ついに御前試合の予選会が明日に控え、続々と全国の刀使が集まってきた。
「長く落ち着きのある清楚な平城、白と灰の美しいモノトーンは綾小路、赤の見えそうで見えないスカートは美濃関、勇猛さの現れは黄金の長船、あぁ〜こうして伍箇伝が街に揃っているなんて私はしあわせ」
嬉しそうにスマホで写真を撮る夜見の隣に、早苗と美炎が立っていた。今日付で彼女用の飾緒が支給され、さっそく制服につけて表に張り切って出てみたが、当の夜見本人は仲間に認められた喜びそのまま、以前の彼女に戻っていた。
「え、もしかして後援会の回し者!? 」
困惑する美炎に、苦笑いしながら早苗は答えた。
「それはないけど、後援会の人と同じベクトルの子だから」
「刀使になれなかったフラストレーションを追っかけに回していたなんて、嘘でしょ」
「美炎ちゃん! 」
「ほら、可奈美の声が聞こえる」
「安桜さん! 」
「うーん、今度は舞衣だぁ」
何かに気付いた夜見は、その長身に見合わぬ素早い身のこなしで、美炎の後ろに立つ二人に声をかけた。
「衛藤可奈美さんと柳瀬舞衣さんですね! 御前試合出場おめでとうございます! あ、あの、サインもらえますか! 」
振り向くと、懐かしい二人の姿が目の前にあった。
「え!? ほんとに! 」
「久しぶりだね美炎ちゃん! 」
可奈美は当然のようにサインしたが、あまりに豪快で判別がつかない。
「二人で来ましたよ鎌倉へ」
舞衣はどこからともなく筆ペンを取り出して、美しい草書体でサインして見せた。可憐な字である。
よろこび舞い上がる隣で、美炎は二人の顔をしばし見てポロポロ泣き出した。
「うぅう、かなみぃ〜、まいぃ〜」
「ふふ、おいで美炎ちゃん」
二人の間に飛び込んだ美炎はしばらくそのまま動かなかった。
「たいへんだったよーぉ! 友達なかなか出来ないし、朝練早いしぃー、寿々花さん怖いしぃー! 」
「ふふ、がんばっているね」
「ねぇね美炎ちゃん! 今回の御前試合は親衛隊とその支援部隊の人でないって聞いたよ! でも私、美炎ちゃんとか色んな人と立ち会いな! 」
顔を上げて残念そうにしながら、可奈美の顔を見て大きく笑った。
「変わんないなぁそういうとこ」
「え? おかしなこと言った? 」
「そうそう、そういうところが可奈美ちゃんのおもしろいところ」
三人の掛け合いを眺めながら、笑顔の美炎の姿に安心した。
「あんなに楽しそうな安桜さんはじめてですね」
「まだあそこまで打ち解けていないけれど、いつかはね」
そう話す早苗と夜見を安桜は来て欲しいと呼んだ。
「こっちが皐月さん、こっちは岩倉さん」
「こんにちは、先ほどは失礼しました! 皐月夜見と申します! 」
「どうもこんにちは、岩倉早苗です。安桜さんといつも頑張っています」
恥ずかしそうにする夜見に構わず、可奈美と舞衣は元気な彼女に自然とほころんだ。
「よろしくね、皐月さん、岩倉さん! ねぇ、ちょっと手合わせをお願いしたいなぁ! 」
「お願い! 言って聞かないの! 」
早苗は小さなため息をついて美炎の顔を見た。
「これから私たちが何の任務か忘れちゃったの? 」
「あ」
「御前試合一般見学者向けの刀使勧誘案内所のスタッフ、私たちがメインなんですから」
「むぅ、皐月さんに言われずともわかっているやい! 」
それに対し、悲しそうに美炎の顔を覗き込む可奈美の姿があった。タイミングを見計らっていた早苗は、一緒に二人にも来てもらえればいいと言った。
「その広報スペースで簡単な試合をやってほしいってお願いされているの、二人の用事が合えばぜひ協力してほしいのだけどな」
「い、岩倉さん! 」
