ハリー・ポッターと氷の魔女   作:かっさん

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謎のプリンスは終盤までみんな青春してるから好き。
だから今回は青春回。


3.授業初日

グリフィンドール寮談話室。ダイアゴン横丁でマルフォイに遭遇したハリーは“マルフォイが何か企んでいる”という推測を、ホグワーツ特急で盗み聞きした話を含めてより強固なものにした。

早朝で眠そうなエルファバをソファに連行して持論を繰り広げた上で「確かにそうかもしれないわ」という言葉を半ば無理矢理引き出す直前にハーマイオニーに妨害された。

 

「いい加減にしてちょうだいハリー!」

 

エルファバは半目でボサボサでまとまらない白い髪の毛を適当にポニーテールにした。

 

昨日はなかなかに濃い一日だった。ハリーとエルファバはスラグホーン教授のコンパートメント内パーティに招待され、根掘り葉掘りエルファバの“力”について話を聞いてきた。前以上に表情が豊かになり話す量も増えたとはいえでも、エルファバはそもそもそんなにお喋りではない。

皆に注目されながら話すのは苦手だったが最終的に魔法薬学師になりたいというエルファバの夢を聞いて、スラグホーン教授は大いにご機嫌だった(これはホグワーツに到着後、スラグホーン教授が魔法薬学の教授であり、闇の魔術に対する防衛術の教授がスネイプになったことでその理由がわかった)。

そのあとハリーはマルフォイを追って特急のどこかにいなくなったが、ハリーに再会した時はハリーの服は血糊でベッタリ。エルファバはショックでいつも通り3メートルほど周りを凍らせたものだ(もはや周りは慣れっこになっていた)。

 

その後は去年エルファバと大喧嘩をして部屋を別々にしたラベンダーとパーバティと無事に正式な仲直りをしてルームメイトに戻ったところ、ラベンダーが夜遅くまでロンについて聞いてきた。ロンに彼女はいるのか、付き合っている人はいるのかなど。

エルファバはいないはずだと答えたが、同じような質問はハーマイオニーが戻ってくるまで続いた。監督生の仕事を終えたハーマイオニーに、エルファバがロンについて確認しようとするとラベンダーに止められた。

そんなこんなでエルファバは4時間ほどしか寝られなかったにも関わらず起きて早々にハリーに捕まったのだ。

 

ハリーは力強くマルフォイが何か特別な存在、役割を担っていると得意げに語っていたこと。エルファバ以外の3人が見たボージンアンドバークスでマルフォイが店主を脅していたこと。

 

(確かに嘘というのは少し大きいけど…ああ、ダメダメ。眠い。)

 

エルファバの寝起きな脳はハリーの話を半分くらいしか理解できなかった。朝の弱いエルファバはボーッとハリーとハーマイオニーの口論を聞きながら歩いた。

 

「あ、エルフィーおっはよー!」

 

友達に囲まれいつも通り元気なエディに弱々しく手を振り、生徒たちの流れに沿って大広間に向かい適当にトーストを小さい口の中に突っ込んだ。味はしない。朝食を取った後、授業に行く前に6年生でO.W.Lの結果に基づいてどの教科を専攻していいかを決める時間になるとエルファバはだいぶ覚醒していた。

 

「さて、ミス・スミス。」

 

テキパキとマクゴナガル教授はエルファバの成績が書かれた羊皮紙を見定めた。

 

「魔法薬学師に必要な魔法薬学と呪文学はO。よろしい。数占いもOですね。魔法史に至ってはほぼ満点だと試験官からお墨付きをもらってます。懸念していた闇の魔術に対する防衛術も悪くない…さて、私が以前伝えたことは検討しましたか。」

 

眼鏡からチラッとマクゴナガル教授はエルファバを見下ろし、怒られていないのにエルファバは姿勢を正した。

 

「魔法薬学師以外の進路を考える、…銀行勤務についてですよね。」

「ええ。」

 

エルファバはウィーズリー家に泊まった日にロンの兄ビルとその婚約者であるフラーにグリンゴッツ銀行就職について話した。成績やエルファバの“力”を考えると合っている職業であること、また給与は魔法薬学師よりも不安定だが総合すると銀行勤めの方がいいとのことだ。

 

