自称王(笑)と友達になろう!   作:めたるぅ

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第9話

 まずは金の調達だな。

 何事にも金が第一。一に現金、二に預金。金金金。金の亡者とは、僕の事である。となると行き先は一つ。天空闘技場である。腕に覚えがあるものにとっては、最も稼ぎを得られる場所である。まぁ闇商売を除くが。

 天空闘技場に行くための資金はすでにある。この家にあるお金は、もはや持ち主のいない相続金。となれば、その子である僕はその金を相続するに値するはずだ。流石に通帳等に手をつけるのは無理だ。まだ9つの僕が、銀行で手続きをするのはどうみても不自然。自然、家の中にある現金を持っていくことになる。

 とは言っても家にある現金はたかが知れている。一月分の旅費ぐらいである。ただ、これらを持ち歩くのは邪魔だし危険だ。現金なんてたくさん持ち歩くもんじゃない。追い剥ぎ怖い。

 となると収納が必要。

 …作るか、能力。

 正直、この類の能力はいずれは作るつもりだった。とはいえ、メモリに余裕のない今、あまり無駄遣いしたくない。まぁ、天空闘技場で奪取しまくるつもりだし、なんとかなるか。

 

 

 

 

 『真っ黒な腹の中(収納空間)』

 能力:手で触れた物を念空間に収納する

   収納できる数に限界はない

 

 制約:生物は収納できない

   同じものは一つ収納できない

   重量、サイズ制限がある

   収納時、念獣『チル』に触れている必要がある

   取り出しは自在

 

 誓約:特になし

 

 

 

 とりあえずこんなもんか。ちなみに、チルとは両親の念獣の猫である。どうやらこいつ寄生型の念獣らしく、僕のそばを離れようとしない。

 というわけで連れてくしかないのだが。ペット同伴禁止の店とか困るなぁ、なんて考えながら、できたての『真っ黒な腹の中』に家の貴重品をまとめて突っ込んでいく。オーラ消費は、入れるものによって変化する。基準はよくわからん。

 じゃあ出発するか。

 七分袖の白シャツにベージュのベストを身につけ、ぶかっとしたチェックの長ズボンを履く。お気に入りである。

 玄関のドアを開ける。

 もうここには戻ってこないかな。

 振り向かずに、外へと踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「さて!次の試合は期待の新星、ヘンリー選手!!なんと9歳という若さで、ここ天空闘技場の180階のベテラン選手に引けを取らない素晴らしい戦闘で、注目を集めています!!そして、その人懐っこい甘いマスクに、ファンクラブがすでに結成!実況の私も、筆頭会員です!偏向実況になってしまうことをどうかお許しください!!」

 

 特大の歓声の中、ヘンリーはアハハと照れ臭そうな笑みを浮かべる。その仕草を見た女性観客たちはすでにデレデレになっている。実況も、対戦相手の解説が淡白になってしまう偏向ぶりである。

 

 「両者、準備はいいか?…では、はじめ!!」

 「ガキだからって容赦せんぞ?即ぶっ殺したるわ!」

 

 対戦相手、セオドアはそう吐き捨て、ヘンリーに突撃する。圧倒的アウェーな会場にイライラしているらしい。

 

 「こわいなぁ、僕なんもしてないのに。沸点低い人ってめんどくさいし、付き合いづらいよね」

 「─────っ!!殺す!」

 

 怒りのまま拳を振り抜くセオドア。

 その拳をフッとかわし、カウンターをセオドアの鳩尾に叩き込む。

 手痛いカウンターにたまらず距離を取り、呼吸を整える。

 セオドアは、思ったよりも相手の実力が高いことに気づいた。

 無論、長年180階付近で戦ってきたセオドアの実力は高い。技術という点では、ヘンリーのそれを超えている。が、圧倒的な反射能力と身体能力の違いが、両者の力量を逆転させていた。

 セオドアのスタイルは、主にボクシングのそれである。リーチの長い腕活かし、大きな間合いからパンチを放ち、相手をリングに沈めてきた。まさに、パンチは飛び道具であるという教えを体現した、模範的で堅実な動き。

 それゆえに、正統派の格闘術ではない、変則的な戦闘にはあまり強くなく、目の前のヘンリーは型を持たない我流の武術。それもセオドアの不利に働いていた。

 

 (まったく、この若さでこの反応速度かい。嫌になるね、まったく)

 

 心の中で嘆息したセオドアは再びファイティングポーズを取り、ステップを踏む。距離をつめ、ジャブを放つ。それを事もなげにガードしていくヘンリー。数十発の撃ち合いの果て、またカウンターをもらうセオドア。今度は肝臓付近にヒットし、ダウンを取られる。審判はヘンリーにポイントをいれる。

 

 「おじさん、それボクシングだよね?我流なの?」

 「…師に教わった。君こそ我流だろう」

 「あれ、わかるの。やっぱ経験がちがうもんね、そりゃそうか」

 

 少しでもダメージを回復させるため、会話を続ける。

 

 「おじさん的には、心源流の武術とボクシングどっちが強いと思う?やっぱボクシング?」

 「愚問だな。己の武術を信じられない者など二流だ。それに、武術に上も下もない。使い手次第だ」

 「…つまんない答えだね」

 「君はまだ若いからな」

 「…」

 

 会話をやめたのか、先ほどまでとはちがう構えを取るヘンリー。

 

 (あれは…、柔術か?)

 

 ヘンリーの手は、相手の関節を極めるのに適した型になっていたが、あまりにお粗末なそれは、武術とはいいがたいものだ。

 だが、ヘンリーが動き出し、その速度にセオドアは背筋が凍る。早い。

 一瞬で間合いを踏破され、ガードに上げた手を掴まれ足を払われる。

 そのまま倒され、手を後ろ手に固定され、上に乗られる。

 所詮は子供の体重、すぐに振り払えるとたかを括っていたセオドアは今度こそ驚愕する。

 動かない。

 まるで石像でものっているようだ。

 そのまま首を掴まれ、絞め落とされると覚悟したが、一向にその気配がない。

 

 「あぁ、ごめんね〜。力無いから、締め落とすの時間かかるんだ」

 

 真綿で首を絞められるように、じわじわと首が締まる。だが気絶できず、酸欠による頭痛で意識が朦朧とするばかりでただただ苦しい。

 そのまま10分間ほど絞め続けられ、ようやく意識を失う。

 セオドアは意識を失う寸前、背中がふっと軽くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 「出ましたー!ヘンリー選手の代名詞、絞め落とし!ヘンリー選手は対戦相手のとどめを、必ずこの技で行います!その苦しみは10分間も続き、対戦選手の苦しむ顔に観客も唖然!無邪気なヘンリー選手のギャップを感じます!!ファン筆頭として、私もかけてもらいたい技です!」

 

 湧き上がる感性に手をあげて応えたヘンリーはアハハと笑いながら退場していった。

 

 

 

 

 

 

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