「ごめんね、いじわるしちゃったね。でも任務しながらなら希望通りかなってね。夜見さん! 」
「はい、人数が多いと見てもらう人に興味をもってもらえますから! 」
可奈美と舞衣は問題ないと、よろこんで申し入れを受け入れた。会場は鶴岡八幡宮境内の御前試合観覧受付前に設けられた、飲食やグッズを扱う商業スペースに設けられている。
この御前試合は、一般観覧ができるようになったのは十年前、相模湾大災害からの復興を記念して本来は特祭隊内のでの催しであったが、刀使への活動支援と地域支援のため一般向けに解放するようになった。滅多にない刀使同士の技術試合とあって、一般観覧席のチケット抽選倍率は10倍である。そのため配信サービスが各社入っている。春の御前試合、夏の自衛隊総火演と政府機関主催のイベントとしては人気の高さが認知されていある。無論、当人たちは大真面目である分、地方から五箇伝へ来ている刀使は、故郷の親や友人に自慢したいと、こぞって予選会・決勝御前試合にでたがるのである。
「さぁて! 一番手は誰かな! 」
模擬試合の時間が近づくと、観光客や地元の人、中高生が集まってきた。特祭隊の他スタッフと入念に打ち合わせし、早苗は模擬試合参加者たる四人の前に立った。
「じゃあくじ引き通り、一番は衛藤さんと皐月さん。二番手は柳瀬さんと安桜さんです」
「早苗は参加しないの」
「私は司会をしなくちゃ」
会場に元刀使の司会者と解説の早苗がつき、一般の人々へ挨拶をはじめた。そこへふらりと葉菜が顔を出した。その後ろには親衛隊の服を着た銀髪の少女が立っていた。
「鈴本さん! おはようございます」
「夜見くん、そうかしこまらないでよ。僕だっていつまでも固いままなのは好かないさ」
「そうですね、今から刀使勧誘の模擬試合が始まるのですけど」
葉菜を押しのけて銀髪の少女は夜見の前に立ち、まじまじとその顔を見た。夜見にとって、今の今まで自分のことを無視してきた存在がそこに立っていた。
「あなたが皐月夜見」
「あ、はい、はじめまして糸見班長! 」
「これからの試合で実力を見る。楽に」
葉菜と夜見が凍りついた。それもそうである、沙耶香は今日の今日まで写シのタイムリミットや銀糸の能力について、その一切を知らないのである。そもそも葉菜と由依でさえ、彼女と面と向かって話のできる機会は皆無だった。
「おもしろそうだな、私も見学しよう」
さらに、沙耶香と行動をともにしていた、綾小路学長の相楽結月とその後ろに山城由依がついていた。由依は小さく手を振った。
夜見は簡単な手合わせで終えるわけにはいかなくなった。緊張する夜見に反して可奈美はうれしそうに落ち着かない様子で周りを見回していた。
そんな二人に舞衣は微笑みながら、ふと立ったままの沙耶香に声をかけた。
「糸見さん、一緒に座って観ませんか? 」
無表情だが舞衣の目を覗き込むように見つめた。
「気を使わなくていい」
そっけなく目を逸らした沙耶香から恥じらいを感じ、舞衣は自然と笑顔になった。
「いいんですよ」
何も臆せず、舞衣は沙耶香の隣に寄った。
「せっかくこうして出会えたんですから、お話ししながらみんなの試合を見ましょう」
沙耶香は静かに驚きながら、舞衣の姿に忘れかけていた、ある人の面影を重ねていた。
「うん」
舞衣の勧めのままに席にひょこりと座り、照れ臭そうにしているのを舞衣は嬉しそうにしていた。葉菜はその光景に唖然としながら、テントのポールに背中を預けた。
「それではみなさん、これより模擬試合一番目を始めたいと思います! 」
拍手に包まれる会場に進み出た二人は、東方に可奈美と西方に夜見が立った。
「西方には先週から親衛隊支援部隊に配属されたばかりの新鋭、皐月夜見さん! 」
