見た目は重巡、頭脳はパパラッチ、その名も青葉   作:蒙古襲来

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 「ん―あれ~?あの資料どこ行っちゃったかな~?」

 

 がさがさと机の中を漁ってみるが出てくるのはくしゃくしゃになった書類やインク切れを起こした数本のペンのみ。青葉の探しているものは見つからない。

 

 「あちゃー…もしかして失くしちゃった?」

  

 やってしまったかもという思いが頭を過る。辺りを見回してみるけれど、うーんやっぱ見あたらないなぁ。

 

 大量の紙と雑誌に床を埋め尽くされた私の作業部屋は少し歩くのにも一苦労だ。

 

 「痛っ!」コチン

 

 山積みにされた書籍を倒してさらに床を覆わないようにと下を向いてソロソロと歩いていたらおでこに痛みが走った。見ると天井からぶら下げられた一つの裸電球がゆらゆらと動いている。

 

 「…やっぱり掃除しなきゃかな」

 

 以前にも同じようなことを言った気がする。でもどうにも気が進まない。

 

 整理整頓しなければ…とは思うのだけれど、原稿を書いてからねとか取材に行ってからね等と何かと理由をつけては後回しにしてしまう。そして後回しにし続けた結果がこれだ。

 

 「あ、ちょ―――」ドタバタドンドン

 

 でも今回ばかりは本当に掃除しないとなぁ…。そんなことを思いながら一歩踏み出したら足元に積まれていた本の山を崩してしまった。なんてこった!

 

 「……………」チラッ

 

 うーんでもこれは相当に骨が折れるぞ…。紙類はともかくとして床に散乱しまくった雑誌の類をしまうところがない。ただでさえ狭い部屋をさらに狭くしている二つの本棚はもうすでに本でギュウギュウの状態だ。

 

 「…断捨離」ゴクリ

 

 不要な書籍は捨ててしまえ!なんて思い切りが良ければ苦労しませんよっ!

 

 せっかく買った本を床に放置している私が言えた口ではないけれど、やっぱりこういうものはなかなか捨てられない。たまに読み返したくなったりとかするし!

 

 「…応急処置ですよこれは」ガサガサ

 

 とりあえず足元にある数冊を手に取って机の上へと移す。これを何度か繰り返すこと数十分、少し床が歩きやすくなったような…。代わりに机の上は積み上げられた本でいっぱいだけど…偉いよ私。

 

 あ、そういえば…!ちょっと整理整頓したことで終わった気になってたけど私が探しているあの資料はまだ見つかってないじゃないか!

 

 ふおぉぉぉっ!今の数十分があれば見つけられてたんじゃないか!?

 

 「はぁー、もういいや今日は。明日探そう」

 

 人の秘密を探すのは好きだけど…こういう探し物はもう今日はうんざりだ!明日だ明日!明日やろう!

 

 「…さてと」ヨッコラセ

 

 とは言っても今日はまだ始まったばかりだ。壁に掛けられた丸時計を見ると時刻は午前九時をまわったくらいを指していた。

 

 さてさてじゃあさっそく…!昨晩回収しておいた意見箱の中身を見てみますか!今回はどんな依頼が入ってるのかな~

 

 あ、意見箱って言うのはいわゆる目安箱みたいなもんで…うちの鎮守府に所属する艦娘が誰でも匿名で悩みを紙に書いて投函出来るものなんです!それがまた出入りの激しい食堂に設置したこともあってか、毎回結構入ってましてねぇ!あ、ちなみに意見箱は私が廃材を使って作りました!青葉特製ですっ!

 

 「おほォ~今回も大量!大量!」

 

 例によって今回もたくさん入っている。その多くは取るに足りないものばかりだが、数件、むむっ!これは!?と思うものがあるのだ。それを青葉が依頼として引き受けて解決へと導く…随分と申し遅れたがそれが今の青葉のこの鎮守府での仕事なのだ!

