異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
一週間後にクラス代表決定戦が決まった一夏は昼休みで食事を摂ろうと思った。だがこの世界で用いられている通貨が無いことに気付いてその場から立ち去り、学校内の庭にあるベンチで座っていた。
「しくじったな。この世界での通貨は円で
彼が所持していたお金はGでありこの世界では使えない代物だ。嘗て一夏は一人旅をしていた時に流通している紙幣がGとは異なる物で戸惑った経験があった。異界から来た事を悟られないようにすべく学園内の庭に来たのだ。
「まぁ良い。外出届けが出た時に旅で入手した貴金属類を売り出して当面の資金源としよう」
そう決めた彼は学校施設の把握も兼ねて周辺施設の散策を開始する。しかし彼の後を複数の女子生徒達がハイエナの如く追い掛けて来るが何とか振り切って一通りの施設を歩き回った。
「取り敢えずこんな所か。後は放課後に頻繁に使う設備を改めて調べるとしよう」
教室に戻り席に着くと同時に昼休みを終える予備鈴が鳴り生徒達が教室に戻って来ると彼に近付く。
「織斑くん、昼食を摂らなかったけど大丈夫なの?」
「心配は無用だ。俺は旅で三週間、水だけを飲んで生きていたから問題ない。それよりも次の授業の準備をした方が良いんじゃ無いのか?」
生徒の質問に一夏は飄々とした軽口で答え、次の授業の準備をする事を促して席に戻らせた。一人旅の中で彼は三週間、水だけ飲んで旅をしていた経験に基づいて軽く語るが心配する表情を生徒が何人かいるようだ。そんな事は関係なく一夏は授業開始と共に黙々と冊子に疑問に感じた事を書き記す。
初日の授業を全て終えた彼は荷物を纏めて教室を出ようとする。教室を出た直後、自称幼馴染と言い続ける箒が代表決定戦に備えるべく鍛え直すため道場に来いと言い出し、学園の敷地内にある道場へ赴いた。その光景を見ようと大勢の野次馬が集まっている。
「来たな、一夏。お前の腕が鈍っていないか確かめるぞ」
「俺はアンタに無理矢理、約束されて来ただけに過ぎない事を最初に言っておく。しかし……やるからには全力でいかせてもらう」
防具を装備した彼女と対峙する一夏は着替えることなく制服のままかつ素手の状態で構える。それを見た箒は怒りを露にするも彼の飄々とした態度で流されたまま試合を開始。彼女は去年、全国中学女子剣道全国大会で優勝した事がありその実力は確かだ。
「さぁ、お前の全てを俺にぶつけて見ろ!」
箒は踏み込みと同時に正面から上段で竹刀を振り下ろす。その速さは優勝したことあってかなり早いが一夏にとっては欠伸がでるほど遅い。竹刀が振り下ろされる直前、一夏は一瞬で彼女の懐に入り込み白刃取りで止めると同時に踏み出そうとした勢いを活かし、箒を地面にひれ伏せた。
「勝負あり、今の俺は素手でもアンタを軽く倒す事ができる。もしこれが実戦だったら既に死んでいただろうな……」
「ま、まだだ!もう一度、私と戦え……!!」
「良いだろう……あんたの精神が折れるまで存分に戦ってやるぜ。野次馬の皆さん……寮に戻って夕食を済ませるなりして下さい。彼女はこう見えても頑固な一面を持っている人だと思いますので」
彼の圧倒的な力を見た野次馬たちはその忠告に従い道場から去っていく光景を尻目に二人は試合を続行。今度は竹刀を横薙ぎに振るうも一夏は後方に跳躍して躱すと同時に懐へ入り、胴に左裏拳を撃ち込んだ。
彼女は負けても立ち上がり試合を続行するが紙一重で回避され、右拳を籠手に叩き込まれて竹刀を地面に落として敗北するがまだと言って試合を続けた。今度は踏み込む彼女の態勢を利用した一夏は足払いを掛けて箒を転ばせる。
最終的に道場が閉まる時間まで試合は行われるも箒は一夏に一本も取る処か掠りもしない有り様だった。息が上がっている彼女を前に彼は全く呼吸が乱れておらず飄々としており一夏は戦った感想を告げる。
