異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
学園祭当日、一夏は学園内に不審人物がいないどうかを確かめるべく見回りに駆り出される。彼は飄々として歩くが警戒心は最大限に高めていた。彼が所属しているクラスの催し物は喫茶店だが一夏は興味がないので一切立ち寄らず警備を続ける。無論、他のクラスも一組と同様に催し物を出しているがこれに全く反応を示すことなく校内の廊下を歩いた。
(疑惑のある生徒を参加させたくない為の措置と考えれば悪くない。これで俺の本当の力を発揮できるからな……)
暗いロッカー室に案内された一夏は目の前に女性から生じるどす黒い気配を感知、警戒心を最大まで高めていた。尚、彼はISを所持していないが拘束具となっているので丁度良いと判断したのだ。その道中、ふわりとしたロングヘヤーが似合う美人IS装備開発企業の営業担当と名乗る女性の巻紙礼子が声をかけてきた。
「ここでは目立ちますので人目が無い場所に案内して貰っても宜しいですか?」
「……わかりました。丁度こちらも手が空いていますのでご案内します」
巻紙の指示に従った一夏は奥にあるロッカー室に部屋に案内する。これが彼が仕掛けた罠という事に気付かずに悠々と女性は着いていった。
(こいつ……仕掛けて来たら一気に片付ける)
「すみません、織斑さん。実は織斑さんに折り入ってお願いがありまして」
彼に不気味な程そう言うと女性はさらに笑顔を浮かべて語ろうとした。その瞬間、一夏は鍔の部分に竜の意匠が施された日本刀を彷彿させる刀剣【竜神の剣】を居合い抜きの如く横薙ぎに振る。するとオータムの両脚がみる間もなく切断。身体が床に叩き落とされる直前に刀身に炎の魔力を込めた剣をVの字を描く要領で振り下ろし彼女の両腕を溶断、オータムの四肢を切り落として無力化した。
「ちょっと一夏くん!? 幾らなんでも両腕と両脚を斬るのは……」
「それならアイツは何で平然とした表情をしてるんだ……?」
楯無が何処からともなく姿を表し、一夏の行動に苦言を呈する。しかし彼は楯無に両脚と両腕が斬られたにも関わらず涼しい顔をしている理由を問う。脚が切断された傷口から禍々しい形状の黒い脚、両腕の傷口から筋骨隆々とした人間とはかけ離れた腕が生えて彼女は立ち上がった。
「私は進化の秘法で人間を辞めて大いなる力を得た。お前を倒すためにな!」
「うそっ……腕と足が再生した!?」
オータムはそう宣言すると常識ではあり得ない光景を目にする楯無は困惑。その隙を付いた彼女は爆発呪文【イオラ】を唱えて派手な爆破を生じさせ、二人をまとめて攻撃した。
「ハハハッ!この程度なら真の姿を見せるまでも……。なにっ!?」
彼女は勝ち誇るような笑い声を上げるもその爆発が自身に跳ね返ってダメージを受けた事に戸惑いを見せた。煙が晴れると一夏の前に
「その攻撃程度は想定済みだ。この雑魚を一瞬で倒す……!!」
「雑魚とは聞き捨てならねぇなぁっーー!」
彼は竜神の剣に魔力を込めて部屋が凍結する程の冷気を纏った氷の刃を生成して地面に突き刺す。極寒の冷気により彼女は本来の姿に変貌しようとするも異常な気温の低下で細胞の変化が著しく鈍くなった。
「くそっ……どうなってんだよ!?」
「さっ寒い……」
「一気に決める!」
一夏は極寒の冷気を纏った剣を振り上げて巨大な氷柱を走らせ、オータムの全身をそこに幽閉。彼は竜神の剣を氷柱に向けて縦一閃で振り下ろし、彼女ごと真っ二つに切断。オータムは断末魔を上げる前に肉体が粉々に砕け散った。
「一夏くん、どうして人を殺したの……!?」
「あいつは囮だったから速攻で排除した。……安心するのはまだ早い。こいつが陽動だとすると、まさか!?」
オータムの死を垣間見た楯無の動揺に構わず淡泊に語る一夏は次に起きる事態を想定していた。するとロッカー室越しにも響く爆発音が聞こえた。
「急ぐぞ。この学園が襲撃されている!」
「何ですって!?」
その言葉に驚いた彼女は急いで後を追うと学園が火の海に包まれる光景を目にする。それは複数のデスマシーンが出現、無差別に学園祭に訪れていた人達を殺戮するおぞましい光景だった。
「ついに来たか……。行くぞ!」
「えっ、ちょっと!?」
混乱する楯無を余所に一夏は魔物の群れに慌てることなく敢然と立ち向かう。彼女は慌てて彼の後を追い掛けようとしたが目の前に三機のデスマシーンが現れて行く手を塞がれた。
「何なのこいつら……」
『敵を排除する』
