エルファバの冬休みはボーッと天井を空虚に見つめて、あっという間に数日、数週間が経った。
シリウスが主催したクリスマスパーティーもその後のウィーズリー家との集まりも体調が優れない、という理由をつけてエルファバは部屋に篭った。元々はエディと共用だったが、どうしても1人になりたいとお願いして部屋を移動してもらった。
『やめておこうシリウス。彼女は理解者と肉親を亡くしているんだ…気丈に振る舞っていても、後で気持ちが落ち込むことだってある。』
気分転換に外出へ誘おうとしたシリウスとエディにリーマスがそう諌めているのをエルファバは“伸び耳”を床につけて聞いた。シリウスは納得したがエディは少しでも外に出さないとまた部屋から出てこなくなるのではないかと懸念していた。
『きっとエルファバなら大丈夫だよ。昔とは違うんだから。』
そうやってエディにハリーは優しく声かけているのが聞こえる。エルファバはため息をついた。
(昔とは違う、そうね…本当に。)
エルファバは床で丸くなって、床のタイルをじっと見た。クィレルからの“話”が紛れもない事実であることがさらに裏付けられたのは、あの牢獄から帰って来て数時間後のことだった。
『クィレル?誰だいそれ?』
シャワーを浴びたハリーにすれ違った時、顔色が悪いエルファバにどこへ行っていたのか聞いて来たハリーに『今日、クィレルに会いに行ったの。』と言ったらこのような返答だった。
(私の呪いは、口外したらその者の存在すら抹消される…。1年生の時のホグワーツ教授を忘れるなんて、どれほど強大な呪いなの?この呪いの埋め合わせはどうなっているのかしら…?)
きっと聞き込めば皆がこの矛盾に気づく…しかし、記憶の穴など理由がない限り誰も追及などしない。ここを突き詰めれば最後、これも呪いの発動に繋がるはずだ。
(あのクィレルという男は、きっと私に大きな傷をつける機会を虎視眈々と狙っていたのね。グリンダに愛されなかったから私を傷つけようと…効果はテキメンね。)
エルファバは自嘲的に笑うと、弱々しい息が口から漏れた。
(全てのモヤが晴れていく。アダムが躍起になって弟を探していた意味。自分の死を恐れて弟に“力”を移そうとしてた。ルーカスやルーカスの妹もその実験として使われたということね…その過程で“力”をある一定条件で移すことができて、移された者の位置を知ることができるというのはそこで知ったに違いないわ。ルーカスもアダムと幼馴染ということは、ある程度憶測はついていたに違いないわ。セドリックに関しては、きっと継承してくれればラッキー、ダメでもホグワーツ側にスパイができると踏んだはず…お父さんが大量の薬を飲ませてまでも“力”を使わせたくなかった理由。同じく確証まではいかなくても、推測はできていたんだと思う…お父さんに、申し訳ないこと、したな。)
父親がエルファバに薬を飲ませてまで“力”を使わせたくなかった理由は、“力”を使うことが命を削ることだと考えていたからだろう。エルファバは床の上で体勢を変える。今度はベッドの側面をじっと見つめながら考えた。
(タイムリミットは15年。必死に抑えていたことを加味してもタイムリミット通りだと考えた方がいいわね。私が“力”を持った時っていつだったのかしら。物心ついた頃にはあった気がする。)
脳の中の細い線を辿るようにエルファバは自分の一番古い記憶を思い出した。去年開心術を受けたことが皮肉にも記憶を呼び起こすことを容易にした。
(そうだ…エディが生まれてすぐ。私が2、3歳の時。エディの誕生日は6月だから私の命もあと半年くらいってところかしら。あと半年経てば、この世界の人たちは私のことなんて無かったことになる。エディも、セドリックも、ハリー、ロン、ハーマイオニー、リーマス、シリウス…私の人生に関わった人たちが私を忘れて生きていく。)
クィレルの記憶が消えたと分かった直後、エルファバはすぐにでも自分を知る人たちの目の前から消えてしまおうと思った。
シリウスがクリスマスキャロルを歌いながらディナーの食材を揃えている音を脳から消して、エルファバはホグワーツに持って行くトランクに必要最低限の荷物をまとめた。自分の呪いを解く旅に出ようと。呪いが解ければ何事もなく戻ってくればいい。解けないならー、エルファバという存在が消えるだけだ。
