異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う   作:フラッシュファントム

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織斑千冬の憂鬱

  IS学園の職員室、千冬は書類作業をしており現在は一年生の編入学の手続き処理をしていた。その内容は報告書や編入学届の書類作成でその中である事を思い浮かべる。

 

(確かに今年は学園行事の度に事件が発生しているが……。まさか一年生の殆どが編入学を希望するとは予想外だ)

 

 彼女はIS学園で行われたこれまでのイベントで起きた事件を振り返る。クラス代表戦は襲来した四機の無人機によって中止、学年対抗戦はラウラのVTS発動と謎の突然変異により全試合を中止した後に彼女の死亡という末路。

 彼女の死亡を引き金に半数近い一年の生徒が他校に編入する手続きをはじめる。千冬は当初、それらの手続きを拒否しようとしたがその生徒達から事情を聞いた事で考えを改めて編入学を許可した。

 編入学を希望した生徒の殆どは殺人者がいる所に居たくないだけでなく殆ど事件の情報を開示しない学園に不信感を抱いたのだ。

 林間学校で箒が行方不明になった事が決定打となり生徒達の不信感が頂点に達し、一年生の殆どの生徒達が学園にこれ以上いると危険だと判断。殆どの生徒が他の学校に編入学して行った。

 仮に他の学校へ転校、人間関係が築けなかったとしても自分の命を失う事だけは避けたいと思ったのだ。それにより一年生数が当初よりも減って四クラスあった教室も二クラスで足り、二つの教室は誰もいない空き教室になってしまった。

 この件については山田先生も悲しそうな表情を浮かべるが情報を一切出そうとしない学園側の姿勢に大きな違和感があり、自分達も危険な目に合うと懸念して編入学をすると決めたのだ。

 ラウラが死亡した事に関しては書類上VTSの負担に身体が耐えきれなかったと記載されている。しかし千冬はそれだけで無くVTSが発動した直後、謎の魔法陣に覆われて禍々しい姿に彼女は変異していた事を覚えていた。

 それに関して一夏に尋ねても一切答えず黙秘を貫いていた事に不信感を抱く。時間を置いてその事を何度も尋ねても何も答えようとせず黙ったままだ。

 黒兎隊(シュヴァルツェア・ハーゼ)の副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフ大尉から隊長死亡に関する情報はVTSの負荷と謎のシステムによる過大な負荷で身体が塵一つ残らず消えたことしか分からない。

 更に林間学校での福音が襲来した際にアメリカから提供されたデータとは全く異なる黒く禍々しい姿の福音により紅椿が箒と共に強奪され、福音も何処かに消えた。

 

「あれから束の連絡も一切ない。どうしたものか……」

 

 あの事件を境に千冬は束に何度か連絡を試みるも全く応答が無い。彼女が最後に連絡を入れてから数日後、メールが届いて指定された河原に来た。そこに到着した千冬が目にしたものは空から大きな人参型の置物が目の前に落ちてきた。

 彼女はその中身を開けると白いガントレット(籠手)と置手紙が入っていた。籠手は白式というISの待機状態で本来であれば一夏が使う予定だった。しかし倉持技研が打鉄弐式の開発を強引に打ち切って開発させたという事もありそんなISに乗らないと日本政府へ直々に宣言。彼は最終的に量産機を自身の戦い方に適した物に乗ることでこの騒動は解決した。

 その話はIS業界に広まり倉持技研は信用できない企業という烙印を押されて取引先だった企業は他の所へ移り、全ての取引先から見放された倉持はあっけなく倒産。その時に束は白式を引き取って千冬の専用機として改修をしたものだ。

 彼女が記したとされる手紙の内容は箒の行方を追うために一切の連絡を絶つというもので置き土産として倒産した倉持から引き取った白式を受け取って欲しいとのことだった。

 

「束……すまない」

 

 河原に沈んでいく夕日を見送る千冬は束に懺悔の言葉を口にした後、学園に戻る。彼女は己の無力さを改めて痛感した。

 束から白式を受け取った数日後、書類作業を終わらせた千冬はコーヒーを飲んで一息つく。身体をまともに動かせていないと思った彼女はどうしようかと思った時にある事を思い出した。

 

「そう言えば織斑はどこに……」

 

 一夏の居場所が気になった千冬は調べると貸し切りのアリーナで特訓している事を思い出した。

 

「腕試しをしてみるか」

 

 彼女はそう呟くと白い籠手を見てからアリーナに赴いた。

 

 

 

 

  その頃、魔界の研究所ではISの機動性を付与したデスマシーンの稼働実験が行われていた。その実験はキラーマシン3とデスマシーンカスタムの模擬戦をするという内容だ。

 金色に輝くデスマシーンカスタムと両脚部にあるブースターで浮遊するキラーマシン3改による戦いは激しいものだった。デスマシーンの両手剣から真空波が放たれ、3の尻尾のローターから暴風を巻き起こして相殺。

 二振りの剣と両刃斧による激しい攻撃が眼前で繰り広げられていた。デスマシーンはその巨体に合わぬ身軽な動きで自由自在に空を舞い胸部に搭載されたバルカンで3にダメージを与える。

 3はそれに負けじと左腕に装備された短機関銃で炎を纏った弾丸を掃射。デスマシーンはそれに構わず突進、猛スピードで3にぶつかり壁に激突。3をそのまま壁の奥にめり込ませ、機能を停止させた。

 

「実験終了。3を上回る性能を見せるとは……素晴らしい!!」

 

 マシンマスターはこの結果に満足した笑みを浮かべてデータを改めて確認。これなら実戦でも運用できると判断を下した。

 

「このデータを元に貴方をより強い兵器にする事ができそうだ」

 

 彼が視線を移した先にあったのはドラゴンを思わせる赤い頭部と鋭い刃の様な翼と四つの足が特徴のロボット【ドラゴンマシン】の設計図がある。その実験体として紅椿と篠ノ之箒がその設計図に記されていたのだ。

 

「ドラゴンマシンの実験体として福音が捕らえたこの小娘を使いましょう……」

 

 マシンマスターは不気味な声を発してそう呟いた。




次は千冬が乗る白式と一夏が戦います。
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