原作タグがたいようのマキバオーになってるように、マキバオー寄りのストーリーになるかな。
原作の地方競馬の泥臭い話とかが書けたらいいな。
~東京レース場~
『・・・その後ろ赤い帽子はファンシーマン、さらにガンツタレナガシ、リップクリームといった展開・・・』
『・・・最終コーナーをカーブして後続ウマ娘が差を詰める・・・!』
『さぁ直線だ!!直線に入って先頭はアバランチホールド!内からはモモチサンダー!さらにはダーティフェイス!!』
『アバランチホールドかモモチサンダーか!?』
『そして、あのウマ娘はまだか!あのウマ娘は大丈夫か!?』
『皆の夢、一番人気の皐月賞ウマ娘は大丈夫か!?』
『大丈夫!!』
『このウマ娘は大丈夫だ!!』
『今日も手応えは十分!!』
『外から捲ってあっという間に先頭はフィールオーライ!』
『さらに突き放して2バ身、3バ身、強い、強い!フィールオーライ!フィールオーライ!!フィールオーライ1着でゴールイン!!!』
『強い!ダントツの一番人気も何のその!見事期待に応えましたフィールオーライ!これで5戦5勝!無敗のダービーウマ娘の誕生です!』
『残すはあと一つ!クラシック三冠、しかもコントレイル以来の史上4人目となる無敗の三冠ウマ娘となりますか!?』
「オーライ!オーライ!」
東京レース場が8万人の歓声に揺れる。
その日、全てのウマ娘にとって憧れのクラシックロード、その頂点日本ダービーにおいて新たな【伝説】が生まれようとしていた。
【無敗の三冠ウマ娘】それは生涯に一度しか出場出来ないクラシック級の3つのG1レース、その全ての冠をたった一人で手にしたウマ娘に与えられる称号。
そんな歴史的偉業に手を掛けた少女、ウマ娘が見せた新たな可能性に、東京レース場は熱狂の渦に包まれていた。
「ありがとーオーラーイ!」
「お前こそ史上最強のウマ娘だー!」
しかし・・・、
「けっ、何が最強だよ。笑わせるな。他がだらしねぇだけじゃねえか!」
この会場の誰しもがそうであるとは限らなかった。
「なんだオッサン。贔屓のウマ娘が惨敗でもしたのかい?それとももしかして・・・」
観客席の端っこでウィスキーを呑んだくれながらくだを巻くその男。年の頃は30~40程といったところ。よくよく見れば男前とも呼べる端正な顔立ちだが、いかんせん、それも無精髭に隠れてしまえばただの小汚ない中年男といった様相であった。
「あんなもん、テイオーやマックイーンに比べたら・・・」
「テ・・・テイオー、マックイーンて、やっぱりアンタ・・・。」
トーカイテイオー、皐月賞、ダービーの二冠を手中に収め、三冠を期待されるも故障により菊花賞を断念。復帰後も幾度もの怪我に悩まされるも、それを乗り越えて走り続けた名ウマ娘である。
「で、でた~!やっぱりだよ!テイオー世代うっぜぇ~!」
「な、なんだ!何がうざいだ!」
が、その活躍も長い時間を経てしまえば、人々の記憶も薄れ過去のものとなってしまう。
「テイオー世代てどいつもこいつも懐古主義でオーライを認めねえのがうぜえの!」
「別にオーライを認めねえとかそういうことじゃねえよ。でもろくにウマ娘が競ってないのに競走とは言わんでしょっての。」
「しょうがねえじゃねえか。力がずば抜けてるんだから。それとも手を抜いて接戦しろってのか?」
「そうじゃねえ。あのトーカイテイオーもずば抜けた力を持っていたんだ。それこそ圧倒的にな。でもそんなトーカイテイオーもG1レースとなれば楽に勝つことは許されなかった。」
「いや、許さなかったのさ・・・。マックイーンが、ビワハヤヒデが、ナイスネイチャが、ライバルたちが必死に食らいついてトーカイテイオーに力を引き出され、ライバルはトーカイテイオーの力を引き出したんだ。楽に勝てたレースなんてなかったんだよ。」
「お前らは見てねえのか?あのダービーを。あの有馬記念を。」
「いや~あんなに魂の震えたレースは・・・な・・・?」
無精髭の男はひとしきり語り終えて我にかえる。
「オーライ!オーライ!」
「て、聞いてんのか!?」
「なんだようるせえなぁ。どうせテイオーは凄かったって話なんだろ?」
案の定、誰も聞いていなかった。
そんなやりとりをしているうちに勝利インタビューが始まるようで、 皆、そちらに意識が向いているようだ。
