異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う   作:フラッシュファントム

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今回は学年対抗戦です。


学年対抗戦、開幕!!

  一夏に軽くあしらわれ、アリーナを去ったラウラは千冬に教官としてドイツに戻って欲しいと懇願していた。

 

「何故ですか! 何故こんな所で教師など!!」

「何度も言わせるな! 私には私の役目がある、それだけだ」

 

 ラウラは千冬にそう声を荒立てて叫ぶ。幸いにも人気の無い場所なので誰にも聴かれる事はない。

 

「こんな極東の地で何の役目があるというのですか。お願いです教官、我がドイツで再びご指導を……ここではあなたの能力を半分も生かせません!」

 

 続けて彼女はこの学園に関する不満を述べて千冬が本来する指導とは程遠い事を指摘。

 

「そもそもここの生徒など教官が教えるにたる人間ではありません! 意識や危機感にとても疎く、ISをファッションか何かと勘違いしています!そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなど……!?」

「そこまでにしておけよ…小娘!」

 

 その果てに他の生徒達すらも侮辱するような言葉を続けようとするも千冬の威圧的な態度に遮られた。

 

「少し見ない間に相当偉くなったな。15歳でもう選ばれし者を気取るとは……。私は忙しい、さっさと寮に戻れ」

 

 これ以上何も言い返せなかったラウラは已む無くその場から立ち去った。それを魔界で事の一部始終を観ていたアウルートが子供が思い付いた悪戯を試すように呟く。

 

「フフフッ、あの教官の心酔する姿……。お前の感情を進化の秘法で増大させる。ありがたく思うのだな」

 

 彼はラウラが使うISに魔界越しで未完成ながらも進化の秘法を密かに導入した。これは特殊な術式で形成されており現代の科学技術では決して発見不可能な代物だ。これが彼女の人生を大きく狂わせる事になる……。

 その日の夜、シャルロットは寮の屋上で魔界にいるアウルートからラウラのISに特殊なシステムが搭載された事を知る。アウルートはそれをこちらが送るシステムで強制的に上書きさせ、一夏と戦わせるように指示を出した。

 

『観客についてはお前が怪しまれないようにするために避難勧告と誘導をしろ。あいつの邪魔をさせないためにもな。それにあのシステムを作動すればこの世界の電子機器に障害が起きることを予め伝える。以上だ』

「分かりました。それでは失礼します」

 

 

 

 

  あの騒動から数日後、学年対抗戦が開幕。本来は二人一組で出場するが一夏は過去の戦績を省みて単独での出場が決定された。一回戦目の対戦相手は単独の彼、ラウラと箒の二人一組のチームで過去の戦いで複数の敵と戦っていた一夏にとっては殆ど苦戦しない二人と言えるだろう。

 

「さて、学年対抗戦が開幕だ。気合い入れて戦うぞ!」

 

 彼は気合いの言葉を発してアリーナに飛び出し、華麗に着陸。そこにラウラと箒が待ち構えておりどちらも鋭い視線で睨み付けていた。

 

「織斑一夏、決着を付けてやる……!」

「一夏……お前の軟弱な精神、この場で叩き直す!」

 

 二人は一夏に宣戦布告をするがそれを無視、片手剣と盾を装備して戦闘態勢に入る。その態度に怒りを露にした二人は開始と同時に突進してくるが涼しい顔をしていた。

 

「最初はアンタだな、篠ノ之」

「なっ……!?」

 

 鋭い目付きに変わった彼は両手に持った武器を箒に投げ付けて視界を遮り、怯ませた隙をついて右正拳突きを鳩尾に叩き込んで大ダメージを与える。その圧倒的な威力と衝撃で肺の空気が全身から抜け、呼吸困難になった彼女に一夏は容赦なく左回し蹴り、連続で拳を撃ち込む特技【爆裂拳】を全て直撃させた。

 

「かはぁっ……!?」

 

 反撃をしようとする彼女に隙を与えずに味方のラウラに狙いを定め、彼は箒に右飛び蹴りを撃ち込んで吹き飛ばす。そのまま彼女はラウラの所へまっ逆さまに落ちる前にレールカノンで撃ち落とされ、打鉄のシールドエネルギーが尽きて戦闘不能になった。

 

「後はお前だ。ラウラ・ボーデヴィッヒ……」

「貴様が素手であの雑魚を倒すとは……。だが私にはその攻撃は通用しない事を教えてやる!」

 

 最後の相手に標的を定める一夏の動きに彼女はその手腕を高く評価するがその程度では通用しないと宣言して攻撃を開始。一夏に素手で圧倒され、味方のラウラにレールカノンで撃ち落とされた箒はその場で歯痒い表情で見つめていた。