しかしトランクを持ち上げた時、シリウスの歌に音を合わせて歌うエディと歌わないけれど泡立て器で何かを混ぜながらリズムを取る誰か(きっとハリーだろう)の音を聞いて、エルファバは止まった。
もし、エルファバがいなくなったら皆がどんな行動を取るのか…。2年生の時、ホグワーツから消えたエルファバを生徒たち総出で探してくれた。5年生の時、家を追い出されたエルファバをリーマスが夜遅くまでロンドン中を回って見つけ出した。そしてエルファバを捕えようとする魔法省に敢然と立ち向かった友人と大人たち。
エルファバの今は、多くの人の優しさと愛でできている。
誰にも何も言わず、このグリモールド・プレイスを飛び出せば騎士団員が総出でエルファバ捜索に乗り出すはずだ。セドリックは寝ないで探すかもしれない。今口を聞いていないハーマイオニーだってエルファバがいなくなったという話を聞けば心配して勉強すらできないだろう。
エディとハリーだって、大人しくグリモールド・プレイスやホグワーツで待たない。飛び出して行くはずだ。それに騎士団側からすれば今は“炎の魔法使い”であるクラウチに対抗できる手段はエルファバだ。
何より恐ろしいのは、誰かしらが“なぜエルファバがいなくなったか”という答えを探し出してしまうこと。
(私は、もう1人なんかじゃないから。)
呪いの代償をもっと早く知っていれば…例えば3年生の頃までに知れば、そんなことを考えず衝動的に飛び出して皆がエルファバを忘れるまでジッとどこかに身を隠したり海外へ渡ろうとしたはず。けれど、そんなことはできない。
(だって私は…みんなから愛されているから。だからこそ、私はこうやって部屋の中で丸まって自分の死を待つのみー。)
エルファバがいなくなった世界はどうなっていくのか。セドリックが他の女性と…あの”レイブンクローのビッチ“と一緒になる想像をするだけで黒い感情が渦巻いた…そうでなくともモテるセドリックのことだから、きっと良い伴侶に恵まれる。ハーマイオニーとロンの拗れ切った仲を修復するためにハリーは誰に相談するのだろう。ハリーとヴォルデモートとの闘いは…エルファバが世界から消えた場合、クラウチが持つ”炎“の対策ができない。
この流れでいうとエルファバではないオルレアン家に最も近い親族へ”力“が継承されるはずだ。それが誰になるかなど見当もつかない。
(そもそも存在が消えれば、きっと“氷”の存在も忘れ去られてしまうはずだわ。考えてみれば、ここまで高度な技術がグリンダから知れ渡っているのもおかしな話よ…普通もっと文書とか記録があって調べやすいはずだし魔法省だって見逃すはずがない。“氷”と“炎”以外にもあるのかしら…例えば雷とか?もしも
そう考えるとグリンダがエルファバにした仕打ちへの憎しみがジワッと水の中で広がる墨のように広がった。
”私たちの大切な宝物、エルフィー“
エルファバらしき赤ちゃんの写真には間違いなくそう書かれていた。グリンダに愛されていた、それがエルファバにとって希望だった。父親から怪物と言われても、母親からの暴力も、グリンダがエルファバを愛して亡くなったと信じていたから。
(愛する娘に”呪い“を引き継ぐだなんて。)
5体の小鬼たちの命と娘を犠牲にしたグリンダ。あながち“大量殺害を犯した闇の魔女”というのは間違っていなかったのだ…小鬼からすれば。
(そうか。それで自分自身を守るためにダンブルドアのいる騎士団に。)
子供もがいながらの二重スパイ。多少の罪の意識を感じていたのであれば、そんな危険任務を引き受けたことも納得だ。
ドンドンドンドン、
そんなことを考えていると、荒々しく階段を登る音がしたかと思えばドンドンっ!と扉を叩かれた。
「おい、チビ!買い物に行くぞ!」
エルファバが声をかける間もなく、ガチャっと扉を開けてトレンチコートを着たシリウスが入ってきた。
「ほらっ、そんなとこで寝てると風邪引くから!身体動かしてあっためるぞ!」
シリウスが杖を振るとエルファバは勝手に白いニット帽と手袋、そしてキラキラと光で反射するマフラーを着ていた。そして少し大きい青色のダウンジャケットも着てエルファバは着膨れしていた。その後からドタドタと走ってきたのは同じくマフラーとコートを着ているエディだった。なんとなく、この2週間で身長が伸びた気がした。