「よろしくおねがいします! 」
「東方には岐阜県の美濃関学園から、主席代表として来てくれた衛藤可奈美さん! みなさんのために模擬試合のお手伝いを引き受けてくれました! 拍手をお願いします! 」
「みんなー! よろしくー! 」
そして審判に広報担当の長船出身の刀使が立った。
「双方、抜刀! 」
刀を抜き払った二人のその刀の身長差が、観客には違和感があった。そして改めて夜見の長身が際立っていた。
「写シ、構え! 」
夜見は可奈美の自信に満ちた雰囲気に押されていた、だがそういうときだからこそと、腰につけていたあるものも手に持った。それは白鋼に輝く分胴であった。
「始め! 」
その手に持ったものをどう使うか気になり、可奈美は青眼の構えで待ち受けた。
(やはり新陰流、簡単にはせめて来ない! なら! )
夜見は手早く銀糸を引っ張り出すと、それを珠鋼製の分胴に結び止め、それを静かに振り始めた。
「鎖鎌術だね! 」
「まだ練習して一週間ですが、うまくいきますように! 」
分胴が正確に可奈美の籠手を狙うのを軽く払った、それを待っていたように軽く銀糸を引き分胴の回転エネルギーで彼女の千鳥が絡め取られた。上段の兼光が一歩ずつ近づく可奈美に狙いをすます。しかし、互いに落ち着いた表情で互いの顔を見あった。
ふと、可奈美は一分の呼吸の乱れに気付いてわざと刀を引いた、焦った夜見が糸を引いた瞬間、分胴が解けると同時に可奈美は分胴を自身の方へ引っ張り、迅移を掛けて斬りかかった。それを見逃さず、あえて自身も迅移で飛び込み、可奈美の斬りつけとその切り返しを受け流し、距離を取って再び飛び込んだ。これを不規則な切りつけとともに何度も繰り返した。
「岩倉さん、これは何をしているのでしょうか」
「どうやら夜見さんは可奈美さんを自分の土俵に誘い込んだみたいです」
可奈美が気づいた時には縦横無尽に夜見の張った糸が、地面に張り巡らされ、足場を奪った。
八幡力で糸が大きく一本に跳ね上がり、可奈美は仕方なく刃を返した。夜見はすかさず攻めかかり、隠し剣の構えから大きく二度斬った。だが、可奈美は糸をバランスよく走り、その斬り付けを抜けて夜見の背中に立った。焦った夜見は上段から切りつけたが、可奈美の切り落としが打ち勝ち、夜見の写シは剥がれ落ちた。
「す、すごい」
糸が消え夜見は素早く起きて、分胴を拾った。お互いを分かってか審判の号令で礼を交わした。
「鈴本、あの糸はなんだ?」
「わかりません、しかし、写シが作り出す糸とだけは分かります。あれは皐月くんだけの力です」
相楽は訝しげに夜見の顔を見やった。とうの本人は実力を出し切ろうとしたが、可奈美の実力に面食らった。それもそのはず、渾身の策が糸を伝い登るという直感の策に敗れたのだ。
待機テントに戻ってくると、夜見と可奈美は互いに握手しあった。
「衛藤さん!あなたはなんとすごい方なのですか」
「皐月さんも!一撃一撃の重さがひしひしと伝わってきたよ。あの瞬間、糸に飛び乗ってなかったら負けていたよ」
「そう行動できるのがすごいのですよ」
「でも、随分と腕を上げたよ夜見さん。一週間で五分をカバーし切る方法を編み出したのも驚きだ」
「ありがとう鈴本さん」
「え、五分って、もしかして」
何かに気づいた可奈美は驚き尋ねた。
「はい、写シを五分しか張れないのです。糸も写シを張る時間の中だけでしか」
「だから焦ったんだね。ようやくわかったよ」
きょとんと可奈美の顔を見た夜見は、そこまで見透かされていたのかと苦笑いするしかなかった。
舞衣と美炎の試合が始まるタイミングで、沙耶香は人気のないテント裏の方へと夜見を呼び出した。そこには由依の姿もあった。
