キャビネットとソファのみ置かれる部屋で、もう10分ほどリップ音が鳴っていた。
「ドラコ…。」
エディは古いソファに座るドラコに跨がり、指にプラチナブロンドの髪を通して唇、頬、首筋に何度もキスを落としていた。
「ドラコ…大好き…こっち向いて…。」
「ふん、他の混血どものこともそうやって誑かしてるくせに。」
と、言いつつドラコもエディの頭と腰に手を回しエディの唇が近くに来れば、啄むように何度もキスをしていた。
「違う、そんなことない。あたしが好きなのはドラコだけだよ。」
「あの赤毛双子の片割れのこともか?」
「…どっちのこと言ってるの?フレッド?ジョージ?」
「どっちでもいい。」
ドラコはエディの強く頭を掴み、口を塞ぐようにしてまたキスをした。エディは髪を引っ張られた痛みに顔を一瞬しかめた。水が吸い付く音がしばらく響いた後、エディとドラコはゆっくり離れた。
「私フレッドのこと振ったんだよ…知ってるでしょ?」
「お前のことが好きなのはそっちの赤毛なんだな。」
舌打ちする一瞬固まるが、エディは“脳に来た指示の通り”ドラコを抱き締めた。
「そんなこといいじゃん。今はこうやってドラコのこと…。」
次の瞬間、ドラコは力いっぱいエディを押した。エディはバランスを崩して石畳の上に倒れ込んだ。
「勘違いするな。この僕が…お前みたいな穢れた血なんか…。」
ドラコはエディを一瞥して、部屋を出て行く。エディは1人ぼっちになった。
「…いや、そうしろってあんたが“服従の呪文”かけてるんじゃん。」
エディはスカートについた埃を払いながら、ドスの効いた声でそう呟いた。
ーーーーー
相変わらずエルファバはハーマイオニーともロンとも口を聞かずじまいだった。ロンはラベンダーとずっとベタベタくっついており、四六時中イチャイチャしていた。
おまけにラベンダーは女子寮でハーマイオニーに聞こえるようにいかにロンと愛し合っているか、そしてそんなロンを小鳥で襲撃した(とのちのちにエルファバは知った)ハーマイオニーがいかに酷く嫉妬に狂った女であるかをペチャクチャ喋り、あろうことかエルファバに賛同を得ようとした。
エルファバは賛成も反対もせず、沈黙を貫いたが何故かそれがラベンダーからするとラベンダーとロンを応援しているということになったらしい。その新たな誤解のせいでハーマイオニーはますますエルファバを避けるようになり、今や女子寮は地獄のような雰囲気になっていた。
“小鳥事件”の数日後にハリーと2人でセドリックの部屋を訪ねて事の顛末を伝えた。コーヒーと紅茶、そして茶菓子を用意してくれたセドリックにハリーとエルファバは全ての鬱憤を晴らすようにノンストップで話し続けた。15分ほど話し終えたあと、セドリックはなるほど、と言ってコーヒーカップを置いた。
「つまり、すべての根源はロンとハーマイオニーはお互いに好きだけどロンのくだらない嫉妬…数年前にビクトールとキスしたってことに今このタイミングで苛立ったと。」
「そう。そういうこと。」
「そういうことなの…!?」
エルファバは危うく手に持っているクッキーを落としそうになったが、そんなエルファバをハリーは呆れ気味にセドリックは面白そうに見ていた。
「エルファバ…君って、本当に恋愛事情に鈍感なんだね…。流石に16歳になったら分かると思ってた。」
「だって、あの2人喧嘩ばかりだったじゃない!その延長線だとばかり…!」
「これから、君が不可解だと思った男女のもつれは恋愛関係だと思っておくんだエル。まあ、子供でコンプレックス持ちのロンは一旦置いておこう。こればかりは本人の問題でどうしようもないからね…ハーマイオニーについてだけど、君とハーマイオニーですれ違いがある気がするな。」
セドリックはもう一度コーヒーを飲んで、話を聞いた後にこう言った。
「…すれ違い?」