 

(くそっ、私にも強い力があれば……)

 

 強い力を心の中で求める彼女を余所に二人は激しい戦いを繰り広げている。一夏は赤く染まった刃を持った新たな武器【炎のブーメラン】を取り出してラウラに投げ付けた。

 

「無駄だ!」

 

 彼女はそう叫ぶと共に右腕を突き出すとブーメランの動きが停止する。その直後、背後から刃が突き刺さる感覚が生じると停止した炎のブーメランが再び動き彼女の纏ったISを深く切り裂いた。

 

「俺が炎のブーメランだけを使うと思っていたのか?」

 

 実は炎のブーメランを投げた後に死角で刃のブーメランを投擲、それに乱された彼女は二つのブーメランで両腕のプラズマ手刀を粉砕。レールカノンも装甲を切り裂く過程で銃身を壊して使用不可にした。

 

「これでアンタが使える武器はワイヤーブレードと素手だけだな」

「調子にのるな!」

 

 ラウラは我武者羅にワイヤーブレードを射出するが一夏は両手剣を召喚、ワイヤーを断ち切っていく。その動きはとても優雅で芸術と思わせる程の美しい太刀筋と言える。

 

「そんな……!?」

「ご自慢の停止結界は炎のブーメランで故障しているから使用不可。もうお前に勝ち目はない……降参するなら今の内だ」

 

 全てのワイヤーブレードを斬られた彼女は唖然としているが彼は最終警告である降伏を告げた。先ほどからラウラのISから感じる邪悪な気配を察知しており武器を敢えて破壊、無力化するように攻撃をしていたのだ。

 

「ふざけるな……。この私が負けるなどあってはならん!」

「……そうか。ならこれで終わりだ!」

 

 尚も降伏しないラウラを前に一夏はトドメの一撃を決めるべく自身が持っていた両手剣を投げ付けて再び視界を遮る。彼女は投げ付けられた両手剣を躱すも懐に彼がいて渾身の力を込めた右正拳突きを鳩尾に叩き込まれた。

 

「ぐはぁっ……!?」

 

 この一撃を急所に受けたラウラは意識が薄れていく前に謎の声が届く。

 

【汝、比類なき最強の力を求めるか?】

(最強の力だと……?)

 

 ラウラはその言葉の意味に疑問を抱くがそれを無視して声の主は語りかける。

 

【汝が求める力を……手にする資格あり。このまま敗北するか最強の力を手にするか……選べ】

(最強の力……。私はその力を手にする!!)

【汝の願いを確認……!?】

 

 彼女の願いを聞き入れた声の主だったがその直後、何者かの魔法陣により声が掻き消された。

 

『お前の願いを叶える。ただし……お前の命を代償にして最強の力を手にするが良い。進化の秘法システム、起動!』

「うわぁぁぁぁっーー!!」

 

 次に聞こえてきた声の主は卑劣な笑い声を上げながら進化の秘法という未知の言葉と共に起動。すると青い空に暗雲が立ち込め、紫色の靄が発生して視界を遮る。

 

「これは……どういう事だ?」

(実験が始まったのね)

 

 困惑する一夏に対してシャルロットは実験が開始した事を悟り、観客席にいた生徒達へ避難勧告を始めた。

 

「この場所にいては危険です。早く避難して下さい!」

 

 彼女の言葉に従った生徒達は一目散に逃走するが何故か一夏に退避命令は出さなかった。何故ならこのシステムが作動した時点であらゆる電子機器が使用不可になるからだ。

 彼女のISに紫電が走ると禍々しい邪気の籠った魔法陣のオーラが全身を包み込む。その姿は千冬が嘗てブリュンヒルデという称号を得た時に乗っていたIS【暮桜】を彷彿させる。

 それだけでなく暮桜の外部を覆うような形で魔物を思わせる禍々しい暗黒の鎧が付けられておりアリーナ全体を震わせる凄まじい咆哮を放ち、正面に佇む彼を威圧。その姿は大剣を携えた悪魔と言えるおぞましい姿だ。

 

「この気配……まさか、進化の秘法が仕込まれていたのか!?」

 

 一夏は通信機能を使おうと試みるも通信機能が電波障害により全く繋がらずに舌打ちする。大剣を携えた魔神はアリーナ全域を恐怖と混乱の雰囲気が支配していた。

 

「ここは俺一人でやるしか無いか……!」

 

 腹を括った一夏はそう呟いて漆黒の暮桜と対峙する。彼は果たしてこの強敵に勝てるのか……。




次回は進化の秘法を使った強敵との戦いです。
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