『グリンゴッツにもいろんな職業があってね。僕のように世界中に赴いてその場所の呪いを破る“呪い破り”、フラーのような事務職員、あとはお宝にかけられた魔法を紐解き研究する仕事。攻撃呪文が苦手なら分析はいいかもしれないね。』

『魔法分析…。』

 

実は最近フランス語を勉強し始めたエルファバはフラーに頑張ってフランス語で話しかけたのだが、鼻で笑われた。女性陣はそれに憤慨していたが意外とグリンゴッツ勤めについては真剣にビルと一緒にアドバイスをくれた。その後エディと大喧嘩していて、姉のエルファバも八つ当たりされたが。

 

結果、エルファバは進路を広げることを決めた。

 

「錬金術や古代学を取りたいと思います。」

 

マクゴナガル教授は特に表情を見せたわけではなかったが、納得したようにんん、と頷いて真っ白な羊皮紙を杖で叩いた。

 

「よろしい。あなたの時間割です。」

 

エルファバはお礼を言って時間割を受け取り眺めた。魔法薬学、呪文学、錬金術、古代学、闇の魔術に対する防衛術、薬草学、古代ルーン文字。最初は古代ルーン文字だ。

 

「ああ、そうそう。」

 

同じく古代ルーン文字へ向かうハーマイオニーを追いかけようとしたエルファバの背中にマクゴナガル教授は声かけた。振り返るとマクゴナガル教授は、まるで何事もないかのように、今日の朝食に関する感想を言うかのようにこう言った。

 

「新しい古代ルーン文字の助教授と仲良くしすぎないように。」

 

エルファバはキョトンとした。数秒考えてもその意味が理解できず、あ、はい。と言って大広間入り口で待つハーマイオニーに追いついた。

 

「良かった!分かってたけどね!数占いにあなたがいなくなってしまうのは寂しいけど…錬金術と古代学の授業も取れた?」

「うん。」

 

少し早足でエルファバとハーマイオニーは古代ルーン文字の教室へ向かった。エルファバはふと思い出す。

 

「古代ルーン文字は6年生から2人担任制なんだっけ。」

「ええ。助教授が入ってはずだわ。」

 

確か新学期の晩餐時に紹介された気がする。クリクリ癖毛の赤毛が目元までかかっていて、赤毛の髭が顎全体を覆っているヒョロリとのっぽの男性。挨拶時は少しオドオドしていて、立ち上がる際に長い脚をテーブルにぶつけていた。

 

「名前は…」

「レイモンド教授よ。どうして?」

 

エルファバは今しがたマクゴナガル教授に言われたことをハーマイオニーに伝えた。

 

「助教授と仲良くしすぎないように?」

「ええ。」

「助教授…うーん、一体なんなのかしら。」

 

そうこうしているうちに古代ルーン文字の教室に到着した。黒い大理石の中でルーン文字を模した白い大理石が宙に浮いており、朝日が入り込んで部屋は少し暖かい。エルファバとハーマイオニーが隣同士に座り、教科書をバッグから取り出している時だった。

 

「あの人よ助教授。」

 

ハーマイオニーはエルファバに耳打ちした。教壇に現れたレイモンド教授はくたびれたベージュのローブを纏って顔が赤毛に覆われている。そのすぐ後ろから古代ルーン文字の教授がいそいそと大量の羊皮紙を持って入ってきた。古代ルーン文字の女性教授はマクゴナガル教授と(ハーマイオニーが嫌いな)トレローニー教授の間みたいだとハーマイオニーと話していた。普段は冷静沈着で淡々としているが古代ルーン文字に関して面白く教えてくれ分かりやすい。しかし一回自分のこだわりスイッチが入ると授業に関係ないことを喋り続ける傾向がある。例えば去年の冬ごろ北欧ルーン文字とアングロサクソンルーン文字を使用して同じ魔術を錬成した際にどのような違いが出るかと、うっかりハッフルパフのアーミーが質問してしまったが故に、その2つについて4時間ほど熱く心底楽しそうに語った。おかげで次の魔法薬学はまるまるサボってしまい軒並み(スリザリン以外)スネイプに減点を食らった。

 

「教授のストッパー係で助教授が採用されたんじゃないかしら?去年同じことが起こって複数回他の授業に支障がでたって聞いたし。」

「アンブリッジの査定は問題なかったみたいだけど。」

「…そういえばアンブリッジって、」

 

エルファバの言葉を遮り、教授は咳払いをしてせかせか話し始めた。

 

