~光紡ぐ八ツ鏡~   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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39話「ぱーとなーしっぷ」と40話「せーぶゆーせーぶみー」の間のお話です。


おまけ
らゔぁーず!


 どうも、鎌府女学園高等部一年生、苗場和歌子でございます。

 寿々花様のため、日夜粉骨砕身しております身ですが、こう見えても親衛隊支隊・寿々花班組長を勤めています。

班なのに組なのは、新撰組の組長にちなんで用いています。

 おかげで、あのロクに写シも使えなかった糸巻き刀使の皐月夜見や、背伸びにも程度がありますわよ安桜美炎のような、やたら色の濃い隊員の方々のせいで、支隊の業務をこなす一隊員程度で名前も出ませんでした。

でも!私は寿々花様の影となっていると思えば、これ以上の名誉はございません!

ああ!寿々花様、和歌子はどこまでもお供いたします!

 

さてはて、このお話は皐月夜見が名ばかりの休暇に入った頃に起きます、寿々花様にふりかかりし大事件でございます!

 

ああ!おいたわしや、寿々花様っ!

許すまじ、夜見!獅童!

寿々花様に何かありましたなら!魂魄百万回生まれ変わろうとも!恨み果たさせていただきますわ!

 

 

 朝、すでに食堂では朝食の配色がはじまり、食堂には任務帰りの隊員たちが眠気まなこで食事をとる。寿々花は自身に挨拶にくる隊員たちに気を遣って時間をずらそうとしたが、無理と悟って食堂へと入った。

 短い髪を柔らかくまとめた和歌子が、目の下にくまを浮かべて寿々花に挨拶に来た。

「おはようございます寿々花様!」

 彼女のこうした気が回りすぎると感じてはいるが、頼りにしているので深く詮索しないようにしていた。

「おはよう和歌子さん。あれ」

「獅童様でしたら、我々よりも先に来てから」

「なるほど、稽古へいかれたのですね」

 残念そうにため息をついてから、夜見もそうなのかと尋ねた。

 瞼が妙な動きをしているが、和歌子は静かに言葉を繋いだ。

「いえ、今朝はまだ食堂にいらしていません」

「あら、もしかして昨日の稽古が響きましたか」

「稽古ですか?ああ、紫様を交えた四人稽古ですね、あの方々相手にタフな方ですね」

「二日前に試しに夕稽古に来てもらったのは間違いでした」

「ええ、まさか現役支隊員を全滅させるなんて」

 二人は小さくため息をついて、寿々花は入り口へと踵を返した。

「夜見さんを迎えにまいりますわ」

 階段を降りて、事務所横の用務員室は支隊入隊時からの夜見が寝起きしている。本来なら親衛隊員の部屋をあてがうはずが、本人がすぐに隊員に会えるからと強い希望でこの部屋のままである。

 支隊員手作りの夜見の部屋を示す小さな看板を見つけてから、扉を3回ノックした。

 応答がない。

 ため息をついて笑顔になると、静かに扉を開けた。

「夜見さん、もう朝でございます。朝のお茶に付き合ってくださいませんと…」

 部屋中に張り巡らされた糸が複雑な錐体の構造物を作り出し、向こう側のベットに布団もかけずに眠る夜見の姿が見えた。

「これは銀糸?ここまで繊細な編み込みができるのですね。鳥喰優稀を救った『世紡糸』、まだ謎がありそうですね」

 と、扉に張っていた糸が引っ張られ、寿々花に向かって構造体が収縮し、彼女の体をあっという間に包み込んでしまった。

「きゃー!」

 ばたりと起き上がった夜見とスクナビコは目を瞬かせながら、繭になった糸の塊が扉の半分ほどの大きさまで小さくなり、ばさりと解け落ちた。

「うーん、五つ目の世界は刀使がスクールアイドルって……あれ今の声、寿々花さん?」

 糸の塊が縦横無尽に動き、籠っているが甲高い声関西なまりが喚き散らしながら、糸をかき分ける。そして、糸の中から赤髪の幼い女の子が這い出てきた。

「ぷはぁー!なんやこれ、うちはお蚕様ちゃうで!」

 廊下から駆けてきた和歌子は寿々花の名前を呼び、反射的に夜見を睨んだ。

「なんや?うちがどうしたん?」

 サイズが合わずに崩れた親衛隊の制服を着た少女が、和歌子を見上げていた。

「ふぇ?」

 