「うん。そうだな…。」
頼りになるセドリックにハリーは期待の目を向けた。唯一ハリーが謎だったハーマイオニーの思考についてが分かる。
「きっとハーマイオニーは“同学年の異性からの君の扱い”を言っていたんだよ。例えばだけど、ロンはハーマイオニーには怒鳴るけどエルには怒鳴らない。黙り込むだけだ。きっとそういう扱いの違いを感じる機会がここ数年で多かったんじゃないかな。」
「同年代…の異性…」
「もっと具体的に言うと、例えば容姿に対する侮辱とかかな。僕が知る限り、エルは同年代の…特に異性から侮辱を受けたことがあまりないんじゃないかな?少なくともあまり記憶に残らないくらい。」
エルファバは少し振り返る。スリザリン生から白髪お化けと言われたことは何回かある。また身長についてシリウスやウィーズリー双子がからかってくることはあった。それは不快だったが、引きずるほどではない。とても不快だが。
「彼氏として贔屓目なしでエルは綺麗だから、第一印象で酷い扱いを受けたりすることは少ないんだ。むしろ見た目で君が知らないところで得しているんだよ。」
「ハーマイオニーだって可愛いわ。」
「そうだね…けど、悲しいことに人はこの世の1%を非の打ち所がない美男美女とした時にも、残りの99%に何かしらのいちゃもんをつける。そのいちゃもんを言われる回数の差に対してハーマイオニーはずっと不満を抱えていたんだ。」
ハリーは4年生の時、マルフォイと呪いをぶつけ合った際にハーマイオニーに呪いが直撃して歯が異常に伸びた時、そこに来たスネイプがハーマイオニーに「いつもと変わらない」と言い放ったことを思い出した。また去年ハーマイオニーに「私には怒鳴るくせにエルファバには怒鳴らないなんておかしい」とチクチク言われたことを思い出す。
ハリーからすればエルファバは実際の血縁関係もあったし、魔法省から敵対視されているという仲間意識が自分の中に、そのような差別があったのかもしれない、とハリーは反省した。少なくともいろんな理由をつけてエルファバを怖がらせてはいけないと思っていたのは事実だ。
同じくして、エルファバはハーマイオニーの発言を思い出す。
『男の子で!!!なんの苦労もしてないあなたに!!!私のことなんか!!!男の子はみんなあなたには優しいじゃない!!!美人なあなたは普通の女の子の苦労なんかしてないでしょう!!!』
(少し…分かってきた。ハーマイオニーは私と比較して得していると思っていたのね。)
それに、とセドリックは続けた。
「恋愛がうまくいっていないハーマイオニーからすれば、僕と君の関係が順調なのも羨ましかったんじゃないかな。思いがけず僕らは遠距離じゃなくなってハーマイオニーは僕らの姿を見ることになっただろう?」
「あ。」
振り返るとハーマイオニーが不機嫌になった時もセドリックの話題の時ばかりだった。大好きなロンから冷たい扱いを受けて、大いに傷付いたハーマイオニー。対して卒業した彼氏がそばにして、大切にされている自分ー。
ハーマイオニーが不快な気持ちになるのは当たり前かもしれない。
「私、配慮が足りなかったわ。」
「まあエルファバは鈍感だけど、普通にしてただけだから…。」
ハリーは優しくそう声かけた。エルファバはありがとう、と言った。
その数日後はクリスマス休暇前日だった。変身術の時間、ロンの失敗を笑った仕返しにロンはハーマイオニーの授業時のモノマネをするという悪意に満ちた行為をやってのけた。エルファバは怒りで氷の玉を手の中で作っていたがー。
「ミネルバ。エルファバ・スミスを…。」
ロンにぶつけるあと一歩手前で、薬草学のスプラウト教授が教室に入ってきた。エルファバはサッと氷の玉を引っ込めて、ロンの脚の辺りに転がしておいた。ロンはモノマネを止めたと同時に「冷たっ!!!」と叫んでいた。