「もう、シリウス!リーマスがいないからって!」
と、怒ったような口調だったが心なしか嬉しそうだ。
「…外出た方が寒いと思うんだけど…。」
エルファバがクスッと笑って、そう呟くとシリウスはエルファバのニット帽を押しつぶしてそのまま髪の毛ごとぐしゃぐしゃにした。
ーーーーー
そこから数時間、シリウスにエディと2人でいろんなところに連れ回され、大晦日の準備をさせられた。店がほとんど閉まっていたので遠出して買い込んだ結果、帰ってきたらリーマスに(シリウスが)こっぴどく怒られていた。
本当はハリーを含め3人の子供たちは
エルファバは少し気分が晴れたので良かったが、リーマスに説教されているシリウスを置いてこっそり上に上がった。
「エディ、寒かったから先にシャワー浴びてね。」
「…うん。」
エディはエルファバの手をギュッと握って離さない。その手は冷たく不安げだった。
「…もう部屋に篭ったりしない。体調は戻ったの。約束するわ。」
エルファバはエディに優しくハグすると、エディは長い腕をエルファバに回した。
「シャワー浴びてきて。」
エルファバはそう言うとエディは安心したように顔が綻んで、階段を降りていく。その背中を見つめてからエルファバは自分の部屋に入ったがー。
「おかえり。」
迎えた男性の声は、ハリーはなく、ましてや下にいるリーマスでもシリウスでもなく…ただ今しがた一緒にいたシリウスに少し似た声だった。そのせいでエルファバは一瞬誰が部屋にいるのか理解ができなかった。
藍色のローブを椅子にかけ、マグルの燕尾服にポニーテール姿のレギュラスが、エルファバのベッドに座って魔法薬学の教科書を読んでいる。
「シ「シレンシオ 黙れ」」
エルファバは力の限り叫んだが、一気に声を失い口をパクパクさせた。
「全く君って子は…。どうして私がここにいるかという問いかけに関しては私の実家なのだから、入れて当然と答えておこう…この世界からクィレルが消えた。だからここに来た。」
レギュラスは随分とリラックスした様子だった。エルファバは大人2人に助けを求める方法を考えることをぴたりと止めた。「覚えているの?」と聞いたが口がパクパク動くだけだった。しかしレギュラスはエルファバが何を話したか分かったらしい。
「一応ね。私はグリンダから“力”を引き継いで調べた後、呪いの代償について大方検討がついたから、ちょっとした細工をした…ただ、呪いが消えるわけじゃなくて進行を遅らせているだけ。1年後にはきっと私はクィレルの存在を…君にかけられた呪いだけどちょっとした穴があって…呪いの内容をハッキリ口に出さない限りは効果が発動しない。対策を話すのは問題ないようだから、呪いの内容をハッキリ出さないでね。」
頷きながら、エルファバのレギュラスに対する信頼度が一気に上がっていく。
(クィレルのことを覚えているなんて、レギュラスは本当に…少なくともグリンダから“力”を受け取ってしっかり研究をした。もしかして…レギュラスは本当にー。いいえ、けれどそもそもグリンダが信用に値しないじゃない。何を考えていたのか。)
レギュラスはゆっくり教科書を閉じて立ち上がる。
「少なくとも私たちはやっと同じスタートラインに立てた…呪いの代償を私は知るべきだと思ったけど、ダンブルドアは君がそれを知らせないようにしていた。おそらくダンブルドアはある程度推測ついていただろうけど、君が誤って誰かに漏らして早く“力”が無くなる可能性もあったから。」
なるほど、とエルファバは思った。
(ヌルメンガードで1人しか面会できないようにしたのはそのためだったのね。きっと誰かが同伴したら聞いたその人は呪いが発動する。)
「どうかな?そろそろ腹を割って話し合える?」
エルファバは少し考えた。これまでのレギュラスの行動を。
魔法省にエルファバを連れ去ったことはマイナスだが、それ以外は常にレギュラスは紳士的だった。今現状騎士団に捕まる可能性が高いグリモードプレイスに単独で侵入してきていることを考えると決して悪い人間ではないはずだ。
エルファバを懐柔するより、グリモードプレイスの場所を
(少し…信じてもいいかも。少なくともこの選択が間違っていても…どうせみんなから私の記憶が消えるんだもの。)