「皐月夜見。あなたの実力はわかった。その上で聞きたいの。あなたは私の行動の全てに従うつもりはある?たとえ私が世界を敵に回しても」
突然の言葉に夜見は目を泳がせた。
「あの」
「冗談でも、皮肉でもない、あなたにその気があるかを聞いているの。折神紫にではなく私に従い続ける意思が」
「それは、分かりません」
「なぜ」
「私は糸見さんにも、紫様も刀使の先輩や上司として敬います。でも、私が従うのは刀使の使命だけです。私が刀使でいられる僅かな時間の中で、使命を果たして大人になり、みんなとともに歩みたいのです。私には絶対の存在はいません」
「本気?そう抱えれば抱えるほど、自分の身の丈に合わなくなって、そのうち自身を見失う。廃人になるより、誰かの声に従うほうが心も体も楽」
「抱え切れないほどのものを抱えようとするほど、私の心は大きくありません。小さいから互いに分け合ってその重荷を軽くするのが仲間ではありませんか?」
沙耶香は残念そうにため息をついた。
「とんだ夢想家。これから何があっても、そうだと言い続けられるワケがない。わかった。あなたの好きにするといい」
背を向けて歩き出した沙耶香に向かって、ふと一言が出た。
「糸見さんはつらくないのですか?」
殺意のこもった目が夜見を深く覗き込んだ。
「もちろん」
去っていく沙耶香の背中をいつまでも見守り、ふと由依の視線がこちらへ向いているのに気づいた。
「そういう可愛げのないとこ、嫌いじゃないよ」
笑顔を向けて由依は沙耶香の方へと駆けて行った。
気づけば舞衣と美炎の立ち合いも終わり、集まっていた人々がぞろぞろと会場から解散し始めていた。その群衆の奥、御前試合会場へ続く長い石畳の向こうに立つ可奈美の姿が見えた。だが、可奈美の向き合う先に平城学館の制服を着る刀使の姿が見えた。
「皐月さん、可奈美ちゃんを見なかった?」
「あそこにいますよ、平城の子と一緒みたいですけれど」
夜見は指さした先で今にも白刃を振り上げそうな、長い髪の少女の尋常ならざる剣幕を感じた。
舞衣は夜見のとなりを抜けて可奈美の元に駆け出していった。
「柳瀬さん! 」
「夜見、大丈夫だよ」
隣に立つ美炎の沈痛な表情が、誰に向かって言い聞かせているのか気付かせた。
「そうですか」
しばしの言い争いとともに、可奈美が舞衣と平城の刀使の間を取り持つように話をし、身を翻して本部の寮がある方へと平城の刀使は去っていった。
「もしかして、十条姫和さん? 」
「ん? それは例の刀使後援会の情報」
「いえ、今年になって突然、平城に編入されて破竹の勢いで御前試合候補の座を手にしたと聞いています。それまで刀使に関心を示さず、関西の普通科の学校に通っていたと」
「そこまで知っていれば、後援会の人間じゃないの」
「でも、噂になっていますよ」
「なんで? 今まで刀使の素質に気づかずに雌伏の時を過ごしていたのは、夜見も同じじゃない」
「不自然に思いませんか? なんで彼女の個性ではなく、経歴だけが一人歩きしているのか」
美炎は、夜見の覗き込むような視線をひたすら無視しようとしていた。
「戻ってきた。この話はまた今度」
「美炎さん、らしくないですよ」
夜見から逃げるように、彼女は二人の元に駆け寄っていった。
夜になり、忙しく動き回っている隊員たちを傍目に、夜見は控所の事務室で提出書類の整理を進めていた。必要な報告メールの送信を終え、昼の任務のため詰まっていた仕事に一区切りついた。彼女は大きく背中を伸ばした。
「明日は一日会場警備かぁ、藤巻さんの気合いを分けて欲しい」
時計は午後八時半を指し食堂は既に閉まっていた。ならば、たまにはと腰を上げた。
