フジキセキが部屋でこっそり子猫を飼うお話です。

エイシンフラッシュも出ます。

※閲覧注意です

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最後まで読んでほしいです、とだけ……




フジキセキ「子猫を飼う」

「お願いします! 絶対に他の人には迷惑をかけません! ですから……」

「だ〜め」

 私の名前はフジキセキ。栗東寮の寮長をやっている。

 寮長として、寮生が持ってくる様々なトラブルに対応する毎日だ。

「そこをなんとか…」

「いいや。駄目だよ」

今日の娘はかなり粘ってくる。まあ事情が事情だからなあ。

「猫を飼うのは禁止、としっかり寮のルールに書いてあるはずだよ」

 そう、この娘は寮の部屋で猫を飼っている。それが隣の部屋の娘にばれて、私に報告されたというわけだ。

 その後もしばらくお願いします、ダメ、という問答が繰り返されたけど、最終的に先生を呼ぶよと言うと渋々猫を捨てることを了承してくれた。

 

「ふう……」

 自室に戻りベットに腰掛ける。そしてそうっと手を伸ばして、

「ふふ……今日も大変だったよ。子猫ちゃん♪」

 子猫の茶色くてふわふわした毛を撫でてやる。

 実は誰にも言えないことだが、私は部屋で子猫を飼っている。名前はまだない。

 先日トレセン学園の中にいたのを捕まえて、体を洗ってやったのだ。

 それからみんなに秘密で飼い続けている。

 これは私にしかできないことだろう。私の部屋は寮長ということで、みんなの部屋とは離れているし、同室の生徒もいない。だから誰からもばれることはない。

 まあさっきの生徒には悪いが、寮長特権というものだ。

 

 おっとしばらく撫でていたら、子猫が目を覚ましてしまったらしい。薄目を開けた顔は寝ぼけているようにも、恨めしそうにも見える。

「かわいいなあ♪」

 そんな子猫が愛らしくて、わしゃわしゃと撫でてやる。

 子猫も観念したのか、静かに喉を鳴らした。

 

 それから数日、私の部屋に珍しい客が訪れる。

「失礼します。お話よろしいでしょうか」

 彼女の名前はエイシンフラッシュ。

 私は彼女とあまり親しくはないし、優等生なので寮長としてお世話してやることもない。

「大丈夫だよ。どうかしたのかな?」

 とりあえず要件を聞こうとすると、彼女が驚くべきことを言い出した。

「あなたの部屋の前を通るとき、少し変な声がします。……中を確認させてもらってもよろしいでしょうか?」

 一瞬呼吸が止まりそうになるが、顔には出さない。そのままいつも通り受け答えする。

「変な声? 気のせいじゃないかな?」

「気のせいならそれでもいいです。中を見せてください」

 ……面倒くさいな。規律に厳しい娘だとは思っていたが、こんな生活指導の先生みたいなことするなんて。

「失礼な娘だね。今部屋は散らかってて、中に人は入れられない。わかったら帰ってくれ」

 そう言って部屋のドアに手をかける。

「あ、ちょっと!」

 ガチャン。ふう。危なかった。寮長がルールを破ってるなんてばれたら、他の娘たちになんて言われるか。

 そのままベッドで丸くなっている子猫の元へ向かう。

「君はいつも同じところで丸くなっているね。そうだ。今日は特別なエサを持ってきたんだ。ちょっと待ってて」

 そう言って皿にエサを出してやろうと思ったら、まだ昨日のエサが残っている。

「……たくさん食べなきゃ大きくなれないよ」

 この子猫はどうやら同じくらいの年の子たちに比べて、ちょっと体が小さいように見える。

 昨日のエサを捨てて、新しいエサを入れてやる。

 その間、子猫はじっとこっちを見ていた。

 

 翌日、私が練習から帰ってきた時だった。

 なんと部屋の鍵が開いている! 

 慌てて部屋に入ると、そこには子猫を抱えたフラッシュが立っていた。

 私は驚きながらも、彼女が部屋を出る前に戻ってこれてよかったと安堵する。

 そのまま後ろ手に鍵を閉めて、言った。

「やってくれたね。フラッシュ。生活指導かと思ったら、今度は泥棒の真似事かい?」

 フラッシュがこっちを見つめている。その眼には確かな怒りが見える。

「通してください」

「そういうわけにはいかないな。君がその子を置いて部屋から出ていくっていうなら話は別だが」

「いいから、そこをどいてください!!」

 そう叫んだ彼女の服は、子猫から滴る血で、赤く染まっていた。

 