 

 そもそもこの鎮守府は金剛さんとか神通さんとか怖いひ―――げふんげふん!強い人たちがたくさんいて深海棲艦たちをボコボコにしているみたいだから青葉が出撃するなんてことは滅多にない。

 

 「おっ!これはなかなかの事件ですね~!引き受けましょう!」

 

 でもただ飯食らいはなんか性に合わないし、それだったら私が得意な分野でみんなの役に立ちたいのだ。

 

 幸い司令官も青葉のすることを度が過ぎなければ容認してくれるみたいだった。まぁ、司令官絡みのお悩み…依頼って結構多いんだけれどね。

 

 というか今追っている依頼の一つも司令官絡みなんだよなぁ…。しかもなかなかにヘビーな…。

 

 まぁ、司令官なら笑って許してくれるでしょ!!

 

 「さーて後はこれとこれも…」

 

 …と、そんな感じでどの悩みを依頼として引き受けるか吟味しつつ、現在抱えている依頼をリストアップしていた時…

 

 「…………」

 

 普段ノックされることのない部屋の扉がコンコンと音を立てた。来客とは珍しい。鍵かけてないんでどうぞ~ 

 

 「失礼します!!」ドサッガッシャーン

 

 ちょっ!結構勢いよく扉を開けるね!?よく分からないけど開けた時の振動で机の上に積み上げたものが音を立てて崩れていくぅ!!

 

 「…朝潮型一番艦、朝潮!ただいま参りましたっ!」

 

 「あ、はい」

 

 朝潮と名乗った子は私を見つけるとシュババババと駆け寄って来た。そしてあまりに大きな声でしゃべるんでその声が室内に響いて頭がぐわんぐわんする…。おかげで素っ気ない返事をしてしまった。

 

 なかなかに強烈な子だけど…実を言うと彼女に会うのはこれが初めてではない。少なくとも私にとってはだけど…。朝潮ちゃんは最初に自己紹介をした辺り、私のことを知らないのかな。青葉、用事がない限りはここに籠ってますし!

 

 対して朝潮ちゃんはある意味有名人だ。司令官からの信頼も厚いみたいで彼の隣には必ずと言っていいくらいいるし、この元気さしかり、素直で真面目…うん、真面目。クソが付くほどの真面目…。うーん、でもここだけの話、朝潮ちゃんが真面目過ぎるっていう悩みを結構見かけるんだけどね。彼女と近しい子から相談を持ち掛けられたことも何回かあった。

 

 きっと悪い子ではない、悪い子ではないのだ。ちょっと元気が良すぎて真面目過ぎるがゆえに空回りしちゃうドジっ子ちゃんなのだっ!

 

 「さっそくですが何をしたらよいでしょうか!ご教授ください!」

 

 私がそんな失礼なことを考えているとは露知らず、彼女はビシッと敬礼を決めながらしゃべり始める。

 

 す、すごい…!鼓膜がキーンとする!そして目がキラキラ輝いてる!フンスフンスとやる気いっぱいだ!!

 

 というか…何をしたらいい?ご教授ください??

 

 ん?どゆこと?

 

 と、とりあえずここは…

 

 「な、なんかすごいけど…よろしくね?」

 

 「はいっ!!よろしくお願いします、青葉さんっ!」

 

 彼女に差し出した手が固く握られて上下にブンブンと振られる…結構激しいですねぇ!

 

 さてそれはそれとして…今更ながらなんで彼女がここへ? 

 

 「ああ、それはですね…!青葉さんは以前、司令官にお手伝いさんが欲しいとおっしゃっていたらしいですね!」

 

 お手伝いさん…?

 

 あ、そういえば冗談で助手が欲しいとかなんとか司令官に言ったような言ってないような…。

 

 「ですので!司令官からの命令でこの朝潮がお手伝いに来ましたっ!」ドンッ!

 

 oh… 

 

 「何をしたらいいですか!何でもしますっ!あ、まずはお掃除ですか?お掃除ですね!ここに落ちてる本全部縛ってゴミ捨て場に持っていけばいいですか?あ、それならヒモ要りますよね、ヒモっ!!ヒモありますか!なければ取ってきますっ!」

 

 司令官、あなたはなかなかとんでもないものを送り込んできましたね…。

 

 「とりあえず朝潮ちゃん…」

 

 「はいっ!!!」

 

 「落ち着きましょうか…」

 

 「はいっ!!!」

 

 ■ 

 

 「あー、朝潮ちゃんどこか座る?立ちぱなっしも疲れるでしょう?」

 

 「大丈夫です!お構いなくっ!!」フンフン

 

 「そ、そう…」

 

 朝潮ちゃんの来襲…じゃなくて来訪からしばらく経ったが、青葉は今もこうしてずっとソワソワしている彼女をどうやって取り扱ったらいいか考えに考えている。

 

 でも答えは一向に出そうにないですっ!ついでにその間も彼女は早く助手として働きたいようでウズウズしっぱなしですっ!

