異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
この作品の織斑一夏のイメージCVは鳥海浩輔です。
翌日……あの騒動により一夏はあっという間に政府の関係者により身元を拘束、留置所に閉じ込められた。
盗賊関係のスキルを活かして途中まで追跡を振り切っていたが位置情報という物を知らなかった事が仇になりあっという間に居場所を特定されたのだ。異世界の技術は速く習得して使いこなす必要があると彼は痛感した。
「この先、どうなるんだろうな? 不法入国で処罰されるなら未だしも男の操縦者と判明したから最悪、動物実験に駆り出されるかもしれない。そうなれば最悪の場合を考えて……」
留置所の部屋で一夏は最悪の事態を考えているとこの部屋に政府の関係者と思わしき人物が入って来た。
「織斑一夏、君の戸籍が発見された。ドイツで行方不明になったらしいが帰って来て早々、派手な事を起こしたようですね」
「ドイツか……。生憎、俺はこの世界で生きていた覚えは皆無だ。仮に俺が生きていた証明が出たとしても俺には一切記憶が無いと断言する。まぁ……俺の処罰が決定したという事なら早く伝えてくれ。実験動物になる覚悟位は出来ている」
政府の関係者は彼の戸籍が見つかった事を報告する。しかし記憶喪失の一夏は身に覚えが無いことを改めて断言し自身の処罰をどうするのか早く知りたいと応えた。
「君はこれから三年間、IS学園に通うことが通達される事が決まった。これはIS学園に通うから分厚い参考本を読んでおけ」
関係者がそう告げると同時に留置所の部屋から立ち去った。それから一夏は分厚い参考書のページを開いて読み始めるが見たことの無い文字がぎっしりと並んでいる事に気付いた。
しかし、彼は旅路をする中で未知の言語を理解する文字解読力を師匠の賢者から教わっていたのでそれをフル活用して読んでいった。
「成る程……ISの概念や理論は少し分かった。しかし、この世界でこんな代物を自由自在に扱える人間が果たしているのかどうか……?」
一夏はISの概念を少し理解した後、こんな大きな力を使って良いのかと疑問を抱いていると留置所の前に彼によく似た凛々しい表情をした女性が入ってきた。
「いっ……一夏、なのか……?」
「俺は織斑一夏だ。しかし、あんたの知っている織斑一夏では無いことは先に言っておく。仮に俺に関する痕跡があったとしても全く関係ないからその部分は勘違いしないようにすることだ。それで……IS学園の入学が決定したから何を通達するのか聞きたい所だ」
彼の姉【織斑千冬】の問いに一夏は他人事のように淡々と注意事項を語りつつ彼女がここに来た目的を尋ねた。
「留置所で暮らすのは流石に厳しいと判断した政府は、IS学園の入学に併せてお前専用の一人部屋を用意する事が決定した。今からIS学園に来てもらう」
「分かりました。手荷物はとても軽いので今すぐ出られますが宜しいですか?」
「……あぁ、私としても助かる。着いてきてくれ」
そのやり取りをした一夏と千冬は留置所を出る際に彼が所持していた鞄を持ちIS学園へ移動。その際に乗ったモノレールを見て一夏は驚きの表情を目にして呟く。
「成る程。この世界における移動手段は車や電車、新幹線や航空機だけでなくこんなに速く移動できるモノレールがあるとは……凄いな!」
「織斑、お前はどこの世界を旅していたんだ?」
彼が現代科学の発達に深く感心する所を見た彼女は問い掛けるもスルーされてしまった。IS学園の駅に到着した二人はこれから往復する寮に赴き、指定された一人部屋に案内される。
「ここがIS学園の一人部屋か……。あっちの世界じゃ頻繁に野宿をしていたのが懐かしく感じるな~」
「お前が住んでいた世界で野宿が普通だったと言うのは一体どういう事だ……?」
「織斑さん、失礼は承知の上で問います。もしかして貴女はこの学園の教師をしておりますか?」
そんな呟きに違和感を覚える千冬だったがそれを無視した一夏は彼女がこの学園で教師をしているか問い掛けた。
「その通りだ。私はこの学園で教師として働いている」
「ありがとうございます。織斑先生、何卒宜しくお願い致します。俺はISに関してはど素人なので貴女から多くの事を学べる事を楽しみにしています。残った作業は俺が片付けるので業務に戻っても大丈夫です」
千冬はその通りだと答えた。彼はその答えを知り、今後とも宜しくお願いして残りの作業は自分で片付ける事を宣言、業務に戻っても大丈夫である事を伝えた。
「あっ……あぁっ、私も片付けるべき仕事があるからこれで失礼する。勉強、しっかりしろよ」
彼女はそう告げて部屋を立ち去って仕事に戻る。足音が聞こえなくなった一夏は盗賊のスキルを発動、監視カメラや盗聴機が置かれている場所を感知してその場所にある機材とカメラを全て破壊した。
「俺を舐めない事だな、政府の飼い犬の連中共よ……」
彼は物腰が柔らかそうな表情から一変、殺意に満ちた真剣な表情に様変わりをして、自分を嗅ぎ付ける連中の罠を容赦なく破壊して睨む。
破壊し損ねた残りの盗聴機や監視カメラが無いかどうかを探り完全に破壊した事を判断、不思議な鞄から今までの冒険でお世話になったり、これから必要になる数々の道具を取り出した。
「さて、今のところ必要なものはこんな所だな。後は必要に応じての購入や監視カメラが無い所で道具を取り出すとする。その前に資金の調達をどうすべきか……」