「何があったかは知らんが少なくともアンタが知っている俺じゃない事はこれで分かっただろ。お前の剣の太刀筋を見て思ったが荒れていたように感じたが詳しい事は聞かない。それと閉館時間だから俺は寮に戻るぞ」
彼はそう言い残して道場から立ち去った。食堂は既に閉まっているがこの世界の通貨を持ってない彼にとっては問題ない。そのまま寮にある一人部屋に戻ろうとした時、野次馬と思わしき数名の女子生徒たちからパンやお菓子を分けて貰う。
「織斑くん、今日は昼食と夕食を摂れていないって聞いたから少ないけど持って来たの」
「私の持って来たお菓子の一部もあげるよ」
その言葉に続いて何人かの生徒も、其々が持ち込んだ菓子の一部を差し出し、一夏は受け取る。
「俺の事を気遣ってくれてありがとな。この恩は必ず返す」
一夏は女子生徒たちにお礼を述べて部屋に戻り、暫しの食事に勤しむ。食事とシャワーを浴び終えた一夏は皆が就寝した状況を見計らって鞄から四つの小さな文字が記された結界石と
この空間は無数の白い四角形が広がっており外界とは時間の流れが異なっている。この白い空間で一日過ごした場合、外界では一時間経過した事になり誰にも邪魔されず修行する時に使える便利なアイテムだ。因みに結界石を周囲に置く理由は魔物や監視カメラ、盗聴器に悟られないようにする為である。
一夏はあの世界で修行をしていた頃、蜃気楼の杖で展開された世界で三人の師匠達から幾多の特訓を只管重ねており今に至る。
こうして彼はクラス代表決定戦前までこの生活をし続けるのであった。その間、織斑千冬から倉持技研から専用機が支給される事が彼の預かり知らぬ部分でいつの間にか決まっていた。それが新たな騒動を起こすことになるとは知らず……。
同時刻……某国に秘匿されていた施設に、長い銀髪と尖った両耳が特徴の青年が率いる怪人の軍勢が周囲にあるお宝や貴重品を漁っていた。周辺にある銃火器や機材は怪人達の攻撃により完膚なきまでに破壊され、抵抗していた武装勢力も全員殺害されている。相手は剣や弓等の中世を彷彿させる武装だと舐めていたが機械系統や上級の魔物の軍団が呪文を唱えた事であっという間に敵の戦線は崩壊したそうだ。
尚、ISを装備していた三人の操縦者は辛うじて生きてはいるがほぼ身動きが取れずにいてそれも大破寸前だ。三人のIS操縦者を相手にした青年の一人が彼女達と戦った感想を述べる。
『IS……確かに我々と戦う力としては申し分なくそれ相応の手応えはあった。敵ながらその力は見事だった。しかし我々の前にそんな武器は効果が無いと分かったか……!』
「貴様は何者だ? 我々のISの力が通用しないとは……。殺すならさっさと殺しやがれ。お前達の奴隷になるつもりは無い!」
『……我々は人間に対してとても興味がある。我らの可能性を越える無限の力とやらの秘密が知りたい。お前達は我々がやろうとする実験のために敢えて生かしたに過ぎない。それと人体実験に使える器と見出した事もあるからな』
青年の答えを聞いた彼女らは実験動物の為に生かしただけという言葉に背筋が震える。即ち利用価値が無いと判断された場合、躊躇い無く処刑や実験体にされるのは確実だ。生き残るために死ぬまで戦果を出し続ける必要があると彼女達はこの場で悟った。
『こいつらを魔界の研究所に連れていけ。薬物投与等の実験の準備をしろ』
「分かりました!」
青年は側近の魔物の一体にそう伝えると他の部下達は捕縛した三人の操縦者を持ち上げ、魔界に繋がるゲートへ勢いよく放り込んだ。
『この世界の事は大体分かったが、より詳しく知る必要があるな……』
そう呟いた
次はお待ちかねのクラス代表決定戦です。
因みに青年が戦った勢力ですが魔物の軍勢を失いながらも彼の圧倒的な力を前に屈しました。