリーに近づき、ハリーを連れて行った。

 

「何話してるのかしらね?」

「あれじゃない?多分最初の試練のこと褒めてるんだよ。」

「そうだったら、連れて行く必要ないよね。」

 

ふと、エルファバは右側からものすごい視線を感じた。なんというか、殺気である。

 

「エルファバ、ゴブリンがすっごい君のこと見てるよ。」

 

前はとても気味悪く感じたが、今は理由を知っているから何も恐れることはない。エルファバはロンに曖昧に微笑み、ヒソヒソとゴブリンたちは話してはエルファバを指差しているのを無視してバタービールを口に含んだ。

 

「お前の母親は罪人だ。」

 

ゴブリンの1人がエルファバの真後ろにいた。まるでエルファバが重罪を犯したように血走った目で睨み、しわくちゃな指を突きつける。他のゴブリンたちよりも顔や手の甲にシワが多く、白い髪が頭から生えているのを見ると年配らしい。

 

「いいえ。彼女は無実よ。」

「違う。我々の言いたいことはそういうことではない。」

 

別の若いゴブリンが走ってきて母語で耳打ちする。今喋ったゴブリンをたしなめているようだった。しかしそのゴブリンは怒りが収まらないらしく、ガタッと立ち上がった。

 

「お前の母親は我々を侮辱したのだ!」

 

怒るゴブリンに対しエルファバは訳が分からず、助けを求めてルーカスを見た。ルーカスはカウンターから立ち上がり、ゴブリンたちを睨みつけながらゆっくりとエルファバの隣に来た。

 

「お前のその醜い老婆のような白髪がその証拠だ!お前の母親は我々を裏切ったために我々が呪いをかけ!?!?」

 

老いたゴブリンがエルファバにそれ以上喋ることはなかった。若いゴブリン数人が老いたゴブリンの口と体を押さえつけたのだ。ゴブリンたちは老いたゴブリンを睨みつけていた。

 

「すいません。ちょっと彼はボケておりましてな。」

 

押さえつけていないゴブリンは恭しくお辞儀して笑ったが、それがかえってわざとらしい。押さえつけられた老人ゴブリンはモガモガ言いながら仲間たちに引きずられていった。

 

「私の髪が呪いの印?」

「いえ。気にするに値することではありません。」

「もしあなたたちの言うことが本当ならあなたたちは魔法使いとの条約を破ったことになるわよ…魔法使い以外は魔法を使えないってよーく知っているわよね?」

「とんでもない!魔法など使いませんよ我々は!私たちの生きがいは美しい物を創り、守ることです。」

 

ハーマイオニーが痛いところを突いても全く動じない。世慣れたゴブリンである。話を終わらす前にバグマンが戻ってきて、ゴブリンたちを引き連れてさっさとパブを出て行ってしまった。

 

「バグマンはなんの話をしたの君に?」

「金の卵のヒントを教えたいって。」

「八百長じゃん。」

「セドリックも助けようって気はないの?」

 

ロンの問いにハリーは首を振った。

 

「セドリック大丈夫かしら?」

「そろそろ構ってあげないとまたヤキモチやくよ。」

 

ハリーの指摘にエルファバは肩をすくめる。

 

「セドリックもそんなしょっちゅうヤキモチやいてるわけじゃないと思うけど。」

「どうかな?どう思うハリーくんとロンくん?」

 

ルーカスの言葉にハリーとロンは同じ顔をしてバタービールを飲む手を止め、同じタイミングでジョッキをカウンターに置いた。ハーマイオニーはクスクス笑って賞賛の目でルーカスを見た。

 

「なんで僕らに…?」

「だって、2人ともいろんなシチュエーションでヤキモチ妬いてるでしょ。特にロンくん。」

「君の炎は人間の心を読める訳じゃないだろう?」

「まあね。けどエルちゃん観察しているうちに誰が誰を好きだか読めちゃった。」

「あーらステキ。ルーカス、今度教えて。」

 

ハーマイオニーは散々クラムのことをからかわれたりバカにされたので2人、特にロンに恨みを持っていた。こういう時のハーマイオニーの笑顔は怒っている時よりも恐ろしい。

 

「エルファバ、頼むから厄介な奴と友達にならないでくれ!」

 

小声で怒るロンにエルファバはまた肩をすくめた。

 

 

 

ーーーーーー

 

深い深い記憶。探っていくといろんなことが分かる。

 

『何やってるんだお前らあっ!!』

 

ああ、そうだわ。これは人生で一番悲しい記憶。

 

叔父は従兄弟たちを何度も何度も殴りつけて、私とエディは恐怖のあまり互いの体にしがみ付いていた。それは確実に躾の域を超えたもので、従兄弟たちの苦しそうな声に耐えられなくなった私は、自分の“力”を見せた。

 

『それを…俺の前で!見せるなあああっ!』

 

叔父の叫びは大人数人を呼び、私を囲み、私の口を塞ぎ、首を絞めて私を殺そうとした。

 

『ぎゃあっ!?』

『冷たいっ!!』

『エルフィっ!!』

 

エディが私を助けるために抵抗した。足にしがみついたのだ。

 

叔父さんは足が凍ると叫びエディを殴ろうとしてー。

 

あれ。おかしい。

 

私は何か重要なことを見逃しているようなー。

 

「…ファバ!エルファバ!」

 

顔と髪が濡れたセドリックが視界に入ってきた。それがすごく綺麗だとエルファバは思った。その次には耳にはけたたましい歓声が鼓膜に反響して、髪の毛が体にまとわりついて服がぴったり体に張り付いている。そしてタオルでぐるぐる巻きにされていて身動きが取れない。

 

「僕1番だよ、お寝坊さん。」

 

エルファバはのそのそと起き上がり、自分がずぶ濡れな理由を数秒考えた。

 

それでエルファバは思い出した。エルファバは第2の試練でセドリックの"一番失いたくない物"になったのだ。眠り薬を飲んで、湖の底へ閉じ込められ、代表者が助けるという試験だった。それでセドリックはやってのけたのだろう。

数メートル先でハリーもロンもハーマイオニーも陸に上がってタオルでグルグル巻きにされていた。ロンはハリーの一番失いたくない物、ハーマイオニーはクラムの一番失いたくない物だった。3人とも無事なようだった。

 

「…セドリックが1番?」

「そうだよ。」

「おめでとっ。」

 

エルファバはセドリックに抱きついた。セドリックの体も濡れていて冷たい。マダム・ポンフリーは長時間濡れた2人がそばにいることを許さなかった。

 

「ほらっ!愛の炎があなたたちを温めてくれるとは限らないのっ!さっさと離れてタオルを巻いて薬を飲みなさいっ!」

 

セドリックは笑ってエルファバに薬を渡した。それを飲むとエルファバの耳から湯気が出たのでまたセドリックは笑った。エルファバはぷうっと頬を膨らませてセドリックにも薬を飲ませた。セドリックの耳からも湯気が出てまた笑った。

エルファバは3人と話したかったが、ハリーはどういうわけかボーバトンの代表選手のフラー・デラクールと話し込んでいてハーマイオニーはクラムと一緒にいる。ロンは金髪の女の子と話していた。おそらくエディと仲のいいガブリエルだろう。何度か一緒にいるのを見かけたことがある。

 

(何がともあれみんな無事で良かった。)

 

「いい夢見てた?」

 

セドリックは余裕の笑みを浮かべていた。

 

「あー…そうね…。」

 

(何かすごく重要な夢を見てた気がするけど…。)

 

「忘れちゃったわ。」

 

 

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