術式が『百式観音』ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
宿儺がこちらを向く。
それと同時に身体中からどっと冷や汗が出てくる。
───殺気、か。
最悪、宿儺と戦って死ぬだろう。だがそれは最悪な場合の話だ。
どちらにせよ損害は避けられない。
───いやダメだ。思考をポジティブにしよう。もし宿儺を此処で止めたらボーナスが出るかもしれない。
───どうせなら、貰えるだけもらおう。
絶対にボーナスをむしり取ろう。その思いを胸に、名入は目の前の宿儺に向き直った。
───何だこいつは。何なんだこいつは。
宿儺は少し困惑していた。今目の前にいるこの術師の体には呪力が宿っていない。いや、正確には宿っているが普通と違って体外に放出していない。体外に放出する───早い話、体外に放出する事で、呪力は体に纏わりつく。するとある程度の防御力増加を見込む事ができる。
この男はそれをしていない。呪力の総てを体内に内包している。これでは攻撃にも転用出来ないし防御にすら使えない。
───ただの阿呆か。
そう思い術式を発動させるため呪力を流そうとする。
この間、僅か0.0001秒。
その間に百式観音が顕現。宿儺に2発程壱乃掌をマトモに喰らわせると、縮地で名入が接近。
先程の宿儺が考えた通り、呪力を体内に内包するだけでは攻撃にも防御にも転用する事は出来ない。
しかしあくまでも内包したままの場合である。
拳で殴る時、対象に物理的にその拳が接触する直前に呪力を体内から押し出せばどうなるだろうか。
少なくとも、黒閃は出やすくなるかもしれない。
黒閃は出なかったが、宿儺は殴り飛ばされ後ろに吹っ飛んでゆく。宿儺が困惑している間に名入はもう一度百式観音を呼び出した。
掌に呪力を纏わせない単純な打撃が宿儺を襲う。半ば反射行動で呪力による防御を始めたとはいえそれまでに数十発がマトモに入っている。
───ダメージは期待できるか?
僅か数秒の内に相当なダメージを負った宿儺はそれでも立っていた。そして驚愕していた。
「お前…名を何と言う」
「藤井名入」
「そうか…誇れ───お前はさっき殺した特級
───4匹?
一瞬聞き間違いかと思ったが、多分漏瑚辺りを祓ったんだろう。
「行くぞ」
すると宿儺が走って来ながら術式を発動した。
宿儺の術式は分からない事が多い。切断したりする術式かと思えば炎を出したりする。
だが切断に関してはある程度思う事があった。
あの切断───と言うより斬撃攻撃、あれは恐らく飛んでくるタイプだ。飛ばずにそのまま対象を切り裂いている様に見えるのは斬撃が早すぎるからでは無いだろうか。
半ば賭けに近かったが、その賭けに名入は勝った。
百式観音で宿儺の斬撃を防いだのだ。
だが宿儺本体との接近戦は自身の技量が問われる。誤魔化しようのない自身の技量だ。
宿儺が右拳で左脇にストレートを入れる。が、此方は姿勢を低くしていた宿儺の後頭部を呪力を込めて思いっきり殴りまくる。
すると宿儺は右足で名入を上空に蹴り飛ばした。
と同時に宿儺自身も跳び、近くのビルに名入を蹴り飛ばす。
ガラスが割れる音と同時に名入の背中に机がぶつかる。
いつの間に入って来たのか宿儺が名入を殴ろうと振りかぶる。
が、その振りかぶる腕を掴むと今度は逆に宿儺の側頭部を右から蹴り飛ばす。そのまま宿儺の腹を何度も殴る。さながらサンドバッグである。
が、宿儺は特級。逆に名入を蹴り飛ばし、体勢を整えた。
第二ラウンドは中盤に差し掛かっていた。