異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
林間学校が終わり、学生にとっては鬼門の期末試験が終わり夏休みに入る。期末試験の終了を境に一年生の半数以上が他の学校に編入した事で例年の生徒数を大幅に下回っていた。
その理由は学年対抗戦でラウラが死亡、林間学校で箒が行方不明となり己の身に危機が迫ると思った一般生徒達がこの学園を抜けたからだ。特に一年一組の生徒の半数以上が他校に編入していた。
最も、IS学園という入学困難な学園に入学できる学力があるので他校の編入試験は容易に合格できると考えられる。故に試験で不合格は無いと思うので心配は無用だがIS学園にとってはかなり痛手だと言える。
夏季休暇の後に学園祭が控える中で他校の編入は生徒の数が減る事によりクラスで出す催し物の質が著しく低下するのでクラスの統合が避けられない。
一夏がIS学園に入学してから立て続けに行事が中止になった要因の裏で彼に原因があるのではと推測する生徒が大勢いた。その噂は既に当人に届いている。それらを全面的に認めた上で彼曰くこの学園を去るなら今の内であると忠告する程、肝が座った態度で示す。
そんな生徒を相手にした一夏は寮の自室で夏休みをこれからどう過ごすか考える。
「俺も学生扱いだから宿題は最初の一週間で片付けてから何をするか……。それが終わったら山奥で数週間、精神や肉体の修行をして更なる強化をしよう」
そう己に言い聞かせるように呟くと蜃気楼の杖で異空間を展開。この空間でIS学園で出された課題を宣言通りかけて全て終わらせた。現実時間と異空間は時間の流れが異なっているからこそできる荒業だ。
「一週間で課題は全て済ませた。今から山奥に行くとしよう」
夏休み期間を利用した一夏はIS学園を出入りできる唯一のモノレールに乗り込んで学園を出て人気の無い裏路地へ移動、ルーラを唱えて山奥へワープする。
「山奥に到着……この空気はとても懐かしい。一人旅の時以来だな」
彼は感慨深く思いながら呟くと鞄から白装束を取り出して着替えて一礼、修行の一つである滝行を始めた。強烈な水流が身体に染み渡るが心を無にしている彼にとっては然程問題は無いと言える。
(心を空にして己の内側に眠っている力に触れる……)
滝行をし始めてから数時間、一夏は内側に秘められていた力の一端を感じて己の精神を極限状態で研ぎ澄ましていく。その内、彼の脳裏にある言葉が過った。
(崇高な精神と品格を備え、同胞を尊敬……友愛と平和を守る。常に前向きに考え行動し、創造性と力強さを持つ。真実、公正、正義を守り、 試練や誘惑に立ち向かう。そして……常に自身の言動に責任を取る)
それらの言葉と共に彼の脳内に水の一雫が落ち、目を見開き自分に眠っていた力の一部に触れる事ができた。滝行を終えて着替えた一夏は道着を纏い無心で突きと蹴りを行った後に蜃気楼の杖の空間で自身が仮想敵用に製作したプロトキラーで組手に取り組む。
「ふっ、はぁっ、てぁっ!」
プロトキラーが振り下ろす棘つき棍棒を左腕で受け流した彼は即座に右肘を胴体に撃ち込んで怯ませる。その攻撃に負けじと右手の斧で薙ぎ払うも一夏は右腕を振り上げて受け流し、左ストレートでプロトキラーの顔面に強烈な一撃を与えた。
「まだだ……。あと一押しで何か掴める気がするが何なのか……」
左拳を見つめていた彼はプロトキラーを鞄に仕舞い、異空間を閉じて滝行を始める。その中で目を瞑ると虚無の中に水の一雫が落ちると共に己の中に眠る力を自覚、右手刀で激しく流れ落ちる滝の流れ真っ二つに切断。
「これだ……。この境地だ!」
何かの力を掴んだ一夏は白装束から普段着に変えて学園に帰還した。彼に秘められた力とは何か……。
同時刻、移動ラボで束はあらゆる情報網を駆使して妹の箒の行方を探すも痕跡が一切掴めず焦っている中、福音の件を思い返す。
(私が作った第四世代機が第三世代機で軍用ISの福音を撃ち落とす計画を誰かに邪魔された。それだけじゃなくて紅椿と福音が奪われた。天災の私ですら記録を残せない奴の目的って……)
彼女は紅椿の性能を示すために福音を敢えて暴走させ、それを紅椿に乗る箒が仕留めるという自作自演の計画を建てる。しかしそれは謎の勢力の介入で台無しにされた挙げ句、紅椿と福音の二機が強奪されるというこれ迄に無い程の失態を晒した。
「チーちゃんやいっくんの話を聞く限りだと福音は魔物を彷彿させる姿に変貌、それに圧倒されたほーきちゃんがあっさり撃墜された。束さんはそんな事……認めない!」
自分の考えている事を否定した彼女は妹の行方を今日も探すが何も見つからない。その様子を密かに見ていた銀髪の少女は束が焦っている所を心配するが声を掛けられなかった。
その頃……魔界某所の研究所で鹵獲した紅椿と厄音の解析が先ほど終了、そのデータがアウルートの元に転送された。データを一通り見た彼は笑みを浮かべて呟く。
「第四世代……素晴らしい! 軍用の福音も然ることながら紅椿は真の力を発揮すればあの世界を掌握は夢じゃない」
世界征服を目論むアウルートは紅椿に秘められた革新的な機能を知って悠々としていた。展開装甲の技術が彼等の手に堕ちた時点で悪用されるのは明らかで自分達の力がこのような形で牙を向く時は近い。
一方、福音と紅椿のデータを得たマシンマスターも無人機の量産化に力を注いでおりその目処が見えていた。
「このデータのお陰でISの機動力を取り入れた新型デスマシーンが間も無く量産できる。完成した暁としてIS学園の行事に送るとしよう」
その様な陰謀を企んでいる彼の後ろに夏休みで帰還したシャルロットにIS学園の日程を確認すべく話し掛ける。
「マシンマスター様、二学期に学園祭が開催されます。この日に新型のデスマシーンを送り込むのは如何ですか?」
「そうですね。IS学園という場所で本格的に侵略活動する宣伝としては絶好のタイミング。異世界に潜伏している同胞達に知らせ、侵攻を公に伝達できる最高の祭りだ!」
彼女の案を聞いたマシンマスターは潜伏している同胞に本格的な侵攻を伝達する機会になるとその案を快諾。
「学園祭で宣戦布告をしてから僕は魔界に帰還、ここの防衛を強化しますが宜しいですか?」
「それで構わん。宣戦布告をするタイミングはアウルートの実験体が本格的に暴れ始めた時だ」
「分かりました。僕は祖国で夏季休暇を過ごしますのでこれで失礼します」
彼とのやり取りを済ませたシャルロットはその場を去った。
(織斑一夏……お前にとって最高の学園祭を私から捧げるとしよう!)
彼は邪悪な今後の方針について邪悪な笑みを浮かべながら想像するのだった。
感想、待っています。