異界の戦士は故郷の帰還を夢見て空を舞う 作:フラッシュファントム
※内容に誤りがあったので変更しました。
クラス対抗戦に備え、一夏とセシリアは稽古をするべくアリーナの中央に赴くと何故か打鉄を纏った箒が中央で腕を組んで鎮座している。どうやら一夏にただならぬ用事がある事は明らかだ。
「どうやら先客がいるようだな。困った奴だ」
「えぇっ、そうみたいですわね……」
苦笑いする二人を余所に彼女は突如、ISバトルの試合を唐突に申し込む。
「一夏! この場所を使いたければ私と戦え!!」
「全く……お前との試合はいい加減飽きた。組み手で全然勝てないからと言って今度はISまで持ち出すとは呆れる。望み通り一瞬でこの場を終わらせるぜ……!」
一夏は試合開始を告げると同時に一瞬で間合いを詰めて居合い抜きで箒のシールドエネルギーを空にした。
「ふっ……勝負あったな。そう言えばお前に出していた答えを聞いてみようと思っていたが……。この状況だと俺個人が納得出来るような答えは出せてはいないことは明らかだ。少しでもマトモな答えが出るまでアンタとは今後一切、試合をしない。分かったな……」
「くそっ……!」
彼はそう告げるとエネルギーが空になった打鉄を背負ってアリーナを渋々と立ち去った。試合を終えた二人は早速、近接武器の扱いについて指導を始める。
「アンタの使う近接武器はナイフのインターセプターだ。これは相手が懐に入った際に使う緊急用の武器で本来なら使う必要の無いものだ。しかし屋内での近接戦やライフルが使えない場合にこそ真価を発揮できる。今日はナイフを主体とした訓練をやるぞ」
ナイフの使い処を説明した一夏は右手に片手剣、左手に盾を装備して構えた。白式の時は両手持ちのブレードを装備していたが今回は剣と盾を使うみたいだ。
「今から俺が剣と盾を用いた攻撃をする。ナイフだけで回避しつつ攻撃を一度でも良いから当ててみろ!」
「分かりましたわ!」
彼は今回やる特訓の内容を伝えて両者は構えて訓練が開始された。セシリアは順手でナイフを振るうが一夏は最低限の動きで回避、左手に装備した盾を使ったシールドバッシュを顔面に喰らって後ろに下がった。
「おいおい、俺は剣と盾を使うだけで攻撃しないと誰が言った。攻撃だけじゃなくて防御もしっかりしろ。でなければお前は負けるぞ」
「まだまだですわ……!」
彼は忠告を述べるとセシリアは気を引き締めて一夏に再び攻撃を仕掛けるも今度は盾で攻撃を受け流すと同時に右袈裟切りでダメージを与えた。
「さっきより動きは良くなったがお前の力はまだまだ引き出せる筈だ。全力で来い……!」
「当然ですわ。ここで諦めたら淑女の名が廃りますので退けませんわ!!」
そのままセシリアとの模擬戦は続き、彼女はナイフで攻撃や防御をしながら応戦する。だが近接戦闘の経験が遥かに多い一夏の方が上回っていたので訓練が終わるまで掠りもしなかった。
「今日の所はここまでだ。最初の時よりもかなり上達している事が分かったからまだまだ強くなれる」
「一夏さん、今日はありがとうございました! 次はもっと強くなって参りますわ!」
今日の訓練を終えた二人は其々の感想を述べてから別れ、控え室に戻った一夏は着替えが終わって外に出ると鈴音が待っていた。
「一夏、お疲れ!」
「ありがとな、鈴音!」
彼女の労りの言葉と共にスポーツドリンクを受け取った彼はボトルを開けて飲み始める。一夏は実のところ、殆ど疲れておらず水分補給は不要だが鈴音の意をくみ取り飲むことにした。
「俺の昔について知っているかもしれんがそれは忘れてくれ。少なくともここに居る俺は昔の知っている存在ではない。なぁ~に、俺とゼロから関係を始めるなら改めて宜しく頼むぞ」
過去の一夏が何処か面影にある事を察して改めて忠告、ゼロから関係を築くなら大丈夫であると鈴音に宣言した。
「そうね……昔の一夏とはここまでかけ離れている事は改めて分かったわ。これから宜しくね!」
「こちらこそ宜しくな」
両者が同意して改めて握手をしてゼロから関係を始める。過去の一夏との決別をした彼女は現在、ここに存在する一夏と関係を始動した。それを密かに見ていた箒は恨めしそうな視線を鈴音に送るのだった。
「代表決定戦の試合を見たけど一夏の戦いって本当に変わっているのねぇ~。白式の武器を投げて素手に切り替えているのは本当に凄かったよ。今は違う専用機に変更したけどそっちの方が使い慣れているみたいねぇ~!」
