キャラクリオタクのTS聖女キャラクリ計画   作:りりー

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1 神様転生

「突然ですが貴方は死にました」

「話は解りましたので、本題に入っても大丈夫ですよ」

「うわ、本当に話がはやい……んじゃ早速、死んでしまった貴方には転生してもらいたいのよ」

 

 どうやら死んでしまったらしい、そして転生することができるらしい。

 オタクなら一度は夢見るシチュエーション。いや、この場合見ているのは夢ではなく走馬灯かなにかだろうか。

 

「私達は貴方達の概念でいう神という存在なの。人々から信仰を得ることに依って存在してるのよ」

「こんな真っ黒な空間で神々しい光を帯びて出てきた人が神かガチャから排出された最高レアのキャラじゃなかったら驚きですよ」

「何を言ってるの?」

 

 凄くピカピカしている女の人だった、女神サマなんだろう。

 

「こほん、実はそんな私達神々の中で、最近世界の管理放棄というのが問題になっているわ」

「とてもパワーワードですけど、つまり赤子の育児放棄みたいなものってことですか?」

「概ねそんな感じです。貴方に転生してもらいたい世界も、その一つなの」

 

 なんとなく話が見えてきた。信仰を得ることが必要な神が管理を放棄すると、神は信仰を得られないんだろう。

 

「ボクに、放棄してしまった神様の代わりになってもらいたいということですか」

「そのとおり、貴方の暮らしている世界……地球の神様から、死んでしまった日本のオタクの魂を転生させれば話は早いと聞いていたんだけど、本当だったのね」

「まぁ、流行ってますからね、神様転生」

「実は現実でも流行ってるのよ。神様の代わりに信仰を集めるための転生」

 

 事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。

 

「ただ、一つだけ問題があるわ」

「と、いうと?」

()()()()()()()()()()()のよ。男性はどうやっても神様になって信仰を集めることはできないわ」

「つまり」

「……貴方には、女性になって転生してもらいます」

 

 TS転生だったかー。

 ううん、女性になるのはいささか抵抗があるな……

 

「もちろん、性別を変えることは貴方にとっても抵抗のある行為でしょうし、何より本来なら必要のない手間を頼んでいる以上、神々はバックアップを欠かさないわ」

 

 つまり、

 

「チート、といえば伝わるらしいんだけど、解る?」

「もちろんです」

 

 異世界TS転生チート付き、神様にチートの解説がしてもらえるのは、中々転生としては高待遇だと思う。

 

「じゃあ、簡単に説明するわね? 貴方には今回の転生に際して、スキルポイントというものを付与するの」

 

 ぽん、と女神サマがホワイトボードとマジックを取り出して、解説を始めた。

 転生する際に得られるチートは、スキルポイントによって得られるスキルだということだ。

 スキルには上位スキルと下位スキルがあり、ポイントを消費してこれを取得する。

 ポイントは500ptが初期ポイントとして配布される。スキル取得に必要なポイント数は上位スキルが200、下位スキルが50。

 

「あ、上位スキルの中には取っちゃいけないスキルもあるわ。ここで取得できるスキルは貴方が転生する世界で女神の加護って言われてて、この『魅了肢体』なんかは、取ったが最後男どもによってたかって……」

「……あの、一つ聞きたいんですけど」

「なにかしら」

「転生後の容姿って、決められないんですか?」

 

 話を聞いていて解った。ステータスにポイントを割り振れないけれど、これはいわゆるキャラクリだ。

 キャラクリエイト、そのキャラクターの容姿とステータス、スキルを決めること。

 ……ボクの大好物だ。

 

「ふふ、転生の際にそういうことを聞いてくる地球人は多いから、きちんとシステムを作ってあるのよ、じゃん」

「おお、すごい!」

 

 目の前にモニターが現れた。いわゆるステータスオープン、して出てくるモニター、すごい、本当に転生するんだ。

 そして早速いじってみた……けども、

 

「あのこれ、髪の長さが弄れないんですけど」

「え?」

 