エルファバはスプラウト教授の後ろに怪訝そうな顔をしたエディがいることに気づいた。
「ええ。」
教室の生徒たちがザワザワと話をしている中でエルファバは自分の荷物を掴み、注目を浴びながらスプラウト教授の元に駆け寄った。スプラウト教授は深刻そうにため息をついて、エディとエルファバについて来るように言った。2人は目配せしながらスプラウト教授に着いていく。
(まさか…。)
なんとなくエルファバはこの先何が待ち受けているのか感じ取った。呼吸が浅くなり、冷気が自分を包むのを感じた。似たような光景をエルファバは数ヶ月ほど前に知っている。とある生徒は、薬草学の時に同じように教授に呼ばれた。
「エルフィー?大丈夫?」
エディはエルファバの手を握ってきた。
(きっとエディは気づいていないのね。この先のこと…。)
何も言わずにエルファバはエディの手を握り返した。
「…リーマス…?」
しばらく歩くと、クィディッチ競技場の入り口に立っているリーマスに気がついた。曖昧に微笑んでエルファバとエディに手を振っている。
「やあ、エルファバ、エディ。」
「どうしてここにいるの?会うのは明日じゃ…。」
「ミス・エルファバはリーマスと一緒についていきなさい。あなたは私と一緒に。」
深刻そうな声でスプラウト教授がそう言うと、エルファバとエディは顔を見合わせ指示通りにエルファバはリーマスに、エディはスプラウト教授の方へ行く。リーマスとエルファバは競技場に入りエディは更衣室の方へと入って行った。誰もいない競技場は不気味なくらい静かで、何の音もしない。
「……何か察しがついてるかい?」
「ええ…一応…。」
エルファバはなるべく自分を落ち着かせ、周囲を氷で包まないように深呼吸を何回か繰り返す。
「……私とエディに関係する人が…。」
エルファバが言い終わる前にリーマスは優しくエルファバの頭を撫で、エルファバの目線まで屈んだ。しばらくの沈黙の後、重々しく口を開いた。
「…君のお父さん…デニス・スミスの遺体が発見された。」
ーーーーー
「うわっ。」
その数時間後、エディは自分の“元”家を見て思わず声を上げた。
「魔法で周りには見えないようになっておる。側から見ればいつも通り君たちの家じゃ。」
言われなければ、それがかつて自分家だったとは分からないくらい倒壊していた。レンガと木片が粉々に砕けて周囲に飛び散り、その中に血も混じっていた。周囲の大人たちが何も気にしないで通り過ぎるのを怪訝そうに見ていたエディに、ダンブルドアはそう言った。
エディはそれに対して特に何も言わず、瓦礫をどかしながらズンズン家に入って行った。
「まさか…校長先生が来るなんて。」
「君がわしをダンさんと呼んでくれた時が懐かしいのお。」
ダンブルドアはそう微笑んだ。
結局、父親の死を告げられたエルフィーは想像より落ち着いていた。事前に心の準備をしていたからか、そこまで会う機会がなかったからかー。
しかし家に行った時にどうなるか…思わず雪を降らせたり凍らせたりすることで
入口はぐにゃりと不自然な形で曲がっており、入るのに一苦労した。ダンブルドアが杖を振ると一時的に家の玄関が現れ、エディは中に入れた。
「君のお父さんは、3人の
「馬鹿だね。」
「無理もない。彼からすれば娘2人を騎士団に奪われてしまったのじゃから…魔法など彼からすれば存在が呪い…手を借りるなどもってのほかじゃっただろう。もっといえば、彼の人生はー。」
家の中は思っていたよりも崩れてはいなかった。机は真っ二つに割れていたり、椅子が散乱してはいたが一応部屋の原型が保っていた。ダンブルドアが瓦礫を宙で浮かせてくれるのに合わせてエディは中に入っていく。
「あの女は…。」
「行方不明じゃ。今騎士団も保護のために探してはいるが…もしかするとデニスに万が一のことがあった時の逃げ場所などを伝えられていたかもしれん。それに母親と呼ぶのが適切じゃろう。」