 本部棟、局長室と親衛隊執務室は同じ部屋になっている。これは、局長が朱音になってからも変わらなかった。

 変わったのは、そこに小さな寿々花がいると言うことだろう。

「あ、うん、え?」

 好奇心にそそられてキョロキョロと局長室を見回す寿々花に困惑しながら、真希は夜見の説明を飲み込めなかった。

「銀糸は、記憶と肉体を繋いだり、解いたりする力があるんです。なので、昨日編んでいた構造体が経過した時間を寿々花さんから引き剥がして、今の寿々花さんは七年を解かれて十歳に戻っているのです」

 幸いか、結芽の親衛隊制服がぴったりだったため、着るものには事欠かなかった。

 朱音も頭を抱えながら、直す手立てはないか尋ねた。すると、小柄が飛び、スクナビコが現れた。

〔治すというより、もう一度解いてしまった七年分を結び直す。その七年の時間は九字兼定くんが提供に協力してくれる。とにかく、夜見とボクとで術を編むから時間をくれ〕

「それは、どれほど」

「二日ください。いつも編んでいる術式を正反対にして編まなければならないので、時間がかかってしまうのです」

 スクナビコと夜見の言葉に安堵しつつ、京寄りのお嬢様言葉のないコテコテの関西弁を喋る寿々花を制御できるかが心配であった。

「治るならいいんだ!僕も弟と妹がいる、一人妹が増えたと思えば取るに足らないさ!」

「なぁなぁ!ウチな、鎌倉の本部初めてなんや!でもこの部屋カビ臭いわ」

「か…かびくさい」

 率先して部屋を清掃し、優しめの芳香剤で古い建物特有の匂いを減らそうと心がけていたのは夜見であった。

「それに特祭隊局長は紫様や!この人は代理やろ」

「だ、だいり、うっ」

 誰もそう言わずとも、紫からのバックアップを受けながら局長職をこなしていた朱音は、紫のスケープゴートと揶揄されているのではと気にしていた。

「あーっ!やめるんだ!やめなさいっ!とにかく、寿々花は僕が世話しますから、夜見頼んだぞ!大抵のことは、錦織、苗場と藤巻に、浜松に飛んでいる岩倉へ!それでは!」

「なんや!なんや!まだウチは紫様にあってへんねーん!」

 ばたりと扉が閉まると、夜見と朱音は大きなため息をついた。

 

「うわーん!寿々花様の業務は引き継ぎます!でも、寿々花様といっしょにいたいですぅー!」

 和歌子の嘆きをよそに、寿々花が興味のまま鎌倉を回るのをただただ、ついていくしかなかった。それほどに日頃の寿々花とは対照的だった。

(いや、ふたりでいるときは割とこんな調子だよな、それが口に出ないだけで、コストコに連れて行かれたり、コンビニで弁当選びに付き合わされたり、谷中へ路地裏散策に行ったり)