 

 とは言え、彼女に部屋の掃除なんて頼んでしまったら最後、青葉の城は何一つ残らないまっさらの状態になってしまうでしょう…。

 

 うーん、困ったなぁ…。あ、いつも青葉がおやつとして食べてる山本山の海苔食べます?

 

 「いただきますっ!!」パクッ

 

 あ、それは受け入れるんだね…。そうだよね~山本山美味しいもんね。それにしても…もきゅもきゅと食べる朝潮ちゃん、可愛いなぁ。青葉の写真家魂に火が点きそう…。

 

 あ、写真と言えば…!

 

 「あ、これって…」

 

 見ると彼女は壁に乱雑に貼られた写真、そのうちのいくつかを穴が開くほど見つめているようだった。

 

 「それ妹さんたちの写真ですよね?なかなかかわいく撮れましたよ!被写体がいいんでしょうね~」

 

 青葉の部屋の壁にはたくさんの写真が貼ってある。というのもここに初めて来た時、壁がコンクリートみたいで殺風景だったのが嫌だったので、近くの風景とかここに所属する子たちの写真を撮っては飾っていたのだ。おかげで今は大分壁はにぎやかである。もはや部屋中が絶賛にぎやかパレードなんだけどね。

 

 朝潮ちゃんはその中から姉妹艦が写ったものを見つけ、眺めていたのだ。

 

 「欲しいならあげましょうか?」

 

 「い、いえっ!」

 

 彼女はそう言うと慌てたように写真から顔をそむけてしまった。熱心に見てるから欲しいのかなって思ったんだけど…余計なお節介だったかな? 

 

 「あ、あの…私は何を?」

 

 あ、忘れてた…。そろそろいい加減彼女に仕事を与えないとっ!さもなくば青葉の城が…!! 

 

 あっ…!そうだ!

 

 「朝潮ちゃん、よかったらこれ手伝ってくれない?」 

 

 「?」

  

 …私が差し出したのは引き受けた依頼をリストアップしておいたもの。そうだ、最初から彼女と一緒に依頼をこなしてしまえばよかったんだ!

 

 「これは…?」

 

 朝潮ちゃんは首をかしげる。そして私の差し出した紙を受け取ると書かれた文字を目で追っているようだったが、それでもチンプンカンプンなようだった。

 

 ふふ、それは致し方ないだろう…。 

 

 なにせリストアップされた内容というのが… 

 

 『飼い猫を探してほしいのにゃ!もうどこ行っちゃったか分からなくて夜も眠れないのにゃ!助けてにゃ!一緒に探してにゃ!ちなみに私は猫じゃ……』

 

 『テートクに不貞疑惑がありマース!ワタシという者がありながら…いかがわしいお店に通っているようデース!!ふぁっきん!場合によっては沈めマース!絶対にユルサ……』

 

 『最近、鎮守府の物がよく失くなるようです。しっかり管理していたはずなのに失くなったケースがあとを絶ちません。特に外に置いていたものが……』

 

 『私たちの鬼教官の弱みを知りたい。お願い助けて。前に一回遅刻してるからもう次はない。でも私、次も遅刻しそうな気がする…なんかそんな気がしてなら……』

 

 『艦娘ってその名の通り女の子しかいないよね?でも…多分周りの子は気が付いていないと思うけど、その、モッコリしてる子がいるんだ。あれは見間違い?いや……』

 

 『手のひらにも収まるような超小型の拳銃を作れだなんて無理な話ですよ~。私は青ダヌキじゃないんですからね?でもまあ作りますよ、頼まれちゃったし!あーどうする……』

 

 ね?なかなかにカオスでしょう?

 

 「よ、よくわかりませんが頑張りますっ!!」

 

 うん、その意気は良しっ!これくらいのカオスには同じくらいの熱量ぶつけんだよっ!

 

 …と、こうして私青葉と朝潮ちゃんの長い一日が幕を開けるのでした。

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