異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
二学期が始まり、一組の教室は様変わりしていた。一年生の総数が半数以上に減少。四組あった教室は二組に統合され、専用機持ち達は一組に集まった。
今朝は体育館で全校集会があり、全学年が集まるが半数以上の一年生が他校に編入したのか少し体育館が広く感じた。生徒会長である更識楯無が挨拶と共に学園祭の開催に向けた準備や各種手続きをするように通達された。
余談だが各部活動ごとの催しごとを出し、それに対して生徒達が投票。上位組には部費に特別助成金が出る制度で楯無はそれに加えて一位の部に一夏を入れようと考えた。
しかし彼は一年生の大半が編入した元凶かつ人殺しや篠ノ之が消息不明の原因と疑われている人物がやってきて部の雰囲気を乱す可能性が高いと懸念して辞めたそうだ。
教室に戻った生徒達はクラスの催し物を何にするのか考える中で中々意見が出ない。というのも前述した事が要因で一夏を出し物に利用することを躊躇っているからだ。
「俺からの提案だが喫茶店というのはどうだろうか? それなりに料理はできるし客要りも悪くは無いと思う。駄目なら別の案を考える」
彼は喫茶店を開いて経費を回収しながら接客をするという内容だが他の生徒は首を縦に振らない。と言うのも一夏が提案した物の大半は悉く崩されておりその事を懸念する生徒一同はどうしても学園祭に彼を関わらせたくなかったからだ。
余興を経て一夏が提案した喫茶店とは異なるカフェをする事が決まった。彼は厨房で料理をすると申し出るも生徒達から断られ、学祭で怪しい人物がいないどうかを探す監視員を担当する事になる。
IS学園でこれ程までに生徒達から疎まれる印象を与えた一夏はそんな事を気にすることなく思案を重ねた。
(まぁ、こんな曰く付きの生徒が外で見回りか……。ある意味、都合が良くて助かる)
千冬はそんな光景を見て複雑な思いをする。自分の弟である一夏が学園でここまで疎まれてかつ生徒達から疫病神呼ばわりされているからだ。しかし当人は飄々とした態度をしていて彼の心境が全く読めない。
その日の放課後、アリーナで武器の素振りとスリンガーショットの射的訓練を行おう向かう途中で簪に試合を申し込まれた。理由は姉の楯無と互角に戦えていたからでその秘密を知りたいという事だ。
「分かりました。第三アリーナで試合をしましょう」
そう告げた一夏は一足先にアリーナの更衣室に赴いて着替え始めるが背後に何かの気配を察知して振り返るが誰もいない。
「気のせいか……。とはいえ誰かの検討はとっくに付いているが今は泳がせておこう」
そう呟いた彼はISスーツを纏ってピットに到着、そこでアサルトを装備してアリーナに飛び出す。一夏がアリーナに着いて少し経つと薄い水色っぽい灰色と黒のスマートな
「打鉄弐式……あの時はその性能を確かめられなかったが丁度良い。アンタの全力を俺に見せてくれ!」
「行くよ……!」
二人が戦闘態勢に入った時、誰もいない筈のアリーナに試合開始を告げるブザーが響くと共に戦いの幕が上がる。簪は先制攻撃と謂わんばかりに両側の腰に装着された二門の
「なんのっ!」
一夏はその場で
「きゃぁっ!?」
弾かれた春雷の一発をマトモに受けた彼女はよろけて隙を見せる。そのチャンスを一夏は逃すことなく剣から
「くぅっ……!」
「お前の力はこんなものじゃない。本気の力を見せてみろ!」
疾風突きが直撃した彼女は戦意を失いかけるが彼は簪が本気を出していない事を見抜いて叱咤激励を発した。本来なら戦場においてこんな悠長なことは出来ないが今は模擬戦だから出来ることだ。
「アンタ、無意識の内に本当の力を見せる事を拒んでいるように見える。アンタの事情を知るつもりは無い。己の心を無にして目の前にいる俺に全力で挑むことに尽くせ。勝ち負けなんて関係ない……俺はアンタと全力を尽くして戦う……それだけだ。自分を信じて来い!!」
「心を無に……」
一夏にそう指摘された簪は目を閉じて心の中を無にして自分の考えを空にしようとする。彼女は姉の楯無と比べられて劣等感を抱き、本気を出すことを気付かない内に押さえ付けていた。
しかしこの無意識が相対する彼に失礼だとこの戦いを通して判明。内に秘めた本気の思いをぶつける為に自分を信じて気持ちを入れ換え、目を大きく開き夢現を構える。
「はぁぁっーー!!」
「さっきよりも切れのある鋭い動き……それで良い。アンタの本気を俺に見せてみろ!」
簪は打鉄弐式のスピードを活かしてあっという間に一夏に接近。その勢いを利用して夢現を縦一閃に振り下ろして斬りかかるも彼が持っていた槍の太刀打ちで防がれた。
「それならっ……!」
彼女は夢現を防御された勢いを利用し、一夏の上に飛んで春雷を放った。彼は咄嗟に盾を構えて防ぐが隙を晒してしまう。
「貰った!」
簪は弐式の十八番である
「うぉぉぉっーーー!?」
ミサイルの大爆発に巻き込まれた彼の叫び声がアリーナに響き渡りド派手な濃い煙が発生。それを見た簪は勝負は決まったと確信した。
「やった……かな?」
彼女が一息ついた瞬間、灰色の煙から一夏が疾風の如く飛び出して連続で敵を斬る剣技【隼斬り】を叩き込む。
「きゃぁっ……!?」
突然の攻撃を喰らった簪は動揺していると正面に彼が姿を見せた。機体は罅が入ってボロボロだが辛うじて動かせるだけの余力はあった。
「ここまでやられるとは……参ったぜ。かまいたちでミサイルの半分を撃ち落としたが残ったミサイルの爆発でダメージを受けるとは……。アンタの本気、見せて貰った」
一夏は彼女の本気の戦いを見て満面の笑みを浮かべるとアサルトのエネルギーが底を付いてそのまま落下。簪は落下する彼をお姫様抱っこの要領で受け止めて地上に下ろす。
「手間をかけさせてしまって済まない。アンタの勝ちだ」
「私……お姉ちゃんと試合をする決心が付いた! 織斑くん、今日はありがとう」
「そうか……頑張れよ」
互いの健闘を称えた二人はアリーナから去るのだった。
一方、その試合を観ていた楯無は一夏が使っているISが彼の動きに付いていけずにシールドエネルギーを消費してその負荷を抑えている事に気付く。
「一夏くんのIS……やっぱり動きに追従できずに悲鳴を上げている。でもそれを隠している事に何の意味があるのかしら」
彼女の疑問は近い内に明かされる事になるがそれが大きな事件の引き金になるとは誰も思わなかった……。それから自室に戻った一夏はアサルトが自身の反応に追従できていない事に限界を察知する。
(やはりこの戦いだと短期決戦しかできない。だが、学祭の時が来たらその気に乗じて学園を去って魔界の研究所に行ける。その時が来るのは近い……!)
彼は来るべき時が近いと悟って異空間でのトレーニングに気合いを入れて取り組むのだった。
今回の試合で簪は勝利にしましたが実は一夏のISに著しい負荷がかかっておりシールドエネルギーで強引に軽減した末にエネルギー切れしました。
この世界の一夏はISを装備しない方が強いからです。