 ふとした隙に寿々花は本部入り口へと駆けていた。

「あ!待ちなさい」

 入り口に向かってくる一群の中に、その顔から曇りが取れない彼女がいた。

「ほのちゃん?」

 清香の心配そうな顔を見て、美炎はようやく自分がどんな表情をしていたのか気がついた。

「ごめん清香!大丈夫だよ、でもごめん、さっぱりってわけにはいかないよ」

「いいのですよ安桜美炎。あなたが少しでも早く救出に向かいたい気持ちを抑え、こうして慎重に打ち合わせを重ねにきたのです。気持ちは同じです」

「そうよ、私たちでお互いの負担を分け合う。葉隠の鈴本さんもコヒメちゃんが無事だって報告をくれるし、救出のために動いているのはわたしたちだけじゃないわ」

 3人の顔を見渡して、美炎は笑顔で頷いた。

「ありがとうミルヤさん、ちぃねぇ!少し落ち着いたよ!」

「そうだよみほっちに暗い顔されたまんまじゃ、メシも荒魂ちゃんの遊びもマズくてしょうがない」

「ふっきー!その言い方ひどくない!」

 調査隊を呼び止める声に全員の顔が正面に向き、そして目線を下げた。

「なぁあんたら!伍箇伝の制服バラバラに着て統一感ないわ!なんの集まりなん?」

 腰に手を当てて、大見えを張る赤髪の少女を前に薄々誰であるか気づいたが、口に出なかった。

「あれ?関西弁か?」

「違うわ呼吹ちゃん、名古屋訛りがあるから全然違うわ」

「そうなのか?正直聞き分けられねぇよ。岐阜弁と名古屋弁もそうだっけか」

 呼吹が尋ねるが、美炎が顔を真っ青にして背を正していた。

「此花寿々花様!おひさしぶりでございます!」

 直角に礼をした美炎に一同引きながら、寿々花は満遍の笑みを浮かべた。

「うん!苦しゅうないで!顔あげてな!」

「待てーっ!寿々花!」

「遅いわ真希さん、うちは一人従卒を見つけたわ!」

「彼女は従卒じゃなくて、元部下!と言っても、十歳の記憶じゃ知らないか」

 顔を上げた美炎は、真希に向かって再び頭を下げた。

「獅童さんもお久しぶりです」

「安桜、それはこっちも萎縮するからやめるんだ」

 美炎たちは寿々花の相手をしながら、ミルヤと智恵が事情を伺った。

「じゃあ、術式が組み上がるまで、十歳の此花さんを」

「そうなんだ瀬戸内、任務は組長たちに任せてあるからこうして面倒を見てるんだが、僕の弟よりもよく走る」

「もしかして兄弟が一人増えて余裕と思ったのですか?大抵の場合は、兄弟の行動パターンに慣れすぎて3人目に慣れるのに疲れるのよ」

 頭を掻きながら、思い当たる節を洗い出して小さくため息をついた。

 そこへ遅れてついてきた由依が顔を出した。

 彼女は震えながら、スマホを引き出し、カメラを構えた。

「おうらっ!」

「だめっ!」

 呼吹と清香が反射的に由依を取り押さえたが、凄まじい力で引き剥がされそうになる。

「は、はなして、おそらく十歳の、寿々花さん」

「マジかよ、一発で年齢を言い当てやがった」

 抑えられながらも、由依の両頬は高く釣り上がっていた。

「うぐぐ!と、2011年春っ…度刀使補完計画綾小路小学部っ!後援会一同を魅了した、此花寿々花!当時おそらく九歳!事情は知らぬが、おそらく二度とない!一緒に!自撮りっ!」

「あー、由依が後援会のスパイだったんだ…よりにもよって三重スパイって」

 清香、呼吹、美炎、智恵で抑えこんでから、ようやく大人しくなった。

「ぐっ、バレたか、ただ小さな女の子が好きな夜見さんを盾にした私の罰か!」

「何を悔しがっているんですか、因果応報です。これからは自重してください」

 寿々花も由依から隠れるように真希の背に回っていた。

「なんか危ない感じがするで真希ちゃん!」

「ちゃん呼び?まぁとにかく、事情は後でたっぷり聞かせてもらうぞ山城!」

 真希の背中から隠れ動く寿々花を目で追う由依は、光悦の笑みを浮かべていた。

「ところで由依ちゃんは、寿々花さんがどうして関西まじりの喋り言葉か知っているの?」

「んーっ、確か小学生の時に親戚の神戸の重工業会社の社長さんのところへ、よく遊びに行っていたそうで、そのメーカーが大阪、神戸、名古屋、岐阜に事業別の工場があったから、よく泊まりがけで見たって」

