ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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5. 女の友情

あのエルファバが大活躍した魔法薬学のあと、ハリー、ロンと3人でハグリッドの小屋へと行った。

最初の1週間の様子を知りたいというハグリッドにハリーとロンはフィルチとスネイプ教授がいかに意地悪かを聞かせる。エルファバはファングを怖がってずっとハグリッドの後ろに隠れてた。

 

「エルファバ、ファングは見かけはこんなんだが、少しも怖くはねーぞ。ほら、見てみ、ハリーの膝に乗って頬を舐めちょる。」

「...」

 

ハリーの膝によだれ垂らしてるじゃない。ハリー食べられちゃう。

エルファバは眉間にシワを寄せ一言だけ言った。

 

「やだ。」

「はっはっはっ!!おいファング!!おめーの顔のせいでエルファバ怖がってんぞ!!」

 

ファングはよだれをダラダラ垂らしながらこっちを見る。

 

(お前を食べちゃうぞー。)

 

そう言ってる気がしてならなかった。

 

「心配すんなってエルファバ。ただの犬だし。」

「...うん。」

 

エルファバは大人しく席に座り、ハグリッドがくれたチョコレート味の大きなキャンディをひとかけら口に含んだ。

 

ハリーはスネイプ教授に憎まれているらしかった。エルファバが来る前の話を聞いて、少しスネイプ教授が嫌いになる。ハグリッドはスネイプ教授は生徒という生徒が嫌いなのだといっているが、じゃあなんでホグワーツで教師をやっているんだという言葉を紅茶と共に飲み込んだ。

 

ふと、新聞の記事がエルファバとハリーの目に止まる。読んでいくうちにハリーの明るいグリーン色の目がどんどん見開かれていった。

 

新聞の内容はグリンゴッツに強盗が入ったが、中身が空っぽだったために未遂に終わったということだった。

 

「僕らが行った日だよエルファバ!僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!」

 

ハリーの声は驚きに満ちていた。エルファバと2人でハグリッドを見たが彼はロックケーキを勧めるだけだった。

 

(これケーキなの?)

 

エルファバはそっちの方が驚きだった。

 

ーーーーー

 

部屋に戻ると、ルームメイトが話をしていた。

 

「あっ、エルファバ!」

「ハーイ。」

 

パーバティ、ラベンダー、ハーマイオニー、エルファバ。

これがメンバーでハーマイオニーはまだ帰ってきてないらしい。彼女のことだから、大量に出た変身術のレポート(物を生き物に変える原理を調べて羊皮紙2枚にまとめる)を終わらすために図書室に行っているんだろう。パーバティとラベンダーは自分たちのベットをくっつけ、寝っ転がっていた。

ラベンダーは空いている場所をポンポンと叩き、エルファバに座るように促す。

 

(女の子が集まると大体どうでもいいことを長々としゃべるといろんな本に書いてあったわ。実際どうなのかしら。)

 

エルファバが結構失礼なことを考えてることをこの2人は知らない。

 

「何してたの?」

「ハリーとロンとハグリッドの家に行ってた。」

 

2人はワオ!と顔を見合わせる。

 

「ハリーって、あのハリー・ポッターでしょ?」

「うん多分。」

 

2人は、まるでエルファバがジョン・レノンと会ってきたと言ったかのような顔をする。

 

妹のエディはビートルズとマドンナ、あとはビーチボーイズが大好きなので有名人に疎いエルファバでも、それだけは知っている。毎朝、部屋の前にラジカセを持ち込み大音量で流されたら流石に覚えるだろう。

 

あまりにもしつこくマドンナの"Material Girl"を流してくるので、半分ノイローゼになりラジカセを凍らせ、その結果、母親にぶたれたのはエルファバにとってあまりいい思い出ではない。

 

閑話休題。

 

「どんな人なのハリー・ポッターって?」

 

ラベンダーはベットから身を乗り出して聞く。

 

どんな人って...

