眼が覚めると大きい縄に手足を縛られ椅子と壁に固定された上にその部屋の壁一面に札を貼られた部屋に居た。
「まるで拉致監禁だな。あはは……拉致監禁じゃないですかやだー」
とまあふざけるのはこれくらいにしてまとめよう。私は確か日向ぼっこして寝ていたはずですからこれはその時に捕まったのでしょう。
……我ながら無防備過ぎですね。
「まあ、こんな拘束どうにでもなりますけどね」
とりあえず右手の拘束を
「メールでもしておこう。『拉致監禁された。すぐに帰るから心配しないで』っと」
メールを打ちながら全ての拘束を外すと扉に向かう。
「……警備は二人ですか」
影からバットを取り出す。流石に釘バットでは死にますからね。
「【影纏い・泡】」
影を操作して足に纏わせて泡の靴を作る。
「呪力の流れ的には……駄目だ。母さんよりは弱いくらいしか分からない」
因みに後に分かることだが二級呪術師だったらしい。
私は扉をバットで殴り飛ばし泡による加速によって呪術師二人をぶん殴る。
「……死んでないよね? 呪力でも泡でも強化してないし」
本来の武器ではない上に呪具でも無いから死なないよね? 呪力で常に体を守るくらいはしてるだろうし。
「てか、どうしよう。道が複雑だし人と絶対に鉢合わせるなー」
【天眼】を少し本気で発動させて確認する。まるで空間を切って繋げたような空間が広がっていた。
「そもそもこれは領域の中? ……面倒ですね」
どれ程強力な術式か技量を持った上で莫大な呪力を保有していなければ作り出せないような空間だ。下手に傷つければ暴発で巻き込まれて死ぬ可能性もあるしそうならなかったとしても父さんが言っていた。特級呪術師? と言う存在と会うわけにはいかない。父さんが死にかけたレベルなら私は五分もあれば殺されるだろうし。
そんなことを考えていると一つの扉からとんでもない気配を感じた。呪力の総量は私よりも少ないし父さんと比べればかなりの差になるだろうがそんなものではない。
私は全力で呪力を解放して影から本来の武器の刀を取り出す。
私の刀は父さんと私の鱗を素材にして打った特別な物。正しく妖刀と呼ぶべき代物だ。しかし、目の前の相手を見たら心細い物だった。
「あっれ~? あそこから抜け出したの? 凄いね君」
「……これ以上近づいたら切る」
私は納刀している鞘の中を泡で埋めつくし、あらゆる影から泡を生成して有利な戦場へと化す。
「へー。泡による相手の行動の阻害する上に自身の加速と身体能力が強化されるエリアの生成か。えげつないね~」
「……所見で見抜くのはおかしいですよ」
その男は目隠し銀髪男だった。今の会話の中に出てなかったですが鞘の中も感づかれているでしょう。ならばタネを明かす。
「私の泡は私の術式で構築されています」
「へぇ。そうなんだ」(術式の開示! だが、この場面で言う必要は無いよな?)
「私の術式は泡影術式。影から泡を発生させて操る。そして、その泡の特性を強化したり
感づいたのか男は構えを取る。
「例えば──当たった物の呪力を吸って爆発する効果とかね」
私は居合の構えを取る。
「【泡狐抜刀・飛梅】」
泡で加速した刀が宙を切る。これは近接技ではない。赤い水刃を飛ばす技だ。のせている泡の効果はさっきも言った通り呪力を吸って破裂する泡だ。狭い空間ならほぼ避けるのは無理だ。
しかし、この泡は破裂するときの威力に制限はない。つまりは呪力で全力で守ろうとしたら呪力が吸われて防御出来なくなるため致命傷になる。我ながらえげつない攻撃だ。見たところ目の前の相手は常に術式による防御(詳しい術式内容は分からないが)がされているが恐らくこの攻撃ならその防御を突破する。しかし、これなら呪力を肉体の内に仕舞えば良いだけだ。
だから更に追撃をする。
「【津波・緋】」
自身の影に全力で呪力を与えて瞬間的に泡の津波を発生させる。この泡の中なら私は最速の状態だ。この泡も先ほどと同じ効果がついているためとっさに呪力を練るのは躊躇うだろう。だから刀を持っている私に有利な近接による純粋な勝負へ持ち込み──と行きたいが今回はしない。こんな得体の知れない存在の相手をするほど馬鹿ではない。【津波・緋】の本当の目的は目眩ましだ。そのまま走りだし扉へ一直線に逃げる。
「やられたね。これは」
扉が閉まる瞬間そんな言葉を聞いた。
扉を潜り抜けると立派な日本旅館の外に出た。
「……どんな術式ならこんなこと出来るんですかね?」
愚痴をこぼしながら影から傀儡を取り出す。
その傀儡は人を乗せられるほど大きい竜の傀儡だった。素材は私の鱗だ。これで空を飛んで逃げる。本気で使えばかなりの速度だ。
「フゥ。流石に追ってはこれな──い?」
「いやいや、流石の僕も焦ったよー」
傀儡に乗ってあの場から十キロは離れたのに何でこの男は私の後ろに居るんだ?
「……人だよね?」
「人だよー」
「ご用件は?」
逃走を諦めて対話を求める。
「君、明日から僕の生徒ね?」
「……はい?」
監禁場所は天元の隠し部屋であり後の虎杖の監禁場所です。