「そこまで載っているのか、やばいな」

 ミルヤは何かに気がついて、周りを見渡した。

「獅童真希さん、此花さんは」

「あっ!いつの間に」

 入り口を抜けて、鎌倉市街に駆けていく寿々花を追って、真希は駆けて行った。

 美炎はふと無邪気なコヒメの姿を思い出していた。

(コヒメ…どうしているかな)

 

 ところ変わって茨城県は大洗。

 小さな灯台のある砂場で、コヒメは沙耶香に対していた。

 闘争心に満ちたコヒメとは対照的に、沙耶香はあまりにも無表情だった。

「わたしも、やーっ!」

 コヒメが投げ放った石は水面を四度はねてから、ぽちゃりと波間に消えた。

「うわーっ、また沙耶香おねぇちゃんに負けたよーっ」

 岩場に腰掛けて様子を見ていた葉菜は、成績が沙耶香5に対して、コヒメが3と告げた。

「でもいい勝負じゃないか、まだ二敗だ。あと2回勝てば」

「優勝決定戦だね!」

「負けないよコヒメ」

 コヒメは意気揚々と石を探し始めた。そんなコヒメに微笑みながら、葉菜はふと沙耶香へと視線を移した。沙耶香はコヒメの石集めをやさしく見守っていた。

(僕の考えすぎだったかな、これが本来の沙耶香くんか)

「どうしたの、葉菜?」

「ん?聞かないでおくれよ、僕はコヒメ君を勝たせたくなっただけさ」

「ふふ、いじわるだ」

 そう返すか、そう葉菜は思った。意地悪なのはどっちかと口には出さなかった。

 コヒメのとなりに葉菜がつくと、沙耶香もコヒメのとなりについて石を探し出した。

 結局、五分五分で決勝戦となり、沙耶香は敗れた。

 

夕方に差し掛かって、部屋に籠ったままの夜見とスクナビコは頭を抱えていた。

 手元には参考にと小さく編んだ構造体を持っているが、それでも進みは芳しくなかった。

「ううむ、反対に編み変えると言っても、構造体の外側は正の位置と同一、でも中身は四十度傾けて、正反対に組まなきゃいけない」

〔きつい、折れそう〕

「だから!スクナビコさんが折れないでくださいよ!」

〔仕方ないだろう!僕は本来、先導と誘導が専門なんだよ!銀糸はあくまで副次的な能力なの!〕

 二人はため息をついた。

 そこへ薫とねねがふらりと顔を出した。

「よう、息災か。ってその顔はそうじゃないってか」

「どうも、自分の撒いた種ですから」

 スクナビコはねねの背にまたがると、毛並みに沈み込むようにもたれかかった。

〔すまないけど、しばらく、しばらく〕

「ねねーっ!」

 夜見は手を休めて、薫が持ってきたコーヒーを口にした。

「はーっ、落ち着く」

「そういえば夜見は紅茶が好きなんだろ?なんでコーヒーなんだ」

「その質問おかしいですよ。自前の葉っぱもありますけど、インスタントの紅茶だって時々飲みますよ。でも、コーヒーだって同じくらい飲みますよ。特に好き嫌いはしていません」

「そっか、そっか」

 それで、と夜見が返すと、これを見たかったのだと、参考用の構造体を手にした。

「鳥喰優希の融合解除、燕結芽からのノロの引き剥がし、そして今回の事故。まぁひっくるめて、この目で見ておきたかったんだ」

 銀糸が太陽光を受け、キラキラと光ると、自然と薫の顔が照らされた。

「単刀直入で言う。夜見、お前の判断で沙耶香からノロを引き剥がせ」

 驚きから、すぐに緊張のこもった表情に変わった。

「沙耶香の無念無双は、体内に取り込んだノロを消化させることで実現させている。それを引き剥がして、あわよくば説得しろ」

「でも、彼女は『悪党』の」

「そうだ、リーダーだ。だが、最初は折神紫の排除を止めることから始まった。それをまだ突き通している。それに、沙耶香のノロの貯蔵庫化が大義名分として掲げられている以上、無視できない。だがな、沙耶香は戻ってくると俺は踏んでいるよ」