 

「いい人よ。」

 

2人はまあいい人そうね、とか、思った以上に顔立ちは整ってるわ、とか、自分の意見を言いあった。

 

「エルファバのボーイフレンドだったりするの?」

 

...ぼーいふれんど。ボーイフレンド。男友達。

 

「うん。」

「「ええええ!?」」

 

何をそんなにびっくりする必要があるのだろうか。2人の顎は今にも外れそうだ。

 

「まだ1週間でしょ!?」

「しんじらんない!!」

「てっきり、セドリック・ディゴリーが好きなのかと思ってたわ!!」

 

最初の変身術の授業の時にハンサムなハッフルパフ生、セドリック・ディゴリーに横抱きにされて(俗に言う"お姫様抱っこ"だ)教室に登場したのは記憶に新しい。そのあと、女子生徒の質問攻めにあったわけだが、実際は優しい彼が、廊下で疲れ果ててしゃがみこんでいる哀れで小さな新入生を自分の授業を差し置いて運んだというだけの話だ。

 

少なくともエルファバは自分より背の高い男性に抱えられている恐怖しか覚えてなかった。

 

(そうか、あの人もボーイフレンド(友達)なのか。)

 

「セドリックも私の友達...?」

「「ん?」」

 

今日以上に2人がハモることがこの先あるだろうか。エルファバは少し違う形で女子との友情を深めていく。

 

「エルファバ?もしかしてあなたが言うボーイフレンドってただの友達じゃない?」

「?」

 

無表情のエルファバの頭の上に疑問符が見える。

 

「ハリーとロンは...私は友達だと思ってるわ。」

 

ラベンダーとパーバティは顔を見合わせて数秒後、爆笑しだした。

 

「??」

「あっはっはっは!ごめんごめん。じゃあ、ハリーは普通の友達なわけね!」

 

ラベンダーは目頭の涙を拭いながら尋ねた。

 

「うん。」

 

ラベンダーの質問がイマイチ分からない。"普通の"ってどういうこと?親友っていうにはあまりにも期間が短すぎるし、押し付けがましいわよね。でも、なんで2人は...

 

「ボーイフレンドっていうのは恋人よ。結婚したいと思う人のこと!結婚は分かるでしょ?」

「私たちまだ結婚できないでしょ?」

「ラベンダー、これは教育が必要だわ。」

「そうね。オッケー、まずね...」

 

ここから2人による"講座"が始まった。

 

この世の女の子は"イケメン"と共に生きることを人生の糧とすること、また男の子も"可愛い子"と一緒にいることは人生の喜びらしい。そして、想いが通じると彼らは晴れてカップルとなり、喜びや悲しみを共に共有する。そのゴールが結婚であり、彼氏彼女探しというのは人生で重要になってくる。

 

果たしてどこからこんな知識を得たのかエルファバは見当もつかない。

 

(えっ、じゃあ白雪姫はキスして目覚めたのは、真実の愛だから?てっきり王子様が白雪姫の毒全部吸い取ったのかと...。)

 

そして若干の誤解も解けた。エルファバは白雪姫に出てくる王子様を体内で毒を分解できるスーパーマンだと思っていた。

 

どう解釈したらそうなるのかは3歳の時のエルファバのみぞ知る。

 

「あっ、ハーマイオニー。」

 

大量の本を抱えたハーマイオニーにラベンダーが話しかける。

 

「今ね、エルファバに恋愛について教えてるのよ。」

「エルファバったら面白いのよ。ハーマイオニーも教えてあげて!エルファバ可愛いんだからきっと...」

 

パーバティがそう言いかけた時、ハーマイオニーは早口に言った。

 

「あなたたち、そんなくだらないことしてるより、早く宿題終わらせたら?私はもう終わらせたわよ。サボったらグリフィンドールが減点になっちゃって私が稼いだ点がなくなっちゃうじゃない。早くやりなさいよ。」

 

パーバティとラベンダーは目を合わせ、お気遣いどーも。と嫌そうに言ってから部屋を出て行った。

 

「やな子!」

「あの子威張りすぎよ。」

「調子乗ってるんじゃない?」

「だから友達いないのよ。」

 

部屋を出て行く際に聞こえた言葉を聞いたハーマイオニーは、大きくため息をつき、自分のベットに"初級向けの変身術"を放り投げ、自分の体もベットに委ねた。

 

「エルファバも行きなさいよ。」

「ううん、私も終わらせなきゃ。本借りていい?」

 