「そういうことを言うんだね。君にもお仕置きが必要かな?」

 私はそばにあった金属バットを手に取る。いつも子猫を躾けるのに使っているものだ。

「……普段からそんなものでこの子を殴ってたんですか……?」

 フラッシュが敵意で満ちた目でにらみつけてくる。飼い主としてペットを躾けるのは当然だ。そんな眼で見られるのは心外だな。

「ああ、そうだよ。汚い体を洗ってやろうとしたら嫌がるし、エサをあげてもあんまり食べないし、ましてや私がいない隙に逃げようとするんだ。まあそのたびにきつくお仕置きしてあげたから、今はすっかりおとなしいけどね」

「……あなたは……あなただけは絶対に許せません……!」

 そう言って子猫を傍に優しく置くと、フラッシュが拳を構える。待ってくれ……まさか……

「あっはは! おかしいな!! もしかして君、戦おうとしてるの!?」

 ついついそんな彼女を見て笑ってしまう。

 金属バットは立派な凶器だ。丸腰で勝てると思ってるのかな? 

「勝てるとか勝てないじゃない……。この子を救けるためにあなたを排除する。それだけです!」

「かっこいいこと言ってるけどさあ……」

 私はフラッシュの体をなめるように見回した後、言ってやる。

「……脚、震えてるよ。大丈夫?」

 フラッシュの体は恐怖で震えていた。そりゃそうだよね。今まで喧嘩の一つもしたことのないお嬢様だもんね。

「お仕置きされる前の子猫みたいでかわいい♪ 君も飼ってあげようか?」

「……だまれッ!!」

 そう言って突っ込んでくるフラッシュは、低い姿勢で両腕で頭を守っている。なるほど、考えたね。金属バットの一撃を腕を犠牲に止めて、そのまま組み付こうってことか。

 ……甘い。

「っが……っはっ……」

 フラッシュが鼻血を出しながら、後方に吹っ飛ぶ。

 私が選択したのは前蹴りだった。

「ははは! 武器を持ってるからって、それを使わなきゃいけないってことはないからねえ!」

 そう言いながら私はゆっくりと彼女に近づいて、

「えい♪」

 金属バットを振り下ろす。ぎゃあと言って彼女が体を丸める。

 うーん。鳴き声はあんまりかわいくないな。調教してあげようと思ったけど、やっぱり痛い目にあわせて捨てるか。

 そんなことを考えながら、もう一発殴ろうとしたところで――私の体が真横にずれる。

「……フーッ! フーッ!!」

 どうやら子猫が私につっこんできたらしい。はあ……やめてくれよ。服が汚れるじゃないか。

「ッギャッ!!」

 子猫の頭を金属バットでフルスイングしてやる。うん! 今のはホームランだね!

「全く。まだ逆らおうとするなんてお仕置きが足りなかったのかな?」

 子猫はおびえている。いやいや今更従順なふりしても遅いから。

 いろんなお仕置きを頭の中で巡らせる。最終的に好奇心部門1位、『しっぽが取れるまで付け根を殴り続けてみた☆』で決まったところで、

「まだだッ!!」

 フラッシュが立ち上がってきた。バカだな。死んだふりをしていればこれ以上殴られないのに。

「しつこいなあっ!」

 私が金属バットを振りかぶる。しかし、その瞬間足に鋭い痛みが走る。

 ……見ると子猫が噛みついていた。

 私の頭に急速に血が上る。振り上げたバットを思いきり子猫に振り下ろす。

――でも、フラッシュはその一瞬を見逃さなかった。

「あああああああ!!!!」

 フラッシュの全身全霊を込めた拳が私の顔面に突き刺さる。

 そのまま倒れた私に馬乗りになると、何度も何度も拳を振り下ろす。

 何発殴られたかはわからない。でも気づいたら私の意識はなくなっていた……。

 

 

 子猫を抱きかかえて、エイシンフラッシュは部屋を出る。

 ボロボロの体を引きずりながら、病院を目指して進む。

「こんな体で……私のために…………」

 エイシンフラッシュは子猫の傷だらけの体を見て涙を流す。

 もし子猫がフジキセキに立ち向かわなかったら、間違いなくエイシンフラッシュは返り討ちにされていた。その後どんな目にあわされていたかは想像するだけで恐怖に身がすくむ。

「もうすぐ……病院です。頑張ってください……」

 向かっているのは、学校内にある学園病院。それはウマ娘用の施設であった。

「あなたは必ず救けます……」

 エイシンフラッシュは尚も歩き続ける。

 

「死なないでください……ファルコさん」

 

 

 

 

 

 




 フジキセキファンの方申し訳ありません。トレーナーでやろうとしたのですが、金属バット持っててもウマ娘に勝てないだろうということで、虐待役をウマ娘にやってもらいました。

スマートファルコンファンの方申し訳ありません。「ボロボロの体で友達のために戦う体の小さい子」を考えて、彼女がふさわしいと思ってしまいました。

※蛇足ですが、解説です。
最初のモブ娘は普通に猫を飼おうとしてます。
フジキセキは「子猫ちゃん」と言ってスマートファルコンを飼ってます。

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