『見事、皐月賞に続き日本ダービーウマ娘となったフィールオーライのトレーナー、滝川氏です。』
「おっと、こんなおっさんに構ってられん!」
『まず、今の率直な感想をお聞かせください。』ズイッ
『正直ホッとしました。プレッシャーがハンパなかったんで。』
やたらとマイクを押し付けてくるインタビュアーを押し返しながら滝川TRは語る。
『でも、今日のレースで確信しました。』
『と、言いますと?』グイグイ
『フィールより強いウマ娘はいないってね!』
「いいぞー!滝川ー!」
『それでは、秋の菊花賞も問題無いと?』グググィ
『I feel Alright!! 全く問題ないと思ってます!』
「うおおおおおお!」
「フィール、オーラーイ!!」
「滝川ー!」
「金返せー!」
『いや、問題あるよ!』
『え?』
『どうした?フィール?』
どよどよ・・・
『日程の問題がね・・・菊花賞まで間が空きすぎだよ!』
『皐月賞、ダービーとポンポコきて次は秋だなんて、夏くらいにやってほしいよ!』
『なるほど、このままの調子で一気に行きたいと?』
『ああ、そうすれば食欲の秋にはゆっくりと・・・』
『フレンチが味わえるだろ?』
『なんということか!その眼にはすでにフランス凱旋門が映っていた!』
凱旋門賞、かつてエルコンドルパサーが、エアシャカールが、ゴールドシップが、当時の日本URAにおける世代最強のウマ娘が挑戦するも悉く敗北。いつしか人々からは「あのウマ娘で勝てないなら日本のウマ娘は世界に通用しない」と、まことしやかにささやかれ、この数年はリスクを侵してまで海外挑戦をするウマ娘は極端に少なくなってしまっていた。
そんな半ば諦めムードな昨今の風潮の中で生まれた無敗の二冠ウマ娘が、世界への挑戦を口にすれば、誰もが期待するわけで。このウマ娘ならきっとやれる。フィールオーライなら大丈夫、と。
「うおおおおおお!オーライ!オーライ!」
「さて、帰るかな。」
「しっかし、皆分からんのかね。フィールオーライは確かに強いウマ娘だよ。でもアイツにはその限界を引き出してくれるライバルがいねえんだよ。」
「テイオー世代が最強だってのは、どいつもこいつもが自分が一番を譲らないって走り続けたからなんだよ・・・。そんなことすら忘れちまったのかよ・・・」
「たった10年前の話だぜ・・・?」
無精髭の男はそう呟いてウィニングライブも見ずにレース場を後にしようとしたところで、先程言い争いしていた相手のうちの一人の少年が男を呼び止める。
「ねえおっさん、テイオーのいたチームスピカって強いチームだったんだろ?何で今あんまり活躍してないの?」
「・・・なんだ坊主、チームスピカに興味あんのかい?」
先程からあれほど饒舌にテイオー世代について語っていた男が、スピカの名を聞いて突然、重苦しい表情に変わる。
「興味っつうか、俺が小さい頃の話だし、トーカイテイオーとかメジロマックイーンの名前はよく聞くけど、チームスピカの話ってあんまり聞かねえなって。」
「・・・ふっ、まあ、なんつうか、あんま聞かねえってよりは、皆話題にするのを避けてるんだろうなぁ・・・。」
何となく男は言いにくそうに答えた。
曖昧な言い方に少年は興味が引かれたのか、 やや突っ込んだ聞き方をしていく。
「話題にしにくい話なの?」
「そうさなぁ・・・。いや、そんなこともねえさ。」
「ふ~ん。なんか残ってないの?当時を伺い知ることができるものとか。」
「・・・冗談だろ?10年も昔の話だぜ?ねえよ。な~んも残っちゃいねえよ。」
「そうなんだ・・・。残念だなあ。」
インターネットが普及した現代において、10年前の出来事が調べられない訳もないが、この男がこれ以上この話をしたくなさそうな様子なので少年はこの話は打ち切ることにした。
「競バトゥインクルも廃刊、中央トレセン学園も新理事長を迎えて新体制。おハナさんは独身街道をバクシン中・・・。」
「誰だよおハナさんて。」
「もっとも、何にも残ってなくたってアイツらの走りだけは永遠に語り継がれるものだと思ったんだけどな・・・。」
(あれから、10年か・・・。)
無精髭の男が去った背中には、ウィニングライブの一際大きな歓声が轟いていた。
取り敢えずテイオー世代とか言ってみたかった序章。