「ふーん。」
「心配かの?」
「まさか。自業自得だと思ってます。」
ふむ、とダンブルドアは肯定とも否定とも捉えられる返答をした。エディは気にせずずんずんと中へ進んでいく。奥になればなるほど、家の中は綺麗だった。父親はおそらくリビングで
「
「おそらく、何か知る必要がある情報が出てきたのじゃろう。きっと当事者しか知りえない情報を。」
エディが階段を登ると、今までなかったギジギシという音が響いた。階段の幅もずいぶんと狭くなった気がする。
「その情報は得られたんでしょうか。」
そう聞きながらも、エディの部屋の手前にある父親の書斎を見れば答えが分かった。部屋の中には本やら紙が散乱していた。
エディの部屋は知人が見ればエディのものだとすぐに分かる。壁には映画のポスターや歌手のライブポスターが所狭しと貼られ、机の上にはCDやレコードが大量に積み上げられていた。勉強するスペースはない。
ベッドシーツと枕カバーはエディがわがままを言って買ってもらったジュディ・アンドリューの写真がプリントされたものだ。
「君らしい部屋じゃの。」
ダンブルドアは優しくそう言った。
「君にホグワーツの入学許可証を渡したことをつい昨日のことのように覚えておる。君は歌いながらバレエを踊っておったのお。」
そういえばそんなこともあったとエディは苦笑いした。あの時の高揚感は今でもはっきり思い出せる。
(エルフィーとあたしは同じだったのね!!!ああ神様ありがとう!!!)
大好きなお姉ちゃんと同じ人生を歩めるという事実に興奮した。そして願いは叶い、新しい友人、新しい授業、何よりエルフィーと仲直りをして全てが美しくまるで映画のようなエンディングを迎えた。
「君がホグワーツに来てから、この学校は本当に明るくなった。皆がホグワーツという学校へ興味を持ち、学習意欲が上がったように思う。何より君の無邪気さはまるでミスター・ウィーズリーの花火のようじゃ。」
「無邪気…ね。」
自分の部屋に何も持って行くものがないとエディは気づいた。
(あんなに好きだったのに…。CDやポスターが今じゃガラクタに思える)
そして無邪気、というダンブルドアの言葉にエディは自嘲する。
「みんな、あたしのことをそう言うの。別にそんなことないんだけど…。」
「はて、そうかの。」
目が合ったダンブルドアと数秒見つめ合った後、エディはふいっと目を逸らす。
「ここに欲しいものはないです。エルフィーの部屋と、あと、何かエルフィーのために必要なものを“あの人”の書斎から。」
「父親、と呼ぶのじゃ。」
「あんなの父親じゃない。」
気まずい空気の中、エディはダンブルドアの脇をササっと通って隣にあるエルフィーの部屋へ入った。エルフィーの部屋は対照的に驚くほど何も無かった。机と椅子と、クローゼット。クローゼットの中には幼児用の服が数着無造作に放り投げられているだけだった。ふとその上に1冊のノートとペンが置かれている。エルフィーには申し訳ないと思いつつ、それを開いた。
ノートは水をこぼしたのかしわしわになっていた。ページをペラペラとめくると、小さい子どもが書いたであろう筆圧の強い字で幼いエルフィーの懺悔が書かれていた。
ーーーーー
“こおりとゆきをださないようにする”
・ぶたれてもわたしがわるいからなかない。
・わたしがおこっちゃいけないからおこらない。
・わたしはわるいこだからうれしくならない。
・おかあさんのまえにいかない。
・よくわからないまほうをださない。
・エディにあわない。
ーーーーー
エディはそれを見てキュッと胸が苦しくなった。きっとエルフィーのすごく小さい時…ホグワーツに行く前。
(エルフィーがこの部屋で苦しんでいた時、あたしは何してた?ヘラヘラ笑って、楽しんでー。)
「さて、君の“力”についてじゃが。」
