咲-Saki- Episode of -K 作:ぽんでぷっしゅ
「・・・リーチ」タン
次局9順目、久は再び先制リーチをかけた。
『・・・先輩の捨て牌は順に{白}{⑤}{8}{五}{9}{②}{六}{北}{③}{②}・・・か』
【{④}{⑤}{七}{八}{八}{1}{1}{1}{3}{4}{5}{6}{6} ツモ{④}】
京太郎はツモった{④}を手牌の上に置く。
『法則性の無いばら切りリーチ・・・七対子?』
『いや、最初の{②}はツモ切りだけど、その後の{②}は手出しでリーチ。七対子は無い』
『この捨て牌なら{④}は一見通りそうだけど・・・』
「あら、須賀君。また小考なの?序盤から考えまくるのはあまり感心しないわね」
ネト麻なら強制ツモ切りよと、彼女は挑発交じりに言う。
だが、その彼女の口調がいつもより少し震えていたのを、京太郎は感じていた。
「ええ、まぁ・・・すいません。今切ります」
京太郎、打{6}
『2順目に{⑤}を切ってるのに最終的に{②}{③}を落としてリーチ。絶テンを蹴る理由は?』
「部長、貴方も頑固ですね」
「なんのことかしら」
『多分直撃狙いで捨牌を作ったんだろう。本人は迷彩効かせたつもりだろうけど、ピンズが目立ちすぎるから待ちは恐らくピンズ』
『先に{④}が埋まった可能性もあるが、第一本命は{①}{④}』
『そうじゃなけりゃリーチなんてしないだろうしな』
「・・・また無筋ね」
京太郎の{6}切りを見て久はポツリと呟いた。
「オリても意味無いですしね。そりゃあ放縦覚悟で攻めるでしょ」
「・・・」
久は返事を返さずに山へと手を伸ばす。
京太郎にとっては冗談のつもりだったのだが、彼女には侮辱に取られたのかもしれない。
京太郎は数度の手代わりを経た後、お互いにツモ切りを続けた。
・・・そして流局。
{①}{③}{④}{④}{六}{七}{八}{1}{1}{1}{3}{4}{5}
「聴牌です。先輩はどうですか」
京太郎の手牌を見た久は、手牌を伏せた。
そして一言。
「ノーテンよ」
「何馬鹿な事言ってるんですか。あの捨て牌で部長が聴牌してないわけないでしょう」
「・・・多分①④辺りで聴牌してるんじゃないんですか」
久は何も言わなかった。
だが、その沈黙が逆に正解を裏付けしていると、京太郎は感じた。
「部長、もういいですよね。ハッキリ言って、これ以上は時間の無駄だと思うんですよ」
「・・・」
久は何も言わず、俯いた。
「部長は、感情を表に出しすぎですよ。ガラスを覗くみたいに、部長の手は透けて見えます」
「俺は貴方に負ける気がしませんね」
京太郎はそう言って、席から立ち上がり、久を見た。
俯いていて顔は見えなかったが、涙が一粒卓上に落ちるのは見えた。
「・・・須賀君、貴方を」
久の声は震えていた。
「貴方をこの麻雀部から追放します。二度と来ないでください」
泣くのを必死に我慢しているように、京太郎は感じた。
「そうですか、今までお世話になりました」
それだけ言うと、京太郎は久に背を向け、部屋を出る扉へと向かった。
「・・・ッ!」
京太郎がドアに手をかけようとした瞬間、突然久は立ち上がった。
そして近くにあった牌を掴み、京太郎へと投げた。
それと同時に、京太郎は少し体を傾けた。
牌は京太郎の右頬ギリギリを掠め飛び去った。
そして、ガンという音を立て、京太郎の足元へと落ちた。
「そういう行動をとることも、俺には見えてましたよ」
それではと言いながら、京太郎は麻雀部の部室を出た。
締めたドアの奥からは女性の泣く声が聞こえたが、京太郎は振り返ることなく学校の玄関へと向かった。