ハーマイオニーは返事をしなかった。エルファバはバックから書きかけの羊皮紙と羽ペン、を取り出す。

 

「どうせあなたも思ってるんでしょう?私がガリ勉お節介のうるさい子だって。」

 

ハーマイオニーは囁くようにつぶやく。

 

「ううん。思ってないわ。」

 

エルファバはインク、インク、とゴソゴソとバックを探るのに必死だ。

 

「嘘よ。絶対思ってる。」

「ハーマイオニー。人の心なんて分からないのになんでそう思うの?」

 

あったあった、と顔を上げたエルファバはショックを受ける。

 

「ハーマイオニー、泣いてるの?」

 

ハーマイオニーの目頭からこめかみにかけてキラキラした線が出来ていた。

 

「どうして泣いてるの?」

 

ハーマイオニーは静かに涙を流すだけで質問に答えてくれない。エルファバはハーマイオニーのベットに座る。それと同時にハーマイオニーは背を向けてしまった。ケンカした時、ケガした時、どんな時でもエルファバが手の上で小さな雪雲か雪だるまを作ればエディも近所の子たちも泣き止み笑った。

 

(可愛い雪だるま見れば、ハーマイオニーも元気になるかな。)

 

エルファバは手の上で雪を作り始めるが...

 

『決して力を使ってはならない。』

 

父親の声が頭の中で響いた。

 

(ダメだ。使っちゃダメ。)

 

エルファバは手にたまった雪を自分のベットになすりつけた。1度出した雪や氷の消し方が分からないのだ。

 

「ハーマイオニー泣かないで。私まで悲しくなっちゃう。」

「...」

 

エルファバはハーマイオニーの豊かな栗色の髪を撫でる。

(どうしたらハーマイオニーは泣き止んでくれるかな。)

 

ハーマイオニーはゆっくり起き上がる。髪の毛に隠れた目は真っ赤に腫れていた。

 

「ああ...ハーマイオニー、冷やさなきゃ。」

 

そう言って、エルファバは反射的に手を凍らす。

 

『力を使ったらお前は悪い魔女になってしまう。』

 

(そうだ。ダメだ。何してるんだ私。)

 

ハーマイオニーはそんなエルファバに口を開いた。

 

「...ヒクッ、わっ私...ただみんなに言ってるだけなのに...ヒクッ...みんな嫌がって...」

「え?」

「みんな...ヒクッ、私のこと...ヒクッ、嫌いなんだわ...」

 

エルファバは納得した。

 

「...もしかして、さっきパーバティとラベンダーが言ってたこと?」

 

ハーマイオニーはコクコクと頷く。そしてキッとエルファバをにらみつけた。

 

「エルファバ、行っていいわ。私と話すのつまらないでしょ。」

 

(さっきまでしゃくり上げてたのに。)

 

急にスラスラ言葉を並べるハーマイオニーにエルファバは混乱する。女の子の感情は起伏が激しいというのは本当なのかもしれないなと思った。

 

「私、好きであなたと一緒にいるのよ。」

「エルファバだって恋愛話楽しんでたじゃない。こんな嫌われ者の愚痴なんて聞いたってつまんないわよ。」

 

ハーマイオニーは再び枕に顔を埋める。エルファバは考えた。

 

「確かに、王子様が毒を体内で分解できるスーパーマンではないってことを知ったのは有益だったわ。」

「...は?」

「でも、私はあなたやハリーたちと魔法についていろいろしゃべるほうが楽しい。」

 

人それぞれ好きなものがあるからそれをけなしちゃダメだけど、とエルファバは付け加える。

 

「本借りていい?」

「...うん。」

 

エルファバは本を借り、ベットの上で宿題を始める。ハーマイオニーはしばらくうつむき、フッと笑った。

 

「...王子様がスーパーマンってどういうこと...」

「んー?」

「エルファバ大好きよ。ありがとう。元気出た。」

「うー、ん。」

 

聞いてないわね、とハーマイオニーは笑ったが、エルファバはちゃんと聞いていた。

 

ただ、"大好き"と言われたのがあまりにも久しぶりすぎて、頭がついていかないだけだ。

その反面、自分の事を大好きだと言ってくれるのは、ハーマイオニーが自分の"力"を知らないからかもしれない、とも思った。

 




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