「薫さん、正直に話してください。これからどう言うふうに戦うのですか」

「おう。高津学長と『悪党』の要求をのむ、それから一体となってタギツヒメと戦う!やっぱり、高津学長と沙耶香の力は無二のもの、いい加減に葉菜も返して欲しいしな」

「つまり、舞草を再統一して、特祭隊本部へ合流して一丸となると」

「ああ、沙耶香は舞衣と葉菜が説得してくれる。もう裏工作始めちまった。もしかしたら、鎌倉の指揮所占拠なんて暴挙しでかすかもしれんが、通常任務止めるなんてことはしないだろう。折れてくれとは言わないさ、だが、タキリヒメを奪われた以上、俺たちだけじゃだめだ。その要を夜見の銀糸に託す。いいか?このことはお前とエレンしか知らないからな」

「わかりました。薫さんの指揮、頼りにしてます」

「ありがとよ」

 薫は構造体を見ると、編んでいるものとの繋げられる隙間を示した。

「天頂のここと、右三段目のここ、繋いで結べば、解けなくなるんじゃないか」

「なるほど、じゃあ、ここから短辺を結んで」

「うーん、ここは短くせず、一気に引いて、点結びで形を作っていけば」

〔おお!夜見くん!〕

「はい!これでいけます!」

「おう、がんばれーっ、おれはちと休むから、起こすなよ」

「ねねぇー」

 薫が寝始めたのも気にせず、スクナビコと夜見は夢中で術式を編んでいった。

 

 一日歩き回り、寿々花は電車の座席でうとうととしていた。

「ふぁーっ、むにゃむにゃ、真希ちゃんがめっちゃ追いかけてくるから、疲れたわ」

「そうだね。江ノ島まで行ってしまったから」

「でもなー、楽しかったわー」

「そっか、そっか」

 こうして落ち着いて鎌倉を回るのも久しぶりだった真希は、自分が思わぬうちに休暇を過ごしていたことに気がついた。そして、気を張り続けて時間を忘れていたのにも気がづいた。

(みんなが無事に戻ってきたら、たまにはみんなで遠出するのもいいな。寿々花に付き合ってスーパーに、結芽御所望のテーマパーク、夜見の紅茶で憩うのもいい。沙耶香は、何がいいだろうかな。ついぞ、好きな食べ物も聞きそびれていた。今度、聞いてみるか)

 瞼が閉じそうになると、すぐに開くが、抗えず眠りに押される。

「寿々花、着いたら起こしてあげるから」

「うん」

 真希に寄りかかると、寒かろうとジャージを寿々花の方へかけた。

「真希ちゃんさ、まきちゃんが男やったら、お嫁に行ったのにな。まきちゃん、かっこいいもん」

「どういうことだい、それは」

 意味を問いかけた時には、寿々花は静かな寝息をたてていた。

 

 その夜のうちに治療のための術式が完成し、寿々花が寝ている合間に十歳から十七歳の寿々花に戻った。

 

「昨日はまったく記憶がないうちに終わっていましたわ。まだ、時間の感覚が」

 執務室での朝礼を終え、寿々花は困ったと口にした。

「昨日はすみませんでした。まさか銀糸の時間を戻す力がこんなに強力だとは」

「いいですのよ。鳥喰優稀も融合時の記憶は失われていると聞きました。物事はそんなにうまくいかないものですわ」

 真希は苦笑いで寿々花の言葉を聞いていた。

「まったくだ。大阪なまりっぽい関西弁に、素早い足並み、今じゃ想像できないくらい高飛車で、ついぞ僕のが男だったらお嫁にいきたいって、言って……」

 顔を真っ赤にする寿々花の顔を見て、自身の口にした言葉の不味さを思い知った。

 

 どうも関西弁なまりは家族にからかわれたらしく、黒歴史と化していた。高飛車だったのも、後年同級生に散々からかわれたのを気にしていたようだった。そしてお嫁は……

 

「その話は、もうよしてくださーぁい!」

 

 そういうわけで、しばらくまともに口を聞いてくれなかったのを、末尾に記す。

 

 

 

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