 なんだその、それ必要ある? みたいな。オタクに対する不理解を感じる。

 

「髪の色もRGBで弄れないし、体型だってプリセット三つしかないじゃないですか、瞳の形も選べないし八重歯やアホ毛のオプションもない。あと何かしらポーズとってもらえませんか? 棒立ちだと細かい所の確認ができないんですけど。というかこれ前髪と後ろ髪別で選べないんですね髪型も完全にプリセットじゃないですかどうなってるんですこれ。あとUIがわかりにくい」

「……………………一言で」

「直接全部イジらせてください」

 

 ビシっと言ってやりましたよ。

 女神サマは顔を真っ赤にしているけれど。

 

「……かかるわよ」

「はい?」

()()()()()()()()()()()わよ。それでもいいの」

「もちろん」

 

 もちろん即答だ。女神サマはいよいよ堪忍袋の緒が切れたんだろう。

 

「好きにしろ!!」

 

 そう言ってモニターに手をかざすと、UIが変化した。

 やたらわかりにくかったUIが、凄くわかりやすく、髪の長さや体型をポイントを割り振ることで自由に変更できるスライダーまで完備、服装がデフォルトなのは向こうの世界で好きに着替えろってことだろう。

 よし、これなら満足行くまでキャラクリができそうだ!

 

 

 次の日、

 

「……あの、終わったかしら?」

「まだです」

 

 二日後、

 

「ねぇ、もうここに来て二日立ってるんだけど?」

「まだです!」

 

 五日後、

 

「さっさと終わらせなさいよおおおお! アンタが終わらせないとアタシ帰れないんだけど!?」

「目の前がどんどんキャンプ地になってて草」

 

 一週間後、

 

「お願いよ……もう終わらせてよ……アンタがそこまでこだわるのは解ったから……」

「寝っ転がって漫画読みながら言うセリフじゃないですよね?」

 

 十日後、

 

「お、お願い……あと一日だけでいいの、あと一日でイベント完走できるから……今日中に終わらせるから……」

「なんで終わらせないように頼まれてるんだろう……まぁまだディティールでこだわりたいからいいですけど……」

 

 なんてことがあった。

 どうやら女神様はボクの転生が終わるまでこの場から離れられないらしい。最初のうちは勤務態度真面目な女神様がなんとかボクを転生させようと頑張っていたけど、五日目あたりからこの状況なら好き勝手サボれるということに気が付き、最終的に目の前には立派なコテージが完成、女神様はゲーム三昧で時折ボクの進捗を確認してくるようになったのだ。

 その間ボクはといえば、ずっとキャラクリをしていたのだけど。

 

 苦節二週間、あまりにも強敵だったキャラクリエイトは、こうして完成の日の目をみた。原因はあまりにも自由度の高すぎるシステム。髪型も、体型も、顔つきも、イチから自分で決められるのだ。

 一つをずらせばバランスが悪くなる、遠くから見ると腕の長さが異常だったり、それがあらゆるところで発生するんだ、如何にキャラクリになれたボクでも、調整は難航した。

 

「というわけで、できたのがこれになります……」

「あと一日くらいサボってもよかったのに……どれどれ?」

 

 二週間くらいタメで離していたからか、女神様は随分口調がフランクになった。

 

「うわ、美少女。神様レベルで肉体も完成されてる。人体創造の観点で言えば、アンタの実力は神業級ね」

「ありがとうございます」

「それでスキルは…………あれ? なんで下位スキル二つしかないの?」

「え? だってそりゃあ――」

 

 俺は誇らしげに言う。神に認められたというのが、案外嬉しかった。

 

 

「残りは全部容姿にぶっこみましたから」

 

 

 〆て400pt、まぁ大分安上がりなんではなかろうか。

 

「……おバカ!」

「ほわい」

「何故じゃない! 当たり前でしょ、コストかかりすぎよ! こんなもん量産できるわけないでしょ!? アンタの趣味で会社運営してるわけじゃないのよ!」

「何言ってるんですか」

「…………わかんない」

 

 自分でもわからないらしい。何かに乗っ取られた?