異常な事が立て続けに起きて混乱する楯無に対してデスマシーンは排除すべき敵を発見、攻撃を開始。迫りくる三機のデスマシーンを彼は刀身に雷を宿した必殺技の【稲妻斬り】で薙ぎ払ってデスマシーンを一気に無力化した。
「凄い……」
「安心するのはまだ早い……次がくる!」
一夏の圧倒的な実力を前に驚く楯無を余所に敵襲が続くと警告。その警告通り、二人の前に銀色のボディーを有するキラーマシン2に酷似した三機のロボット【キラーマジンガ】が立ち塞がった。
「私だってこいつらを倒すことができる!」
「よせ、こいつらは只の魔物じゃない。退けっ!」
楯無は一夏の忠告を無視して突貫。ラスティー・ネイルで薙ぎ払うもキラーマジンガのボディーに掠り傷を残すことすら出来ず、尻尾に搭載された弓型のビーム兵器【ビームボウガン】による三機の一斉攻撃を喰らいかけるも彼女は水のデコイを用いて紙一重の所で回避。しかしそれを先読みした二機のキラーマジンガは頭部からレーザーを照射、もう一機は彼女が避けた先に目掛けて弓矢の部分からビームマシンガンを放つ。
「きゃぁぁぁっーー!!」
キラーマジンガ達の連携攻撃をまともに喰らった彼女はシールドエネルギーが尽きて地面に不時着。それを見た三機は止めと謂わんばかりに弓矢を楯無に狙いを定める。
「させるかぁぁぁっーー!!」
一夏は地面を蹴って高く跳び、刀身に輝く虹色の剣を横薙ぎに一閃する必殺奥義【ギガスラッシュ】を彼女に止めを刺そうとする三機のキラーマジンガに叩き込んであっという間に魔物の群れを撃破。地面に着地した彼は先程の攻撃の余波で飛散したキラーマジンガの破片が頬を掠っており少し血が流れていた。
「一夏くん……ごめん」
「この程度の傷は大した事は無いです。それよりも生徒達や来賓客の避難誘導をお願いします。これ以上、俺に付いて行けば命を落とす事になるので」
「……そうさせてもらうわ」
謝罪する楯無に彼は避難誘導を任せ、頬の傷をベホイミで塞ぎ先に進む。道中で襲い掛かるキラーマシンやデビルアーマー、ゴーレムを竜神の剣とはぐれメタルの槍を使って倒していった先に衝撃的な光景を目にした。
大量のデスマシーンが逃げ遅れた生徒や観客達にベギラマや真空斬り等の呪文や特技で次々と葬っておりそれを阻止すべく飛び込もうとした。しかし、目の前にシャルロットが現れて行く手を阻まれて彼女に問い詰める。
「シャルロット……お前、裏切ったのか!?」
「僕に残された居場所を守る為こうするしか無いだよ……一夏!」
シャルロットは彼の問いに叫ぶかのように答え、右手に持ったアサルトライフルを発砲。銃口から大量の弾丸が火を噴くも一夏は真空波を放って相殺した所を見た彼女は驚愕した。
「一夏って本当に人間なの……?」
「俺達がいた世界ではこれが普通だ。シャル、お前……このままじゃ使い捨ての駒になるがそれでいいのか!?」
彼女の銃撃を苦も無く防いだ彼は使い捨ての道具になると警告。その瞬間、シャルの背後から飛来して来た機械仕掛けの赤い竜が両手で持っている二振りの大剣で首と胴体が切断された。物言わぬ死体と化した彼女の遺体を受け止めた一夏は殺害した存在に目を向けて歯軋りをする。
シャルロットを殺害した魔物は四脚歩行で浮遊する
「お前……こいつはアンタら仲間じゃなかったのか!?」
『マスターがISのデータを取り終えたから彼女等を排除。マスターの指示によりこの世界を支配すべく宣戦布告、同志達よ今こそ武器を持ってこの世界を掌握せよ! マスターからの指示で一度帰還する』
「待ちやがれ!」
ドラゴンマシンは彼女を殺した理由を語り、この世界を支配すると告げて異空間の穴を開いてそこに飛び込み叫ぶ一夏を無視して帰還。暫くすると襲撃していたデスマシーン達はドラゴンマシンが開いた物と同じ黒い穴を展開、その場から消え去った。
「くっ……」
静寂となった学園に佇む一夏は右手を強く握り締めてやり場のない悔しさを滲ませるしかなかった。この襲撃事件によってIS学園の生徒や教員の半数以上と学祭に来ていた殆どの客が死亡。辛うじて生き残った人達も何らかの怪我や後遺症が残っており学園史上、最悪の事件となるがこれから起きる事件の引き金でしかなく、刻一刻とその時が迫っていた。
余談だがイギリスと中国、日本の代表候補生やロシア代表の生徒や一部の教員(織斑千冬と山田先生)は命からがらも生き残る事ができた。
この話でシャルロットやダリル、フォルテ等の専用機持ちは退場しました。
理由は用済みとなった彼女達を生かす理由が無くなりドラゴンマシンのデータ収集の一環として戦って殺したからです。
単にそこまで表現するだけの力量が作者になかっただけですが……。
次は一夏が魔界の研究所に突入します。