地底への穴へ入り、真下に落ちるように飛んでいく。
少しずつ光は無くなっていき、底につく頃には微かな光しか届いていなかった。
私は一つだけ空いている横穴へ入っていく。
「地底·········か········」
地底に来るのは久し振りだった。
いや、来たのは一度だけだ。お空の異変の時だけ。
いつもいつも霊夢が一番について、異変を解決するんだよなぁ。
私も咲夜も妖夢も早苗も、ずっとそれで異変を解決できなかった。
でも。
「もう解決できるのは私だけなんだよなぁ」
少し笑いながら呟く。
その声はあまりに小さくて、少しも洞窟の中に反響しなかった。
考えるのをやめ、黙々と進む。
少しそれが続くと、開けた明るい場所に着いた。
旧地獄。
それがここの名称だ。
嘗て地獄だった場所。今は地上に辟易した、もしくは追放された妖怪の集まる場所。
私はそんな旧地獄の街道を通り、地霊殿前に出る。
確か、地霊殿の裏だったな。
箒を握る手の力を強め、箒にブーストをかける。
ブーストにより、ジェットの炎の様に放出される星が地霊殿の周りを照らす。
「···············見えた」
地霊殿を越えると、灼熱地獄は直ぐに視界に入ってきた。
そのまま、傍まで近寄る。
熱い。
焼けてしまいそうなほどに熱い。あまりの熱さに顔から熱気を手で遮る。
それに眩しい。
太陽ほどではないが、限りなく太陽に近いそれは直視できないほどの光を放っていた。
少し距離をとり、座り込む。
さて、何時来るかな。
そう思っていると、声がかけられる。
「誰ー?」
「お空か··········」
私に声をかけたのは、前にここで異変を起こした霊烏路空だった。
「あっ、魔理沙だー」
「覚えててくれたのか」
少し驚く。
お空が覚えているなんて珍しいな。
「うん、魔理沙は私に優しくしてくれたからね」
「あぁ、そうか。ありがとな」
お空の方が優しいよ、なんていう気のきいたことは言えず、
ただただ、私は礼を言う。
「なんで魔理沙はここにいるの?」
「色々あるんだよ·····」
お空の明るさ、優しさに当てられて、少し復讐に後ろめたさを感じる。
だが、今さらやめられるかと、持ち直す。
お空とそんなやり取りをしていると、地霊殿の方からギィギィと音が聞こえた。
来たか。
「ありゃ、魔理沙じゃないか。どうしたんだい?」
「よ、お燐。ちょっとそいつらに会いに来たんだ」
「あぁ·············いいさ、止めやしない。道具でも取って復讐でもしようってんだろ?」
お燐にはお見通しだった。
私の考えていることは人に筒抜けだったのか。
「アハハ、全部お見通しってわけか·········」
「察しはつくさ。でも止める気はないよ。
今回のこの事件でのあんたの悲しみは私には到底計りきれないほどだからね。
きっとそれくらい神様も許してくれるよ」
「ありがとう、お燐」
「いいさいいさ。
それよりあんた、この中の死体、見れるかい?なんなら私が漁って取ろうか?」
その言葉を聞くなり、少し鼓動が早くなる。
拒否反応を示してしているのだ。
だが、そんな体の拒否を、私は心で拒む。
皆には、最後に会っておかないといけない。
「いや、いい。私が自分で探して取る。ありがとな」
「··········辛いだろうけど、頑張ってね」
「あぁ···············」
大きな荷台に山のように積まれたそれに被せられた布をゆっくりとめくる。
「ッ············!」
見るに耐えない死体が視界に入ってくる。
悲しみながらも、しっかりと死体を見る。
あぁ、妖夢の死体だ。
楼観剣と白楼剣、貰ってくな。
妖夢の腰に携えられた二振りの刀を取る。
じゃあな、妖夢。いつかあの世で会おうぜ。
私は順番に皆に別れを告げながら、それぞれの道具を取って行く。
咲夜からは懐中時計を。射命丸からは芭蕉扇を。
パチュリーからは魔導書を。青娥から鑿を。
その一つ一つを取るごとに私の心は痛み、悲しくなっていく。
そして、
「霊夢·············」
血で一部が濡れた、霊夢の顔を眺める。
「あんなにお気楽だったお前が死んじまったな·············」
私は涙を流し、涙は霊夢の顔にこぼれ落ちる。
その涙を拭い、お払い棒を手に取る。
「じゃ、これ·········貰ってくな。いつか会おうな、霊夢···········」
別れを告げ、布を下ろす。
「ありがとな、お燐」
「うん、頑張りなよ。死なないようにね。霊夢が負けたんだ、相当強いよ」
「あぁ、死んでたまるものかよ。私は生きてやるんだぜ」
「ま、精々足掻きな」
「おう、じゃあな。お燐、お空。また会おうな」
「じゃねー」
「バイバイ魔理沙ー!」
二人に別れを告げ、私は箒に跨がり、飛ぶ。
後ろではまだ二人が手を振っていて、まだ皆が皆死んだわけじゃないと安心する。
そうだ。アリスも、お空もお燐も、生きてるんだ。
風のなか、私は胸の奥に少し希望を感じていた。
希望