異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
林間学校二日目……この日は各種装備の実習訓練と専用機持ちの一同は本国より送られてきたパッケージの試験が行われる事になっている。しかし一夏は専用機を製作した企業から特に試して欲しい物等が無いため他国の専用機持ちの手伝いをする事になった。
専用機持ちの面々が一般生徒とは違う場所で集まる中、何故か箒も一緒にいる事を彼は千冬に問いかける。
「織斑先生、専用機持ちの中に篠ノ之さんがここにいるのですか。彼女は一般生徒の方に行くべきだと思います」
「それは……」
彼の質問に千冬が答えようとした時、遠くから彼女の名前を叫びながら飛来。それを止める為に一夏はドラゴンテイルを取り出し、正体不明の人物に振り下ろして地面に容赦なく叩き落とした。
「織斑、流石にやりすぎだ」
「部外者が来るなら事前に報告してください……」
一夏がやった行動を目にした専用機持ち達は啞然とする。しかし何事もなかったかのように謎の人物は彼女達の所に着地、その人物はウサギの耳飾りが頭に付けた女性【篠ノ之束】だ。
「アンタは何者だ。少なくともここにいるべき人ではない事は確かと言えるが……」
「痛いよ、いっくん。手痛い再会だけどね。もしかして私の事、忘れたの?」
そんなやり取りをする光景を見た千冬は自己紹介をしろと促すも面倒だからと無視、妹の箒に挨拶をするがどことなく味気ない雰囲気だ。
「いきなりだけどいっくんが使っているISを見せてね~」
「分かりました。先に言っておきますが最初に使った白式は欠陥だらけで使えず、倉持に返却。他の企業かつ量産機をベースに自分の戦いに適した改造した事をご了承下さい」
彼女の頼みに一夏は忠告をして稼働データを確認するもこれと言った変化は見当たらない。そして千冬は束にここに来た理由を説明するように指示を出した。
「皆の衆、大空をご覧あれ~!」
空を見ると銀色の大きな菱形の物体が近くに落下、そこにあるのは箒が求めていた真紅のIS【紅椿】である。
その性能は現行のISを遥かに超え、展開装甲により機体の特性を自由自在に変えられる、謂わば第四世代に当たる代物で世界各国は漸く第三世代の開発に乗り出したばかりなので無理もない。
このことに他の生徒たちから不満の声が上がるも一夏は無言で眺めているだけで箒に何も言わなかった。寧ろこの性能を聞いた彼はこれから起きるであろう事態に最悪の場合を考える。
(第四世代……
そんな彼を他所に箒は紅椿の試運転をしており武器や機体性能に満足の笑みを浮かべる。彼女はどうだと謂わんばかりに一夏を見るが俯いており此方に全く関心していないと思い、鬱憤が溜まる。
(一夏、どうして私を見てくれないんだ……)
そんな時、山田先生が慌てた形相でこちらにやって来て、織斑先生にある事を告げる。
「非常事態によりテストは中止! 一般生徒達は自室で指示があるまで待機。織斑とオルコット、鳳とシャルロット、更識と篠ノ之は私について来い!」
(来るか……)
これが一夏が危惧していた最悪の事態になるとは誰も気付かなかった……。
学園に非常事態が通達される数分前、魔界越しに紅椿を見ていたアウルートは丁度良い実験台を見つけて機嫌が良い表情を見せる。
『第四世代……素晴らしい実験材料だ。小娘如きでは到底扱え切れないから私がそれを有効活用してあげよう』
その時、彼は福音を実験材料にしている事を思い出し、性能実験に紅椿の鹵獲を加える。その直前に束がハッキングをしようとしたがアウルートの魔術でそれが遮られ、一切の干渉が不可能になった。
『邪魔者は消した。試作マデュライト……送信! さぁ、最高の実験が始まる。愚かな人間達の阿鼻叫喚が聞えてきたぜぇ~』
彼は試作マデュライトを魔界からこの世界に魔法陣を介して転送。
「えっ、機体の制御が……!?」
『福音……今からお前に破滅を導く鐘を響かせる。光栄に思うが良い!』
「この声……一体何処から!?」
福音のテストパイロットに不気味な謎の声が聞こえると同時に魔法陣から放たれた稲妻が直撃! 白銀の機体が黒に染まり身体のあらゆる部分に黒金の紋様が生じて禍々しい姿に変貌。それは堕天使エルギオスを彷彿させる黒い翼が特徴のISに変わった。
『グギャァァァッーーー!!』
獰猛な獣を彷彿させる雄叫びを上げた福音は本能の赴くままに暴走を開始。手始めに自分が飛び立った軍用基地に無数の巨大な氷柱を生み出してぶつける
『ガギャァァッーーー!!』
福音……否、厄音は空を飛ぶ途中に見つけた密漁船に灼熱の帯状になった炎で攻撃する呪文【ベギラゴン】を放ち、たったの一撃で船を沈没させる。沈む船に僅かな生体反応を感知した厄音は口と思わしき部分から漆黒の炎を吐き、残った船員を跡形も無く焼却した。厄音は生体反応が消えた船を放置してそのまま飛行を続ける。その過程で海中にいる生物を無差別に殺害しながら移動した。
『念の為、偽装データが表示されるように細工をしておこう。動き出す奴らの為に備えておかないとな……』
アウルートはそう呟きながら偽装した福音のカタログスペックを敢えて表示、この情報を学園側に意図的に掴ませて紅椿を強奪する計画を企てる。衛星から写し出される映像は偽装した福音に変更した上で基地からの連絡であるという偽情報を送った。
アメリカ空軍とそのIS部隊は追撃を試みるが軍用ISとして作られた福音に追い付ける存在は無い。軍の衛星からその映像は記録されるが厄音から発せられる強烈な電波障害によりその情報は一切残らない。それを逆に活かして前述の偽装工作を施した。厄音の進路先に一夏達が宿泊している旅館に大きな危機が迫る。
次は厄音との戦いです。