異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う   作:フラッシュファントム

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今回は林間学校の初日です。


束の間の休息と忍び寄る影

  林間学校が行われる前日の夜、箒は寮の屋上で携帯電話を操作してある番号に電話をかける。その番号は篠ノ之束の宛で自身が欲する専用機を求めるために電話したのだ。しかしその願いが己の身を滅ぼす事態を招くとは誰も知らずに……。

 林間学校当日、旅館に行くバスに乗った一夏はバスの一番前にある一人用の席に着いて考え事をしている。幸いにも彼に話しかけようとする人は誰もいないのでじっくりと考える時間はあるようだ。

 

(まいったな、俺の情報は筒抜けに対して敵勢力の情報が一向に掴めないのはかなり不味い。このままじゃ相手の思う壺だ……どうにか打開策を取らないとやられっぱなしだ)

 

 深刻な表情でそんなことを思案する彼を余所にバスに乗っている女子生徒たちはお喋りに興じる内にバスは目的地の旅館に到着した。旅館前で従業員への挨拶や諸注意を聴き、今日は自由時間という事で生徒たちは海水浴を楽しんでいる。

 その頃、一夏は人気のない浜辺で黙々と筋トレをこなしていた。海ではしゃぐのも悪くないと考えるも彼にとってはそんな悠長な事は言えるような気分ではないので無心となり鍛錬をしていく。それを遠目から見ていた生徒達は彼を誘える状況ではない事を察して離れた。

 それから時は流れ、夕食を摂る時間になるが一夏は相変わらず出された食事を一人で食べている。これは彼が同じ部屋で食べると苦情が出る事を危惧して別室で食事をしたいと自ら申し出た所、許可がされた。敵の行動が無い現在の状況に強烈な違和感を持つがその原因が全く分からない。

 

(何だ……この尋常じゃない胸騒ぎは)

 

 この予感が最悪な形で的中する事になる。それから彼は誰もいない大浴場へ入り、ゆっくりと一人で風呂に浸かる僅かな休息を過ごした。

 一方、千冬が宿泊する部屋に集まった箒と代表候補生達は神妙な顔つきとなっている。というのも彼はこの世界での記憶を全て失っており異世界で経験した記憶しか無いことを鈴音から告げられた。

 

「あいつは異常だ……私と過ごした記憶を全否定しただけでなく赤の他人としか見ていない。あの戦闘技術は計り知れない。二年近くも行方不明だったが年の差が釣り合わない。一体何があったんだ?」

「私は過去の一夏さんの事は知りません。名字から血縁関係にあるとは考えていますけど本人はそれを否定しています。それは実際の所はどうなのですか?」

 

 千冬の衝動に近い嘆きを聞いたセシリアは血縁関係について問う。織斑という名字は殆どみかけないので姉弟関係なのは確かであるが一夏の方が明らかに年上である事に関して違和感を持った。

 

「僕としては一夏の方が兄の立場に近いと思うよ。実際、訓練で彼の戦闘技術は遥かに上だから」

「私も一夏が専用機の件で謝罪、別の企業で組立ててくれる約束をしてくれたから優しい人だと思うよ」

「アタシも最初は戸惑ったけど本人はそう言っていたから気にしない事にしたわ。それにアタシとの関係をゼロからやり直すって当人から言われたからね」

 

 シャルロット、簪と鈴音はそれぞれが感じた事を述べた上で鈴音は彼との関係をゼロから積み上げると宣言。

 

「なっ、それはどういう事だ!?」

「あっちから言った事を素直に受け入れただけよ。一夏の幼馴染みを自称するならそれくらい当然よね」

 

 狼狽える箒に鈴音はドヤ顔で言い放つ。一触即発の空気になる前に何とかその場を制した千冬は今日は解散という形で強引にこの場を閉めた。

 

(一夏、幼馴染みの私を忘れたと言うなら強引にでも思い出さしてやる……。私の力で!)