特祭隊および折神家屋敷の大通りを抜けて、鎌倉駅前近くのコンビニまで足を伸ばした。駅前は御前試合の前とあって賑わっている駅前を、多くの彩り豊かな制服の刀使たちが時間を過ごしていた。
「ねぇー! 」
夜見の前に小さな生き物が現れ、彼女の右後ろに向かって強く叫んでいた。
「え? ええ? 」
するとその生き物の後ろから、長船の制服を着た刀使が追いかけてきた。
「おい、ねね!どうしたんだ!」
ねねは長船の刀使に向かって、何かを仕切りに叫び、それを理解してか長船の刀使はじっと夜見の顔を覗き込んだ。夜見はすぐに相手が誰か理解できた。
「あの、荒魂を従える長船の益子薫さんですよね」
「相棒だよ」
「はい」
「従えているんじゃねぇ、俺の相棒さ。ねねは」
「そう、なんですか?」
「ああ、お前さんの言う通り、俺は益子薫だ。お前さんは?親衛隊支隊隊員さん」
「高等科一年の皐月夜見です」
「ねねーっ!」
ふたたび何かを話し出し、頷く薫は困惑する夜見を面白うそうに見た。
「なぁ皐月さん、夕飯は食べた?」
「い、いえ」
「なら、そこの寿司屋に入らないか?」
そうして場の流れで入店し、店主と交渉して格安で提供してもらえることになった。
「いえ、あの、払えない事ないので」
「気にすんなよ、刀使は小遣い制が多いんだし。こういう時は持ちつ持たれつよ」
「いや、負担するのはお店側で」
店主は気にする事なく大きな笑い声を響かせた。
「気にすんな!今日はたんと食べて!明日頑張ってもらわんとな!」
「感謝するぜおやっさん!」
「はぁ、遠慮はできませんよ」
一日中働きまわっていたせいか、強い空腹感に襲われた。
眠気と空腹感に押されて、何を食べているのか意識がないものの、板前の腕の良さだけはその味からしみじみと伝わってきた。
「なぁ皐月さんよ、あんたは何か不自由なことはないか」
「え、ええ」
「それはきっと、刀使の力に関する事だろう?」
「え、どうしてそれを」
「ねねがな、お前の背中にいる存在を感じたんだ。お前さんを殺さんほどの強烈な呪いが渦巻いている」
「呪い?」
「お前の代だけのものじゃない、呪いってのは血筋に乗って延々と続いていく。でも、御刀持ちってことは何か鍵を見つけたんだろ」
「鍵ですか、でもたった五分の写シでも兼光と銀糸の力があれば、私はそれ以上望むべくもありません」
「今がずっと続くと思うか?」
「それは」
「意地悪して悪いな、でも、これからのこと考えると、不思議でならないんだ。なぜ今になってお前さんは表に出てきたのか」
感慨深そうに見つめる薫に対して、困惑に拍車がかかった。
「益子さん、あなただけで完結しないでください!」
「ほら、しめ鯖だ」
薫の手で夜見の口に寿司が押し込まれ、それを不満そうに咀嚼しながら飲み込んだ。
「薫さん、あなた何なのですか」
「すぐにでもわかるさ、皐月夜見が使命を果たしたいと願えばな」
結局、一銭も払わないうちに寿司屋を出た。上機嫌な様子の薫とねね、不満そうな表情の夜見を加えた二人と一匹並んで本部施設の砂利道を歩いていく。
「ヘーイ!薫―っ、どこいっていたのですカー!」
金髪に日本人離れした豊かな体型の女性が大きく手を振っていた。
「おーうエレン、寿司屋行っていたんだ」
「学長が待っていますから、急いでくだサーイ」
「おばさんが?早いな、すぐに行くよ」
薫は夜見へと向き直った。
「じゃあな、次会う時は皐月が味方だとうれしいな」
「は、はい?」
薫はエレンの元へと駆け去っていった。
明日は多くの人々が待ちに待った御前試合予選会。そして、夜見たちの波乱の一年が始まろうとしていた。