「さて、ご存知の通り今回から古代ルーン文字は助教授との2人体制となります。これまでは古代ルーン文字と魔法の錬成の基礎を学んでいきましたが、6年生からはより実践的に魔術の解読を行なっていきます。大変魅力的ですが同時に危険を伴うものとなっておりますので、充分気をつけるように。早速本日はペアになって黒板に書かれた魔術の解読を行なっていきます。」

 

チョークがひとりでに難解なルーン文字を書いていく。エルファバとハーマイオニーは目を細めてそれを羊皮紙に書き写した。

 

「それでは始め!」

 

ハーマイオニーが早口に自分の解釈を話し始めた時、ハーマイオニーの背後にあの助教授が立っていた。エルファバが怪訝そうな顔で助教授を見るとハーマイオニーもそれに気づいて、振り返った。赤毛の助教授は赤い髭の中で口をヒクヒクさせている。

 

「何か…?」

 

ハーマイオニーが口を開く前にレイモンド教授はゆっくりと近づき、ハーマイオニーとエルファバにしか聞こえないくらい小声で囁いた。

 

「君たち、いくらなんでも髪が酷すぎる…。」

 

エルファバはその瞬間、周囲を2メートルくらい凍らせた。ハーマイオニーもあんぐり口を開けてレイモンド教授を見上げていた。周囲の生徒たちは何事かとこちらを見ていたので、エルファバは慌てて杖を取り出して氷を消した。レイモンド教授は髭の中でニヤッと笑って、さっさと他の生徒たちの方へと歩いて行った。

 

エルファバとハーマイオニーは顔を見合わせ、数秒固まった後にお互いの髪を撫でて寝癖を直したのだった。

 

エッセイ40センチと翻訳、そして重い本を3日後までに読むようにという初日にしては重すぎる宿題を出した後、授業は終了した。

生徒たちは課題の多さに呻きながらゾロゾロ教室を出て行ったが、エルファバとハーマイオニーは教室の端っこで生徒たちがいなくなるのをじっと待った。レイモンド助教授はいそいそと教室の片付けを行なっている…いや、そんなフリであることはハーマイオニーもエルファバも分かっていた。最後の1人がいなくなった瞬間、エルファバとハーマイオニーはレイモンド助教授に駆け寄った。

 

「あ、ミス・スミス、ミス・グレンジャー。一体どうしました?」

「……変な芝居はやめてちょうだい。」

 

ハーマイオニーはピシャリと言った。エルファバはというとジッとレイモンド助教授を睨みつけながら思い出していた。マクゴナガル教授が今朝言っていたことを思い出した。

 

『新しい古代ルーン文字の助教授と仲良くしすぎないように。』

 

この言葉の意味をようやく理解した。

 

 

 

 

思えばマクゴナガル教授は心なしか笑っていた。

 

 

 

 

 

「一体どういうつもりなのよ…セドリック!」

 

レイモンド助教授は大笑いしながら、杖を振って変装を解いた。顔を覆っていた赤毛が一瞬で消えて、黒髪に変わり華奢な体型は一気に膨れ上がり体格の良い青年が現れた。

 

「笑いすぎよセドリック!」

「ごめんごめん…本当はもう少し隠そうと思ってたんだけど、だって君たち本当に寝癖酷くて…。」

 

睨むエルファバの頭をセドリックはクククッと笑いながら撫でた。ハーマイオニーは驚きを隠せず続けた。

 

「どうしてあなたがここにいるの?就職したって言ってたじゃない!」

 

セドリックはやっと笑いを収め、教室内を歩きながら杖を振ると机や椅子を宙に浮き、モップやちりとりが勝手に掃除を始めた。

 

「元々魔法省でインターンしてからそのまま就職するつもりだったんだけど、あんなことした奴を雇うなんて魔法省の面子丸潰れだからね。」

「け、けど。それで、その後英国クィディッチ協会からオファーが来たって…。」

「それは本当だよ。ただ、今は若いクィディッチ選手が狙われている…昨今のニュースも知っているだろう?」

 

ハーマイオニーとエルファバは頷く。

 

「今年の8月にクィディッチ選手及びそこに就職予定だった人たちの内定が諸々取り消されたんだ。公にされていないけど、今年はクィディッチを始めとしたスポーツも軒並み中止になるから収益が認められないってことで役員を雇えなくなったんだ。」