 

「とにかく、お願いだから上位スキルを取ってよ……いくらなんでも400もポイント無駄にしてまともに戦えるわけないわよ……」

「いやです」

「せめて半分くらいに」

「いやです」

「下位スキル二つの分含めて200確保して、上位スキル一つ……」

「いやです。というか作り直しになるとまた二週間かかりますよ!」

「そうしてほしいから頼んでるんじゃない!!」

 

 本音が漏れた。

 

「ああもういいわよ! 好きにすれば!? アンタが死んだらまたこの場所で会うけど、その時は盛大にバカにしてやるんだから!」

「その時は使命を全て果たして、凱旋した時ですね」

「どこから来る自信なのよ! ……まぁいいわ、ほら」

 

 女神様が指をスカッとさせると門が出現する。パチンとやりたかったんだな……

 顔が真っ赤な女神様は、ボクに促した。

 気まずい沈黙を背に、ボクは門をくぐる。

 

「あっちの世界のことについては、わかりやすい冊子を用意してあるから、あっちについたら必ず読みなさいよ!」

 

 さて、ここまで随分かかってしまったけれど、ようやくボクのTS異世界転生チート物語が始まりだ。

 何が待っているのかという期待と、ボクの人生における最高傑作と言ってもいいキャラクリボディ、とまらないワクワクに背中を押されて、最初の一歩を踏み出した。

 

 

 =

 

 

 ――転生する地球人は曲者揃いだ。と地球の神から教えられていた女神は、それを思い知らされた上でようやく肩の荷が降りたことを自覚した。

 管理放棄した世界に地球人を送り出す事業をはじめて幾星霜、多くの神々が転生者を送り出してきたが、その成果は目覚ましかった。

 

 転生者というのは応用力の塊だ。チートを与えれば、それを思いも寄らない方法で活用して見せる。中には一体どこからそんな専門知識を学んだんだという転生者もいて、見ていて飽きないというのは先輩女神の言だ。

 とはいっても、自分はそんな風には思えなかった。転生していった彼がキャラクリオタクだったせいでろくにスキルも取ってもらえなかったこともそうだが、何よりあの世界は、管理放棄された世界の中でも特にひどい。

 

 地獄だ、と誰かがいった。

 

 女神の管理ミス、というよりも何者かの悪意に女神が誘導されたかのように、その世界は悪い方へ悪い方へと進んでしまった。

 そんな世界を――“彼女”が運営していたというのが今でも信じられない。

 女神がこの世界へ転生者を送り出す決意をしたのは、この世界の管理者が女神の親友だったからだ。そしてその親友は善良で、こんなミスをするようなタイプではなかった。

 真実が知りたい、消えてしまった親友がどこへ行ったのかを知りたい。その一心で志願して、転生者を送り出した。

 

 ――どうか、彼女を見つけ出して救ってほしい。

 

 あの風変わりなキャラクリオタクへ、女神はそう祈らざるをえないのだった。

 と、その時。

 

 ふと、女神は気付いてしまった。

 あの世界には上位スキル『魅了肢体』が存在する。それは言ってしまえば、200ptのスキルポイントを使用して、肉体を周囲の男性を魅了する肢体に作り変えるスキルだ。

 そして先程、彼は400ptのスキルを使って肉体を作り変えた。

 

 それって、魅了肢体の二倍の効果が肉体へ発揮されるということではないか?

 

「あ、あああ……あああああああああああ!?」

 

 叫んでも、もう遅い。彼は既に旅立ってしまった。

 

「待って待って待ってぇ!! 待ってええええええええええ!!」

 

 叫びは虚しく、真っ黒な世界に響く。

 ――キャラクリオタクを使ったTS聖女キャラクリ計画。それは最初の一歩から、女神の想定を超えた方向へと、動き出すのだった。




女神様はたまに出番があります。
主人公のTS後の容姿に関しては次回にまとめる感じになりました。
よろしくおねがいします。
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