「どうなってやがる···········」
私が寺に着く頃には、光や闇の魔力も見感じられない状態になっていて、
どういう状況かわからなくなっていた。
「·················クソ········!」
降り立ち周りを見渡すと、そこらに死体が転がっている。
皆、皆死んでいる。
魂の器である身体の中にはもう魂は入っていない。空の器だ。
悔しさに顔を歪ませる。
いつだって私は無力だ。誰一人守れてやしない。
「おーい!誰かいないのか!?」
聖を含む、生存者確認のために大きな声を出しながら歩き回る。
誰か一人でも、生きていれば救わなきゃいけないんだ。
「おっ」
私の声に返ってくる声が一つ。
ただ、その声はこの惨状にはあまりに不似合いで明るかった。
私の知っている声だ。
そう、奴だ。
「和霊鬼淵············!」
和霊鬼淵の声だ。
私が視線を奴に向けると、鬼淵はアハハと笑った。
「いつぞやの人間じゃないか。いや、今は魔法使いみたいだが」
「聖は」
「ん?」
「聖はどうした?」
「聖?あぁ、こいつかい?」
鬼淵はそう言うと、後ろから何かを持ち上げた。
「········ッ!」
聖の死体だった。
「また殺したのかよ········!?」
「仕方ないだろう?私の運命なんだ。こういうことをするのは」
ジト目でニヤリとしながら楽しそうに言うその姿は、
私から見たらもうそれは妖怪ですらなかった。それはまるで狂気だった。
「運命だと············?」
たじろぎながらも私は言う。
「あぁ、うん。······あんた、牛鬼がどういうものか知っているかい?」
「·············いや、知らない」
「そうかい、じゃあ教えてあげようか。あれはね、空想上の妖怪なんだ」
「なっ!?」
鬼淵が何でもないように言い放つその言葉はあまりにも矛盾していて、
普通な人間であった私には到底理解できなかった。
空想上の妖怪?ならこいつはなんだ?牛鬼?違う?いやでも嘘をつく理由もない。
色々な考えが頭の中をグルグルと回る。
「そう、私は存在しない妖怪さ。本来ならね」
「·········なら、何故お前はいる?」
「人の力さ」
「········は···?」
「人の想像力ってのはすごいもんでね。
妖怪への恐怖心が、畏怖の心が空想上の妖怪牛鬼を産み出した。
その妖怪の詳細はあまりにも緻密に作られていた。
そして、この世界には·········空想を、幻想を現実に変える者がいた。
名は、山ン本五郎左衛門。妖怪の頭領だった人間。そいつがこの世に私を産み出したのさ」
「·······な···········え?」
色々な情報が混ざって頭の中がぐちゃぐちゃになる。
どういうことだよ。
山ン本五郎左衛門?妖怪の頭領だった人間?想像を現実に変える能力?
訳がわからない。スケールがでかすぎる。
「私は人の考えの中の『妖怪』そのもの。世で最も妖怪らしい妖怪なのさ」
「訳わかんねぇよ···············」
「わかんなくてもいいさ。どうせ死ぬんだからさ」
当たり前のように発せられる私が死ぬという発言がさっきの話を私に確信させる。
あぁ、そうか。
確かにこいつは妖怪らしいな。
人を殺すなんて当たり前。傍若無人。横暴。邪悪。狂気。
そんな人のイメージそのものだ。
だからこそだ。
だからこそ私はこいつを消さなきゃならない。この世界から。幻想郷から。
「私はお前を倒すぜ···········」
「いいさ、殺ってみな。できるもんならね」
双方から殺気が発せられ、戦闘体勢に入る。
「おい、鬼淵。ここにいるのか?」
唐突にそんな空間に言葉が入ってきた。
鬼淵が振り向く。
聞き覚えが少しあるような声。だけど、聞き覚えのあるけどどこか違う声だ。
誰だ?
私は鬼淵が向いた方を見る。
「何をやって···········あ」
「ルーミアか···············?」
その姿はルーミアに似通っていた。
身長は伸び、髪も腰ほどある。頭の札もない。それに大人びた雰囲気を纏っている。
それでも、面影があるというかもうまんまで、どうみてもルーミアだった。
「霧雨魔理沙か··········」
「お前なんで·········?」
「何でも何もないだろう。私は私だからしている。それ以上でもそれ以下でもない。
それに詳しいことをお前が知ろうとも、死ぬのだから関係ない」
「お前も·········かよ·······」
唇を噛み締め、拳を強く握る。
「死んでたまるか······!私は生きるんだ··········!」
私は殺気を放ち、二人を睨み付ける。
「よく言ったわ魔理沙」
横槍を入れるように響く声。その声の正体すぐにわかった。
「フラン··········!?」
「えぇ、そうよ。フランドール·スカーレット。それが私よ」
「ついでに私もいます」
「美鈴まで···········」
唐突に現れた二人に戸惑いを隠せず、少し動揺する私を横目にフランは鬼淵達に言い放つ。
「紅魔館は報復しに来ました。これより貴方達と戦います」
「なっ!?」
「いいでしょう。私が相手になりましょう」
ルーミアが返事をする。鬼淵は喜んでいる。
戦う?そもそもこのフランのカリスマはなんだ?何があった?
あれ、私だけ取り残されてる?
【幻想の妖怪畏怖·終わり】
空想の妖怪牛鬼:和霊鬼淵の狂気
最後はギャグ。
なんだかんだで書きました。
もうこのまま突っ走って完結させようかななんて思ってます。
なんかモチベーションがヤバイんです。
何となく構成はできてるし、まだ一週間以上に渡る連続投稿は続くかも。