『変無』は理解し、そして多の中の自身を受け入れた。
そのために人の時間感覚では、幾千、幾万のときが流れた。
旅団は解散となり、船がそれぞれの世界へ共に戦ってきた友を送り届けていく。
その世界に戻れば、循環に戻り、戦いの日々の記憶は消える。
「かなねぇ!ひよりねぇ!またどこかでね」
あの頃と変わらない幼さを見せ、しかし、大人らしくすぐに二人から離れて、元の世界へと戻っていく。八つの別の世界から来た結芽は、そうして循環の中に戻っていく。
自分たちの世界体から来てもらった友も、こうして最後に残った結芽との言葉を最後に、みな還っていった。
船は消え、糸を編んだ構造体の残る珠鋼の殻の湖に二人は舞い降りた。
「あの日、夜見さんにふられてから、どれだけの時が過ぎたのかな」
スクナビコが飛んでくると、あの夜見の編んだ『道標』があった。
「循環はとうに一周しているよ。この道標があれば、あの日の、あの富士山に帰れるよ」
「本当!?」
スクナビコが頷くのを見て、姫和はわざとらしく肩を慣らして見せた。
「まったく、お前を迎えにいくと言った日から、こんなに大変な日々を送るとは、変無には骨が折れたよ」
「でも、ちょっと寂しかっただけだったみたい。姫和ちゃんくらい意固地だったけど!」
「な!私はあんなに頑固じゃないぞ!まったく」
困り顔にはいつものように笑顔へと変わった。
スクナビコは別れが来たことを悟った。
「可奈美、姫和、僕はここに残って、またあぶれてしまった生命を救おうと思う。再び歩めるよう、少しづつ道標を編みながらね」
「わかった。またな、スクナビコ」
「じゃあね!また」
「ああ!また会おう!」
二人は飛び込み、道標が解き放たれると、二人を世界の八つの流れの中を方舟となって進んでいく。
「これが、私たちの世界体なんだ」
「今は八つだが、まだ成長を続けている。また新しい鏡が生まれようとしている」
「じゃあ、九ツ鏡の世界になるんだ!」
「だが、戻れば私たちの今を始めなければならない」
「うん!楽しみだね!」
そして、一つの世界に入ると、パッと世界は見開いた。
あの日、あの時、別れた場所にみんながいた。
可奈美と姫和は疲れたように背を合わせて崩れた。
「おい!姫和!可奈美!」
薫の今にも泣き出しそうな顔が、なぜか懐かしく思えた。
「可奈美、姫和」
抱きついてきた沙耶香の頭を、可奈美はやさしく撫でた。
既に泣き崩れる舞衣を、エレンは背中を撫でて慰めた。
自身の名前をしっかりと言う薫に驚きながらも、姫和は可奈美と目を見合わせ、
揃えてみんなへ向き合った。
「ただいま!」