霧雨魔理沙は泣く
「そろそろかな」
振り子時計で時間を確認し、魔導書をパタンと閉じる。
少し埃が舞って、咳をする。
「あぁー·······パチュリーのやつ、本は放置かよ·········」
少し出てきた涙を拭いながら、この本の所持者、パチュリーに文句を言う。
とは言っても私が勝手に持ってきたのだが。
そういえば、いつも勝手に持っていくから泥棒と言われるが心外だぜ。
私は死ぬまで『借りてる』だけなのに。
どうせ、あいつらは私が死んだ後も延々と生き続けるんだ。
これくらい大したことないぜ。
人に言ったら屁理屈と言われそうな弁解を心のなかで一通りして、椅子から立ち上がる。
「ん~··················」
少し動きにくいな。あ、ずっと座ってたせいか。
不意に出てきた欠伸を抑え、思い切り伸びをする。
ずっと椅子に座って魔導書を読みふけっていたせいで、少しなまったのかな?
そう思いながら、適当にストレッチ的なことをしてると、動きやすくなってきた。
実際はどうなのか知らないが、何となく全身に血やエネルギーが通っていく気がする。
いや、動きやすくなったのだからそうなのだろう。知らないが。
「あ、そうだ。宴会だった」
魔導書の埃や、なまった体のストレッチによって、
一時的に頭の片隅に追いやられていた椅子から立った行動原理を思い出し、箒を手に取る。
そして、笑顔で思い切り扉を開ける。
「·························」
扉を開け、室内から走って飛ぶという何の理由もなくしたかった行動ができない事に気づく。
きっと私の顔は露骨なまでに嫌な表情をしていただろう。
もし、表情に台詞をつけるなら、「うげぇ·········」みたいな。
「雨かよ··············」
外には細い、線のような雨。
所謂霧雨が降っていて、傘なしでは博麗神社につくまでにびしょ濡れになることは必然的だった。
しょうもないが何となく重要だった計画が頓挫し、
がっくりきた私は、ちゃんと電気を消し、傘を持って、ゆっくり扉を閉めて出発した。
「あー、ありゃ明日は大雨だな」
遠くに見える黒い色をした雨雲を見て、予想する。
当たる確率は半々といったところか。
今日は宴会だから、大量の酒を飲む。
そのせいで、明日は二日酔いによる頭痛と吐き気をテイクアウトとして帰るのは確実なので、
雨は降ってほしくないなぁ。
どうかどうか降らないでと祈っておいて、博麗神社に向けて箒を飛ばす。
~少女移動中~
「ふー、やっと着いたー」
少し飛ばして疲れた体を落ち着かせながら、境内に降り立つ。
あれ?と気づく。
裏の方から声が聞こえない。
いつもなら飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎで、こっちからでも余裕で声が聞こえるのに。
不思議に思いながら、裏手に回る。
そして、縁側が見える位置まで来て、異常に気づく。
「なんだよ············あれ」
私が見たのは、室内から力なく放り出された腕と、室内から流れ出る血。
そして、庭に広がる灰。
自らの中に焦燥や恐怖を感じ、いつもより聞こえる鼓動の音に耳を支配されながら、
ゆっくりと室内が見える位置に来る。
「え···········ぁ·······」
血、血、血、血、血、血、血、血。
神社のいつもなら霊夢が座っている。宴会の時なら皆が騒いでいるその部屋は、血で真っ赤に染まっていた。
血だけではない。傷だらけの皆の体が転がっている。
「おい!霊夢!霊夢!」
血塗れの部屋の中に転がる皆の体の中に霊夢を見つけ、駆け寄る。
霊夢の体は切り傷や擦り傷、打撲、骨折が見られ、左腕でがなかった。
最早生きているかどうかも怪しい霊夢に向かって、必死に名を呼ぶが、返事は返ってこない。
「嘘だろ?どうせ大掛かりな冗談だろ?どうせ「引っ掛かったわね馬鹿」とか言って私を笑うんだろ?」
生きていることを切に願いながら、霊夢に様々な言葉を投げ掛ける。
ついに言葉も出なくなって、霊夢の手を握り、その時手首に触れて気づく。
「脈が············ない」
少しでもあった希望が潰えたことを感じ、絶望の底に沈む。
心の中から光が失われる。
そして、私は他の皆の体の方に這いよる様にして、行く。
「おい、パチュリー。おい、射命丸。おい、咲夜。おい、早苗。おい、妖夢。おい、皆··········皆····」
皆の名を呼び、一人ずつ脈を確認していく。
しかし、脈があった者は、誰一人としていなかった。
私は、泣いた。
悲しみを感じ、孤独を感じ、泣いた。
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その日、私は沢山の友を失い、一つの目的を手に入れた。
-『復讐』という名の目的を手に入れた-
救われないストーリーです。多分。