「け、けどあなたほど優秀だったらどこでも…。」

「ハーマイオニー、考えてみてくれよ。僕は魔法省という魔法界最高機関に背いて情報漏洩、施設の無断使用をしたんだ。そんな奴を誰が雇いたい?クィディッチ協会についても父さんのコネで苦労して掴んだ就労先だったんだ。」

「そんな…。」

 

先ほどまで、黙ってホグワーツ就職したセドリックに怒っていたエルファバだったが一気にシュンとした。夏休み中にセドリックに何回も会っていたが、そんなことは一言も言ってくれなかった。

 

(気を遣って黙っていたのかしら。)

 

「どうしようか考えていた矢先にダンブルドアから連絡があったんだ。これから生徒たちに危険が及ばないようによりセキュリティを強化する、特にホグワーツ内でクィディッチを安全に行えるようにサポートしてほしいってね。元々教育には興味はあったけど、ホグワーツは後輩たちへの贔屓がないように卒業後すぐに戻るのは認められない。けど、今回は特別に認められたんだ。」

「変装を条件に?」

「あと君の贔屓をしないこと。」

 

セドリックはエルファバの頬を軽く摘んだ。エルファバがセドリックを思って落ち込んでしまったからだろう。エルファバは曖昧に微笑み、ハーマイオニーはそれをジッと見つめていた。

 

「本当は君らが取らない科目を担当する予定だったんだけど、僕が取った単位と重ね合わせると難しくて…。古代ルーン文字に入ったってわけ。他の人には内緒だよ…ああ、ハリーとロンにはいいけど。エディには口酸っぱく言っておいてくれ。僕は変装もするし、声も変えるから周りは分からないはずだけどね。」

 

エルファバとハーマイオニーは頷いた。

 

「ひとまずサプライズ成功…ってところかな。この後スネイプの授業だろう?また週末にでも話そう。」

 

ハーマイオニーとエルファバはハッとして慌てて次の授業へと急いだ。セドリックにはまた手紙を書くと伝え、小走りでスネイプの…魔法薬学ではなく闇の魔術に関する防衛術の授業へと向かった。

 

「まさか…セドリックがいるなんて。」

 

驚いた反面、エルファバの中でじわじわと暖かさが身体を包む感覚があった。友達たちがいるホグワーツもいいが、頼れる恋人がいるセドリックがいるというのは本当に心強い。何があっても大丈夫な気がしてきた。

 

「また、2人でセドリックにルーン文字の質問あったら聞きに行きましょう!」

「どうかしら…。」

「?」

「セドリックはあなたに会いに来たのよ。私がいたら邪魔なだけよ。」

「そんなこと…。」

「急ぎましょう。次はスネイプよ…初日から遅刻したらなんて言われるか。ハリーも前の個人授業で恨みがあるし、絶対何か問題起こすわよ。」

 

ハーマイオニーはエルファバの言葉を遮ってさっさと歩き始めた。

 

心なしか…ハーマイオニーが怒っているような気がする。

 

「えっ、ええ…。」

 

エルファバは慌てて早足のハーマイオニーを追いかけた。

 

ハーマイオニーが懸念した通り、ハリーはスネイプに楯突いたため授業初日にして罰則をもらった。無言呪文の練習中、スネイプがハリーを呪おうと(とハリーは主張している)したのでハリーは盾の呪文で応戦したのだった。ロンは大喜びだったが、ハーマイオニーは非難めいた忠告をしつこくハリーにしたのでハリーはウンザリして、エルファバをハーマイオニーとの間に挟んで歩いたが無意味だった。セドリックに会ってからハーマイオニーの機嫌はあまり良くない…とエルファバは思った。

 

(気のせいかしら。)

 

ハーマイオニーが数占いの授業へ行った後、ハリーとロンにセドリックの話をした。2人は予想通り驚きハリーはエルファバ期待通りの反応をした。

 

「セドリックがいるなら、クィディッチのこといろいろ聞ける!クィディッチのキャプテンやるにあたってアドバイスもらいたかったんだ!今度会いに行く時一緒に行かせてくれよ!」

「ええ、もちろんよ。」

 

ハリーは去年セドリックが魔法省と戦ってくれた時以来、セドリックを兄のように慕ってくれている。エルファバとしても嬉しかった。

 

「エルファバ、いいなー。セドリックに言えば課題の内容聞き放題じゃないか。」

 