ダンブルドアにそう言われてエディはハッとした。
エディは部屋に雪を降らせていた。
エディは適当に降る雪を手で払う。ダンブルドアはエディの隣にあるエルフィーの小さい机に腰掛けた。
「去年、君はエルファバに対する理不尽な仕打ちで母親への怒りを爆発させた時“これ”が使えると言ってくれたの。そのおかげでわしはミスター・ディゴリーに起きたことに対して正しく推理しその後の対策をできるようになった。結果的にはミスター・ディゴリーがわしの想像をはるかの超える勇気を見せてくれたことで、その必要は無くなったが…“これ”について、知っているものは?」
「いいえ。校長先生に言われた通り誰にも言っていません。」
反射的に答える、と同時に少しずつドクドク心臓が慌ただしくなっているのを感じた。
「“誰にも言っていない”…。」
そのあとしばらく沈黙が流れた。ダンブルドアのブルーの瞳はジッとエディを捕らえて逃さない。ここで目を逸らしては負けだとエディは思った。負けじとダンブルドアを見つめ、次の言葉を待つ。どのくらい経ったのか、口を開いたのはダンブルドアだった。
「………叔父さんを凍らせたのは君じゃな。」
予想していたにも関わらず、エディはゴクッと息を飲んだ。イギリスがもう12月で気温は0度に近いにも関わらず、エディは髪の毛の中でタラッと汗が流れるのを感じた。
(誤魔化すのも、無理かな。)
「死んでないからいいじゃないですか。」
なるべく明るい声でそう言うように努めたが、声は震えていた。ダンブルドアは神妙な面持ちで首を振る。それはイタズラを嗜めるようなものではない、もっと重々しいものだということはエディにも分かっていた。
「たまたま、死んでいなかった。君は明らかに意思を持って、叔父さんを攻撃した。」
「叔父さんだって明らかな意思を持ってエルフィーを攻撃しました。」
「じゃが、君が叔父さんと同じようなことをやってエルファバは喜ぶじゃろうか…リーマスも、君の友達も。」
一瞬、エディは口封じにダンブルドアをこの場で凍らせようと思った。
(多分、一瞬で終わる…そうすれば、)
しかし、それではまたエルフィーが疑われてしまう。エディは軽い口調で喋りながらエルフィーの部屋を出た。ダンブルドアがゆっくりついてくる気配を感じる。
「別に、あたしの好きでやったの。喜んで欲しかったわけじゃない。あいつがいなくなって悲しんだ奴なんかいないんだよ。校長は知らないでしょう?あいつはエルフィーにしたこと、すっごい誇らしげに喋ってたの。エルフィーのことなんでか知らないけど死んだって思ってて、“害虫を駆除した”とか“俺はみんなを守った”とかまるで、狩りに成功したみたいに…あたしは何回もあの家に行ったことあるし、エルフィーの話だってしたけどそれはイマジナリーフレンドだと思ってたの。『もう妄想から目が覚めたのか。』だの…あと、聞いてもいない自分のビジネスがいかに成功しているかをずーーーーーーーっと喋ってた。あたしより年下の従兄弟たちの体には痣とかタバコの跡もあった…あいつがいることで、きっと傷つく人が現れる。だからー。」
「だから、叔父さんを消そうとしたのじゃな。」
ダンブルドアはエディの言葉を引き取った。改めて入った父親の書斎は思っていたより荒れていた。おそらく
「確かに君の叔父さんというのはあまり良い人物ではなかったじゃろう。しかし、それを行い君の魂を穢すことをする必要はないのじゃ。」
ダンブルドアの言葉は聞こえないふりをして、その代わりの細い筆記体で書かれた文字にエディは目を凝らす。
(
ーーーーー
エルフィー
・頭蓋骨破損
・背中に水脹れ多数
・脱水症状
・爪が数枚剥がれていた
・右目の眼球破裂
メモ
あいつの心を開心すると、エルフィーはもっと酷い怪我をしているはず。一部治ってる?←“力”の影響?魔力?