エルファバはコクンと頷く。レギュラスは安堵したように微笑んだ。レギュラスは杖を振ると古い椅子がレギュラスの向かいに現れ、そこにエルファバを手招きした。エルファバはそこに素直に座る。
「さて、これで私たちは共謀ってことだね。全てをフェアに話そう…ただし、この話は誰にもしないでほしい…特にダンブルドアには。」
エルファバは少し声を出そうと喉を動かす。話せそうだ。
「あなたはどうしてダンブルドアを信用していないの?」
「あの人の目的があくまで闇の帝王の打倒であってそのための犠牲を厭わないからだよ。きっと君のことも…ハリー・ポッターのこともね。まあここは一旦細かい話さないでおくよ…まだ
エルファバは頷く。
「じゃあ、その時に私がダンブルドアを信用しない理由を話す。」
「今全てをフェアに話そうって言ったじゃない。」
「物事には順序ってものがあるから。」
レギュラスは面白そうにニヤッと笑ってエルファバの反応を伺う。からかわれていることに気づいてエルファバはふいっと顔を逸らした。
「私の呪いについて、話してくれる?」
「ああ、もちろんさ。」
気がつけばエルファバの目の前に熱々の紅茶が入ったティーカップが置かれていた。エルファバはそれを飲むと喉を伝って紅茶が冷えたを温めていくのを感じる。そしてリラックスできたところでふと疑問を感じた。
「…話しているここに誰も来ない?」
「クリーチャーが足止めしてくれている。」
「あなたが、ここが騎士団の本拠地だと知ったのはクリーチャーが言ったの?」
レギュラスはどこからか現れた黒いマグカップでコーヒーらしきものを飲んだ。
「いや、多分本拠地が自分の家だということは前々から予測はついていたんだ…すごくいいアイデアだったと思う。」
(やっぱりあの時…レギュラスと初めて会った時、私の反応を見てグリモード・プレイスが基地だとバレてしまったのね。)
「ただ、ダンブルドアが“秘密の守人”になっていることだけ厄介だった。クリーチャーと手紙でやり取りしていて、ここに入れるように手を尽くしてくれた…まだ会うわけにはいかないけど、本当は彼に会いたくてしょうがないよ。」
レギュラスの声はまるでおじいちゃん子の孫が祖父を懐かしむように愛しそうで、エルファバは少し驚いた。シリウスが屋敷しもべ妖精を邪険に扱っている姿やマルフォイ家のドビーに対する仕打ちが記憶に新しいので、意外だったのだ。
(クリーチャーがブラック家についてあそこまで良く言っていたのは屋敷しもべ妖精だからではなくて、本当に…?)
エルファバがそんなレギュラスを見つめていると、レギュラスは、まあとにかくと鋭い声を出した。
「呪いの解呪は…現状ほぼ無理だ。グリンダが解呪をしようとしたことで
レギュラスは再びコーヒーを一口飲んで顔をしかめた。おそらく粉ごと飲んでしまったのだろう。
「
「私は、グリンダのような真似はしないわ。」
反射的に出たその言葉にはグリンダに対する嫌悪が全面に出てしまい、エルファバは慌てて口を塞いだがレギュラスは曖昧に微笑んだだけだった。
「君は強い子だね。」
「別に…。」
「ただ、その方が合理的ではあるんだよ。君の時間はかなり限られているから今から解呪方法を探すのは無理がある。けれどグリンダの前例がある通り、生きた人間に移すことはできるから他の人に移せば君は一度呪いからは逃れられて、そこから10年ほどかけて解呪方法を探せばいい。」
「……けど、誰に移すの?」
「解呪よりは、難しくない。あの家系図を辿れば目星はつくはずだ。」
エルファバは数秒目をつぶって考えた後こう言った。
「…いいえ。やっぱり意図的に“力”は動かさないわ。あなたは呪いの影響を遅らせていて、クィレルも覚えているということは世界が忘れても…あなたはしばらく私を覚えているでしょう?それまでにできることを全部やるわ。そこからはあなたに引き継ぐ。」
レギュラスは肩をすくめた。
「どうやら人使いの荒さは、グリンダに似てるね。」
エルファバはグリンダに似ていると言われて随分不快だったが、無視して話を続けた。
「他にもいたのかしら…これまで、生きたまま“力”を移した人。」
「いや、グリンダが初めてらしい。同胞を殺害された
「どうして?」