「そう買い被るなよ。俺は単に武器だけで戦うよりも速い動きを活かした素手の方が早く終わらせられると思ってやっただけさ。それに今の専用機は他の戦いも出来るからな」
鈴が二人の戦闘映像を見た感想を述べると彼は謙遜しつつも現在使っている専用機の方がしっくり来ると話した。そうなった経緯を語ると彼女は思わぬ被害を受けた日本代表候補生に対して気の毒に感じた。
「冷静に考えればそうかもね~。その日本代表候補生の専用機が、開発を凍結された機体を使い続けるというのも気が引けるわねぇ……」
「だから俺は専用機が届いた日に謝罪。翌日に白式を製造企業に返品した上で他の企業に新たな専用機を頼んだという事だ。日本代表候補生の専用機は他の企業が組み立てに協力してくれるから後は本人次第だ」
一夏はそう話し終え、二人で夕食を摂るために食堂へ足を運んだ。その日の深夜、全員が眠りに就いた時間に蜃気楼の杖で異空間を展開した彼は、筋トレと武器をひたすら振り続ける。筋トレについては腕立て伏せやダンベルトレーニングなどをしてから剣や弓等を只管打ち続けた。
「ISをこの空間で使うのはリスクがとても高そうだ。下手に使えば怪しまるのは確実だから生身で筋トレや素振りをするのが懸命だな」
一夏はそう呟き独自に定めた特訓をする。その間、セシリアが苦手とする近接武器の扱いは自身が所有する武器を変えながら戦い、道場の特訓は素手で箒を軽くあしらうようにこなす日々が続いた。
セシリアとの訓練は意気揚々としているが箒は虚無の表情で淡々とやっている事は明らかだ。特に後者については徐々に嫌な顔から虚無の感じが露になった。
「セシリアは強くなっている。今回は手を抜いたとはいえ槍を使った俺に肩が掠ったから上出来だ。しかし、箒はまるで成長していない。何時まであいつの特訓に付き合えば良いのやら……」
彼がそうぼやいた後、背後から覗いている気配を感知して声を掛ける。
「後ろにいるのは既に分かっている……早く姿を見せろ。さもないと痛い目を見るぞ」
一夏が背後に忠告を掛けた存在は大人しく姿を見せると、その物陰からは一人の女子生徒が出て来た。少し癖がある青髪と赤目、抜群のプロポーションを誇る美少女だ。
「アンタだったのか……お前の事は知っているぞ、更識楯無。現生徒会長でこの学園最強と言うのは……。まぁ良い、それであんたは何の目的があってここに要るのか気になるな」
一夏は何の目的があって尾行しているのか問いかけた。
「政府から貴方達の護衛を任されたの、まだ接触する予定はなかったけど」
「そこまでされるほど弱い覚えはないが……」
彼女の目的を聞いてそこまでされる謂われは無いと語ったが、それを見越してか挑発染みた台詞を彼女は続ける。
「あら~十分弱いと思うけど……?」
「確かにISの理論はまだ充分に理解出来ていない点は事実だ。しかし戦いのセンスについては問題は無いと思いますよ」
一夏はそんなやり取りをした後にその場を後しようとした。
「それはそれとして……。私の妹の簪ちゃんが受け取る予定だった専用機の件、ありがとね」
「なぁ~に、俺は自分がやった落とし前を付けただけなので礼を言う程のことでは無いです。それじゃあ、これで失礼します」
専用機の件で楯無はお礼を述べると彼は自分の落とし前を付けただけと話して今度こそ廊下を去った。
それから数日後、クラス対抗戦が開かれた。最初の対戦カードはなんと一夏と鈴音でそれを見た二人は全力を尽くして戦う事を宣言する。
「まさか初戦で対戦する事になるとは。楽しみだ」
「勝つのはアタシだからね……!」
しかしこの戦いに思わぬ刺客が襲来するとは誰も気付かずこれは飽くまでも序章に過ぎないとは夢にも思わなかった。
クラス対抗戦の前日にある魔界の研究施設でシャルロットの得られた戦闘データを基に改修された三機の試作型キラーマシンが鎮座している。
その見た目は従来のキラーマシンと大差は無いものの異なる部分を上げるとすれば左腕のボウガンがM3サブマシンガンに変更された点だ。これにより中~近距離での戦いが強化されている。
「素晴らしい! 彼女が強力してくれた事でキラーマシンが強くなった。これをベースに後続のキラーマシンを強化していこう」
アウルートは廊下で高らかに嗤うのだった。
次回はクラス代表戦と定番の乱入ですがこの作品はひと味違います。