ロンはロンだった。エルファバは口を尖らせる。

 

「そんなことしないわ…スネイプの課題さっさとやりましょう。」

 

1時間ほどの休憩の後は魔法薬学だった。

魔法薬学はスネイプからスラグホーンというハリーが校長と一緒に呼び戻した教授が担当になった。エルファバはホグワーツに行く初日に特急内にハリーとともに呼び出されて謎のパーティに参加したのでこのスラグホーンという教授をよく知っていた。

優秀な生徒を見抜き、愛でてコネにする傾向のあるスリザリン教授。

パーティ自体はそんなに面白いものではなかったし、人前で自分の経歴を語るなど恥ずかしすぎたので終始ハリーの後ろに隠れていたが、エルファバの夢を聞いてご機嫌だったスラグホーン教授はエルファバの態度を“謙虚”ととんでもなくポジティブに捉えてくれた。

 

『君はグリンダやデニスに似てとっても控えめだ!良いことだ!』

『………父と母を?』

『もっちろんさ!何を隠そう、この2人が出会ったのは私が主催するパーティだからね。氷の魔術を操るグリンダと決闘チャンピョンのデニス。デニスは無口な青年だったが非常に優秀だったさ。今は魔法を使わない仕事に就いていると聞いているが非常にもったいない…ああ、そうそう。リリーとグリンダが交流を持ったのも私のパーティだ!』

 

エルファバとハリーは目を見開いてお互いを見合った。

 

『グリンダはなんというか…あまり人との交流を好まなくてね。しかし才能豊かな魔女だったから私が頼み込んで1回だけ参加してもらったんだよ。その時リリーにグリンダのことをお願いしたんだ。仲良く話してたと思うがあの後どうなったか…。』

 

少し戸惑った後、エルファバは答えた。

 

『ハリーのお母さんは私の後継人なんです。』

『なんと!それは運命…ハリーと君は仲がいいと聞いているが、それを知って?』

『いいえ。知りませんでした。』

 

この話をエルファバはエディと(ハリーと親しすぎる理由を納得してもらうために)セドリック以外に話したことはなかったし、ハリーも同様に他の人には話したことがないようだった。お互い3年生の時にそれを知ってから特に触れることはなかったが、ハリーとエルファバはお互いに妙な結束感というか繋がりを感じているのは事実だろう。

 

スラグホーン教授は自分が見出した魔女たち2人が友情を育み、それがその子世代まで引き継がれているのを知って涙ぐんでいた。生徒たちはなんのこっちゃ分からなかったが、自分たちの経歴をこれで根掘り葉掘り聞かれることは無くなったのでありがたそうにエルファバとハリーを見つめていた。

 

さてこのスラグホーン教授の授業はある意味公平で、“愛の妙薬”、“真実薬”、“ポリジュース薬”を言い当てたマグル生まれでグリフィンドール生のハーマイオニーに得点をあげるということをやってのけて、スリザリン生に一泡吹かせた。(ハリーが事前にハーマイオニーの話を教授していたらしいが、それを聞いたロンがなぜか不機嫌になった。)

 

「ざまあねえなマルフォイの野郎。」

 

薬の説明が終わり、“生ける屍の水薬”の調合に入る際マグルのスリザリン生であるマギーがエルファバの隣に来て嘲笑った。大柄なマギーは今や身長がエディ以上にあり体格も良いので華奢なエルファバとは大きな違いだった。

 

エルファバは材料を揃えながら苦笑いする。

 

「スネイプの好待遇を期待してるんだなあいつ。ほおーら、見ろ。スラグホーンに媚び売ってるぜ。」

 

マルフォイは自分の曽祖父だかの話をスラグホーンにしているところだった。

 

「マギー、変なこと言っていい?」

「なに?」

「…私、実はスネイプに嫌なことされたことないの。ハーマイオニーやネビルにされたようなこと…あの3人には言えないんだけど。」

 

スネイプのエルファバに対する態度はずっと不可解だった。

 

例えば先ほどの闇の魔術に対する防衛術の授業で、生徒たちの中で唯一無言呪文が成功したハーマイオニーは無視だったが、シェーマスとのペアで同じく無言呪文を成功させたエルファバには10点得点を入れたのだ(エルファバのそばを通り過ぎる際に小声かつ早口で得点を入れた)。

