咲-Saki- Episode of -K   作:ぽんでぷっしゅ

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2話

「犬は負け逃げか・・・」

 

対局が終わった後、優希は手に残っているタコスを一気に頬張った。

 

「なんじゃ負け逃げって」

 

卓に座っている三人は声のするほうへ振り向く。

 

「あ、染谷先輩だじぇ」

 

「面子が足りないならワシが入ろうかの」

 

扉を開け、丁度部室へ入ってきた染谷まこは卓へと着いた。

 

 

 

竹井久は京太郎に質問をする。

 

それはただただ純粋な疑問。

 

「あの時のあなたの手牌は{③}{⑤}{五}{五}{七}{九}{1}{2}{4}{5}{南}{北}{北}・・・あってる?」

 

「はい、多分。」

 

「そう。それで、ツモったのが{①}よね?」

 

「ええ、そうです」

 

「そう・・・やっぱり解らないわね」

 

久は額に手を当てて、小さく唸る。

 

「和も言ってたんだけど、どうして安牌の{南}を打たなかったの?」

 

「・・・意味はありませんよ。ただ、切っちゃダメなような気がしたんです」

 

「それ、嘘よね」

 

その言葉に証拠は無い。

 

ただ、確信はあった。

 

それは、散々人を欺いた打ち筋に精通している所以かどうかは本人にもわからないが。

 

「どうしたんですか部長。いつもなら、『まだまだ初心者ねー』とか言って笑っているところじゃないですか」

 

笑顔で返す京太郎。だが、目は笑っていない。

 

少し濁ったその瞳に薄らと垣間見える狂気は、圧倒的な威圧感を出していた。

 

「なんでもないの。ただ、貴方の本音が聞きたいだけ」

 

「そうですか、なら場所を変えましょう。あまり人に聞かれたくないので」

 

「・・・わかったわ。屋上へ行きましょう」

 

久を先導する形で二人は部室を出ようとする。

 

「あれ?二人して何処か行くの?」

 

二人が傍を通り過ぎた直後、咲は言葉をかけた。

 

「ああ、ちょっと買出しに付き合わされてな。人使いが荒い部長だよ全く・・・」

 

「コラ、誰が人使い荒いですって?」

 

「うっ、スミマセン・・・」

 

「あはは、買出し頑張ってね。京ちゃん」

 

『咲が話しかけてくれなかったら緊張で吐いていたかもしれない・・・』

 

部室を出て早速そう思った久の手は、大量の汗で滲んでいた。

 

 

 

「それで?どうして貴方は{①}を切ったの?」

 

屋上に出て、最初に口を開けたのは久だった。

 

「{①}が優希の高めに当たると思ったからですよ」

 

「それはなんで?」

 

「・・・確かめてみたくなったんですよ。自分のカンが当たっているかどうか」

 

「それも、嘘よね」

 

京太郎のほんの僅かな、返事を考える間が、久の直感を確信付ける。

 

「本当の事を話してって私言ったわよね」

 

訪れる沈黙。

 

だが、久は急かさなかった。恐らく有耶無耶にされるだろうと思ったのかもしれない。

 

 

 

互いに硬直したまま、数分が経過した。

 

最初に沈黙を破ったのは京太郎だった。

 

「モチベーションが上がるかと思ったんですよ」

 

「モチ・・・ベーション?」

 

「ええ、俺が下手に打って盛大に負ければ、あいつ等は活気付く。そして誰かが俺の間違いを指摘するはずです」

 

「完全にそうとは言い切れないけど、一理あるわ」

 

「そしてそれは他二人が気付く要因にもなりえる訳です。どんな上級者といえど、意外なミスはあるはずですし、基本だって大切です。ジャンルの違う3人がそれを互いに確認し、補えあえば、麻雀への理解が深まる。つまりはあいつ等はもっと強くなる」

 

「大会も近いですし、俺は自分に出来る事を最大限に手伝ってあげただけです」

 

京太郎は真顔で答えきった。

 

これは嘘ではない、という事はなんとなく感じ取れた。だが、同時に怒りを覚えるところもあった。

 

「それはつまり、私たちがまだ弱いって事を言っているの?」

 

「そうは言ってませんよ。まだ伸びしろがあると言っているだけです」

 

「・・・舐められたものね。てっきり貴方は初心者ながらに麻雀を楽しんでいるのかと思ったのだけど」

 

久は内心失望していた。

 

彼は、須賀京太郎は遊んでいたのだ。

 

純粋に強くなるためではなく、楽しむためでもなく、ただの冷やかしだったのだ。

 

そして、あたかも自分だけが麻雀を知り尽くしているようなそぶりも見せた。

 

それは真剣に、ひたむきに頑張る彼女にとって、一人の麻雀打ちとして許せないものがあった。

 

「部活が終わった後、部室に残ってて。私と二人麻雀で勝負しましょう」

 

「良いですよ。では、この話は此処までにしておきましょう」

 

京太郎はそう言うや否や、一足先に部室に戻っていった。

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