核心に迫れる、とエルファバは思った。レギュラスが命を張ってまでこの“力”に関わろうとする原因。
しかし数秒の沈黙が何分かにも感じた。下ではリーマスのお説教が終わったのか、仲良くシリウスと談笑している声が聞こえる。何かで笑った時、ハリーの声も聞こえた。エルファバの部屋と別世界だった。
「…私はね、シリウスの言う通り元々は闇の帝王に心酔していたんだ。」
先ほどよりも、少し小さい声でレギュラスはこう言った。
「けれど、私の家族…大事なクリーチャーを闇の帝王はボロ雑巾のように酷い扱いをして、危うくクリーチャーは死ぬところだった。その時に初めて気づいた…私が差別していた”穢れた血“と呼ぶ種族たちは何人こんな思いをしたんだろうと。」
エルファバと目が合うと、苦笑いしてこう続けた。
「言い訳させてもらうと、私は当時16歳で君と同い年だった。聡明で周りに正しい思考を持つ大人が周りにいる君と違い、私の家族はブラック家を実質的なイギリスの王族だと信じて疑っておらず、純血以外は皆家畜だと断言する家庭だった…16年間そんな環境にいて、自分の考えが誤っているだなんて普通は疑わないものさ。ましてや私はスリザリンで周りの友人たちも同じ考えだった…そんな中で刃向かえるシリウスが異端すぎたんだよ。それに教えに背いたシリウスの扱いを見れば家でどう立ち回るべきかなんて一目瞭然だった。純血主義者たちなんてそんなものさ。」
「…今は、」
エルファバはトンクスの存在を無視したというレギュラスの言動と今の話に疑問を抱いた。
「……少なくとも闇の帝王の在り方に疑問を持ち、私と同じ思いをする人を無くそうと心に決めた。闇の帝王の話とクリーチャーの話から秘密を推測して…。」
レギュラスはハッとして立ち上がり、ドアを見つめた後ため息をついた。
「クリーチャーは君の妹を止められなかったようだ。もう行かないと。」
サッとローブを羽織り、レギュラスは立ち上がる。
「次回どうにかホグワーツに侵入して頑張って君に接触するよ。それまでに君がなすべき事を考えてほしい。」
「ホグワーツ…?今あそこはセキュリティがしっかりしてるでしょう?入れるわけないわ!」
「そう言ってたけど数年前、脱獄囚のシリウスだって侵入できた。弟の私だってできないことはないさ…じゃあね。」
レギュラスが笑ってヒラヒラっと手を振ると、何の音も立てずレギュラスが視界から一瞬で消えた。
呆気に取られていると同時に荒々しくドンドンっ!とドアをノックしてエルファバが何かを言う前にタンクトップの髪を濡らしたエディが雪崩のように入ってきた。
「エルフィーーー!!」
抱きつこうとするエディをエルファバは慌てて静止する。
「ちょっと、私まだシャワー浴びてないから…!」
「えー?」
エルファバは動揺を隠しつつ、すでに肩に腕を回すエディを必死に止めた。
「私もシャワー浴びてくるわね。」
「はーい。待ってるね。」
ふと考えた。レギュラスがここから姿くらましをできるとは考えづらい。音もなかった。レギュラスは目くらましの術で視覚的に消えただけ。おそらくレギュラスはまだこの部屋にいて、隙を見て外に出るつもりだ。そうなるとエディを外に出す必要がある。
「男性陣たちは何をしているのかしら?楽しそうだったけど。」
「シリウスとハリーがチェスやってるの。ハリーったらゲームになるととんでもなく口が悪くなるの。それを見ておじさんたちは笑ってたよ。」
「そう…私もシャワー浴びたら見に行くね。」
長い腕を回したまま、エディの顔はパッと明るくなり、
「もう部屋に篭らない?」
「うん。」
「年末年始はみんなで過ごせる?」
「ええ。」
「やったー!」
「エディだから私は身体が…!」
エルファバの抗議を無視して、エディはエルファバを抱きしめた。そんな姉妹2人の横を何かが横切り、それに合わせて風が吹いたが姉が部屋に篭らないと知り喜ぶ妹はまったく気づかなかった。
「もう大丈夫なの?」
「ええ…。」
レギュラスがうまくグリモード・プレイスを抜けられるように願いながら考えた。
「……クヨクヨしているほど、人生って長くないなと思って。今やるべきことを考えないと。」
「エルフィーったら。なんかおばあちゃんみたいなこと言うんだね。」
エルファバはエディの言葉には答えず、優しく微笑んだだけだった。