~光紡ぐ八ツ鏡~   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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六ツノ鏡

 

 

 また私でない記憶が再生される。だがそれは、いつもの私からの目線じゃなかった。

 

「姫和さん?なぜ、泣いているのですか」

 

 可奈美は珠鋼の精霊となり、そしてそれを背負うように旅立ってしまった。

 どうすることもできなかった。

 珠鋼はずっと、自身になれる人間を探していた。そして、可奈美という一人を見つけてしまった。それが彼女の『お役目』なら、止めてはならない。

 

 だが、私は諦められなかった。

 

 なんとしても、可奈美と現世で大人になる。

 そんな些細な願いは、立ち塞がる壁を薙ぎ倒しても何も変わらなかった。

 

「姫和ちゃん、さようなら」

 

 涙を流しながら、隠世の向こう側へ行ってしまった可奈美の消えた場所で、立ち尽くした。

 あの日、沙耶香、美炎、結芽と共に、オノツチを倒した、富士山の山頂でだった。

 

 駆けつけてくれた薫、ねね、沙耶香、エレン、舞衣は思い思いに俯き、涙を流した。

「あいつは、泣いていた。可奈美は、泣いていたんだ!」

 薫が岩を叩くが、何も変わらない。

 

 だが姫和は顔を上げ、そうかと呟いた。

 

 その先には八千矛が剣に変化した、八千剣が火口の中心に突き立てられていた。

 

 姫和の元にみんなが集まってくると、そこに立つ姫和の顔には先程の悲しみ歪んだ表情はなかった。

「みんな、私の中にはまだイチキシマヒメがいる。もう意思はないが、まだその力がある。それと、この八千剣の珠鋼を吸収して、可奈美と同じ状態に変化する」

「おいっ!そんなことすれば!」

「違う、私は迎えに行ってくる。必ず戻ってくる手があるはずだ。二人で隠世から戻ってくる時も、最初は手がないと思っていた。だが、帰りたいと願う、その意思がみんなのもとに帰る力になった」

「姫和ちゃん」

 舞衣が顔を曇らせると、頼む任せてほしいとやさしく告げた。

 首を振ると、まっすぐ姫和へと向き合った。

「姫和ちゃん、必ず!二人で帰ってきて!」

「ああ、必ず」

 

 突き立っていた剣を抜くと、赤い炎のように燃え立ち、姫和の手から体内へと流れ込んだ。

 すると雷が走り、白い両角と目が白銀に輝いた。

 

「行ってくる!」

 

 小烏丸で空間を裂くと、ぱっくりと隠世が顔を出した。

 飛び上がった姫和が傷口に飛び込むと、それはゆっくりと閉じられ、やがて見えなくなった。

「ひよよん、カナミン」

 エレン。

「姫和、可奈美」

 沙耶香。

「ずっと、ずっと待っているから!」

 舞衣。

「ねぇねぇー!」

 ねね。

「信じているぜ、姫和よ」

 そして薫は、はるか空を遠く、遠く見つめていた。

 

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