三日月が地を照らす夜。
轟音が響き、点滅する光が月下に見える。
それが続き、おさまる。
その後に地の奥深くまで続く穴の横から空に向かって放たれる閃光一つ。
その光の線から放たれる光は星のように光り、周りを照らす。
が、その光は直ぐにプツンと途切れる。
プツンと途切れる後は、光も見えない音も聞こえない。
本来の静寂が包む闇夜が帰ってくる。
そんな夜の闇の中に私はいた。
私は地に顔を付け、鬼淵はそれを見下ろしている。
負けたのだ。それも圧倒的な差で。
鬼淵の闘い方は鬼のように理不尽で、天狗のように小細工を労するものだ。
それは天狗にすら弾幕でじゃないと勝てないであろう私に、
勝てる道理があるようなものではなく、あらゆる道具を使っても倒せなかった。
身体の中から何かが逆流してくるのを感じる。
「·············ガハッ!····なんだよこれ·········」
「血だね、あんたの」
「そんなことはわかってる···········!」
動揺している私に当たり前なことを言ってくる鬼淵を睨み付ける。
「アッハハハ、あんたは負けたのさ。私に」
私の睨みなど気にせず、笑いながら鬼淵は言う。
その表情は楽しげで、まるで自由に遊び終わった後の子供の様だった。
ふざけるな。
「さて、あんたをどうやって殺そうかねぇ?」
遊びだったってのかよ。
鬼淵の様子に、私に弱さに対して怒りがこみ上げてくる。
「·······あんた、凄い気迫だね。こりゃあ、化けるかもしれんなぁ··········」
私を見て、鬼淵は軽く笑みを浮かべる。
そして言葉を続ける。
「今日は見逃してやるよ。強くなってから来な。相手してやるからさ」
鬼淵は屈んで私に少し目線を合わせてそう言い残し、闇の中に消えていった。
「くっそ·············!なんで弱いんだよ私は·······なんで····なんで···········!」
悔しさを感じ、自らに怒りを感じ、私は起き上がる。
「強くなってやる···········!強くなってやる·······!そして、殺してやる······!」
私は月の下でそう誓っていた。
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「諸君、私は闘争が好きだ。諸君、私は闘争が好きだ!諸君!私は闘争が大好きだ」
暗い暗い洞穴の中に女性の声が響く。
その声は何処か狂気を孕んでいて、正常な者の心をおかしくそうだ。
「斬り合いが好きだ。殴り合いが好きだ。撃ち合いが好きだ。刺し合いが好きだ。
投げ合いが好きだ。潰し合いが好きだ。削り合いが好きだ。蹴り合いが好きだ。殺し合いが好きだ。
平原で、街道で、塹壕で、草原で、凍土で、砂漠で、湖上で、空中で、泥中で、湿原で。
この世界で行われるありとあらゆる闘争が大好きだ。
下端妖怪の軍団の行進が闇と共に人間共を喰らい尽くすのが好きだ。
空中高く放り投げられた人間が天狗や鎌鼬の風で切り裂かれバラバラになった時など心が踊る。
河童が操る火薬兵器が家を焼き尽くしていくのが好きだ。
悲鳴を挙げ、燃え盛る家の中から出てきた人間を裂いた時など、胸が好くような気持ちだった。
人間の巫女共に滅茶苦茶にされるのが好きだ。
一方的に殲滅する筈だった妖怪達が消されていくのは、とても悲しいものだ。
人間の数に押し潰されるのが好きだ。
能力保持者達に追い回され、地べたを這いずり回るのは屈辱の極みだ。
諸君、私は闘争を、地獄のような闘争を望んでいる。
諸君、私に味方する封印されし大妖怪諸君。君達は一体何を望んでいる?
更なる闘争を望むか?情け容赦のない、糞のような闘争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし、燦然世界の鴉を殺す。嵐のような闘争をのぞむか?」
女性の問いに対して、数人の影は少し沈黙し、その後言う。
「望む」
「望むさ」
「望むに決まってるじゃねぇか」
「望もう」
返事を聞き、少し間を置き、続ける。
「···········よろしい、ならばクリークだ。
我々は満身の力をこめて、今まさに降り下ろさんとする握り拳だ。
だが、この暗い闇の底で数百年もの間、堪え続けてきた我々にただの戦争では最早足りない。
大戦争を!一心不乱の大戦争を!
我らは僅かに数人、5人しかいない過去に敗北を期した封印妖に過ぎない。
だが、諸君は一騎当万の古強者だと私は信仰している。
ならば我らは、諸君と私とで総兵力5万の軍集団となる。
我々を忘却の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう。
髪の毛を掴んで引き摺り下ろし、眼を開けさせ思い出させよう。
連中に恐怖の味を思い出させてやる。連中に我々の力の恐ろしさを思い出させてやる。
天と地の狭間には、奴等の程度では考えもしない強さがあることを思い出させてやる。
5人の大妖怪の部隊で世界を燃やし尽くしてやる」
演説のような、最早演説の言葉を全て言い終え、『誰か』は笑みを浮かべる。
それを見るなり、他の4人も笑みを浮かべる。
「私は約束通り諸君を連れ帰ったぞ······あの懐かしの戦場へ、あの懐かしの闘争へ。
···········世滅各員に伝達する。長が命令である。
―――――――――――――――――――さぁ、諸君。地獄を作るぞ」
狂気
後半少佐。
演説使いやすいですが、長すぎたので削りました。
すみません。
ハッピーエンド思い付きましたが、実行するかはわかりません。