ーーーーー
エディはぎゅっと用紙を握りしめ、ついてきたダンブルドアに紙を押し付けた。
「エルフィーがこんなことをされているのに?」
少し怪訝そうに眉を上げたダンブルドアはその紙を読み込んでいた。エディは荒らされた部屋を物色する。エルフィーに何か役に立ちそうなものがあれば持ってきて欲しいと頼まれたのだ。しかし紙という紙は全て破られ、書物はズタズタに切り刻まれている。目新しいものはなさそうだった。きっと新しい情報は
「君の叔父さんは裁かれて然るべきじゃよ。ただ、その執行人が君である必要はない。」
しばらくしてダンブルドアが静かにこう言った。エディは少しため息をつき、尋ねた。
「…あたしをアズカバンに突き出しますか?」
「君の罪を償わせるのであればそれが最も適切かもしれぬ…じゃが、わしは君の魂を救いたいのじゃ。」
「魂?」
「そうじゃ。魂。」
ダンブルドアは近くにあった何かを拾い上げ、真紅のローブの中にしまった。そしてエディの目線に合わせて腰を曲げた。
「昨今の君の様子はどうもおかしい…かつての明るく皆に元気をもたらす君とは全く違うようじゃ。周りの教授や友人達も大層心配しておる。直接校長室を訪ねてくる者もいれば、手紙を寄越す者もおる。たくさんの人と関わっていた君は、今はミスター・マルフォイと一緒にいることが多いとか。」
「私元々ドラコと仲良いですけど。」
「その通りじゃ。とても稀有だとわしも聞いておったが…去年、君はミスター・マルフォイにリーマスのことを全校生徒に言いふらされたあと絶交したと聞いておる。」
エディはそれに対して何も答えなかった。頭の中でドラコの声がする。
“ダンブルドアに何も喋るな。助けを求めるな。”
エディがホグワーツに出発する前にマルフォイはエディに杖を突き付けて、こう言った。
『今起こっていることを…ダンブルドアに告げ口したら、どうなるか分かってるな…?お前が集めた奴らと同じ目に遭わせてやるからな。』
『彼らは何をされるの?』
マルフォイは答えず、それだけ言って踵を返した。
「そしてもう1つ。君は悪人ではない。これまでの君をわしは一校長としてしっかりと見ているつもりじゃ。エディ・スミスはお転婆で行動力があり無垢で、友や家族のために立ち向かえる勇気を持っておる。だからこそ今大勢の友人達が君を心配しておる…間もなく、君とエルファバの保護者としてリーマスを指名するつもりじゃ…誰よりも君たち2人を気にかけているからのお。彼も君に会えば様子がおかしいことに気がつく。そんな君に自らを穢すような行動をわしは持ってほしくないのじゃ。」
外で家の外で子供達がはしゃぐ声が聞こえた。姉妹のようで、妹が姉を追いかけている。エディはエルフィーを思い出した。
ユニコーンのような白く艶やかな髪に色白の肌、ピンク色の唇にブルーの瞳。純粋無垢で優しくて、ちょっぴり変わっていて、自分に自信がなく無頓着なくせに大事な人のためなら躊躇なく命を投げ出せる姉ー。
「多分、あたし校長先生が思っているほどいい人なんかじゃないよ。」
エディは色黒な自分の肌を見て、黒い髪をかき上げて笑った。
しれっとセドリックはエルファバを別の呼び方をするようになった。