 

 箒は心の中で誓うがそれは無意味で今の一夏を受け入れなければ永久に立ち止まっている事に気付かない。そんな彼女に忠告をする人は誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

  全員が寝静まった深夜、旅館のベランダでシャルロットは密かにアウルートへ現状と明日から始まる実習について報告していた。

 

『明日の実習で試作したマデュライト鉱石を太平洋で稼働テストする福音に植え付け、そのデータを取る。お前は指揮官の指示に従いながら戦闘データを取れ。くれぐれも怪しまれる様な真似はしないように……と言っても福音の変化については未知数だからそんなミスは無いと思うが』

「分かりました、アウルート様。これで失礼します」

 

 アウルートの指示を受けた彼女は通信を終え、眠りにつく。

 

 

 

 

  同時刻、魔界の研究施設で異なる方法を用いた魔術による進化の秘法に関する改良実験が行なわれる。今回の実験は邪悪な魔物の魂を凝縮したオーブを用いたISの強化という内容だ。その被験者として異世界で捕らえた代表候補生の一人で打鉄を纏っている。

 

「やっ……辞めて」

『さぁ、実験を始めようか』

 

 嫌がる代表候補生の静止を無視したアウルートは邪悪なオーブを強引にねじ込む。すると代表候補生は圧倒的な闇の力に吞み込まれて魔獣の姿に変貌。頭部に禍々しい一本角が生え、打鉄の装甲を打ち破った両腕は筋骨隆々とした物に変わり、両脚も同様だった。そして両肩に浮いていたシールドの形状は刺々しいものとなり新たな人造魔物が誕生する。

 

「グルァァァァッーー!!」

『ほほうっ、悪くない結果だ。盾魔機獣(シールドビースト)の戦闘力を測るとしよう』

 

 彼は次の実験として闘技場にキラーマシン改を三機呼び出して戦闘を開始。戦いの結果は盾魔機獣がキラーマシンを捕まえて強引に引きちぎって破壊。その破片を他の機体に投げつけて怯ませ、自身に浮かんでいる盾を怪力で動かしてあっという間に粉砕。残りの一機はその隙に剣や銃火器、レーザー攻撃をするも残った盾で全て防ぎ盾にある棘の反撃で機能を停止させた。

 

『良い結果だ。こいつは役に立つ』

 

 実験結果に満足したアウルートは転送魔法(バシルーラ)で盾魔機獣を狭間の空間へ飛ばし、この研究施設に侵入した外敵を排除する指令を出す。

 その頃、魔界の別にある研究所ではシャルロットがこれまで入手したISの戦闘データを元にデスマシーンの改修を進めていた。

 

『空を自在に飛べる戦闘マシン……。ISは元々、宇宙空間での活動を目的としていたが強度等を考えると兵器利用の価値はある。だが女性にしか使えないという致命的な問題がある』

 

 無人機の開発と製造を担当しているモーニングスターを携えた神官【マシンマスター】はISについての結論を出す。

 

『しかし……この欠点を改良した上で独自のコアを量産できれば兵器として最強となる!』

 

 コアの量産化する態勢を整えようと意気込む。そこに彼の部下から自らが設計した疑似コアを搭載した試作型のデスマシーンが完成したという報告が入る。

 

『ご苦労だった。これより、デスマシーン改の稼働テストをする!』

 

 マシンマスターの指示の元でデスマシーン改の動作テスト等を一通り行いその結果を確認、その不満を口にする。

 

『この稼働は改良の余地がある。実戦での投入はまだ先だな……』

 

 そう呟いた彼は今回の実験結果を元に改良に勤しむ事にした。




次は二日目ですが原作とは展開が大きく変化します。


  モンスター解説
・シールドビースト
 代表候補生が打鉄を装備した状態で邪悪なオーブと融合して生まれた魔物。見た目はシールドオーガに近いが浮遊している盾のおかげで手足が自由に使える。またその盾は全体が棘になっていて攻撃に反応、棘を突き出して反撃する事ができる。
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