術式が『百式観音』ってマ? 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
如何せん文字数が少ないんですが、そこは許してください…(Japanese DOGEZA
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名入は走っている。休む暇もなくただ走り、見かけた呪詛師と呪霊を殺している。彼の胸中に渦巻くのは怒りでもなく、虚しさでもなく、ただの興奮であった。
殺し殺され死に死なせる。そんな空間の中にだけある果てしない闘争。そして無数の可能性。彼はその領域に片足を踏み入れていた。
胸中の興奮をそのままに、負の感情を更に練りだす。それはすなわち呪力を練りだすに等しい。練りだした呪力を拳にやり、呪いを殴り飛ばし、祓う。
そんなアルゴリズムの中、不意にある気配が名入りを襲った。
それは圧倒的強者のみが持つ他者への威圧。彼は本能的に己の本気をぶつけることのできる相手がいるのだと悟った。
「誰だ貴様」
「藤井名入―――お手合わせ願おうか」
呪いの王と天賦の才をもつ呪術師が、とうとうぶつかり合った。
初動は宿儺からだった。つまらんといった様子で小童を殺すように術式を放った彼は、刹那の間見えた観音によりはるか後方へと吹き飛ばされた。言わずもがな、名入の術式である。それをチャンスととらえた名入は即座に間合いを詰め始める。
一方吹き飛ばされた宿儺驚愕の表情を浮かべていた。
―――まだあんな術師がいるとはな。
―――殺してやる。
その殺意は憎しみのそれではなくただただ憧れや、尊敬といったその感情に類する殺意である。
たった一撃。されどその一撃は宿儺に衝撃を与え、名入に可能性を見せた。
そして二度彼らはぶつかる。両者ともに術式を使わぬ肉弾戦。宿儺の拳を左手で受け止め、顔面を右拳で幾度も殴打する。それに音を上げるでもなく宿儺は右脚で名入りを蹴り上げ、己も跳び上がり、更に腹へアッパーを繰り出す。
はるか上空へと殴り飛ばされた名入はここからどうしたものかと思案する。しかしその思案をかき消すように名入りの更に上空へと跳び上がった宿儺は数百年分の呪いを込めたパンチで名入の背中を殴打し、彼を地面へと叩きつけた。
薄れゆく意識の中、叩き落された名入は反転術式による治療を開始した。
上空から落ちてくる宿儺を確認し、名入はただただ素直な尊敬の気持ちを抱いた。およそ己の十数年と天賦の才では到底追いつくことのできぬ武。彼は己の上空から落下してくる呪いの王に尊敬のまなざしを向けると、合掌し祈りを始めた。
大地に着地した宿儺はただそれをまじまじと見つめて何をしているのかと思い、口に出す。
「何をしている」
「感謝だ。ただお前に勝つための祈りと、感謝だ」
最後に名入は告げた。
―――感謝するぜ、お前と出会えたこれまでの全てに!
直後、名入背後に金色の観音が現れた。
彼らの決闘はまだまだ始まったばかりである。