それだけではない。3年生時に魔法薬学の時間エルファバが骨折して材料が切れなかった時、エルファバが目を離した隙に材料が切れていたことがあった。スリザリン生への贔屓に比べれば微々たるものだったが、知らぬ間に得点を入れてくれる時もあった。

 

かなり前にその話をハリー、ロン、ハーマイオニーにしたのだが絶対に勘違いだと言われた。考えてみればエルファバに得点を入れても、他のグリフィンドール生から減点しているので結果マイナスだった。エルファバの話は勘違いだと言いつつ、スネイプがロリコンである証拠があればスネイプをホグワーツから追い出せるのではないかとロンとハリーは真剣に話し合っていた。ハーマイオニーは「あなたたち、それスネイプとエルファバ両方に失礼なこと言ってるの分かってる?」と呆れていた。

 

「……ロリコンなんじゃねえの?」

 

案の定、エルファバの話を聞いた後マギーはそう言った。エルファバは肩をすくめ、薬の調合に取り掛かった。

 

薬の調合は恐ろしく難しく完璧に調合などできなかったが、なんとこれまで魔法薬が苦手だったハリーが調合に成功し幸運の薬”フェリックス・フェリシス“を得た。エルファバも途中まではうまく調合できていたはずだが、最後に薬をかき混ぜた時にライラック色からピンク色に変わるはずが、変わらずあと一歩のところでうまくいかなかった。スラグホーン教授は曖昧に微笑むハリーを絶賛し、マルフォイの不服顔を拝めたところで授業は終了した。

 

授業が終わり夕食時にハリーは教授から借りた古い教科書に書き込みと教科書の訂正があり、それに従ったらうまくいったと説明してくれた。ロンは面白がったが正義感の強いハーマイオニーは再び不機嫌になり、ハリーの実力ではないと怒り出した。

 

「ハリー、それって…。」

「エルファバ。君の考えているリドルの日記みたいなことにはならないさ。だって古い教科書で…。」

 

エルファバは2年生の時に自分の意思を持つ日記帳に心を開いてしまったが、故に大変な騒ぎになった。エルファバが不安そうにハリーを見つめていたので慌てて言った。

 

「あなた、誰かが書いたか分からない言葉に従ったの?」

 

エルファバの後ろから抱きしめる形でジニーがハリーと目を合わせてきた。ジニーからは花のいい匂いが漂った。

 

「いや、だから安全で…。」

 

ハリーはいきなり現れたジニーから目を逸らした。段々ハリーの耳が赤くなっていることにエルファバは気づく。

 

「ジニーとエルファバの言う通りよ。おかしなことがないか調べるべきだわ。」

 

ハーマイオニーはカバンからハリーの教科書を取り上げて呪文を唱えたが、本は何もなくジッとしているだけだった。何も起こらず驚くハーマイオニーにハリーは憤慨し「本がひっくり返るのを見るかい?」と皮肉を言いながら本を奪い返した拍子に教科書を床に落としてしまった。ハーマイオニーは何もなくて不服そうだったが、エルファバは興味津々だった。

 

(魔法薬学師になるための何かを得られるかもしれないわ。ハリー見せてくれるかしら?)

 

「…エルファバ。」

 

ハリーは落として見開かれた古い教科書の裏表紙をエルファバに見せてきた。まさかこんなに早く見せてくれるなんて、と怪訝そうに覗き込むと読みづらい細身の筆跡でこのように書いてあった。

 

“半純血のプリンス蔵書”

 

「…半純血の、」

「その下見てくれ。」

 

そう書かれた真下、ハリーが指差した先に別の筆跡があり、その上にインクでグリグリと強く塗りつぶされていた。しかし、目を凝らすとなんとなく文字が読めた。

 

「…まさか、」

「なに?どうしたの?」

 

エルファバが息を呑んで杖を取り出すと、ハーマイオニーとロン、ジニーも教科書を覗き込んできた。きっと何か怪しいものを見つけたと思っているのだろう。

 

「レベリオ 現れよ」

 

エルファバが杖でその塗りつぶされた部分を叩くと、塗りつぶしインクの部分が徐々に溶けるように消えていく。その下に現れた筆跡は先ほどのものよりかなり読みやすい筆圧が強いそしてエルファバが驚くには充分すぎる情報があった。

 

 

“なお、ただのデニス・スミスの補助あり”。

 

 

 

 

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