必要なものを揃えた一夏はIS学園で必要になる参考書と並行して五科目や世界史等といった文献や教材を読み進めていく。そうして入学の時期が訪れ、彼は一年一組の教室の前で待機している。入学式に関しては大混乱が生じると考えて敢えて出席しなかった。
「さて、良くも悪くも有名人となった俺が入って来たら教室のみんながどう反応するのか気になる所だ。鬼が出るか蛇が出るか……」
後には引けぬと決意した一夏は教室に足を踏み入れ教壇前に立ち、自己紹介をする。
「織斑一夏です。年齢は25歳で趣味は冒険と読書、特技は武術と剣技です。この業界で不馴れな所は沢山ございますが精一杯付いていきますので宜しくお願いします。
それと織斑千冬の弟と認識されていますが俺はその様な記憶が一切無いことをこの場で示します。何卒、ご了承下さい」
彼が自己紹介を終えると共に深くお辞儀をする。一瞬の静寂にしくじったと思った時、クラス内で黄色の歓声が響くと共に千冬が入ってきた。
「騒がしくしていた元凶はお前か……」
「そうみたいですね。目の前に空いている席に座ります」
彼女にそう指摘され、最前列の空いている席に座り授業を受ける事になる。この時、二人から困惑と嫌悪感が漂う視線があることを一夏は察知している事に気付くもそれを敢えて無視するのであった。
最初の授業を終えた彼は参考書を読みながらこの先について考えている。
(IS……教員から本格的に教わるのは良いな。書籍に関する解釈が全く異なるから面白いと言えるが……。気になる所があるとすればいつからこの世界に魔物が出始めたのか)
魔物が何時から出没するようになったのか考えていると後ろから黒髪のポニーテールとつり目が特徴的な女性【篠ノ之箒】に声を掛けられた。
「ちょっといいか?」
「済まないが少し考え事をしているから後にしてくれないか。見た所、あんたにとっては言いたい事があるかもしれん。最初に言ったが俺は初対面で少なくとも文句を言われる筋合い等は無い。仮にあるなら昼休みか放課後に話をして貰えないか?」
そう語り終えると同時に授業開始のチャイムが鳴ったので已む無く彼女は席に戻った。それから授業が順調に進んでいき次の休憩時間になった時、金髪の長いロール髪のイギリス代表候補生【セシリア・オルコット】が声を掛けて来る。
「ちょっと宜しくて?」
「済まないが昼休憩か放課後にして貰えないか? こう見えても俺はISや他の勉学に関する事でかなり遅れているからな。見た感じあんたとは完全に初対面でお互い何かされた様な覚えは無いな」
高圧的な態度で接するオルコットに対して一夏は昼休みか放課後に出直して欲しいと頼んでかつ文句を謂われる覚えは無いと弁解した。その無礼な態度に憤慨するオルコットを前に彼は口を開いて更に話しを進める。
「あんたの事は知っている……イギリス代表候補生のセシリア・オルコット。だが初対面の相手に高圧的な態度で接するのは淑女として貴女の方が無礼だと俺は思うぞ」
一夏が彼女の態度に苦言を呈した時、授業のチャイムが教室に鳴り響いた。オルコットは席に戻る直前に捨て台詞を吐くがそれに反応せず授業が始まろうとする。
「授業を始める前に対抗戦に出るクラス代表を決める事になった。他にも生徒会の会議や委員会の出席などもする事となる。自薦・他薦は問わないが一度決まれば一年間変更は無い。誰かやりたい人はいるか?」
(クラス代表……言ってしまえばある種の雑用係となる。師匠の言葉を借りるなら何事も経験を重ねた上で自分の糧に昇華させてこそより高い領域に踏み込めると言えるな)
千冬は来月行われるクラス代表戦を決める為に自他薦問わずにクラス代表を努める人を募る。一夏は面倒だと少し考えるが師匠が仰っていた言葉を思い出し、これも経験の一つとして立候補しようかと考えていた。
「はい!私は織斑君を推薦します!」
「私も!」
図らずも彼の思惑通り、女子生徒の方々は一夏を次々と推薦する声が高まっていく。このまま一夏がクラス代表を勤める事が決まる前に彼はある人物を推薦した。
「俺はセシリア・オルコットを推薦する。理由はイギリスの代表候補生で確かな実力はある。それより……彼女が一方的にこちらを睨み付ける態度が気になるのではっきりと言ったらどうだ。アンタの視線から察するに俺がクラス代表に相応しくないと言いたそうだが合っているかな」
「……私の事を馬鹿にしていますの?」
一夏とオルコットの間で一触即発の空気が流れて気まずい状況になる。彼女は彼が推測した通り、自分こそがクラス代表に相応しいと思っており自分が推薦されると考えていた。しかし、実際は男性IS操縦者の彼が推薦されたのだ。
その事にご立腹のオルコットが何か言う前に千冬が一週間後、クラス代表を決める試合をすると宣言して何とかこの場を収めた。彼女はオルコットが怒りに任せて暴言を言うことを未然に防いだ。
「分かりました。一週間後の試合、全力で戦うので宜しくお願いします」
「良いですわ。もし負けたらあなたを私の小間使いにしますから覚えていなさい!!」
紳士的な余裕の態度で受け入れる彼に対し、ヒステリックな態度を晒した彼女は代表決定戦を受け入れて授業が再開されるのだった。
次はクラス代表決定戦の前に幼馴染みの道場でのやり取りと一週間で何をやるのかを見せます。